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マーラーのCD評・交響曲第9番

指揮者別 L - Z

交響曲第9番 指揮者別 A - K

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マーラーのCD評 index

 

****** 掲載項目数 250件 ***********

 

ラザレフの演奏

レーベル:  日本フィル: JPS49CD
演奏家:   Alexander Lazarev / Japan PO
日時・場所: October 27,2013, Art Theatre, Tokyo
演奏時間:  total 78:16 ( 24:03 / 14:53 / 14:03 / 25:17 )
録音評:

 解像度は今ひとつだが機器によるノイズはない。残響は少なめ。時々マエストロの足を踏み鳴らす音が異様に大きく入っている。

演奏評:

 第1楽章は急ぎ足で始まりあまりその後もテンポを変えない。 録音のせいもあるが、音に潤いがなく、ダイナミックレンジも小さい。 ホルンの音がイマイチ。 ベルはチューブラーベル。 第2楽章冒頭は標準の速めの方。 ホルンのトレモロは、音は悪いがちゃんと吹いている。 かなりテンポにメリハリがあり、中間部のテンポアップは小気味よいが後半はテンポを落とし過ぎで重い。 第3楽章は冒頭から標準的なテンポ。 トランペットソロの所の減速は小さく、初めはやや速めだが、2回目のパッセージで思いっきり速度を落とす。これは非常に珍しいパターンだが、天国からは遠い。 その後しばらく遅めの演奏が続くがコーダに向かってテンポアップし、最後はトップスピードで終わる。 最終楽章は、冒頭から標準的なテンポだがクライマックスで引っ張った後、完全停止というのを2回行う。 このあたりから中々良い感じで、最後はちゃんと死ぬように終わっている。 ライブゆえの小さな傷はあるが、致命的なミスはない。 解釈上もユニークな所はあり面白いが、好きかと言われると、うーんである。 星は2つ

総合評価:  ★★

レナルトの演奏

レーベル:  la Boheme: B-962
演奏家:   Ondrej Lenard / Japan Shinsei SO
日時・場所: December 1994, Suntory Hall, Tokyo
演奏時間:  total 78:54 ( 25:44 / 14:59 / 12:27 / 25:44 )
録音評:

 ノイズはほとんどなく、音はきれい。 残響は少なめか。 同じホールなのにベルティーニのものとは随分音が違う。 エンジニアの腕は結構大きいと言える。 録音レベルが通常よりやや低めに設定されているので、少しボリュームを上げたくなる。

演奏評:

 第1楽章は割と標準的なテンポで淡々と進んで行くと思ったら中間部で非常に熱く荒々しくなり、その後再び淡々とした演奏に戻る。 何とも不思議な演奏である。 ホルンは中々良い音を出している。 第2楽章はそこそこのスピードで始まり、小気味良いとは言わないまでも、不快ではないテンポで進む。 ホルンのトレモロは怪しいが大きな問題とはならず、メリハリもほどほど利いており、中間部のテンポアップまではまずまずである。 後半若干弛緩してしまうのが惜しい。 第3楽章はキビキビしており、ノリも良い。 トランペットソロは大変きれいであり、それに続く中間部は暫時ゆったりするが、その後再び快速演奏に戻る。 最終楽章は、好演と思うが少し弦が物足りない感じ。 聞き終わった感想としては、なんか不思議。 悪くはないが、病み付きになる要素もない。

総合評価:  ★★

レヴァインの演奏

レーベル:  OEHMS CLASSICS: OC503
演奏家:   James Levine / Munchen PO
日時・場所: March 27, 29, & 30, 1999,
Philharmonie im Gasteig Munchen
演奏時間:  total 93:30 ( 29:13 / 16:59 / 14:51 / 32:27 )
録音評:

 割と厚めの音響。 残響は程よく、ノイズはほとんどない。 優秀録音と言える。

演奏評:

 下記の演奏から20年経過し、演奏時間は更に長くなっている。 しかし、よりしまった演奏になっている。 録音のせいもあろうが、低弦が厚くベルリンフィルのようである。 だから、全曲を通じて弦の音色が非常に魅力的である。 しかし、ブラスの音色が荒れていて刺すような不快な響きが目立ちすぎるのは難点。 第1楽章は冒頭はやや遅めの演奏かなという程度だがその後、かなりテンポを変化させる。 ティンパニがやけに強調されているが、ベルはほとんど余韻の部分だけが聞こえる。 第2楽章も、遅めで始まり、途中テンポアップするところで最速までアップし、その後また急に遅くしたりと、テンポも変化が極めて大きい。 そのなかでホルンは完璧に吹きこなしている。 また、コントラバスがやけにゴリゴリいっている。 第3楽章は、標準並みの速度からやや遅めくらい。 トランペットソロのところの減速幅は狭め。 あまり個性的なところはないと思っていたら、終曲に向かって思いっきり引っ張ってくれた。 やはり一筋縄では行かない。 最終楽章は、最遅演の部類に入る時間だが、長いと感じさせないテンションのある名演である。 やはり、ここはレヴァインはうまい。 全体としての評価であるが、かなりいいんだけどあと一息という感じ。 限りなく★2つ半にちかい2つ。

総合評価:  ★★
レーベル:  RCA: 74321-83905-2
演奏家:   James Levine / Philadelphia O
日時・場所: January 2 & 3 1979,
Scottish Rite Cathedral, Philadelphia
演奏時間:  total 91:44 ( 29:35 / 18:02 / 14:16 / 29:51 )
録音評:

 まあまあだが、マスターテープのヒスノイズは聞こえる。

演奏評:

 全体に遅めの演奏。 9番で90分を超える演奏は多くはないが、その中でも第2楽章の遅さが目立つ。 正直なところ、1〜3楽章はやや弛緩した感じがする。 特に、第2楽章の遅さがだらしないだけで説得力を感じない。 また、全体にホルンを含むブラスセクションがバリバリ頑張りすぎて音に品がない。 しかし、終楽章はすばらしい。 終楽章だけなら、一押しにしてもいい演奏の一つである。 この遅めのテンポが弦の響きを生かすのに有効に働いている。 弦の厚みは特筆に値する。 ただし、終楽章でも数カ所、ホルンの音色に不満が残る。

総合評価:  ★★

リットンの演奏

レーベル:  URC: URC 0052/3 CD−R
演奏家:   Andrew Litton / Bergen PO
日時・場所: 2010
演奏時間:  total 81:02 ( 27:45 / 15:18 / 12:34 / 25:25 )
録音評:

 全録音を通してシュルシュルいうノイズが入っている。 音の鮮度は良く、音場は広いだけにノイズが残念。

演奏評:

 きわめてユニークな解釈。 全曲を通じてテンポの揺さぶりがエグイといっていいレベル。 しかも普通と違うところで動かすし、駆け足になったかと思うとつまづいたように止まったり、目一杯引っ張る、ためる。 下品になる寸前だが、妙に説得力を持つ瞬間もある。 弦は厚めでいい出来である。 指揮者の無茶にかなりきっちり追随している。 しかし、ホルンが冴えないし、第3楽章のトランペットがミスだらけで悲惨。 解釈だけなら星2つ半、出来次第で星3つもという感じだが、ノイズとミスの多さは無視できず、星は2つ。

総合評価:   ★★

ルートヴィッヒの演奏

レーベル:  EVEREST: EVC9059
演奏家:   Leopold Ludwig / London SO
日時・場所: March 1960
演奏時間:  total 75:10 ( 25:39 / 14:05 / 11:44 / 23:42 )
録音評:

 かつて、故長岡鉄男氏が銘盤にあげておられた唯一のマーラー9番のCD。 現在のデジタル録音からすれば、たいしたものでもないのだが、当時の録音としてはかなり優秀と思う。 少々テープヒスはあるが、気になるほどではない。 音の角がとれてやや丸い感じはあるが、残響で寝ぼけたような録音とは違う。

演奏評:

 第1楽章は初め速めの印象だが、まあ標準的なテンポ。 弦もホルンも音がきれいである。 このホルンはかなりうまいと思う。 タムタムの音は地響きのよう。 ベルはチューブラーベルではないかと思うが、割と派手な音である。 第2楽章は、キビキビして速めの演奏かと思うと、中間部はむしろゆったり聞かせるという変わったスタイル。 ホルンはまあまあトレモロもこなしている。 しっかりワルツしている感じ。 後半、さらにテンポを落として粘る。 この楽章は熱い。 第3楽章も速めであり、きびきびとして小気味良い。 途中で、さらに少しテンポアップする。 トランペットソロでも極端には減速せず。 出来はまあまあか。 最終楽章は出だしは中くらいで、後半テンポを落とす感じだが、それでも演奏時間を見ると速めの部類に入る。 弦の音が豊かでたっぷり聞かせる感じなので速いと感じないのかも知れない。 クライマックスはなかなか熱い。 全体にもう少し悪魔的でもいいかなとは思うが、そうならない所がこの演奏の個性と考えるべきだろう。 初期の銘盤だと思う。

総合評価:   ★★☆

ロベス-コボスの演奏

レーベル:  TELARC: 2CD-80426
演奏家:   Jesus Lopez-Cobos / Cincinnati SO
日時・場所: May 5 & 6,1996, Music Hall, Cincinnati
演奏時間:  total 85:23 ( 28:24 / 16:06 / 13:03 / 27:50 )
録音評:

 非常にクリアで楽器の定位も妙に良い。 音場は曖昧で奥行きが浅いところをみると、やはりマルチマイクか。 ノイズはほとんどなく、聴きやすい。

演奏評:

 全体に弦が弱くガサガサした音である。 演奏のスタイルとしては遅めのスタンダードなものと言えようが、ときどき「エッ」というような、変な強弱が付いている。 全曲を通じて言えることだが、弱音の支配的な部分は大変に綺麗で魅力的だが、少し音が大きくなってくるとがさついてくる。 ホルンも弱音では惚れぼれするような音を出しながら、少し音が大きくなると金切り声になってしまう。 第4楽章は死ぬように終わるのではなくて、冒頭から死んでいる感じ。 弦の音に暖かみが欠如しているためである。 弦が弱い分相対的にブラスがうるさくなっている。

総合評価:  ★☆

ルイジの演奏

レーベル:  Sounds Supreme: 2S-003 CD-R
演奏家:   Fabio Luisi / MDR SO
日時・場所: September 7,2001, Magdeburger Dom
演奏時間:  total 89:22 ( 29:03 / 15:38 / 15:30 / 29:11 )
録音評:

 CD-R盤としては最良の部類。 ホールの残響も適度であり聴き心地が良い。

演奏評:

 私の現在最も好きな演奏である。 両端楽章の遅めのテンポも決して重ったるくなることはなく、弦の音も豊かかつきれいである。 ホルンのソロが少々危うくなる部分があるが許容範囲だし、全体を通してホルンがこれだけきれいな音色を維持出来ている演奏はまれだと思う。 また、両端楽章が遅い演奏ではともすると、第2、第3楽章も引きずられて遅く、重ったるくなりがちだが、この演奏では、第2楽章は軽快とも言えるノリの良さがあり、しかも自在に緩急が付けられていて、しなやかである。 また、第3楽章は長めだが、中間部をゆったり鳴らしているためで、全体の印象としては弛緩することなくきびきびしている。 手に入れやすいものとは言えないがお勧め。

総合評価:  ★★★
レーベル:  DIRIGENT: DIR-0314 CD-R
演奏家:   Fabio Luisi / Swiss Romande O
日時・場所: May 20,2009, Geneve
演奏時間:  total 86:16 ( 26:57 / 16:15 / 13:56 / 29:08 )
録音評:

 あまり良い録音とは言いかねる。 マスターテープの痛みによると思われる音のぶれや、プチっとかブチっというタイプのノイズが多い。 またフォルテでややサチリ気味のところがある。

演奏評:

 上記より8年後の演奏とのことでおおいに期待したのだが、残念ながら、上記のものに劣る。 マエストロの解釈の根幹は同じだと思うが、オケの技術水準に問題があり、妥協したのではないかと思う。 スイスロマンド管のマーラーはジョルダン指揮のもので初期交響曲に名盤はあるが、後期交響曲を聴くのはこれが初めてで、録音は極めて稀だが、レパートリーとしてはどうなのだろう。 少なくともこの演奏では、良いところと悪いところが交錯している。 両端の楽章はすばらしい。 弦の音は豊かできれいだし、ホルンは絶妙である。 特に、最終楽章は上記を凌ぐくらいで星3つあげていい出来。 しかし、中間の2つの楽章に問題がある。 第2楽章でホルンが明らかに速いパッセージについていききれないため、少しテンポを遅くしているが、それにしてもたどたどしさが残る。 そして、第3楽章でライブの傷と言えばそれまでなのだが、トランペットソロが盛大に吹き損なう。 はっきり言って、ぶちこわしである。 全体としてみれば、星2つ半くらいの演奏だが、録音に問題があるのと、トランペットのミスを重く見て星2つにとどめておく。

総合評価:  ★★
レーベル:  DIRIGENT: DIR-1869 CD-R
演奏家:   Fabio Luisi / Danish RSO
日時・場所: Septembeeer 1,2016, Copenhagen
演奏時間:  total 85:29 ( 27:38 / 15:33 / 13:57 / 28:21 )
録音評:

ホワイトノイズがかなり大きいので弱音部では結構目立つ。気にし始めると気になるレベル。 また、時々「ぶ」という嫌な音が聞こえる。 解像度はよく、残響も適度であり、ノイズ以外は良い録音。

演奏評:

上記よりさらに7年後。 しかし、この人の解釈はブレない。 オケの技術水準は上記より上だが、音色では負ける。 しかし良い演奏だと思う。
第1楽章は標準的なテンポであり、テンポのゆすり方もいい感じ。 例のベルは管状の物を叩いているようで、音程も正確だが、通常のチューブラーベルより分厚いものを叩いているような音。 悪くない。 この楽章で唯一残念なのは、コーダの部分でフルートと掛け合うホルンが妙にヘロヘロしてしまうこと。 ちょっとホルンが弱いのか、続く第2楽章でもトレモロがなんだか怪しい。 この楽章は中間部以後のテンポアップが小気味よく、例の「ターータター」がほとんどすべて「ターーータタ」である。ここまでやるのは、かなり珍しい。 第3楽章も速めのテンポで始め、トランペットソロのところで良い感じに減速。 このトランペットがいい音色である。久しぶりに天国的な音を聞かせてもらった。この部分は非常に情感の高まりがあり名演。最後にテンポアップする部分では技術的に破綻するギリギリのところで駆け抜けた感じ。 最終楽章は良い演奏なのだが、弦の豊饒さが上記に比べるとあと一歩。 全体としては、解釈は星3つだが、それにオケが答えきれない部分を減点し、星2つ半。

総合評価:  ★★☆

マゼールの演奏

レーベル:  En Larmes: ELS 02-228/9 CD−R
演奏家:   Lorin Maazel / Bavarian RSO
日時・場所: June 9, 2002
演奏時間:  total 86:25 ( 31:40 / 14:57 / 13:26 / 26:22 )
録音評:

 CD−R盤としては上々の部類。 気になるノイズはほとんどない。 残響もほどほど。

演奏評:

 第1楽章はかなり遅い。 しかし、遅めの演奏の中では最右翼かと思わせる。 この楽章だけならかなりの高得点である。 弦は綺麗だしティンパニーはメリハリが利いていてよろしい。 タムタムも適度に悪魔的だし、終局に向かってのフルートソロはよくぞこの遅いテンポでここまでと言う感じ。 ベルの音はチューブラーベルの音に近いが妙に余韻が長い。 いったいどういうものを叩いているのだろうか。 第2楽章は、初め割と速めの感じだが、途中から遅くなる。 どうも、速いのに軽快と言う感じにならない。 ホルンはトレモロが怪しく恐る恐るの感じがする。 但し、オーボエが惚れぼれする音を出している。 第3楽章は演奏時間をみるとむしろ速めの部類なのに妙に重ったるい。 トランペットソロはまあまあ。 そのあとテンポを遅くしてたっぷり歌わせにかかるのだが、どうも重いのである。 最終楽章は、冒頭こそ引っぱり加減で入るが、その後は割とさっぱりしている。 マゼールならもっとうねらせるのではと期待するのだが、どうも9番では彼はおとなしい感じである。 全曲をとおして、弦はなかなか良い音だと思うし、木管楽器も奮闘している。 しかし、ホルンが何か違うのである。 何か音色が違う気がする。 解釈上の問題とは別にここが私には引っかかる。

総合評価   ★★
レーベル:  DREAMLIFE: DLVC-8016 DVD
演奏家:   Lorin Maazel / Bavarian RSO
日時・場所: 1996, Herkulessaal der Residenz, Munchen
演奏時間:  total 87:53 ( 31:43 / 15:50 / 13:48 / 26:32 )
録音評:

 DVD故にCDと対等の比較は出来ないが、割と良い音だしノイズもなく残響も適度だと思う。 音に不満はない。 映像の方はアップが多すぎるのがやや不満。

演奏評:

 上記に6年ほど先立つ演奏だが、解釈は非常に良く似ている。 終楽章の出来はこっちの方がよく、マゼールにしては知りすぼみになっていない点は買えるが、どうにも第2、第3楽章が重い。 星2つと1/4というところか。

総合評価   ★★
レーベル:  DIRIGENT: DIR-0024 CD−R
演奏家:   Lorin Maazel / New York PO
日時・場所: June 2008, New York
演奏時間:  total 90:30 ( 32:27 / 15:45 / 14:27 / 27:51 )
録音評:

 デジタル録音なのに何故かシャーっというホワイトノイズのようなものが聞こえる。 しかし残響はほどほどで空間分解能は高く、まずまずの部類。

演奏評:

 マゼールのものとしては一番最近のもの。 初の90分越えである。 全楽章ともに、これまでのものより幾分遅め。 第1楽章は冒頭から遅めで、粘り引っ張る所はいかにもマゼールらしい。 時に間延びする寸前まで引っ張るが、寸止めになっている。 ホルンは当初、やや音色的にどうかなと思ったが、徐々にエンジンがかかって良くなる。 全体に弦の音がきれいである。 ニューヨークフィルの弦ってこんなきれいだっけと驚く。 中間部、弱音の寂莫とした感じが独特。 不気味な静けさが漂っている。死の影がみえるというか、なかなかこういうレベルの演奏は少ないと思う。 ベルはチューブラーベルを普通に叩いており、私にとってはこれが理想。 終結部に至ってホルンが素晴らしい音色を出している。 第2楽章は冒頭部は速め。 ホルンはやや怪しげではあるが、この速いテンポでもちゃんとトレモロを吹いている。 キビキビした印象。 その後は標準ないしやや遅めで速度変化は少ない。 音のメリハリが強く、ブラスがやや吠え過ぎ。 ワルツにはなっていない。 第3楽章は標準ないしやや遅めのテンポで始まる。 トランペットソロは素晴らしいが、この部分での速度ダウンは少なめ。 もうちょっとくどいのを予想したが、わりとあっさりした演奏である。 終楽章はのっけから弦が良い。 中低域が程よく厚く心地よい音色である。 ホルンも大健闘している。 テンポの揺さぶり方も必要十分で、あざとくないのが良い。 マゼールのものとしては最良の終楽章である。 全体を通してみると、弦とホルンの音の良いのが特徴。 両端楽章は★3つレベルだが、中間の2つはせいぜい★2つ。 しかし、やや甘いが全体で★2つ半としておく。

総合評価   ★★☆
レーベル:  VonZ: S-2-263/4 CD−R
演奏家:   Lorin Maazel / Bavarian RSO
日時・場所: February 24, 1998, Theatre de Champs Elysees, Paris
演奏時間:  total 86:55 ( 30:48 / 15:31 / 13:34 / 27:02 )
録音評:

 解像度はまずまずでクリアな音だが、終始「ボボボ」というようなノイズが背景でかすかに聞こえている。 また、第1楽章の途中でチリチリいうような別のノイズが入る。

演奏評:

 演奏時間をみると、2002年の演奏にかなり近い。 しかし、こっちの方がだいぶ演奏の出来はいいように思う。 まず、熱い。 両端の楽章は上記の演奏に迫る出来の良さであり、特に最終楽章後半で速度が落ちるあたりからなかなか聞かせるし、最後の死に方も良い。 第2楽章もまずまず。 第3楽章がややもたつくが、全体としてはノイズの問題がなければ間違いなく星2つ半。 しかし、ノイズの程度がひどいというほどではないので、あえて減点しない。

総合評価   ★★☆
レーベル:  En Larmes: ELS 07-718/9 CD−R
演奏家:   Lorin Maazel / Bavarian RSO
日時・場所: 1999, Munchen
演奏時間:  total 87:30 ( 31:39 / 15:49 / 13:47 / 26:15 )
録音評:

 解像度良く、残響適度。 クリアでノイズもない、優秀録音。 

演奏評:

 上記の1年後だが、解釈は同じと考えてよく、演奏の出来も遜色ない。 あえて言えば、第1楽章冒頭で各楽器のチューニングが完全でなく、わずかだが、ずれた音程で演奏している楽器がある。 しかし間もなくこれは改善され、第1楽章の出来はけして悪くない。 最終楽章の出来は見事であり、これも星2つ半。 ノイズの少なさからいえば、こっちがおすすめか。

総合評価   ★★☆
レーベル:  CBS-SONY: 54DC671-2
演奏家:   Lorin Maazel / Vienna PO
日時・場所: April 13,14 & 16,1984,
Musikvereinsaal, Vienna
演奏時間:  total 84:10 ( 29:45 / 16:04 / 13:01 / 25:20 )
録音評:

 マルチマイクとは思うが、わりと自然な響きであり聞きやすい。 ノイズも少ない。

演奏評:

 第1楽章はかなり良いと思う。 弦の音と言い、ホルンの響きと言いさすがはウィーンフィルと思わせる。 マゼールの解釈は結構癖があるが、第1楽章では、中々面白く聞かせているし、適度に悪魔的でうまい。 ところが、第2楽章あたりから、アレェ?というところが出てくる。 第2、第3楽章とも、妙にゴツゴツした感じで荒々しい。 ウィーンフィルからよくぞこんな音を出したものだとは言えるが、この2つの楽章はもう少し軽やかであって欲しい気がする。 中で、第3楽章のトランペットソロが始まるところでテンポを落とさず、その後でテンポを落とすやり方が珍しく、しかし説得力はあって面白い。 第4楽章は、音は豊穣であり悪くはないのだが、何となく無難にやっている感じがする。 マゼール/ウィーンフィルのマーラー全集は、同時期のライヴに比べるとおとなしいと言われているし、5番や7番などCD-R盤で手に入れて聞いてみると、確かにライヴの方が数段魅力的だったりする。 で、この組み合わせのライヴも聞いてみたいとは思うのだが、出回らないんだなあこれが。

総合評価: ★★

マーツァルの演奏

レーベル:  music vars VA0122-2
演奏家:   Zdenek Macal / Prague SO
日時・場所: April 11, 2000, Smetana Hall, Prague
演奏時間:  total 78:56 ( 26:25 / 15:03 / 12:20 / 25:08 )
録音評:

 適度な残響があり聞きやすい。 ノイズはほとんどない。

演奏評:

 第1楽章は初めのうち不調である。 弦のアンサンブルは怪しいし、金管群がやたらバリついて聞き苦しい。 しかし、真ん中あたりからだんだんオケ全体にノリが良くなってきた感じで、後半かなり緩急を付けたにも関わらず、よくついてくるようになる。 第2楽章は、キビキビして中々良い。 ただし、ホルンが速いパッセージで苦しそうなところがある。 第3楽章も好演である。 中間部のトランペットソロもなかなかうまい。 そして終楽章はこの演奏の一番良いところ。 弦のみならず、全オーケストラのサウンド的な厚みが見事である。 ただ、一カ所だけ、弦のアンサンブルが崩れかかるところがあり惜しい。 指揮者の解釈はなかなか面白いと思うし、弦の音色も良い。 ホルンの弱音もなかなかのものである。 しかし、それでもオケの技術水準には、やや難がある。 マーツァルはチェコフィルの常任となり、マーラーを次々手がける模様なので、今後に期待である。

総合評価:  ★★
レーベル:  EXTON : EXCL-00010 SACD hybrid
演奏家:   Zdenek Macal / Czech PO
日時・場所: October 11-12, 2007, Rudolfinum Dvorakova sin, Prague
演奏時間:  total 82:43 ( 28:04 / 15:19 / 13:07 / 26:13 )
録音評:

 クリアで残響も程よくノイズもない。 優秀録音。

演奏評:

 第1楽章は標準的なテンポで始まるが、途中結構マメにテンポを変えて揺さぶる。 弦もホルンもきれいな音で、総じて小気味良いテンポだが時に引っぱり、適度に悪魔的。 最初のティンパニ連打と2回目とできっちり違いを出す。 ベルはチューブラーベル。 続く第2楽章はやや速めのテンポ。 ここでのホルンは特筆ものであり、この速めのテンポでトレモロを完全に吹きこなしたうえ、全く音色も崩れない。 中間部で通常ならテンポアップする所で逆にテンポを落とすなど、テンポをかなり独特な揺さぶり方をする。 ここまではユニークな名演である。 ところが第3楽章が凡庸。 テンポ一定で揺さぶりなく、トランペットソロもきれいではあるが、あまりにも淡々としている。 第4楽章は、チェコフィルの魅力全開で、弦良しホルン良し。 これは指揮者じゃなくてチェコフィルがえらい。 今ひとつ消化不良な所があるが、チェコフィルの音の良さに免じて星2つ半。

総合評価:  ★★☆

マデルナの演奏

レーベル:  ARKADIA: CDMAD028.4
演奏家:   Bruno Maderna / Torino RSO
日時・場所: December 22,1972, Torino
演奏時間:  total 77:51 ( 27:58 / 13:25 / 13:34 / 22:54 )
録音評:

 一応ステレオだが、けして良い録音とはいえない。 やや、こもる感じ。 しかし、何とか許容範囲ではある。

演奏評:

 下記と時期的に近いこともあるのか、非常に良く似ているが、幾分こっちの方が過激さはましか。 オケの差を考えれば当然かもしれない。 しかし、おもしろい! やっぱり、★は2つ。 二つ半でもいいかと思ったが、自重する。

総合評価:  ★★
レーベル:  ARKADIA: CDMAD016.1
BBC Music: BBCL-4179-2
演奏家:   Bruno Maderna / BBC SO
日時・場所: March 31,1971, Royal Festival Hall, London
演奏時間:  total 78:23 ( 29:23 / 14:19 / 13:11 / 21:30 )
録音評:

 ARKADIA: モノラル録音であり、限界はあるが、ましな方か。
BBC Music: ステレオで、当時としてはそこそこ良い音ではないかと思う。 テープヒスはあるが、ひどくはないし、残響は適度。

演奏評:

 極めてユニークな演奏である。 特に第1楽章は冒頭から超遅演かと一瞬思うが、テンポを揺らしまくり、かと思うとあっさりアッチェルランドを無視したりする。 これは解釈というよりアレンジ(編曲)である。 しかし、結構面白い。 この傾向は、第2、第3楽章も同様で、節操がないというか、やりたい放題である。 極め付きが第4楽章で、全体に速いテンポで押しながら時々遅くなり、途中3回、意図不明だがブルックナーストップのような制止が行われている。 とにかく、エッ?!と思うような変更が多い。 気まぐれにテンポを揺すっているように感じさせながら、BBC響は完全に追随しており、アンサンブルの乱れは全く認められない。 これは凄い。 入念なリハーサルのなせる技か。 面白さに免じて星2つ。

(追記)上述の文章は、まだBBC盤を手に入れる前、このHPをはじめてまだそんなにたっていない頃だったと思う。 その後、とんでもない演奏も含めて100件くらい聴いたが、今回あらためてBBC盤のステレオ録音を聴いてみると、第1楽章はそれほど過激でもないかなと思う。 第2、第3楽章の高速運転はむしろ好みだし、ポイントは高い。 星2つ半に変更しようかと思い始めたが、やっぱり最終楽章のブルックナー風ストップ3発はなじめない。 だから星はやっぱり2つである。

総合評価:  ★★

マズアの演奏

レーベル:  TELDEC: 4509-90882-5
演奏家:   Kurt Masur / New York PO
日時・場所: April 1994, Evry Fischer Hall, New York
演奏時間:  total 78:13 ( 24:37 / 14:47 / 13:13 / 25:36 )
録音評:

 クリアで、残響もほどほど。 良好な録音と言える。

演奏評:

 第1楽章冒頭から速い演奏である。 はじめの部分をこれだけ速く演奏しているのはあまり記憶にない。 しかし、速めとしてはかなり良い演奏だと思う。 速くとも速度的なメリハリはあるが、粘ったり引っ張ったりは少ない。 各楽器の音色はまあまあで魅力的と言うには至らない。 タムタムはゴング風、ベルは、金属の厚めの板をソフトスティックで叩いたような音だが、この演奏スタイルならむしろ普通のチューブラーベルをハードスティックで叩いた方が合うような気がする。 第2楽章は、冒頭標準よりやや速めくらいのテンポでホルンも無難にトレモロを吹きこなし、まあまあかなと思っていると、中間部のアッチェルランドから後は怒濤の高速運転に入る。 この部分をここまで速く演奏した例も記憶にない。 よくぞこの速さに付いてきたとニューヨークフィルを見直してしまった。 第3楽章も冒頭から飛ばしまくる。 速いというより慌ただしいという感じさえする。 トランペットソロに至って速度がようやく落ち、その後は通常のスピード。 トランペットはまずまずであり、そのあとの盛り上がりの部分が、熱いのではなく暖かい。 ちょっと不思議な感じがする演奏である。 最後のアッチェルランドに期待したが、ここはさほどでもなかった。 最終楽章は、速めの標準的なテンポで、弦の音色はいかにもアメリカのオケの音だが嫌らしくはなくきれいである。 速めの中での速度的なメリハリはあり、手堅いところだなと思っていたら、最後のクライマックスのところでいきなり思いっきり速度を落としバーンスタインばりに引っ張りまくる。 その後、最後まで遅めのテンポを維持して終わる。 マズアだから平凡な演奏かと思っていたらとんでもなかった。 勢いで★半分増やさないよう自重しつつ、★2つ。

総合評価:  ★★
レーベル:  Lanne: DDX-8001
演奏家:   Kurt Masur / French National O
日時・場所: May 3, 2007, Theatre des Champs Elysees, Paris
演奏時間:  total 80:06 ( 25:50 / 15:07 / 13:59 / 25:10 )
録音評:

 ノイズなし。 残響ほどほどの優秀録音。

演奏評:

 ニューヨークフィルとの演奏に近い解釈だが、より穏当で過激さは削げている。 しかし、美しさはこっちが上。 弦の音色が素晴らしく、歌わせ方がうまい。 第2、第3楽章も速めで私好み。 ホルンの音色が何か違うなあという感じがするのが残念だが、これは星2つ半差し上げようと思う。

総合評価:  ★★☆

モリスの演奏

レーベル:  IMP CLASSICS: DPCD1025
演奏家:   Wyn Morris / Symphonica of London
日時・場所: Unknown
演奏時間:  total 91:32 ( 30:49 / 17:25 / 14:43 / 28:35 )
録音評:

 録音年代が良くわからないので、水準以上かどうか今ひとつはっきりしないが、そこそこの録音であり、聞きづらいところはない。

演奏評:

 まず、おそい。 第1楽章冒頭は、わりと速めなのだが、すぐにおそくなり、あとはずっと遅い中での速度変化である。 この楽章では、ときどき変に引っ張るところがあり、音響バランスも独特で、時々聞き慣れない音がする。 第2楽章も非常に遅い。 その割にホルンソロは今一である。 中間部で普通の演奏並みに速くなるが、またじわっとリタルダンドして気がつくと遅くなっている。 終わりの部分は異様に遅い。 第3楽章も実時間以上に遅く聞こえる。 そのためかトランペットソロのところでほとんど速度が変わらない。 そして最終楽章だが、時間的には遅い部類の演奏にはいるものの、意外なほどまっとうな演奏である。 この辺りになると、こっちも慣れて来てもっと異様なのを期待していたのであるが、至極普通の好演である。 全体として、オケの音色は良く、技術水準もまあまあなのだが、いかんせん遅すぎる。

総合評価:  ★★

ミトロプーロスの演奏

レーベル:  Music & Arts: CD-1021
演奏家:   Dimitri Mitropoulos / Philharmonic SO
日時・場所: January 23, 1960, Carnegie Hall
演奏時間:  total 73:33 ( 25:29 / 13:42 / 13:10 / 21:12 )
録音評:

 下記のものよりはだいぶましである。 しかし、この時代のモノラル録音としては優秀とは言えない。 テープヒスは目立たないが、録音の最初の方でカリカリするような妙なノイズが聞こえる。 また、ライブ録音であるが、演奏終了後拍手が始まるまでの間をテープ編集で切り詰めたあとがあり不快。

演奏評:

 第1楽章冒頭から速めの演奏だが、素っ気ない訳ではなく弦はけっこう歌う。 打楽器のメリハリの効いた適度に悪魔的な演奏。 中間部でややテンポを遅めに取るため演奏時間がこのくらいになっている。 タムタムはゴァーンという地響きのような音。 ベルはチューブラベルを硬いバチで叩いた典型的なカーンという音。 のっけから結構熱い演奏である。 第2楽章は冒頭から速い。 私が聞いた限りでは最速の部類に入る。 ホルンは付いてくるのがやっとである。 トレモロは音が小さくて聞き取りづらいが、どうやら中抜きをして誤摩化している。 このテンポでちゃんとトレモロを吹ける奏者は稀だろう。 しかし、この快速にはホルンのトレモロぐらい犠牲にしても構わんと思わせる迫力がある。 中間部に入り通常テンポアップするところで、ほとんどテンポが変わらない。 その後は唐突にテンポが速くなったり遅くなったりし、後半テンポが遅くなってやや間延びする。 速いのは好みだが、少々荒っぽい。 第3楽章は、初めのうちやや遅めで、トランペットソロのところではあまり速度を落とさず、後半はテンポアップして最後は崩壊寸前まで速くなって駆け抜けるように終わる。 そして、終楽章は冒頭の音符の切り方が独特であり、テンポは速めで終始する。全体に弦が厚く、演奏も熱い。 ただ、ダイナミックレンジの限界からか、あまりコーダで音量が下がらず、死ぬようには終わっていない。 演奏そのものは好演だと思う。 やや録音が悪いので半分減点して星2つ。

総合評価:  ★★
レーベル:  ANDANTE: 4999
演奏家:   Dimitri Mitropoulos / Vienna PO
日時・場所: October 2,1960, Musikverein, Vienna
演奏時間:  total 79:39 ( 27:40 / 15:37 / 14:11 / 22:11 )
録音評:

 録音は悪い。 個人所蔵の音源から起こしたCDとのことだが、モノラルとしてもテープヒスが盛大な上に、こもって風呂場で聞いているような音である。 従って全体像はある程度捉えられても、細部は良く解らないというのが正直な所。

演奏評:

 上記の演奏と同年でありながら、こちらの方が演奏時間が5分も長くなっている。 これもやはり、ウィーンフィルが指揮者を引っ張ってしまった結果だと思う。 第1楽章は割とオーソドックスな感じだが、この楽章を通じてティンパニーのピッチが低すぎる。 どうも、ウィーンフィルは伝統的にそうなのだろうか、他の指揮者のものでもティンパニーのピッチが低いと感じることが多く、これはこの曲の第1楽章でのティンパニーの目立ち方を考えるとかなりつらい。 当然、指揮者によっては容認できず楽員との間に軋轢を呼ぶのではあるまいか。 第2楽章ではホルンの音が小さめでほとんど聞き取れないが、バーンスタインの所でも述べたように、機動性の限界から演奏速度を遅めに取らざるを得なかったのではないか。 上記の録音に比較して2分も遅くなっているのは、たまたまではあるまい。 しかし、ここまでの2つの楽章は割と無難な感じではある。 第3楽章はかなり個性的で、それまでとは一転してかなりテンポを揺らしており、結構面白い。 そして、終楽章は熱い演奏である。 速いが熱く、さすがバーンスタインの師匠と言う感じ。 バーンスタインの若い頃の演奏に似ている気がする。 しかし、とにかく録音が悪いので細部が解らずもどかしい。 おそらく録音が良ければ名盤の仲間入りをし得る内容なのだろうと想像はできるが、カラヤンのブルッ8やベームのシュトラウスと抱き合わせで大枚はたいてまで買うべきものではない。

総合評価:  ★

ムントの演奏

レーベル:  ARTE NOVA: 74321893552
演奏家:   Uwe Mund / Kyoto SO
日時・場所: March 22,24-26, 1982, Kyoto Concert Hall
演奏時間:  total 77:30 ( 26:14 / 14:56 / 11:59 / 24:21 )
録音評:

 適度に残響があり、豊かな音。 ノイズは少なく聴きやすい。

演奏評:

 中々の好演と言える。 第1楽章冒頭からホルンは割と健闘している。 私の好みの音色から少しずれるが、これはこれで悪くない。 ブラスセクション全体も適度にメリハリがあり、悪魔的な響きもそこそこ出ている。 1点だけ気になるのが、後半に出てくるベルの音で、明らかにチューブラーベルとは違う梵鐘のような響きがする。 どうもどんなものを叩いているのか良く解らないが、私は妙なものを叩くよりチューブラーベルを使って欲しい。 第2楽章は極めてユニークで、全体にキビキビとしながら、頻繁に速度が変わり、それがいきいきとしていておまけにきっちりワルツしている。 こういう演奏は他に経験がなく、この楽章だけでもちょっとした聴きものである。 第3楽章も極めて速く締まっている。 中間部のトランペットソロも非常にうまく、ここをゆったり演奏しているせいで12分近くになっているが、他の部分は最速の演奏ではないかと思う。 そして、終楽章もすばらしい。 日本のオケでこの弦の音が出るのかと関心。 確かにベルリンフィルあたりに比べたら低弦が弱いが、冒頭部の暖かい感じが魅力的である。 廉価盤でもあり、お勧め。

総合評価: ★★☆

ナヌートの演奏

レーベル:   iTune Store: よくばりクラッシック100min.x100 Vol.63 配信
演奏家:   Anton Nanut / Ljubljana Radio SO
日時・場所: 1990年代?
演奏時間:  total 81:17 ( 27:28 / 16:32 / 13:30 / 23:47 )
録音評:

 ノイズはなく、残響もほどほどだが、解像度は今ひとつ。 歪みっぽくはないし、聴きやすいものではある。

演奏評:

 これは、CDとしては全集の形でしか発売されず、しかも日本国内では出回らなかったのではないかと思う。 以前にヤフオクに出て、競り負けたことがあり、長らく私にとって幻の演奏だったが、たまたま iTune Storeで廉価版として発売されているのを見つけて驚いた。 CD評としては、本来番外だが、ここで評価しても良いかと思う。 解釈は悪くない。 どっちかといえば直球勝負の部類に入る。 全体に弦楽器が良い音を出している。 演奏自体は熱い演奏であり、各楽器が一所懸命に音を出している感じがして、職人オーケストラのやっつけ仕事ではない。 しかし、ホルンの音色が何か違う。 第1楽章冒頭は妙に吹奏楽っぽくて明るいし、その後しばしば、elephant cry が過ぎる。 この分を減点して、星2つ。

総合評価: ★★

ネルソンズの演奏

レーベル:  DIRIGENT: DIR-1805 CD-R
演奏家:   Andris Nelsons / Boston SO
日時・場所: April 16, 2016, Boston
演奏時間:  total 87:14 ( 29:28 / 16:11 / 14:00 / 27:35 )
録音評:

全体にホワイトノイズがそれなりの大きさで乗っている。 解像度は悪くないし、鑑賞に耐えないほど酷いノイズではない。 FM放送のエアチェックではないかと思われるノイズが時々入る。特に最終楽章のコーダ付近で「ぼっ」という謎のノイズが繰り返し入り残念。

演奏評:

第1楽章は遅めの中で、時々ユニークな引っ張りがあり、これがツボにはまってなかなか良い。 適度に悪魔的な響きもある。 問題のベルも正しく普通のチューブラーベル。 この楽章は非常に出来がいいと思う。 第2楽章は、やや遅めのテンポでホルンのトレモロは一応吹ききっている。 中間部のテンポアップはほどほど。「ターータター」はごく普通のリズム。 しかし、より遅いという印象が強い。 第3楽章も遅めトランペットソロのところまでずーっとテンポを変えない。 トランペットソロでさらに減速して引っ張るのなら、それでもいいが、残念ながら普通より気持ち速めなので、前後が遅い分、えらく急いでいるように聞こえる。 この部分の思い入れがない感じ、割と音は綺麗なので惜しい。 最終楽章はそれなりに遅く、弦の音は豊潤。 ここでも独特の引っ張り方をする部分があり、割といい演奏だと思っていたが、コーダに入って一層魅力的となった。 このテンポの取り方は素晴らしい。 コーダだけなら数ある演奏の中でもトップクラスと言える。 全体としてみた場合、中の2つの楽章が遅くて締まらないこと、ホルンを含むブラスセクションがともすると硬い音になりすぎることなどが祟り、ノイズの分を不問に付しにくい。 星はやや辛いが2つとする。

総合評価:  ★★
     

ネトピルの演奏

レーベル:  OEHMS: OC1890
演奏家:   Tomas Netopil / Essen PO
日時・場所: April 10-13,2018,Philharmonie Essen,Alfried Krupp-Saal
演奏時間:  total 82:33 ( 27:09 / 16:01 / 13:09 / 26:14 )
録音評:

やや低音に強調感はあるが、ノイズはなく解像度も高い。 残響も適度であり、音の鮮度が良い。 好録音。

演奏評:

第1楽章はやや遅めでテンポ設定は良い感じ。 個々の楽器の音色が良く、低音が厚いのが良いバランスとなっている。  それほどアゴギーグは強くない分低音の厚みで押しているのが成功していると思う。ベルは通常のチューブラーベルではなく鐘を叩いているようだが、甲高い音ではない。まあまあの音色である。 総じてこの楽章には良い点がつけられる。 第2楽章は冒頭からやや遅めだが、それでもホルンのトレモロは吹けていない。というか、この楽章で、このオケのホルンは速いパッセージが吹けない事を露呈してしまっている。途中テンポアップするところから大分良くなるが、それまでは鈍重。例の「ターータター」は普通。続く第3楽章も冒頭から遅め。なおかつ、トランペットソロのところでは、ほとんど減速なしで、吹き方はそっけない。 そのあと、コーダに向かっては突然頑張りだして速くなり快速運転で終わる。前半がダメなので点数は高くできない。最終楽章は、それほどタメや引っ張りは多くはないが、分厚い弦で豊穣感をこれでもかと演出しており、これはこれでありかなと思う。ただし、最後までそれで押し切る感じなので、「死ぬように」は終われない。  第1楽章は非常に良い出来であり、最終楽章も及第点だが、中の2つの楽章がどうもいただけない。 星は2つまで。

総合評価:  ★★
     

ノイマンの演奏

レーベル:  SUPRAPHON: 50CO-2454-55
演奏家:   Vaclav Neumann / Czech PO
日時・場所: January 12-16,1982, Hause of Artists, Prague
演奏時間:  total 76:59 ( 25:11 / 15:00 / 13:25 / 23:17 )
録音評:

 ゲヴァントハウス管との録音に比べれば格段に良いが、まあまあと言ったところか。

演奏評:

 録音の良さが音の良さとなっている以上にチェコフィルの良さが出ていると思う。 第1楽章は標準的なテンポでほとんど無理なタメなどは見られない。 ホルンは良い音だし、弦もやわらかいが少々厚みに欠ける。 低音楽器群がやや弱いか。 ティンパニーの音がくぐもり加減。 ベルは普通のチューブラーベルだろう。 第2楽章は普通のテンポ。 ホルンのトレモロはやや怪しいが合格点。 総じてまあまあと言える。 第3楽章は、演奏時間を見るとそれほどでもないのだが、聴感上遅いと感じる。 弦を一音ずつ刻むように弾かせるためかもしれぬが、何か重ったるい。 トランペットソロはきれい。 最終楽章は冒頭を思いっきり引っ張るタイプの演奏。 その後は、むしろ少し速めとなる。 低弦がこの楽章は割と厚め。 途中、スッとテンポを落として停止してみせるという小技を使って見せ、これが結構、様になっている。 全体にオケの音の良さが魅力であり、悪くはないのだが、あともう一息という感じ。

総合評価:  ★★
レーベル:  CANYON: PCCL-00305
演奏家:   Vaclav Neumann / Czech PO
日時・場所: August 21-28,1995, Rudolfinum Dvorakova sin, Prague
演奏時間:  total 77:59 ( 26:12 / 15:01 / 13:04 / 23:42 )
録音評:

 ノイズは少ないが、残響がやや強すぎて、細部の聞き取りにくさを感じる部分がある。 それを除けば非常に良い録音である。

演奏評:

 第1楽章冒頭から音色の美しさに感動を覚える。 ほんとにいい音である。 弦もいいがホルンが神業的にいい音を出している。 テンポは標準から少し速めくらいだがちょうどいい感じ。 この楽章はほぼ理想に近い。 第2楽章も速く小気味よく、ホルンもちゃんとトレモロを吹いており、更に途中のテンポアップもしていて軽快そのもの。 ところが、後半一転してゆっくりとなり、それはそれで理解できなくはないのだがちょっと残念。 第3楽章は冒頭は遅め。 ちょっと重い感じだが、悪くはない途中テンポを動かしていて全体ではむしろ速めの演奏となっているが、あまり軽快ではない。 トランペットソロはきれい。 第4楽章はまた冒頭からいい音! 冒頭をちょっと引っ張り目にするが、速めの演奏である。 変に引っ張りすぎて重くなるよりいいと思う。 ただ、この楽章のホルンは今一。 なんで第1楽章の音を出してくれないんだよぉと言う感じ。 全体に小技が光る部分とはずしている部分はあるが得点は高いと思う。 第1楽章だけなら星3つあげてもいいが、通しで聴くと2つ半くらいか。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  BERLIN Classics: 0021872BC
演奏家:   Vaclav Neumann / Gewanthaus O
日時・場所: November 1967, Haus Auensee, Leipzig
演奏時間:  total 75:51 ( 24:48 / 15:21 / 13:10 / 22:32 )
録音評:

 録音年代を考えればまあまあか。 ノイズは気にならないが、音響バランスが少しおかしいようで、中高音よりのバランスになっている。

演奏評:

 全体に速めの演奏であるが、慌ただしい感じはなく、この辺りは指揮者の力量があるのだろう。 ただ、全体のトーンバランスが微妙に普通の演奏とは変わっていて、聞き慣れない旋律の動きが追えてびっくりしたりする。 少々弦の音がぎらつく所がある、また、オーボエの音がチャルメラっぽくてだらしない。 ホルンの音はあからさまにホルンソロとして登場するとき以外は何だか輪郭がはっきりせずぼやけている。 そして、トランペットが妙に派手で輝かしい音色である。 テンポ設定や、その揺さぶりなどは、わりとスタンダードであり、速めの中間楽章は私好みではあるが、全体の音色がどうもという感じ。

総合評価:  ★★

ネゼ=セガンの演奏

レーベル:   URC: URC0077/8 CD−R
演奏家:   Yannick Nezet=Seguin/ Rotterdam PO
日時・場所: September 28, 2009
演奏時間:  total 85:41 ( 30:40 / 15:29 / 13:03 / 26:29 )
録音評:

 残響はほどほどで解像度高くクリア。 しかし、最初から最後までシュルシュル、キュルキュルというノイズが入る。 大きな音ではないが、気にし始めると気になる。

演奏評:

 第1楽章冒頭から遅めだが緩くならない。 ゆったりと進みながらなおかつためや引っぱりもあって速度的メリハリはある。 随所にユニークな解釈がある。 弦の音がいいし、木管の音色もなかなか。ブラスは厚め。ティンパニーの音が凄みがある。 ベルは普通のチューブラーベルで音は控えめ。 終結部前のテンポの雄大さがすばらしい。 第2楽章は冒頭からやや速め。 ホルンのトレモロはちゃんと吹かれている。 途中のテンポアップもいい感じ。 その後、かなり大きくテンポを動かす。 時に荒々しいくらいにメリハリが利いている。 終わり近くでファゴットが出そびれて数小節吹き損なうという事故があり、惜しい。 第3楽章はほぼ標準的なテンポで始まる。 リズムがギシギシいう感じで分厚い音響。 ここで、今度はホルンのミスがある。 トランペットソロのところの減速幅は控えめ。 トランペットの音はメロウにすぎ、地上的。 その後細かくテンポを動かした後、ラストのアッチェルランドは限界近くまで突っ走る。 これが全く破綻せず見事である。 最終楽章は冒頭思いっきり引っ張った後、しばらく遅めのまま進む。 これが非常にユニークだが説得力がある。 弦が非常にいい音を出しているが、この楽章のホルンの音はいまいち美しくない。 バーンスタインばりに熱い部分もあり、なかなか魅力的。 全体を通しでみて、ライブならではの事故もあり、やや荒い演奏ではあるがユニークで魅力的なところも多く、評価はしたいところ。 ノイズが多く、本来は減点しなければならないが、少し甘くして減点しないことにする。

総合評価: ★★☆

ノリントンの演奏

レーベル:   haenssler: CD93.244
演奏家:   Roger Norrington / Stuttgart Radio SO
日時・場所: May 9, 2008, Liederhalle Stuttgart, Beethovensaal
演奏時間:  total 72:10 ( 26:02 / 14:06 / 12:38 / 19:24 )
録音評:

 ノイズはなく、残響も少なめで私好みの音質。 好録音である。

演奏評:

 ノリントン/SWRによるノンレガート奏法のマーラーでついにこの曲が出た。 はっきり言って弦、とりわけヴァイオリンの音に非常に違和感を感じる。 どう考えてもこの音質がこの曲に合うとは思えない。 しかし、それをのぞくとなかなかの名演である。 第1楽章のテンポの揺さぶりは見事だし、第2、第3楽章の速いテンポは、私の理想に近い。 最終楽章が異様に速いのは、この音質では引っ張れないからと納得がいく。 しかし、この音質は致命的である。 普通の音質だったらなあと残念なのだが、星2つ。

総合評価: ★★

ノットの演奏

レーベル:  Harvest Classics:HC06114 CD-R
演奏家:   Jonathan Nott / Bamberg SO
日時・場所: February 2, 2007, Joseph-Keilberth Saal, Bamberg
演奏時間:  total 80:00 ( 28:19 / 14:48 / 11:55 / 24:58 )
録音評:

 クリアではあるが残響が強め。 このためか、フォルテ以上で混濁し聞きづらくなる。 またフォルテッシモで一部サチる。

演奏評:

 演奏のテンポは前半の2楽章は標準的。 あまりテンポは揺さぶらない。 後半の2楽章は速めで、特に第3楽章はトランペットソロでも減速しない。 オケはうまいと思う。 ホルンの音はかなりいいし、第1楽章のベルはちゃんとチューブラベル。 まじめな演奏だと思う。 しかし、何か面白みがない。

総合評価:  ★★
レーベル:  TUDOR:7162
演奏家:   Jonathan Nott / Bamberg SO
日時・場所: September 15-19, 2008, Joseph-Keilberth Saal, Bamberg
演奏時間:  total 83:29 ( 29:46 / 15:38 / 12:47 / 25:18 )
録音評:

 クリアで残響も程よく低域のバランスも良い。 優秀録音。

演奏評:

 上記と同じメンバーだが1年半が経過し、この曲に慣れてきたのか、かなり良くなっている。 解釈の基本は同じだが、全体で演奏時間が3分のびており、よりじっくりと腰を据えている。 第1楽章は冒頭からゆっくりと進め、中間部も静々とした感じが良い。 ホルンが大変きれい。 ベルはチューブラーベルと明らかに違うが鐘のタイプにしては驚くほどピッチが正確。 第2楽章は冒頭から標準テンポだが、ホルンのトレモロは完璧。 全体に手堅く好演。 第3楽章は標準的な速さで始まり、トランペットソロでの減速は少なめ。 しかし、終曲へ向かってのアッチェルランドは見事。 最終楽章もなかなかのもの。 特に終曲のテンポダウン、息を引き取るまでの引っぱり加減がうまい。 全体を通してみると、手堅くレファレンスとしてお薦めの秀演と言える。 そのタイプの演奏の中では超Aクラス。 これは星2つ半差し上げる。

総合評価:  ★★☆

オールソンの演奏

レーベル:  MF: MF18
演奏家:    Robert Olson/ Mahler Fest O
日時・場所: January 15 and 16, 2005, Macky Auditorium, University of Colorado, Boulder, Colorado
演奏時間:  total 87:43 ( 29:22 / 17:15 / 13:11 / 27:55 )
録音評:

 録音は、現代のものにしては解像度が甘く、周波数帯域が狭い。 昔のアナログ録音の様な音である。 ノイズはなく鑑賞には差し支えない。

演奏評:

 オケのレベルはあまり高くない。 大事故はないものの、時々アンサンブルが乱れかかるし、ホルンの実力が低い。 音色的にもイマイチだが、速いパッセージが危うい。 オールソンの解釈には独特なところがあり、あまり他の指揮者がやらないところでひっぱることが何度かある。 後ろ2楽章が出来がよく、第3楽章が特に良い。 トランペットソロはうまいが、残念ながら地上的。 コーダに向かうアッチェルランドは、このオケでよくぞここまでというくらい激しい。 面白い演奏ではあるが、技術水準の低さは如何んともし難い。 ★は2つまで。

総合評価:  ★★

大植英次の演奏

レーベル:  EXTON: OVCL-00396
演奏家:   Eiji Oue / NDR PO
日時・場所: Jun 28, 2009, Suntory Hall, Tokyo
演奏時間:  total 96:26 ( 31:33 / 19:08 / 15:18 / 30:27 )
録音評:

 解像度よくノイズなし。残響もほどほど。好録音である。

演奏評:

 演奏時間をみていただければわかるとおり、屈指の超遅演である。 第1楽章冒頭から遅く、独特のためや引っぱりをみせながら、しなやかでチャーミングである。 ホルンがいい音を出していて涙ウルウルもの。 ティンパニ連打のあたりからの鬱々とした感じも良い。 タムタムがドーンというような独特な音だし、ベルもガーンというような変わった音。 音響バランスが微妙に変わっていて、時々細部で聞き慣れない音が聞こえる。 第2楽章も冒頭から遅め。 ホルンのトレモロは一応合格点。 中間部のテンポアップはあまり大きくはないが、熱く、リズムのメリハリは効いている。 その後の例のリズムは一般的なターータターではなく、ターーーッタタァとやっている。 第3楽章もはじめから遅い。 ずっと同じテンポで押して、トランペットソロのところで更にわずかにテンポを落とす。 このトランペットは良い音だが天上の音楽ではなく、無垢だが地上的。 この後も遅めのテンポで聴かせる。 最後はアッチェルランドはかけるが遅め。 最終楽章冒頭の引っぱりはほどほど。 低弦の厚みが心地良い。 ホルンソロの直前で一瞬タメを入れたりとテンポを自在に揺さぶりこれがキマッている。 遅めだが熱い演奏であり、クライマックスも思いっきり引っ張るが汗臭くない。 終曲はぐっと遅く、時々噛み締めるように立ち止まりながら、静かに息を引き取る。 本来、私はこのように遅い第2、第3楽章は好みではない。 しかし、この演奏は何か納得させられるものがある。 極めて異例だし、大甘かとも思うが、星三つ差し上げる。

総合評価:  ★★★
レーベル:  Antec Music: AM3736/37 CD-R
演奏家:   Eiji Oue / NDR PO
日時・場所: June 21,2009, NDR Landesfunkhaus Niedersachsen, Hannover
演奏時間:  total 100:44 (32:47/20:25/15:45/31:47)
録音評:

 音質はクリアで残響適度、解像度も良いのだが、第2楽章でパチッとかプチッというノイズが盛大に入る。

演奏評:

 上記と同じ演奏家の1週間前の演奏。 当然だが、解釈は基本的に同じ。 ただ、こちらの方が更に遅く、遅さの限界を越えてしまい、テンションが維持しきれなくなっているところがある。 演奏の出来は上記の方が上。 ノイズが気になることも含め、減点して星2つ半。

総合評価:  ★★☆

小沢征爾の演奏

レーベル:  PHILIPS: 426302-2
演奏家:   Seiji Ozawa / Boston SO
日時・場所: October 1989, Symphony Hall, Boston
演奏時間:  total 82:35 ( 27:29 / 15:57 / 13:07 / 26:02 )
録音評:

 ノイズ少なく、残響も適度。 もやつきもなくクリア。 良い録音である。

演奏評:

 齋藤記念管弦楽団との演奏に12年先立つ演奏だが、解釈の基本線は変わっていない。 やはり音がきれいである。 管楽器もまずまずと言える。 ボストンの音の良さが生きていると思う。 第1楽章は標準的なテンポで始まるがひっぱるとこは引っ張るので、全体としてやや長めの演奏。 好演である。 第2楽章はやや遅めであるが、重ったるくないのがいい。 第3楽章はやはり、当初快速演奏でトランペットソロの所から極端に速度を落とす。 そして、最終楽章で再び弦の音に酔いしれる。 小沢という指揮者に持っていた印象からするとむしろやや優等生すぎるかもしれないが、良い演奏である。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  Dream Music: SR-70493W-2 CD-R
演奏家:   Seiji Ozawa / Boston SO
日時・場所: April 20, 2002, Symphony Hall, Boston
演奏時間:  total 84:42 ( 27:10 / 16:11 / 13:24 / 27:57 )
録音評:

 ピアニシモの部分で微かにデジタルノイズのようなものが聞こえるが、ほとんど気にならない。 クリアで分解能良く、それでいて適度に残響があるいい音質。

演奏評:

 ヤフオクで入手したが、出所の極めて怪しげな音源である。 演奏は、小沢征爾のボストン響退任記念コンサートのもの。 つまり、それだけで何やらたっぷりと背負い込んでいるコンサートである。 まあ、バーンスタイン/ベルリンフィルに似たプラスα付き演奏と言えるか。 楽曲の解釈は他の演奏とほぼ同じである。 しかし、この日のボストン響の音は凄い。 ホルンは神業的な音を出してるし、ヴァイオリンの音がここまで憂いを帯びて魅力的なのは特筆物である。 そして、曲の息づかいのスケールの大きさ、しなやかさはどうだ。 小沢っていつからこんな大巨匠然とした演奏するようになったんか? だから、もう細かいことはいいやって感じ。 少々アンサンブルが乱れかかろうが、最後の最後のところで咳が止まらなくなるこまった客がいようが、そんなことよりも・・・・ まる、だ! この演奏がまっとうなルートから世に出ることを願って止まない。

総合評価:  ★★★
レーベル:  SONY: SRCR2725-6
演奏家:   Seiji Ozawa / Saito Kinen O
日時・場所: January 2-4, 2001, Tokyo Bunka Kaikan, Tokyo
演奏時間:  total 81:19 ( 26:49 / 16:12 / 13:14 / 25:04 )
録音評:

 クリアできれいであり、録音技術上生じるノイズはほとんどないが、マエストロの鼻息が異常に鮮明に記録されている。 第1楽章が特にひどく、フォルテが続いた後などは、ゼイゼイ息があがっているのが解り、心配になる。 正直な所、これは優秀録音の証と言うより、録音の傷と考えたくなる。

演奏評:

 まず、弦の音が良い。 これは特筆すべきだろう。 しかし、それに比べると管の音が物足りない。 事故らしい事故はない。 第1楽章は割とスタンダードな感じだが、上述の鼻息と、弦の音色の魅力とが交錯して何とも言い難いが、好演奏だとは思う。 第2楽章は遅めであるが、まあまあ聞ける方か、ホルンはトレモロもごまかさず健闘している。 第3楽章はかなり個性的であり、当初は快速演奏でトランペットソロの所から極端に速度を落とす。 その後の後半部分は結構テンポを揺すっている。 そして、最終楽章で再び弦の音色を堪能する。 これだけでも結構満足という感じ。 ホルンはうまいが音色がどうも違うと思う。 鼻息の分、星半分減点して星二つ。

総合評価:  ★★

パテルノストロの演奏

レーベル:  Red Sound: LC1937
演奏家:   Roberto Paternostro / Bundesjugendorchester
日時・場所: July 18, 2001, Toblach, Italy
演奏時間:  total 78:38 ( 27:18 / 15:40 / 12:13 / 23:27 )
録音評:

 録音はかなり良い。 ライヴなのだろうと思うが、会場騒音らしきものが全く拾われていないし、音響もスタジオっぽい。 残響は少なめだが聞きやすい音である。

演奏評:

 このディスクは、2001年に開かれたマーラー音楽週間のドキュメントらしい。 おそらく、そのハイライトがこの演奏なのだろうと思うが、ユースオーケストラを無名の指揮者が振っていると言うことを考えると驚異の演奏である。 まず、オケが非常にうまい。 また弦の音色が良い。 そして、この指揮者のことは全く知らないのだが、非凡なものを感じさせる。 第1楽章は遅め、妙にペシミスティックな響きがしており面白い。 テンポは遅めの中ではオーソドックスな方で変にいじり回さない。 各ソロ楽器もまあまあ。 ベルの音が妙に陰にこもっているのと、タムタムが地響きみたいで凄い。 第2楽章は初め遅めに始まるが中間部から速くキビキビしたものとなる。 ホルンはトレモロを少々誤摩化しているがまあまあ合格点。 この演奏で一番面白いのは第3楽章である。 初めからかなり速い演奏だが、途中からさらにアッチェルランドがかかり、次第に各奏者の速度限界にきてアンサンブルが乱れ始めている。 普通のプロフェッショナルな演奏なら絶対に起こらないことだろうが、ノリは極めて良くてスリリングな演奏になっており楽しい。 トランペットソロは音色に多少難があるが及第点。 ここでテンポが普通になりほっと一息と言う感じ。 最終楽章は弦がきれいである。 やや厚みに欠けるが一流オケとは使っている楽器が違うだろうから仕方あるまい。 途中までわりと速めだが、ホルンが出てくるあたりから、少しテンポを落としてゆったりと聞かせている。 ユースオーケストラならではの問題点もあるが、一流と言われるオーケストラのCDでこれに遠く及ばないものも多々あるように思う。

総合評価:  ★★

ペシェクの演奏

レーベル:  Virgin CLASSICS: 724356239524
演奏家:   Libor Pesek / Royal Liverpool PO
日時・場所: July 1990, Philharmonic Hall, Liverpool
演奏時間:  total 84:55 ( 29:03 / 16:01 / 14:02 / 25:39 )
録音評:

 音はクリアであり申し分ない。 ノイズも聞こえない。 解像度が高く、残響も適度である。

演奏評:

 秀演である。 奇をてらった感じはしないのに非常に個性的である。 特に、速度設定がかなりユニークである。 例えば、第1楽章冒頭からしばらくは、快速演奏の類かと思われるテンポでありながら、途中からゆったりじっくり型に速度を落とし、最終的には第1楽章が29分超と遅い部類になっていたり、第3楽章も速めで進めながら、トランペットソロのところから思いっきりテンポを落として見せたりする。 これが、説得力を持って聞こえるところにこの指揮者の非凡さを感じさせる。 ロイヤル・リバプールフィルもなかなか優秀なオケのようで、事故はない。 かなり私の好みには合うが、少々ホルンの音が硬いのと、弦の音響バランスがやや高音に寄りすぎていることのみマイナスか。 廉価盤が出回っているようであり、お勧めである。

総合評価:  ★★☆

ピオレの演奏

レーベル:  自主制作盤:
演奏家:   Marc Piollet/ Berlin Youth SO
日時・場所: February 7, 2000, Philharmonie, Berlin
演奏時間:  total 79:56 ( 28:06 / 15:50 / 13:16 / 22:44 )
録音評:

クリアで、残響適度で、解像度良く、響きのいいホール録音と思われる。 ただし、最終楽章で原盤の盤面の問題と思われるプチプチノイズがひどく、鑑賞の許容限界を超える。

演奏評:

 第1楽章冒頭はむしろ速めの演奏と思わせるくらい、要所はきびきびと進めながら、聴かせどころではそれなりにテンポをかえる。 ためや引っぱりはあまりない。 ベルは普通のチューブラーベルを控えめに叩いており、これがかえって新鮮。 弦は良い音であり、ホルンはやや硬めだが合格点。 第2楽章は標準より幾分遅めで始まる。ホルンのトレモロはちゃんと吹けている。 途中のテンポアップはきっちりしており、その後もテンポは動かす。 なかなか聴かせる。 第3楽章は冒頭から速めで小気味良く、トランペットソロの所で思いっきりテンポダウンする。 トランペットソロは2回目で吹き損ないあり残念。 その後はかなり良いし、最後のアッチェルランドも見事。 最終楽章冒頭はかなり引っ張るが、その後はずっと速めでクライマックスまで走る。 しかし、終局は一気にテンポを落とし、静謐ともいえる静かな死の音楽を展開している。 全体を通して指揮者の解釈はなかなか良いし、弦の音、特にピアニシモがすばらしく良い。ただ、ブラスセクションの傷が大きい。 また、最終楽章のもっとも出来のいいコーダにかけて噴飯もののノイズが入っている。 たまたまヤフオクで入手できたが、極めてレアな自主製作盤であり、苦労して手に入れるほどの物ではないが、ノイズ分は敢えて減点せず、トランペットソロの失態にも目をつぶる事にする。 星は2つ。

総合評価:  ★★

プレヴィンの演奏

レーベル:  En Larmes: ELS 01-63/4 CD-R
演奏家:   Andre Previn / Koeln RSO
日時・場所: March 8,2001
演奏時間:  total 79:27 ( 25:46 / 16:28 / 12:59 / 24:14 )
録音評:

 解像度はよく、CD−Rとしては優秀な方。 やや、残響が強いためもや付く部分もあるが、許容内だろう。

演奏評:

 プレヴィンという人の特徴なのか、結構オケを盛大に解放して鳴らす感じの演奏である。 第1楽章冒頭、みごとにホルンがひっくり返り、どうなることかと思わせるが、その後は立ち直り、終始健闘している。 弦は全曲を通じて魅力的な音を出しているが、ややコントラバスが目立つのが特徴か。 トランペットをはじめとする弱音器付のブラスの音がキチャナイのが少々気になる。 テンポは標準ないしやや速めだが、それなりに揺さぶる。 打楽器が結構活躍するが、タムタムの音はおどろおどろしくてマル。 ベルはチューブラーだと思うが余韻が妙に長い。 第2楽章は標準的なテンポで始まり、ホルンのトレモロは合格点。 中間でのテンポアップののち、後半、後になるほどテンポが遅くなるというかなり変わったスタイル。 低弦がゴリゴリ言うわ、ブラスが吠えるわで面白いが、ちょっとやりすぎの感もある。 第3楽章は速めで快速運転しており、トランペットソロのところで妥当と思えるテンポダウンを行っている。 このトランペットはなかなか良い音でありうまい。 曲芸的なアッチェルランドがないのがやや残念だが、それなりにテンポは動かしている。 最終楽章は、非常に良い出来である。 速めの演奏ながら、弦楽器の音が極めて魅力的でありホルンもおおむね良い音を出している。 クライマックスもバーンスタインばりに盛り上がりしかも泥臭くはない。 この楽章だけなら★三つでも良いくらいだが、ミスも何カ所かあるし、少し辛いが★2つとする。 

総合評価:  ★★

ラトルの演奏

レーベル:  EMI: 7243 5 56580 2 9
演奏家:   Simon Rattle / Vienna PO
日時・場所: December 4 &5,1993, Musikverein, Vien
演奏時間:  total 80:52 ( 27:47 / 15:27 / 12:55 / 24:43 )
録音評:

 いわゆるホールトーンと言う奴が前面に出た録音で、残響が割と長目のため、豊穣な音と言えなくもないが、細部の輪郭があいまいであり、時に低音楽器の音が聞き取りにくい。 ノイズはほとんどない。

演奏評:

 極めて個性的な演奏と言える。 最初からテンポを揺らしまくり、時にアンサンブルが崩壊しかかりながら何とかしのいでいる。 よくぞこんな極端な解釈にウィーンフィルが付いてきたものだと感心してしまう。 私の知る限りでは、ウィーンフィルの9番のディスクの中では、一番指揮者が自分の我を通した演奏ではないかと思う。 その意味で、やはりラトルはだだものではない。 第1楽章で問題のティンパニーのピッチだが、一応低めのチューニングにはなっていない。 ただ、なんだか音程が曖昧な所がある。 ホルンはこの演奏では健闘している。 他のオケならこのくらい当たり前だが、珍しくウィーン流ではない感じ。 第2楽章でも結構テンポは揺れる。 ホルンが目一杯速いパッセージに追随している。 第3楽章もテンポは快速から超スローまで行き来する。 トランペットソロは上出来。 そして、最終楽章は、ウィーンの弦を生かした歌わせる演奏ではある。 ただし、録音の加減で弦が前方から響いてくる感じとなり、弦の音に包み込まれる感じにはならない。 録音エンジニアのセンスの問題だが残念である。 全体に、非常に野心的かつ独特の荒々しさを秘めた演奏であり、ウィーンフィルも良くこれに応えていると思うが、いかんせんウィーンフィルの限界も見える。 是非ベルリンフィルでも同じことを試みてほしい。

総合評価:  ★★
レーベル:  Sun Joy Classics: SUCD-54-K CD-R
演奏家:   Simon Rattle / Berlin PO
日時・場所: August 25,2007, Philharmonie, Berlin
演奏時間:  total 85:12 ( 29:20 / 16:17 / 12:35 / 27:00)
録音評:

 CD-Rとしてはかなり良い。 音質も残響も程よい。 ただ、最終楽章で若干トラブルがあるのが惜しい。

演奏評:

 ウィーンフィルとの演奏から10年余経過し、演奏の解釈に変化が出てもおかしくはない訳だが、それにしても印象が変わってしまった。 演奏時間だけ見ると、それほど変わらないのだが、ひと言で言えば穏当な演奏になり、手堅くなって無茶はしないし、聴かせどころはちゃんとやってるのだが、何か若い頃の破天荒な、次はどうなるんだというようなワクワク感が減っている。 このため、オケが破綻している所はない。 これはベルリンがうまいからではなく、無理をさせなくなったためである。 第1楽章は幾分遅めで、昔ほどテンポは揺さぶらない。 概して弦や木管は良い音だし、低弦は例の独特の厚みが魅力的である。 しかし、ホルンがいただけない。 特に第2楽章で目立つが、明らかに技術水準が低く、速いパッセージは吹きこなすのがやっとで音は悪い。 第3楽章は通常テンポで始まるが、トランペットソロでの減速が少ないので、演奏時間としては速め。 このトランペットはうまいのだが何だか地上的な音色である。 後半のアッチェルランドもあまり無理をせず、おとなしい。 最終楽章はかなり良い。 弦が実に良い音だし、ホルンもあまりぼろを出さない。 演奏終了後、しばらく拍手が始まらないのはアバド以来の伝統になっているようだ。 ただ、最終楽章のクライマックスの前後で2回程、音が途切れかかるという録音上の事故があり、結構気になる。 演奏は星2つ半くらいは出せる所だが、ホルンが問題なのと、録音上の事故があるので星2つとしておく。

総合評価:  ★★
レーベル:  Sun Joy Classics: SUCD-60-K CD-R
演奏家:   Simon Rattle / Berlin PO
日時・場所: August 31,2007, Lucerne
演奏時間:  total 83:26 ( 28:28 / 15:53 / 12:31 / 26:44)
録音評:

 これも音質、残響はなかなか良いレベルだが、微かにチリチリ言うようなノイズがのっており、ピアニシモでやや気になる。

演奏評:

 上記と同じ演奏会ツアーで6日後の演奏。 解釈は同じと言ってよく、演奏しているメンバーも同じと考えられる。 この日の方がホルンの出来はましだが、それでもひどい。 やはり基本的に下手だと思う。 これも、星は2つ。

総合評価:  ★★
レーベル:  EMI: 50999 5 01228 2 0
演奏家:   Simon Rattle / Berlin PO
日時・場所: October 24-27,2007, Philharmonie, Berlin
演奏時間:  total 83:32 ( 28:56 / 15:57 / 12:37 / 26:02)
録音評:

 録音はまずまず。 これは、ライブではない模様。 残響もほどほどであり、当然録音の事故はない。

演奏評:

 上記2つの約2ヶ月後。 解釈上の変化はないように思う。 ホルンは別の奏者が吹いているようで、だいぶましだが、まだ十分に満足がいく水準にはない。 ライブではないので当然演奏の水準は高く、ミスらしいミスはない。 しかし、なんか体温が少し低い感じはする。 これは星2つ半としておく。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  DIRIGENT: DIR-0912 CD-R
演奏家:   Simon Rattle / Berlin PO
日時・場所: November 3, 2011, Berlin
演奏時間:  total 84:23 ( 28:42 / 16:18 / 12:48 / 26:35 )
録音評:

 残響適度、音質良好で解像度もまずまず。 優秀な録音と言える。

演奏評:

 一連のベルリンフィルとの演奏と基本的には同解釈。 全体に、やや遅めになっている。 弦、木管群は非常に良い音色を出しており、解釈も細部がチューンされた感じで非常に良い演奏である。 ただし、ホルンが、やはり難がある。 第2楽章で妙にパオパオいってるのと、最終楽章で音が硬すぎ、時にバリつく。 これは、星2つ半。

総合評価:  ★★☆

リンケヴィキウスの演奏

レーベル:  自主制作レーベル: 番号なし
演奏家:   Gintaras Rinkevicius / Lithuanian State SO
日時・場所: December 15, 2006, Vilnius Congress Concert Hall, Vilnius, Lietuva
演奏時間:  total 77:19 ( 26:16 / 15:36 / 13:05 / 22:22 )
録音評:

 残響はほどほどでクリア。 ノイズは無く、非常に良い音。

演奏評:

 全体に熱く、アゴギーグも強い演奏である。 第1楽章は冒頭からテンポを揺さぶりメリハリが強い。マエストロのうなり声が結構聞こえる。 ホルンが良い音を出しているが、ブラス全体としては、やや頑張りすぎてバリつく。 フルートがかすれたり、小さな事故はある。 ベルは金属板のをソフトスティックで叩いたような音でピッチは怪しい。 第2楽章は速めできびきびしているが、ためにホルンのトレモロは吹けていない。 弦が妙にギシギシした音である。 終結部に向かってかなり遅くなる。 第3楽章は私好みに速め。 トランペットソロでは久しぶりに天国的な演奏を聴いた。 その後の部分は自在にテンポを動かし最後のアッチェルランドは破綻ぎりぎりまで加速している。 最終楽章は、ややテンポは速めだが、音響的に厚く音楽的に熱い。バーンスタインなみだが、汗臭くはない。 マエストロの個性が色濃く、時に無茶をやって、オケが着いて行けなくなる寸前で一線は越えない感じ。 名人芸である。 こういうの、結構好きなので、やや甘いが星2つ半。

総合評価:  ★★☆

レーグナーの演奏

レーベル:  TOBU Recordings: YASCD1003-2
演奏家:   Heinz Roegner / Yomiuri Nippon SO
日時・場所: March 8, 1988, Bunkakaikan, Tokyo
演奏時間:  total 69:29 ( 21:45 / 14:38 / 13:03 / 20:03 )
録音評:

 残響ほどほど。 音質がややキン付くが、解像度は高く。 舞台上の騒音を克明に拾っている。

演奏評:

 第1楽章冒頭から速めのテンポ。 この部分でホルンが出損なってしばらく迷走するという大事故が起こっている。 弦は頑張っている感じだが音色がキンキンしがち。 これは、録音のせいだと思う。 しかし、管楽器の音色はどれも今ひとつ。 速めのテンポの中でわずかに引っぱりやためもあるものの、直球勝負の熱っぽい演奏と言える。 ベルは普通のチューブラベル。 ただ、リハーサル不足なのかホルンは他にもいくつか吹き損なうし、クラリネットも一瞬出遅れる所がある。 第2楽章は標準くらいのテンポで中間部のテンポアップも幅は小さい。 ホルンのトレモロは健闘してはいるものの合格の一歩手前。 第3楽章は冒頭重いっきり遅く、間もなく普通に遅めのテンポで進む。 トランペットソロのところの減速は少なめ。 トランペットソロの音は何とか合格点。 その後の部分は熱い。 最後のアッチェルランドは無理せず無難な範囲。 最終楽章冒頭は普通に引っ張るが、その後はやや速めのテンポ。 弦は厚みはそこそこあるが、何かざらつく。 全体に速めの演奏だが駆け足な感じはなく、熱い。 レーグナーの解釈には説得力があるのだが、いかんせんこの日のオケの出来が悪く、実力以上にミスが目立つようである。 ただ、何か捨てがたいところがあるので、★は2つとしておく。

総合評価:  ★★

ロスバウトの演奏

レーベル:  ARKADIA: CDGI747.1
Karna Musik: KA-317M
ANDROMEDA: ANDRCD9033
演奏家:   Hans Rosbaud / SWR SO
日時・場所: January 7, 1954, Baden-Baden
演奏時間:  total 74:44 ( 23:12 / 16:23 / 13:29 / 21:38 )
録音評:

 ARKADIA: モノラルであり、テープヒスもはっきりしており、いささか時代を感じさせる録音であるが、細部が聞き取れないということもなく、十分に鑑賞に耐えうるレベルである。
ANDROMEDA: リマスタリングしたとのことだが、あまり音は良くない。 テープヒスのようなノイズが減っているが、明らかにフィルターをかけたせいで、音の鮮度は下がっている。

演奏評:

 第1楽章冒頭こそ現代の標準的テンポだと思うが、まもなくアッチェルランドして、その後は速めのテンポの中で更に速いところと遅いところを行き来する。 大きなダイナミズムというか、エネルギーを感じさせる、ともすると荒々しい演奏である。 この曲のこういう演奏は極めて珍しいが、妙に惹きつけられる魅力がある。 第2楽章ははじめ、標準的からやや遅めのテンポでホルンソロに無理させず、トレモロをちゃんと吹かせている。 その後、中間のテンポアップのところで期待通りかなり速くなる。 その後は、ひとしきり嵐が通った後、牧歌的にゆったりしたテンポに戻り、細部に優雅さを漂わせる。 好みの問題はともかくもうまいと思う。 第3楽章は私好みの快速運転。 トランペットソロのところでも極端にはテンポを落とさないスタイル。 ただ、このトランペットは何となくたどたどしい。 最終楽章は、冒頭で引っ張ったあとは、速めの演奏。 最速の部類に入るが、そんなに慌ただしい感じはなく、結構熱い演奏となっているし、ちゃんと死ぬように終わっている。 少々速めだが名演だとは思う。 ただし、録音が古いことも加味し★は2つ止まりとする。

追記)当初、ANDROMEDAと他の2つは別演奏と考えていたが、今回、ANDROMEDAを聞いてみて、同一演奏と考えるに至った。よって統合するが、印象は変わらない。

総合評価:  ★★

ルニクルズの演奏

レーベル:  DIRIGENT: DIR-1489 CD-R
演奏家:   Donald Runnicles /BBC Scottish SO
日時・場所: April 24, 2014, Glasgow
演奏時間:  total 80:16 ( 26:09 / 15:45 / 13:24 / 24:58 )
録音評:

 全体にホワイトノイズ系のノイズが多く、音の鮮明度も今ひとつ悪い。 エアチェック音源なのか、時々「ブー」というノイズが入る。 20世紀の録音でも普通はもっとまし。

演奏評:

 第1楽章冒頭から割と標準的なテンポでこの楽章はあまりテンポを動かさない。 開始間もない部分で、ややアンサンブルがみだれかかるが大事に至らず、その後は大きな傷はないと思う。 録音が悪いので確信はないが、割と個々の楽器はいい音を出しているのではないかと思う。 ベルは普通のチューブラーベルで私好み。 解釈は奇をてらわず手堅い感じだが、中間部の陰鬱さは凄みがある。 第2楽章は標準的なテンポでホルンのトレモロは、まあまあちゃんと吹けている。 その後のテンポアップは快適。 この楽章は比較的テンポを動かしているが、流れはスムーズで自然である。 例のリズムは普通に「タータター」とやっている。 第3楽章は標準ないしやや遅めで始まりテンポは動かさない。 トランペットソロのところでも極端にはテンポを落とさないスタイル。 トランペットは悪くない出来だが音色は地上的。 その後のコーダに向かってのテンポアップは破綻しない程度で無難。 最終楽章は、冒頭であまり引っ張らず、テンポは標準的。 弦の音は美音だが分厚い感じではない。 演奏全体としては熱いのではなく暖かい演奏と言えるだろう。 最後は音量を絞ってしつこく引っ張るなんてことはしない。 嫌いな演奏ではないが、もう少し個性が欲しい感じはある。 録音が悪い分、本当は減点しなければならないが、まあ星は2つか。

総合評価:  ★★

サロネンの演奏

レーベル:  DIRIGENT: DIR-0268 CD-R
演奏家:   Esa-Pekka Salonen / Philharmonia O
日時・場所: March 23,2009, London
演奏時間:  total 77:10 ( 25:38 / 15:12 / 12:48 / 23:32 )
録音評:

 残響はほどほどであり、解像度は最新の録音にしてはたいしたことない。 時々プチッというノイズが入る。

演奏評:

 第1楽章冒頭からやや速めだが、引っ張るところは引っ張る。 ホルンが1カ所ひっくり返ってしまうところがあり残念。 細部のバランスに独特なところがあり、面白い。 中間部の例の寂寞としたところで、遅くなるだけでなく完全に止まるという荒技をやっている。 第2楽章は冒頭は標準的な速さ。 ファゴットが独特のはねるような刻み音形を出していてユニーク。 中間部のテンポアップの幅は大きく、以後は私好みの高速運転。 第3楽章は標準的な速さ。 弦のリズムの刻みがはっきりしている。 トランペットソロのところのテンポダウンは通常レベル。 このトランペットはうまいのだが、妙に音が艶っぽいため天国的にならない。 これに続く部分は結構熱く盛り上がるが、最後のアッチェルランドは割と普通で無難。最終楽章は、冒頭少し長めに引っ張る。 弦が中低音の厚い良い音を出している。 しかし全体にあまり引っ張らず、あっさりと進行。 それでも最後はきっちり死ぬように終わる。 終曲部で、再び完全なる静止をやってのける。 全体にユニークな表現も多く、なかなか楽しめるが、まだ未完成である。 ★は2つ。

総合評価:  ★★
レーベル:  signum classics: SIGCD188
演奏家:   Esa-Pekka Salonen / Philharmonia O
日時・場所: March 22,2009, Royal Festival Hall, London
演奏時間:  total 77:43 ( 25:44 / 15:10 / 12:46 / 24:03 )
録音評:

 ノイズはなく、歪みっぽさもないが、ホール自体の残響のせいで低音部が厚いが解像度が下がっている。 まずまずではある。

演奏評:

 上記の1日前のコンサートのライヴ。 解釈は同じだが、こっちの方はミスがなく、より穏当な感じだがバランスは良い。 特に、第2楽章後半の出来が素晴らしいし、第3楽章終結部もこっちの方が良い。 こっちはあと一息で★3つというレベル。

総合評価:  ★★☆

ザンデルリンクの演奏

レーベル:  En Larmes: ELS 01-147 CD-R
演奏家:   Kurt Sanderling / NDR SO
日時・場所: December 7,1987, Humburg
演奏時間:  total 79:16 ( 25:32 / 16:40 / 12:12 / 24:52 )
録音評:

 テープヒスもなく、解像度も高い。 残響も適度である。 当時の音源を扱ったCD-Rとしては、かなりいい録音だと思う。

演奏評:

 第1楽章は至極標準的なテンポであり、後にこのオケがエッシェンバッハに無茶な遅いテンポを強いられているときとは別物ののびのびした演奏である。 各楽器の音色はまあまあ満足できるレベル。 やや、ブラスがばりつくところがあるか。 ベルは、チューブラーベルだと思うが、妙に響きが良い。 第2楽章冒頭は標準的なテンポ。 ホルンのトレモロはちゃんと吹けている。 中間部のテンポアップの幅が狭く、あまり速くならない。 しかし、スタッカートを強調する跳ねるような演奏になっていて面白い。 その後、後半部はフレーズを自在に伸び縮みさせ、あるいは引っ張るため、時間はやや長めとなっている。 こういうのなら長めになっても許せる。 第3楽章は標準ないしやや遅め位の演奏。 重ったるくはないが、軽快とも言い難い。 ところが、トランペットソロに入る直前で、演奏上のカットではなく編集ミスと思われる形で何分ぶんかとんでしまっている。 トランペットソロのところでは、もともとのテンポ以上にはあまり遅くならないが、この編集上の欠落のせいで全体の時間は短くなっている。 最終楽章は、標準からやや速めくらいで始まり、分厚くはないが良い音色の弦を堪能できる。 中間あたりで、さらにぐっとテンポを落としているところがあり、これがなかなか良い。 ザンデルリンクのものの中でも良い演奏に入ると思うが、それだけに第3楽章に欠落箇所があるのが痛い。

総合評価:  ★★
レーベル:  VIBRATO: 2-VLL119 CD-R
演奏家:   Kurt Sanderling / London PO
日時・場所: February 18, 1990, London
演奏時間:  total 80:53 ( 26:40 / 16:50 / 13:02 / 24:21 )
録音評:

 テープヒスは多いが、解像度は高く、音場の広がりは見事。

演奏評:

 第1楽章のテンポ設定は標準的で、手堅い。 音響バランスも良く、弦の音色もまずまず、管楽器がきれい。 あまりテンポは揺さぶらない。 もう少し悪魔的なところがあってもいいかと思うが、標準テンポの名演と言える。 第2楽章は、遅めで始まる。 トレモロ担当のホルンの音がややけたたましいが、ちゃんと吹きこなしてはいる。 中間部でテンポアップした後から、テンポを縦横に揺さぶるようになり、時にはっとさせる見栄を切る。 非常にユニークである。  第3楽章は、妙に重い。 実際の演奏時間以上に遅く感じる。 トランペットソロのところで、あまりテンポを落とさないので、演奏時間がむしろ短くなっているが、全体の印象は遅めである。 この、第2、第3楽章ではややブラスが吠えすぎる傾向がある。 最終楽章は、ちょっと薄口な感じはするが、まあまあ標準的なところか。 全体的に見て、録音のせいもあるのだろうが、音響バランスが普通と違い、低音管楽器が目立つところが多いように思う。

総合評価:  ★★
レーベル:  BBC Radio Classics: 15656 91562
演奏家:   Kurt Sanderling / BBC PO
日時・場所: July 17,1982, BBC Studio 7, Manchester
演奏時間:  total 78:01 ( 25:59 / 15:39 / 12:37 / 23:28 )
録音評:

 音がやや遠くから聞こえる感じである。 テープヒスがはっきり聞こえるし、ややキンつく感じはあるが、まあまあ許容内。

演奏評:

 某評論家がこの曲のイチオシにあげたCD。 確かに、ザンデルリンクのCDの中では1、2を争うレベルであるが、オケの限界も見え隠れする。 第1楽章冒頭は通常テンポで入り、間もなく少し速めのテンポをとって、小気味良く適度な緊張感をも持った演奏となる。 当初から弦の響きがよく、ホルンの音色も良い。 テンポはそれなりに動くが自然な流れに乗っており、時に適度に悪魔的。 ベルはチューブラーベルだと思うが響きがいい。 第2楽章は標準からやや速めくらいのテンポで始まる。 ホルンのトレモロが見事である。 中間部のテンポアップも程よく、そのあと、後半はむしろ遅めでたっぷり聴かせる演奏となる。 第3楽章は標準的なテンポで始まり、トランペットソロに至ってもほとんどテンポを落とさない。 この、トランペットに難があり、結構ミスが目立つ。 終曲に向かってのアッチェルランドも無理はせず、やや物足りない感じがする。 最終楽章は弦の音の良さが魅力的であり、ホルンもまあまあの出来。 やや速めのテンポであまり揺さぶらないが、適度な緊張感があり好演と言える。 第1楽章だけなら★3つ級。 第3楽章でトランペットが盛大にコケてしまったので★2つと1/4といったところだが、おまけして2つ半。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  ERATO: 2292-45816-2
演奏家:   Kurt Sanderling / Philharmonia O
日時・場所: January 14 & 15,1992, Watford Town Hall, Angleterre
演奏時間:  total 82:16 ( 27:39 / 17:09 / 13:02 / 24:26 )
録音評:

 かなり良好な方と言える。 奥行きがちゃんと判るということは、マルチマイクのミックスダウンによる疑似ステレオではないのだろう。 ノイズもほとんど無い。 但し、音量が小さめなため通常よりかなりボリュームを上げて聴く必要がある。

演奏評:

 第1楽章はかなり魅力的である。 ホルンの音色が私の好みから少しずれるものの、漂うような感じがうまい。 全体のテンポ設定も程良く、これはなかなかと期待すると、第2楽章のスローテンポでだれる。 第3楽章も実際の演奏時間以上に長く感じる。 そして下がってしまったテンションがそのままでさらっと終楽章が終わってしまう感じ。 何だか惜しい演奏である。 弦の厚みが今ひとつなのもマイナスポイントか。 第1楽章の静かな感じは捨てがたいものがあるのだが。

総合評価:  ★★
レーベル:  Deutsche Schallplatten: TKCC-15107
演奏家:   Kurt Sanderling / Berlin SO
日時・場所: February & March 1979, Jesus-Christ Church, Berlin
演奏時間:  total 80:04 ( 27:24 / 16:37 / 12:45 / 23:18 )
録音評:

 デジタル初期の頃のマスタリングのためか、解像度は悪くないとはいえ、何かよけいな附帯音がまとわりつく感じでうるさく音に潤いが足りない。 このため、弦の音を楽しめない。

演奏評:

 ザンデルリンクの9番としては一番古いものか。 解釈の基本は後のものとあまりり変わらないように思うが、指揮者が若い分エネルギー感があり、第3楽章などはきびきびして一番魅力的だと思う。 しかし、何分にも録音の問題で音に難があるため聴き疲れする。 演奏そのものは悪くないと思うのだが。

総合評価:  ★★
レーベル:  ETERNITIES: ETCD-419/20-S CD-R
演奏家:   Kurt Sanderling / Suisse Romande O
日時・場所: May 19,1989, Geneve
演奏時間:  total 87:00 ( 28:14 / 17:51 / 13:17 / 27:38 )
録音評:

解像度はそこそこであり、残響は適度だが、終始それなりに大きい音量のホワイトノイズが聞こえる。 気にし始めると気になる量。

演奏評:

 演奏の話に入る前にひとつ重要な問題! 第3楽章に致命的なカットがある。 最初これに気づいた瞬間に怒りのあまり、あらゆる論評を止めて星ひとつで終わりにしようかと思った。 しかし、冷静になってみるとカットの部分以外はひどい演奏ではないので、とりあえず評価はしてみることにした。 第1楽章はオーソドックスなテンポであり、押さえるべきところは抑えた手堅い演奏。 アゴギーグは強くないが、悪くないなと。 ベルはチューブラーベルだが、響きがずいぶん明るい。 第2楽章は遅い。 ホルントレモロはなんとか吹き切ったというレベル。 冒頭から、標準の中の遅目くらいの演奏だが、中間部でテンポアップする部分以後が遅く、その後、遅い中でけっこうテンポを動かす。 かなりユニークな演奏である。 問題の第3楽章は、後に回すとして、最終楽章は標準的なテンポで豊穣な弦に浸れる演奏。各楽器の音色もまずまずだし、コーダもちゃんと死ぬように終わっている。
 さて、第3楽章だが、冒頭から標準の中で遅めのテンポを採用しているが、何かもたつく感じ。 それでも許容内のなかで、中間部のトランペットソロに向かって盛り上がっていく途中、何小節分かすっ飛ばして突然トランペットソロが始まるのである。 極めて強い違和感があるカット。 この曲を全く知らない人でもそれと気がつく。 トランペットソロそのものは綺麗な音だが地上的。その後の部分も遅めで、アッチェルランドでも無理しないで終わっている。
 しかし、何だってこんな異常なカットがあるのか? ザンデルリンク自身がこんなカットを認めたとはどうも考えにくい。 で、何度か聞きなおしてみると、巧妙な加工で分かりにくいが、どうやらデジタル的に切り張りをしたようである。ホワイトノイズの乗り方からみて、元々の音源はアナログテープだったと思われる。とすれば、テープの物理的なトラブルで再生不能な部分が出来てしまい、それを切り張りしたのではないかと。 ならば、マエストロに責任はない。 しかし、そんなもの売るなよ!というのが正直な気持ち。
本来の演奏は星2つ半くらいかなと思うが、事故の大きさがかなり深刻なため、総合評価は星1つ半とする。

総合評価:  ★☆

サラステの演奏

レーベル:  DIRIGENT: DIR-0488 CD-R
演奏家:   Jukka-Pekka Saraste / West German Radio SO
日時・場所: November 6,2009, Koeln
演奏時間:  total 81:48 ( 27:12 / 16:12 / 13:27 / 24:57 )
録音評:

 解像度良く、残響も適度で細部の見晴らしも良い。 しかし、かすかだがキーンというノイズが常時聞こえており、更に無音部分ではハムが載っていることも分かる。 このノイズが結構気になる。

演奏評:

 第1楽章冒頭は標準ないしやや速めだが、途中結構引っ張ったりして気持ち長めの演奏となっている。 弦の音色も良い。 ホルンが問題で巧いのか下手なのか良くわからない。 ホレボレする音がしたと思うと、次の瞬間ヘロヘロした情けない音もしている。 第2楽章は遅め。 ホルンはヘロヘロと、しかしちゃんとトレモロを吹いている。 途中のテンポアップの幅は大きく、良い感じ。 第3楽章は私好みに速め。 トランペットソロは実に不思議な音色である。 はかないというか、細い音。 天国的ではないが、この世のものでもないような音である。 アッチェルランドは程々で無茶はしていない。 そして、最終楽章が凄い。 テンポの揺らし方が独特であり弦の音が良い。 この楽章はホルンも見事な音を出している。 この楽章だけなら星3つもの。 全体を通しても星2つ半あげてもいいのだが、ノイズが気になる分減点する。

総合評価:  ★★
レーベル:  Profil: PH10035
演奏家:   Jukka-Pekka Saraste / West German Radio SO
日時・場所: December 6-7,2009, Koeln
演奏時間:  total 79:49 ( 26:20 / 15:57 / 13:11 / 24:16 )
録音評:

 ノイズなし、やや残響があるなとは感じるが、解像度を落とすほどではなく良好である。

演奏評:

 上記と同じメンバーで約1ヶ月後の演奏。 聴いた印象はだいぶ変わっている。 全体に巧くなっているが、無理しなくもなっている。 良い演奏だが、星3つ付けたくなるほど際立ったところが無い。 しかし、この曲を最初に聴く人に勧めるなら申し分無いと思う。 星は2つ半。

総合評価:  ★★☆

シェルヒェンの演奏

レーベル:  FIC: ANC42
演奏家:   Hermann Scherchen/ Vienna SO
日時・場所: June 19, 1950
演奏時間:  total 69:04 ( 21:08 / 15:57 / 11:57 / 20:02 )
録音評:

 モノラルで1950年という時代を考えたらまずまずといえる。 最終楽章など、外を通る車の音まで拾っている。 テープヒスもそれほどひどくないが、ダイナミックレンジには当然限界がある。

演奏評:

 極めて個性の強い演奏と言える。 両端の楽章に端的に表れているが、速いと言う点では空前の演奏である。 しかし、単に速いばかりでなく極端なほどまでにテンポを揺さぶっている。 ために、時々弦が付いて行けなくなって崩壊しかかる所がある。 極めてシェルヒェン的な怒濤の演奏と言えるだろう。 第1楽章は、そんなに急いで何処へ行くという感じもするが、テンポを揺すぶるので、時にわずかに続く遅めの部分が極めて魅力的に光る。 録音がたいしたことないので個々の楽器の音色を云々しても始まらないのだが、チューブラーベルの音が妙に高く長く響いている。 あるいは特殊な楽器なり叩き方なりを使っているのかもしれない。 第2楽章もホルンが技術的限界に挑戦させられている。 第3楽章も極めて速いのだが、トランペットソロの部分ではぐっとテンポを落とし、聞かせる所は聞かせている。 ここまでテンポが速いので、最終楽章もとてつもなく速いのにそれほどと感じなくなっている。 全くとんでもない演奏であるが、妙にオーラを放っており、はまってしまったら抜け出せない人もいると思う。 録音の悪い分を差し引いて星二つ。

総合評価:  ★★
レーベル:  Disco Archiva: 096
演奏家:   Hermann Scherchen/ BBC SO
日時・場所: 1952
演奏時間:  total xxxx ( 19:09 / xxxx / 11:40 / xxxx )
録音評:

 アナログディスクが元になっているのは明らかで盛大にスクラッチノイズが聞こえる。 しかし、その向こうで流れている音は歪みっぽくないので、SPではなくLP原盤かもしれない。 細部が聞き取れないレベルの録音ではない。

演奏評:

 上記よりも更に極端な演奏。 第1と第3楽章しかないのが残念だが、上記を凌ぐところがある。 何しろノイズが激しいが、星2つはあげたいと思う。

総合評価:  ★★

シェンヴァントの演奏

レーベル:  CHALLENGE CLASSICS: CC72636
演奏家:   Michael Schonwandt / Danish National SO
日時・場所: January 5 and 7,2012, Koncerthuset, DR
演奏時間:  total 80:08 (27:17/15:11/13:08/24:37)
録音評:

 ノイズはなく、残響も適度。 解像度はそこそこである。 低域がやや強く中低域がやや薄いという音響バランス。

演奏評:

 第1楽章冒頭、ほどほどゆっくりのテンポで始まり、しばらくこのテンポが維持されているので、こういう演奏なのかと思ったら、その後かなりテンポを動かしてメリハリをつけるように変化した。個々の楽器はそれなりにうまく、とりわけホルンが良い。ベルは明らかにチューブラーベルとは違い、音程が曖昧だが、何を叩いてるのかいまいちよくわからない。しかし、この楽章はかなり好き。 第2楽章は冒頭からファゴットの吹き方が素晴らしい。 テンポは標準よりやや速めで私好み。ホルンのトレモロは吹けているが音はベストではない。中間部のテンポアップは思いっきり大きめ。弦がエネルギッシュに動き出し、活力に満ちている。この後テンポは頻繁に動くが、見事な出来である。ノリも良い。 第3楽章冒頭のテンポは標準。トランペットソロ登場までほとんどテンポは動かさない。 トランペットソロは3回吹くうちにだんだん音色は明るくなっていくが、天上界へ昇華していく感じではない。ここでのテンポダウンはそれなりにある。1回目と2回目の間で更にテンポダウンするのがユニーク。この後の盛り上がりは大きめ。このあと、かなりテンポを動かし、コーダに向かってアッチェルランドはかなりかかる方で、おそらくこのオケの限界直前まで走るが、破綻する手前で我慢している。最終楽章冒頭の引っぱりは下品にならない程度で、やや控えめ。弦は穏やかな中低域中心のバランスで心地よい音である。この楽章のホルンの音は極めて良い。所々テンポの変更のポイントが通常と違うところにあり、これがなかなか良い。クライマックスも下品にならないように抑制が利いており、さりとて欲求不満にはならない。良いバランス感覚である。コーダに向かって減衰幅の大きいデクレッシェントを効果的に使っており、これもユニーク。全体としてみて、これは名演である、強いて言えば第3楽章のトランペットが物足りないが、★3つ差し上げる。

総合評価:  ★★★

シュワルツの演奏

レーベル:  ARTEK: AR-0041-2
演奏家:   Gerard Schwarz / Royal Liverpool PO
日時・場所: June 1-3,2006, Philharmonic Hall, Liverpool
演奏時間:  total 81:16 (28:21/15:50/12:39/24:26)
録音評:

 ノイズはなく、解像度もまずまず。 残響は低音部でやや強く、そのためやや低音がかぶり気味だが、鑑賞には差し支えない。

演奏評:

 全体に速度的メリハリがあり、弦も木管もホルンも良い音である。 第一楽章冒頭は標準的なテンポで始まるが途中、独特の引っ張り方をする。 中間部の陰影も強くなかなか聴かせる。 ベルは普通のチューブラーベルだと思う。 第2楽章は標準的な速さで始まり、一応ホルンのトレモロはちゃんと吹いている。 中間部のテンポアップは大きく、弾むように飛んでゆく感じである。 第3楽章はまずまずの速めのテンポで、トランペットソロでもテンポの落とし方はまずまず無難なところ。 そこそこうまいとは思うが、天国の高みには達していない。 その後は結構テンポを揺さぶり、最後のアチェルランドも速い方だが、極端なところまでは行かない。 最終楽章は弦が実に良い音に終始し豊穣で素晴らしい。 コーダではピアニッシモまでは音量を絞り込まない。 割と好きな演奏であり、音も魅力的なので星は2つ半。

総合評価:  ★★☆

セーゲルシュタムの演奏

レーベル:  CHANDOS: CHAN9057-59
演奏家:   Leif Segerstam / Danish National RSO
日時・場所: September 23-25, 1991,
Danish Radio Concert Hall, Copenhagen
演奏時間:  total 90:52 ( 31:29 / 17:37 / 14:49 / 26:57 )
録音評:

 ノイズはなくクリア。 やや硬質ではあるが悪くない音。 マルチマイクではなく、きっちり奥行きが出ている。

演奏評:

 遅め、というかノロめの演奏。 速度的なメリハリが小さく終始遅めで第3楽章まで進む。 終楽章だけ、冒頭は引っ張るものの、あとは何故か通常の速度。 第1楽章は冒頭から10分経過するあたりまでずっと等速度で、そのあと、ゆさぶりはあるものの、遅めで終始する。 重いというより、ゆるいという感じ。 第2楽章も遅い。 ただし、のそのそではなく静々という感じである。 もちろんホルンソロは合格。 第3楽章も、遅めで始まって、トランペットソロのところで更にどーんと遅くなる。 それなりに盛り上がりはあるのだが、熱くならない。 終楽章は通常速度でわりとあっさりしている。 全体に、管楽器は健闘しているが、弦の音色に潤いがない。 中低域、つまりチェロとヴィオラのパートが弱いように思う。 変わった演奏ではあるのだが、アトラクティヴとなるに至らずというところか。

総合評価:  ★★

シノーポリの演奏

レーベル:  DGG: 445817-2
演奏家:   Giuseppe Sinopoli / Philharmonia O
日時・場所: December 1993, All Saints Church, London
演奏時間:  total 82:31 ( 28:09 / 15:12 / 13:16 / 25:54 )
録音評:

 ノイズはほとんどなく、残響もほどほど。 しかし、エンジニアのセンスか、少々キンつく。

演奏評:

 第1楽章冒頭部のテンポは標準的。 弦はそこそこ豊かな音を出している。 タムタムが初めて登場するあたりからテンポを揺すり始めるが揺れ幅は小さい。 この楽章ではブラスが結構咆哮し、なかなか悪魔的である。 二度目にタムタムが登場するあたりからテンポをかなり落として音をしっかりと強調する。 妙な凄味がある。 概して熱い。 5番を聞いて持っていたシノーポリのイメージとはだいぶ違う濃い演奏である。 ベルはチューブラーベルではないようだがいい音である。 終結部近くでホルンと掛け合いをする際にフルートのブレスが頻回に聞き取れてしまうのが少々難。 最後はかなりゆっくり終わる。 第2楽章は標準的なテンポで始まるがホルンが怪しい。 トレモロはちゃんと吹き切れていないようである。 楽員のノリは悪い感じはないし、中間部ではちゃんとテンポアップするのだが、音響的に分厚すぎるために、速度の割に重い。 軽やかさがなく、重戦車が高速道路を走っているようだ。 ワルツしてない。 特に後半この傾向が目立つ。 第3楽章のテンポは標準ないし速めのはずだが、聞いた感じはそうでもない。 やはり、分厚いため重いのだ。 トランペットが出てくるところはわざとらしさが出ない程度に粘っている。 この音色は素晴らしい。 名人芸と言える。 最終楽章は冒頭でそれなりに引っ張った後は標準的なテンポ。 このオケとしては、弦は健闘してかなり艶っぽいが、それでもやや低弦が弱い感じがする。ホルンソロはまあまあの音色。 しかし、後半に入り、弦のピアニシモがピアノにしかならない。 もっと煙れるがごとき風情が欲しい。 全曲を通じて感じることだがエネルギッシュかつ悪魔的な魅力はあるのだが、繊細さに欠ける。 星2つ止まり。

総合評価:  ★★
レーベル:  Profil: PH07004
演奏家:   Giuseppe Sinopoli / Dresden State Opera O
日時・場所: April 6, 1997, Semperoper, Dresden
演奏時間:  total 93:31 ( 32:57 / 17:00 / 14:15 / 29:19 )
録音評:

 クリアでノイズはない。 残響は少し長いが嫌らしくなく、この演奏ではプラスに働いているように思う。

演奏評:

 上記よりわずか4年後の演奏だが驚く程変わっている。 演奏時間からして10分も長くなっているのはただ事ではないが、極めてユニークな演奏であり、それがちゃんと説得力を持っている。 フレージングや強弱、引っぱりや粘りなど、各楽章とも独特のシノーポリ流が顔を出し、非常に面白い。 これは、シノーポリの解釈というよりシノーポリ改訂版と言いたくなる所もある。 異端の演奏であり賛否が分かれる所だが、私はこういうのも結構好きである。 オケの音もなかなかよろしい。 星2つ半差し上げる。

総合評価:  ★★☆

スラトコフスキーの演奏

レーベル: MELODIA: MEL CD10 02475/6-7
演奏家:  Alexander Sladkovsky / Tatarstan National SO
日時・場所: 2016
演奏時間:  total 81:17 ( 27:17 / 15:33 / 13:06 / 25:19 )
録音評:

はっきりしたノイズは無く、残響は程々だがトーンバランスがなんか変。 高域が妙に勝っていて、変な付帯音があるような気がする。そのためフォルテッシモでの高音楽器が音量以上にうるさい感じがするし、音色が硬い。最近の録音で、こういう癖のあるのは珍しい。

演奏評:

 第1楽章は、割とオーソドックスなテンポ。 テンポの揺さぶりは強くはない。録音のためと思われるが、弦の音色がイマイチ悪い。 ベルは管ではなく音叉のようなものを叩いたような響き。 第2楽章は冒頭は標準ないしやや遅めのテンポで始まり、しばらくこのテンポで進むが、それでも残念ながらホルンのトレモロは吹ききれていない。 中間部でテンポアップするところが異常に速くなり、疾走する感じになるが、その後再び減速するときには、思い切り遅くなる。その後、再び極端あテンポアップと減速を繰り返す。こんな極端なジェットコースターみたいな速度変更は他で聞いたことがない。第3楽章は、まるでアタッカでつながっているような始まり方であり、テンポは標準から幾分遅めで始まるが途中で気がつかないうちに少しテンポアップしており、トランペットソロのところで普通にテンポを落とせる程度にはなっている。トランペットの音は汚くはないが、現世的。コーダの部分はテンポアップはするが、無理はない範囲。 最終楽章は、やるべきことはやってるという演奏だが、録音の問題もあって弦の音が金気が抜けず楽しめない。 ユニークなところは多々あるが、魅力的とまでは至らず、録音の問題もあって、星はオマケして2つ。

総合評価:  ★★

ショルティの演奏

レーベル:  DECCA: 473274-2
演奏家:   Georg Solti / Chicago SO
日時・場所: May 1982, Orchestra Hall, Chicago
演奏時間:  total 85:16 ( 30:15 / 17:51 / 12:33 / 24:37 )
録音評:

 ノイズはないし、残響もほどほど。 解像度もそこそこ。 まあまあの録音だが、何か音がきつい気がする。

演奏評:

 下記67年の演奏を突き詰めて行くとこうなるという感じ。 第1、第2楽章ともかなり遅いのだが、だれてしまわないのは立派。 第2楽章の速度的なメリハリの付け方はうまいと思う。 第三楽章は非常に速く、なおかつトランペットソロのところでまるで減速しない。 これはちょっと残念。 最終楽章はかなり厚い音で、速めの演奏でありながら、むしろ重い感じがする。 解釈はかなり好きなタイプだし、演奏上のミスもなく、理屈の上ではかなり高得点になるはずなのだが、なんか楽しめない。 思うに、個々の楽器のソロの音色が今イチ良くないように思う。 録音のせいかも知れないが、演奏者の個性によるものが大きそうである。 少なくとも指揮者のせいではないとは思うが、★2つまでしか出したくない気がする。

総合評価:  ★★
レーベル:  DECCA: 473865-2
演奏家:   Georg Solti / London SO
日時・場所: April & May 1967
演奏時間:  total 79:50 ( 27:08 / 16:36 / 13:08 / 22:58 )
録音評:

 あまり良い録音とは言えない。 ノイズはほとんどないのだが、フォルテで打楽器群が登場する場面ではほとんど必ず音が歪む。 昔のアナログ録音には時々こういうのがあったなあと少々懐かしい思いをしたが、マーラーの録音としては間違いなくマイナスポイント。

演奏評:

 82年の録音ほどではないにしても、前半遅め、後半速めの演奏タイプ。 第1楽章は弦をたっぷり鳴らし、打楽器群、ブラス群のメリハリを効かせて、適度に悪魔的でもある。 ただし、ティンパニーの音がでかすぎて録音しきれていない所がある。 これは、録音技術の問題よりも、そんなでかい音で鳴らさせる方に問題があるように思う。 第2楽章は遅い。 弛緩してはいないが、だれてくる限界線で持ちこたえている感じ。 途中テンポアップする所はメリハリが効いて良い。 ホルンはちゃんとトレモロを誤摩化さずに吹いている。 第3楽章は軽快に進めた後、トランペットソロの所でゆったり進めて、再度快速運転にしっかり戻している。 最終楽章は速めだが、物足りない感じはしない。 全体を通して割と良い演奏だとは思う。 録音のマイナス分を差し引いて、星二つ。

総合評価: ★★

シュテンツの演奏

レーベル:  OEHMS CLASSICS: OC654 hybrid
演奏家:   Markus Stenz / Gurzenich Orchester Koeln
日時・場所: January 2014, Studio Stolberger Strasse Cologne
演奏時間:  total 77:36 ( 26:48 / 14:51 / 12:36 / 23:53 )
録音評:

 ノイズはないが、何かクリアとは言えず、解像度はそこそこ。 残響は普通。 音響的に中低域が弱く、そのため時々うるさい感じがする。

演奏評:

 第1楽章冒頭はゆっくりめだが、すぐに標準くらいのテンポとなり、その後もテンポはゆさぶる。ホルンの音色はまずまず。 鐘は、いわゆる鐘型のものを叩いているのか? 音程が極めて怪しい。 第2楽章もテンポは動かす。 ホルンは出来が悪い。 トレモロは吹くのを断念しているようである。 何か思ったるいし、オケがいっぱいいっぱいで余裕ない。 第3楽章は冒頭はふつうのテンポだが間もなく加速して高速運転になる。 しかし、余裕がなく、途中ばたつくところがある。 トランペットソロの直前で思いっきり減速。 トランペットソロはそこそこうまいが地上的。 その後もテンポはかなり動かすが最後はオケの限界が出て突っ走れない。 最終楽章もいろいろこだわりは見せるが、イマイチ。 指揮者は野心的だがオケの限界に屈する感じ。★は2つまで。

総合評価:  ★★

スヴェトラーノフの演奏

レーベル:  het Residentie Orkest: RO 94-2
演奏家:   Evgeny Svetlanov / het Residentie O
日時・場所: November 19 & 20, 1993
演奏時間:  total 78:19 ( 27:01 / 17:01 / 10:47 / 23:30 )
録音評:

 明らかに、下記の録音よりは良好だが、飛び抜けていい録音とは言えぬ。 残響は強すぎず適度。

演奏評:

 時期的に、下記の録音と近いので解釈的にも似たところがあるが、オーケストラの技術水準を含む特性の差が出ているように思う。 第1楽章冒頭から遅いというほどではないが、途中からかなりゆっくりしたテンポで進めている。 ホルンの音はやや吹奏楽っぽいが悪くない。 弦もそこそこ良い音である。ベルの音が一種異様と言うか独特の倍音列を持った響きであり、迫力はあるが浮いている。 いったい何を叩いているのか不明。 この楽章はあまりテンポを揺すらない。 第2楽章は割と遅めの演奏に入るが、中間部ではちゃんとテンポアップしており、だれたところはない。 ホルンのトレモロもごまかしなし。中間部以後、かなりテンポを揺すっており、たっぷり聴かせるところは聴かせている。 第3楽章はやはり怒濤の演奏であり、速さにおいては下記の演奏と遜色ないが、アンサンブルに乱れがないのが見事である。 トランペットソロはきれいでうまいのだが、いかんせん音色を楽しむには速すぎる。 最終楽章は割とあっさりめの演奏であり、粘ったり引っ張ったりは少なめ。 弦の音はきれいだがやや中音部よりで薄口である。 全体を通しての印象としては、国立ロシア響より技術水準が上の分、余裕は感じるのだが、何かよそ行きで、冷たい演奏だとは言わないものの、スヴェトラーノフらしい熱さを感じない。

総合評価:  ★★
レーベル:  SAISON RUSSE: RUS 288 132
演奏家:   Evgeny Svetlanov / Russian State SO
日時・場所: 1992, Moscow
演奏時間:  total 75:48 ( 25:36 / 15:19 / 10:25 / 24:28 )
録音評:

 この時代にしてはむしろ悪い方。 全体に歪みっぽくフォルテシモで音が割れることが多い。 低音楽器群の音が聞き取りにくい。

演奏評:

 第1楽章は割とゆっくりしたテンポで始まり、時に止まりそうになる部分もあるが、だらだらするのではなく、急ぐ所は急ぐので、演奏時間は長くない。 ホルンの音が変。 スヴェトラーノフとしてはあまり熱くない演奏である。 第2楽章は速さは標準的な所だが、中間部で妙に元気で弾みまくっている感じ。 ワルツである。 ホルンはごまかしなし。 終結部付近で独特の粘り方をした後、思いっきりテンポアップしてみせる。 第3楽章は超快速演奏であり、オケが技術的限界に挑戦させられている。 テープを早回ししているような演奏で聞いていて落ち着かない。 トランペットソロの所は速度を落とすが、あくまでも相対的にであって、通常よりはかなり速い。 終楽章はゆったりたっぷりで予想外に良い音の弦である。 それまでの楽章と違って低域方向にも熱い音に浸れて心地良い。 ただし、やはりホルンの音が変。 何だか吹奏楽っぽい音がするのである。

総合評価:  ★★
レーベル:  KARNA MUSIK: KA-025 CD−R
演奏家:   Evgeny Svetlanov / Swedish Radio SO
日時・場所: Jan 21,2000, Stockholm
演奏時間:  total 85:25 ( 29:23 / 18:12 / 12:40 / 25:10 )
録音評:

 CD−R盤の中では平均的なところか。低音がやや過多気味なため、低弦がややくぐもった感じとなるところがあるが、これはホールの特性か。

演奏評:

 ネパールの会社のCD−R盤というのでかなりひどいものをつかまされる可能性も覚悟していたのだが、どうしてどうして大変品質の良いディスクである。 このレーベル、結構すごいものが出てきそうで怖い(財布が!)。 さて演奏だが、第1楽章は上記より明らかに遅めではあるものの引っ張り方は自然である。 各楽器の音もきれい。 本質的には上記2種の延長上にあると思うがよりこなれて出来が良くなっている。 しかし、この第1楽章を聴くと、スヴェトラーノフってこんな素直な演奏することもあるんだと思ってしまう。 タムタムはゴング風。 ベルはしっかり教会の鐘タイプのものをハードスティックでたたいてキーンという音を出している。 第2楽章は最も遅い部類のスピードだが、重くはなく、ゆったりした感じ。 妙なところで更にテンポを落とすようなためを作る変わった演奏である。 遅い中で速度的なメリハリは付けている。 ホルンのトレモロは速度的に無理がないので完璧。 そして、弱音がとてもきれい。 遅いのにチャーミングな演奏である。 第3楽章は小気味良い位の快速演奏。 トランペットソロのところであまり減速しないので演奏時間は最速の部類に入ってしまうが、聞いている感じはそれほど速くはない。 トランペットソロはきれいである。 もう少し思い入れたっぷりでもいいのだろうが、こういう演奏もありだろう。 第4楽章は、響きたっぷりの豊穣な演奏、最後はちゃんと死ぬように終わっている。 ライヴだが演奏に傷はなく優秀なオケだと思う。 少々甘いかとも思うが星2つ半。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  KARNA MUSIK: KA-128M  CD−R
演奏家:   Evgeny Svetlanov / Swedish Radio SO
日時・場所: May 30,1998, Stockholm
演奏時間:  total 82:46 ( 28:46 / 17:29 / 11:44 / 24:47 )
録音評:

 ノイズ少なく、残響適度であり良い録音だと思う。 ただ、フォルテシモでやや飽和気味な感じのするところがあり惜しい。

演奏評:

 基本的には、上記に極く近い解釈の演奏である。 ただ、上記よりも2年弱スヴェトラーノフが若い分エネルギーが大きいというか、全体に演奏時間も短い。 とくに第3楽章は極めて速く、疾走する感じ。 ロシア人が振った9番の中では最良のものの1つではなかろうか。 これは、甘めではなく星2つ半。

総合評価:  ★★☆

セルの演奏

レーベル:  stradivarius: STR10012
演奏家:   George Szell / Cleveland O
日時・場所: May 9, 1968, Cleveland
演奏時間:  total 74:43 ( 24:57 / 16:09 / 12:09 / 21:28 )
録音評:

 明記されてはいないがモノラルであり、当時の水準としてはあまり良い録音とは言えない。 少々キンキンしすぎる。

演奏評:

 下記のものと同時期の演奏であり、解釈はほとんど同じ。 やはり第1楽章は、速めの演奏の中では最右翼と言える。 第2楽章は、やや遅めながらだれることなくメリハリもしっかりついている。 ただ、残念ながら、ホルンが1カ所ミスしており、目立つ傷となっている。 第3楽章は一転して速め。 これも下記と同じ。 トランペットソロもわりとあっさりしている。 そして終楽章も下記と同じく熱い。 演奏としての質はほぼ同じであるが、何しろ録音に歴然とした差がある。 こちらは★半分マイナスとする。

総合評価:  ★★
レーベル:  ILLUMINATION: ill-Sze-28/9 CD-R
演奏家:   George Szell / Cleveland O
日時・場所: February 6, 1969
演奏時間:  total 73:21 ( 22:57 / 16:32 / 12:00 / 21:52 )
録音評:

 ヒスノイズはしっかり聞こえるものの、聞きにくいほどひどくもない。 音はクリアとまで言えないが、音像は割とはっきりしており、当時の録音としてはまずまずか。

演奏評:

 第1楽章は速めだが、メリハリの利いた演奏であり、テンポはそれなりに揺らす。 ブラスや低弦のピチカートが鋭く悪魔的。 ホルンの音がなかなかきれいであり、速めの第1楽章としてはトップクラスの出来だと思う。 第二楽章は遅い。 ホルンのトレモロは荒っぽいが何とかこなしている。 メリハリがあり遅い演奏だがだらしなくはならない。 中間部でテンポアップする所からも軽快とは言えず、やや重い。 しかし、終結部に向かって更にテンポアップして最後はちょうど良くなる。 第3楽章は一転して速い、しかも荒々しく熱い。 中間部のトランペットソロはまあまあ。 第4楽章は冒頭から弦が良い。 クリーヴランドの弦ってこんなに良い音だったっけと思った。 ホルンもほぼ理想的な音色を出している。 途中ファゴットソロが出そびれるという事故があり残念。 テンポをそれなりに揺さぶり、粘る所は粘るものの、全体としては速めである。 全曲を通じて感じるのは、セルって意外と熱い演奏をする人だったんだと言うこと。 速めの演奏としてはトップクラス、手に入りやすくはないが、見つけたら買って損はない。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  KARNA MUSIK: KA-176M CD-R
演奏家:   George Szell / Cleveland O
日時・場所: January 30 and February 1, 1969
演奏時間:  total 75:33 ( 24:46 / 16:57 / 12:16 / 21:34 )
録音評:

ややキンつく所はあるが、解像度よく、残響も適度。当時の録音としてはまずまず。

演奏評:

上記とほぼ同時期の演奏。解釈や印象は同じだが、上記よりやや荒いか。★の数を変えるほどの差はない。

総合評価:  ★★☆

タバコフの演奏

レーベル:  ALM: ALCD-8002
演奏家:   Emil Tabakov / Sofia PO
日時・場所: March 1991, Bulgarian Concert Hall, Sofia
演奏時間:  total 90:50 ( 32:33 / 16:40 / 12:54 / 28:43 )
録音評:

 年代の割に解像度は悪い。 少しもやっている感じ。 フォルテシモでサチッている感じあり。

演奏評:

 かなり個性的な部類に入る。 90分超えと遅いほうだが、一部の演奏で見られるようなおどろおどろしさが全くなく、「のんびり」という形容がぴったりくるテンポ。 ホルンを中心とした金管の音色に難がある。 鋭さがなく、緊張感がない割に退屈しないのは、所々にエッと言うようなユニークな解釈が見られるため。 第3楽章のみテンポが速く、締まっていると言えば言えるが荒い。 現在、全集の中の1枚としてしか手に入らないのが難点。

総合評価:  ★☆

高関健の演奏

レーベル:  ALM: ALCD-8002
演奏家:   Ken Takaseki / Gumma SO
日時・場所: March 21, 1999, Smida Triphony Hall, Tokyo
演奏時間:  total 79:45 ( 27:05 / 15:09 / 12:22 / 25:09 )
録音評:

 ライヴ録音なのだが、会場騒音がほとんど気にならない。 わりと優秀な録音と言えるだろう。

演奏評:

 群馬交響楽団というのは結構実力のあるオケなのではあるまいか。 期待以上に良い演奏だと思う。 ライヴにしては傷の少ない演奏である。 高関氏の解釈も割と私好みである。 第3楽章がキビキビしているのは良いのだが、やや速すぎてオケが付いて行こうと必死になり、少々荒っぽくなっているのが惜しい。 ホルンは大健闘である。 音色も良く、事故も起こさず、全楽章通して合格点が出せる。 ライヴ盤でこのレベルのホルンは多くはない。 終楽章冒頭で、あまりにもスローテンポで始めるために、少々アンサンブルが乱れかけるが、気になるほどの事故とはならず、むしろこの楽章に至って弦の艶が増してきた感じがする。 終楽章の出来はかなりの水準だが、終結部のピアニッシモのところで、やや弦がきしむ感じがするのが惜しい。 しかし、これは手許に置いても良い1枚だと思う。

総合評価:  ★★☆

テンシュテットの演奏

レーベル:  EMI: CC30-9084-85
演奏家:   Klaus Tennstedt / London PO
日時・場所: May 11,12 and 14, 1979, Abbey Road Studio, London
演奏時間:  total 85:30 ( 30:42 / 16:20 / 12:59 / 25:29)
録音評:

 この当時、ちょうど録音がアナログからデジタルに切り替わる時期でひどい録音が横行した時期だったかと思う。 はっきり言って録音は悪い。 ノイズはないし、ワイドレンジでもあるが、何か変なフィルターでもかけているような感じで、音楽が硬直して聞こえ、聞き疲れして楽しめない。

演奏評:

 おそらく録音のせいもあるかとは思うのだが、何か突き放したような冷めた演奏に聞こえる。 全体を通して悪魔的な部分は比較的よく表現されているのだが、これと対比されるべき部分がなんか空々しい感じがする。 音色も硬く、特に弦の音色が楽しめない。 金管楽器群もミュートを付けて演奏する部分はいいのだが、例えばホルンなどはもっと天国的な響きも出してくれよという感じ。 ともあれ水準には達している。 星2つ。

総合評価:  ★★
レーベル:  Navikiese: NAV-4002/3 CD-R
演奏家:   Klaus Tennstedt / Philadelphia O
日時・場所: January 14, 1988
演奏時間:  total 80:38 ( 28:00 / 16:21 / 13:01 / 23:16 )
録音評:

 録音機器がそれほどでないせいか、あまりいい音とは言えない。 テープヒスも聞き取れる。 にもかかわらず、上記のものよりも音楽の表情はよく伝わってくる。

演奏評:

 オケの差か、スタジオ録音とライヴの差か、はたまた9年の歳月のなせる技か、上のものより遙かに良い。 第1楽章は、2分以上速くなっているが、よりメリハリがつきしなやかである。弦の音が良い。 ベルはチューブラーベルらしいが妙に余韻が長い。 第2楽章は遅めではあるが、ワルツしている。 特に中間部でテンポアップしてからが見事。 ホルンのトレモロがうまい! 第3楽章は速めで押しており、好み。 トランペットソロのあとの盛り上げ方もうまい。 第4楽章は速めの演奏だが、シェルヘンあたりを聞いたときのような息せき切る感じはない。 音は豊穣で満足感がある。 内容的には星2つ半だが、録音の悪さを差し引いて星2つ。

総合評価:  ★★
レーベル:  Von-Z: S-2-205/6 CD-R
演奏家:   Klaus Tennstedt / New York PO
日時・場所: April 1982, New York
演奏時間:  total 87:43 ( 31:26 / 16:43 / 13:01 / 26:33 )
録音評:

 録音はあまりよろしくない。 テープヒスは仕方ないとして、何か音が曇ってるし、フォルテシモではサチる。 やや、弦がギラつき、何だか妙ににぎやかである。

演奏評:

 上記2つの間の時期のものだが、より前者に近い解釈か。 第1楽章冒頭からゆったりしたテンポで、当初はあまりテンポは変えないが、途中から揺さぶるようになる。 ティンパニー連打のあたりから一段と遅くなり、凄みが出てくる。 ブラスが荒々しくて悪魔的であり、アゴギーグが強い。 ベルは普通のチューブラーベル。 第2楽章は標準ないし、やや遅めのテンポで開始。 ホルンのトレモロははためくような独特なやりかた。 中間部のテンポアップはあまり大きくなく、音響的に妙に分厚い。 例のリズムはターータターというより、ターータッターとやっている。後半、ためや引っぱりも多いが、やや冗長。 第3楽章は、はなから速め。 軽快でノリが良い。 一気呵成に突っ走る感じ。 途中で少しテンポがあがるように感じる。 トランペットソロでのテンポダウンはほどほど。 このソロはうまいけれども、音色がスローバラードを吹いているみたいで天国的ではない。その後の部分のテンポの変え方が独特であり、遅めで引っぱりも多い。 再現部で再び乗りの良い軽快な音楽が回帰するが、最後のアッチェルランドでは無理せず、破綻なく終わる。 最終楽章冒頭はたっぷり引っ張り、その後は標準的なテンポを維持する。 弦の音は中高音がきれい。 ホルンもまずまず。 クライマックスは結構引っ張るが、汗臭くない。 その後、「ホルンが分厚い」のが珍しい。 終曲はそれほどテンポは落とさず。 静かに、穏やかに、暖かく終わる。 でも、死んでない。 良い演奏だとは思う。 しかし、録音が良くないので星は2つどまり。

総合評価:  ★★

ティルソン=トーマスの演奏

レーベル:  AVIE: 821936-0007-2
演奏家:   Micael Tilson Thomas / San Francisco SO
日時・場所: September 29-October 3, 2004, Davies Symphony Hall, San Francisco
演奏時間:  total 89:11 ( 30:42 / 17:04 / 13:55 / 27:50 )
録音評:

 優秀録音である。 非常に透明感があり、残響も適度。 ノイズもなし。

演奏評:

 第1楽章は遅めで、結構あちこち引っ張っているが重ったるくはない。 個々の楽器の音が瑞々しく、爽やかでさえある。 それでいて、悪魔的な所はちゃんと悪魔的。 執拗にテンポを揺さぶり、随所に独特のフレージングが見られるが、説得力がある。 タムタムは硬質な音だが前面には出ず、ベルはチューブラーベルのようだが程良く重い音。 ホルンは絶品である。 終結部近くで、フルートが不調なのがちょっと残念だが許容範囲と思う。 第2楽章の開始のテンポは標準より気持ち遅い程度。 ホルンはトレモロをごまかすことなくちゃんと吹いている。 中間部でもちゃんと程良くテンポアップする。 後半、思いっきりテンポを落として聞かせにかかるため、全体としての演奏時間はかなり長いものとなっている。 緩急のメリハリが極端に強く、時に止まるという荒技まで使っている。 第3楽章は標準的なテンポであり、軽快とは言えないが、だれない。 トランペットソロに入る少し手前のところで、あらかじめ思いっきりテンポを遅くしてしまうという珍しいことをやっていて、これがなかなか聞かせる仕上がりとなっている。 トランペットのソロはうまい。 この後、更にテンポを落とし、思いっきり遅くした後、アッチェルランドを少し加えたりと細かい技を縦横に駆使している。 ここまでやると賛否が出そうだが、私はとても魅力的だと思う。 終楽章は冒頭から思いっきり引っ張る。 弦は程良く厚く、ホルンの扱いもうまい。 この楽章でもいたる所で粘る。 終結部に向かってピアニシモを守りちゃんと死ぬように終わっている。
全体を通じて今時珍しい巨匠型の演奏と言えようか。 バーンスタインのような激情型の演奏ではなく、全てが綿密な計算の上で進んでいる感じ。 第2、3、4楽章でブルックナーストップに似た静止を多用している。 他の演奏で似たようなことをしているものも少数あるが、ここまで緻密に説得力を持って行っている例は記憶にない。 MTTも全く凄い指揮者になったものである。 遅めの演奏の最右翼として星三つ。

総合評価:  ★★★
レーベル:  DIRIGENT: DIR-0959 CDーR
演奏家:   Micael Tilson Thomas / San Francisco SO
日時・場所: June 12, 2011, Vienna
演奏時間:  total 87:42 ( 30:12 / 16:18 / 14:12 / 27:00 )
録音評:

 残響が強く、風呂場録音寸前の状態。 従って、解像度には不満が残る。

演奏評:

 上記と同じメンバーで7年後の演奏。 基本的に同じ解釈だが、細部ではより深化しており、しばしば上記を凌ぐ。 しかし、録音が悪い。 本来なら★半分減点すべきだと思う。 でも、この演奏とても好きです。 甘くてごめんなさい。

総合評価:  ★★★
レーベル:  GNP: GNP 169/70 CDーR
演奏家:   Micael Tilson Thomas / San Francisco SO
日時・場所: May 5, 2011, Davies Symphony Hall, San Francisco
演奏時間:  total 86:48 ( 30:01 / 16:13 / 14:07 / 26:27 )
録音評:

 残響が強く、風呂場録音寸前だが上記よりまし。 しかし、キュルキュルいうノイズが終始かすかに乗っており、ピアニシモのところでははっきり聞こえる。 鑑賞には差し支えない。

演奏評:

 上記と同じメンバーで上記のヨーロッパツアーに出る直前、本拠地での演奏と思われる。 同解釈で随所に唸らせるような見事なところあり、録音は上記より良いと思う。 従って、これも星3つ。9番のスタンダードではなく、むしろ異端の演奏だと思うが、好きです。

総合評価:  ★★★
レーベル:  URC: URC 0238/9 CDーR
演奏家:   Micael Tilson Thomas / San Francisco SO
日時・場所: September 18, 2013
演奏時間:  total 87:43 ( 30:15 / 16:19 / 14:24 / 26:45 )
録音評:

 クリアで残響適度。ノイズも目立つものはない。しかし、楽器の配置が何か変。実際に変わった配置だったのではなく、マイクのセッティングなりミキシングなりのミスではないかと思う。低弦が当初左側から聞こえて来て、えっと思うが、他の楽器は通常配置。間も無く正常化する。

演奏評:

 MTT/サンフランシスコ響の演奏は、今まで外れなしで、おなじみのものを想定して聴き始めたのだが、年月が過ぎて、変化は起きていた。第1楽章で特にそうだが、速度上のメリハリが非常に強くなり、時にやり過ぎと批判が出かねないレベルになっている。 私はこれも有りかなと思うが。そして全体に速度は遅くなっている。両端の楽章はこれが良いが、中間の二つの楽章はこれだと遅すぎる。この点で減点する。しかし第1楽章は、眼からウロコ的ユニークな演奏であり、この曲のファンならば、一度は聴いてみるべきだと思う。星二つ半。

総合評価:  ★★☆

ワールトの演奏

レーベル:  RCA: 74321-2761-2
演奏家:   Edo de Waart / Netherlands RPO
日時・場所: April 8,1995, Concertgebouw, Amsterdam
演奏時間:  total 83:43 ( 28:27 / 16:55 / 12:47 / 25:34 )
録音評:

 響きもよく、ノイズも少なく聞きやすい。

演奏評:

 かなり良い演奏だと思う。 第1楽章は少々遅めだが、重ったるくはなく、弦の音の良さにのっけから魅せられる。 割と解釈はオーソドックスであり、ギョッとするような個性的なところはない。 第2楽章は出だしが遅めで、やや重いかと思ったら、途中のテンポ変更部分から軽快なノリになる。 第3楽章も悪くないが、まあ平凡ではある。 終楽章がすばらしい。 実に弦が魅力的な音を出している。 全体を通して言えることは、弦がすばらしい音を出しているのと、木管楽器群、特にフルートの健闘である。 フルートの音色のよさには参った。 ホルンもまあまあ無難だが、たまに不安定なところが見える。 しかし、全体としての満足度はかなり高い

総合評価:  ★★☆
レーベル:  Antec: AM2821/22 CD-R
演奏家:   Edo de Waart / Hong Kong PO
日時・場所: Decenber 5,2008, Cultural Centre, Hong Kong
演奏時間:  total 84:19 ( 28:08 / 16:19 / 12:45 / 27:07 )
録音評:

 録音はひどい。 解像度はそこそこで、残響もまあまあの線なのだが、演奏中を通してチリチリ、ザーザーとノイズが入り続けている。 受信状況の悪いエアチェック音源なのではあるまいか。 解像度は高いので、どういう演奏かを知ることは出来るが、ノイズがひどすぎて音楽を楽しむことが出来るレベルを超えている。 本来、売り物にならないレベルである。

演奏評:

 上記の10年以上後の演奏だが、ワールトの解釈の基本線は変わらない。 香港フィルは初めて聴いたが、予想を裏切り(失礼!)優秀である。 演奏そのものは上記を更に上回り、星2つ半とするに十分なレベルと思うが、いかんせん録音が悪すぎる。 ほんとなら、灰色のレベルの録音だが、それでは演奏者に申し訳ないので・・・

総合評価:  ★★

若杉弘の演奏

レーベル:  fontec: FOCD9028/9
演奏家:   Hiroshi Wakasugi / Tokyo Metropolitan SO
日時・場所: May 2, 1991, Suntory Hall, Tokyo
演奏時間:  total 81:43 ( 27:12 / 16:09 / 13:13 / 25:09 )
録音評:

 サントリーホールなのにあまり残響のない録音。 ライヴの割に会場騒音は少なめだが、時々若杉氏のうなり声を拾っている。

演奏評:

 第1楽章冒頭から恐る恐ると言う感じだが、しばらくして落ちついては来る。 出だしのテンポは普通だが、結構テンポを揺さぶる演奏であり、通してみるとやや遅めの所が多い。 当初から弦の厚み不足を感じてしまう。 タムタムの音は控えめであり、ベルは普通のチューブラーベル。 第2楽章はのろい。 ホルンのトレモロが聞こえない! 誤摩化すと言うレベルにも達していないのか? 中間部でテンポアップするものの、それでも遅め。 指揮者がオケの(というかホルンの)レベルを心得ていてあえて無理を避けているのだとすると悲しいが、そう考えたくなる。 中間部以後、それなりにテンポを揺さぶっているが、元々テンポが必要以上に遅いので、あまり効果が上がっていない。 第3楽章は許容内の速さだが何となく重苦しい。 トランペットソロはまあまあだが、通常この部分でもたらされる天上的な気分が感じられない。 最終楽章は、弦は綺麗だが厚みがないし、ホルンの音もどうも魅力に乏しい。 全体を通して感じるのは、オケのノリが悪いこと。 指揮者のやりたい方向は見えるが、オケに妥協しすぎているのではないか? 確かに、ライヴの割に事故はないが、遥かにレベルの低い素人オケでももっと音楽的な魅力を発散させていると思う。 こういうのを聞かされると、日本のオケのレベルが低いという意見に反対出来なくなってしまう。

総合評価:   ★
レーベル:  Altus: ALT201/2
演奏家:   Hiroshi Wakasugi / Koeln Radio SO
日時・場所: June 11,1983, Tokyo Bunka Kaikan, Tokyo
演奏時間:  total 83:59 (28:23/17:00/14:29/23:24)
録音評:

 気になるレベルではないが、ホワイトノイズが聞こえる。 全体に音がきつく尖った感じである。 解像度的にも今ひとつ。

演奏評:

 第1楽章は標準的なテンポで、時々引っ張る。 弦がかさつきぎみだが、ホルンは良い音。 妙にハープが目立ったり、楽器の音響バランスが通常と違う部分がある。 第2楽章は遅い。 ホルンのトレモロはまあまあ。 重くはないが、のろい。 中間部のテンポアップはあるが、それでものろい。 第3楽章ものろい。 ずっとのろくて、トランペットソロに至ってようやく普通のテンポになる。トランペットはそこそこ巧い。 そのあとかなりテンポを揺さぶる。 コーダに向かってテンポアップは急だが、破綻するほど速くはならない。 最終楽章は冒頭普通に引っ張った後は、標準よりやや速めくらいのテンポを維持する。 この楽章の弦はきれいだが、低域がややかぶりぎみ。 全体に熱い演奏だが、どうも中間の2つの楽章が遅すぎる。 ★は2つ。

総合評価:  ★★

ワルターの演奏

レーベル:  SONY: SM2K64452
演奏家:   Bruno Walter / Columbia SO
日時・場所: January and February 1961,
American Lesion Hall, Hollywood, California
演奏時間:  total 81:06 ( 29:18 / 17:34 / 13:10 / 21:04 )
録音評:

 録音年代を考えたら割と良い録音だと思う。 ダイナミックレンジはないが、細部にわたってクリアだし、残響もほどよい加減になっている。 マスタリングの際にフィルターをかけたのだと思うが、テープヒスは非常に目立たない。

演奏評:

 第1楽章はのろいというかぬるい。 オケが寄せ集めで弦が薄いということもあろうが、音響的に分厚くないのに重厚長大路線の演奏と同じような低速運転をするので、妙にのんびりした感じになってしまっている。 ホルンをはじめとする管楽器の音色は良いが、ブラスセクションとしてみた場合、もうすこし悪魔的であって欲しい。 テンポはそれなりに動かしているが、「さあ行け!」という瞬間にのたのたしてスピードが上がらないのでフラストレーションがたまる。 第2楽章は異様に遅い。 しかもリズム強調型でギシギシ言う感じである。 中間部でかなり思い切ったテンポアップがあるものの、間もなくまた遅くなってしまう。 第3楽章冒頭は標準くらいのスピードだが、途中で減速して、トランペットソロの前に通常より遅い演奏となっている。 ところが、トランペットソロのところでほとんどテンポが落ちないため、演奏時間全体は普通の範囲にある。 どうもノリの悪い音楽である。 そして、最終楽章は異例なほど速い。 これまで遅かったのになぜ?という感じ。 全体にこくが足りない。

総合評価:  ★★
レーベル:  Joy Sound: KC-1037
NAXOS: 8.110852
東芝EMI: TOCE9097
演奏家:   Bruno Walter / VPO
日時・場所: January 16, 1938, Vien
演奏時間:  total 69:28 ( 24:40 / 15:33 / 11:11 / 18:04 )
録音評:

 世界で最初の9番の録音であり、もちろんモノラルだが、このあとにいくつか出てくる録音に比べると頭抜けていい音である。 いろんなレーベルから出ていて、当然マスタリングの差があるとは思うが、私が入手した範囲のものは、モノラルとしては上々の部類に入ると思う。 思いのほか解像度も高く、結構いろんな会場騒音を拾っているし、音色も濁りが少なくきれいである。

演奏評:

 ワルターがナチスの難を逃れてアメリカに亡命してしまう直前のものということもあり、伝説の名演と言われているもの。 ために、やや過大評価されている節がなくもないが、最初にこれをやられちゃったら2番目、3番目は大変だよねと思わせるだけの内容はある。 世界初の9番であるということ以上に私にとって興味深いのが、これが亡命前のワルターの演奏である点と、ウィーンフィルの演奏である点。 亡命後のワルターは好々爺の仮面を被ってしまったが、ヨーロッパで活躍していた頃のワルターは人物も演奏スタイルももっとギラギラしていたという。 つまり、よりマーラー向きの指揮者であったらしい。 第1楽章冒頭、ほぼ標準のテンポではじまるが、この楽章は結構テンポを揺さぶっている。 そのため、時々アンサンブルが崩れかかるがライブにもかかわらずはっきりした事故には至らない。 ウィーンフィルのいくつかの演奏で第1楽章のティンパニの音程が低めにチューニングされているように感じ、これがウィーンフィルの悪しき伝統なのではと疑っていたのだが、この演奏ではティンパニーのピッチは完璧である! ベルはチューブラベルと思われ、まずまずの音色。 正しく悪魔的な演奏となっている。 問題の第2楽章だが、冒頭から遅めであり、中間部で加速するため全体では普通の長さとなっているが、明らかにあのホルンをかばっているようである。 ホルンは遠くでなっているような目立たない扱いとなっており、トレモロをちゃんと吹いているのか聞き取りにくい。 しかし、どうやらタンキングで誤摩化しているようである。 この楽章も途中からテンポを揺さぶり、荒々しいとさえ感じさせる。 第3楽章は速い。 けれども何だかぎくしゃくしており、軽快な感じはしない。 トランペットソロの所ではちゃんと減速するが、わりと淡々としており、思い入れたっぷりなものを期待していたので肩すかしを食った。 第4楽章は速い。 しかし、そんなに慌てた感じはせず自然である。 むしろ、最近の演奏が異様に遅いのかもしれない。 素直なまますっきりと終わりまで進み、平安の中で終わる。 それまでの3楽章は何だったんだろう?という感じ。 星は2つどまり。

総合評価:  ★★

山田一雄の演奏

レーベル:  fontec: FOCD2925/6
演奏家:   Kazuo Yamada / New Japan PO
日時・場所: June 7,1986, Tokyo Bunka Kaikan, Tokyo
演奏時間:  total 92:17 (31:49/15:52/13:40/30:39)
録音評:

 文化会館で録ったにしては良い方か。 割と解像度良く、マエストロのうなり声まで拾っている。

演奏評:

 演奏時間をご覧になれば明らかなように、遅演である。 ただ、実は全体にひたすら遅いのではなく、両端楽章が遅いのであって、真ん中の2つは基本的には速い私好みのパターンである。 第2楽章はちょっと独特で、冒頭から飛ばしておいて、通常テンポアップする中間部でほとんどテンポが変わらず、その後思いっきり引っ張って遅くなったりと、縦横にテンポを揺さぶる。 全体にアゴギーグが強いが自然で嫌味がない。 曲の解釈は素晴らしいと思う。 しかし、オケの実力が足りず、指揮者の意図を遂行しきれない。 特に第2楽章のホルンはボロボロでプロの演奏とは思えない状態になっている。 残念ながら評価は星2つどまり。

総合評価:  ★★

ザンダーの演奏

レーベル:  TELARC: 3CD-80527
演奏家:   Benjamin Zander / Philharmonia O
日時・場所: January 17, 1996, Barbican Center, London
演奏時間:  total 87:02 ( 30:09 / 15:44 / 13:25 / 27:44 )
録音評:

 ノイズもなく、音質良好。 残響もほどほど。

演奏評:

 第1楽章から遅い。 間延びする寸前で踏みとどまっている。 音色は良いが時に悪魔的にすぎる所がある。 ホルンはきれい。 ベルは美音ではあるが、やけに余韻が長い。 第2楽章の出だしのテンポは標準。 ホルンのトレモロはギリギリ合格ライン。 しかし、全体に重い。 中間部でテンポアップしてましになるが、ノリノリとはならない。 ワルツしてない。 後半部でも不必要に遅いと感じる所がある。 第3楽章はそれほど遅くなく標準のはずなのだが、聴感上は遅く感じる。 軽快さがなくノリが悪いのである。 トランペットソロは悪くはないが、ほとんどテンポを動かさないためか何だか冷めている。 この辺りで弦が独特の動きをする所があり、面白いが不自然である。 第4楽章が一番出来が良い。 弦の厚みもあり、テンポ設定もまあまあ。 途中、弦のピアニッシモでゾクッとするような素晴らしい音を出している。 しかし、後半やや間延びした感じも残る。 全体を通して感じるのは、良くも悪くもプロの職人集団であるオーケストラを率いて、けっこう指揮者がやりたい放題をやっており、オケはそれにさして感動することはないものの黙々と仕事はこなしていると... ちょっと言い過ぎかな。 しかし、ソロの音色など光るものがあり、うまいのに何かノリが悪いというのが総評。

総合評価:  ★★

ツェンダーの演奏

レーベル:  CPO: CPO 999 479-2
演奏家:   Hans Zender / Saarbrucken RSO
日時・場所: February 8 and 9, 1977,
Saarlaendicher Rundfunk Grosser Sendesaal
演奏時間:  total 72:40 (25:13/14:55/12:44/19:48)
録音評:

 録音が悪いとは思わないが、盛大にテープヒスが入るのが欠点。

演奏評:

 全体を通してみると速めの演奏である。 それでも第1楽章はそんなに速くはないし、弦の音もまずまずだがブラスがややバリ付く。 ティンパニーが地響きを立てがちだし、タムタムの音も独特の長い響きである。 ベルの音はいわゆる教会の鐘、それも特大サイズのようなゴーンという音でピッチは定かではない。 なんだかにぎやかである。 第2楽章は、そこそこ速めのテンポであるが軽快と言う感じではない。 ホルンは少々苦しそうでトレモロは怪しい。 中間部でテンポアップする所からノリが良くなり聴きやすくなる。 第3楽章は、遅いというかもたつく感じであるが、トランペットソロの近傍で全くテンポが落ちないので結果的に演奏時間は短かめとなっている。 最終楽章は極めて速いと言えるが、そんなに慌てている感じではなく音響も豊かで好演だと思う。 シェルヒェンのような怒濤の演奏と言う感じはないが、速めの演奏の中では出来はいい方だと思う。 第2楽章のホルンが何とかなっていればもう少し上の評価なのだが。

総合評価:  ★★

ジンマンの演奏

レーベル:  RCA: 88697 72690 2 DSD hybrid
演奏家:   David Zinman / Zurich Tonhalle O
日時・場所: September 28-October 1, 2009, Tonhalle, Zurich
演奏時間:  total 89:06 (30:53/15:50/13:37/28:46)
録音評:

 ノイズなくクリア。 やや残響が強いため解像度はそこそこ。

演奏評:

  第1楽章は冒頭から、やや遅めのテンポで、ほとんど揺さぶらない。きれいだが、何か静かで淡々としている。 最初のティンパニ連打のところで、通常は弱め-強めと音量を変える場合が多いが、この演奏は強め-弱めと珍しいパターン。 ホルンの音色が非常に良い。 ベルはチューブラーベルをハードスティックでたたいている模様。 第2楽章は標準的なテンポだが全体に軽やかさがない。 第3楽章は私の一番好きな快速運転。 トランペットソロのところでのテンポダウンは小さめ。 きれいな音だが、淡々としている。 その後の部分、この演奏としては割とテンポを揺さぶるが、やはり重くコーダはもたつく感じ。 終楽章が一番しっくりくる感じ。 分厚い音響でテンポを揺さぶらないのも全体としてバランスよく仕上げている。 全体に、残響強めで音響が厚いのが、鈍さに繋がってしまうところがでている。 星は2つとしておく。

総合評価:  ★★

ズヴェーデンの演奏

レーベル:  DIRIGENT: DIR-0129 CD-R
演奏家:   Jaap van Zweden / Netherland RPO
日時・場所: December 6, 2008, Amsterdam
演奏時間:  total 85:16 (28:42/16:29/13:01/27:04)
録音評:

 クリアで残響も程よく、音響バランスも良い。 ノイズも少なくCD−R盤としてはトップクラスの好録音。

演奏評:

 まず音が良いというか音色が素晴らしい。 弦がとても魅力的だしホルンも木管も申し分ない。 また、テンポ設定をはじめ、解釈も私の好きなタイプ。 そこそこ個性的な所もあり、これがベルリンフィルあたりだったら最高水準に達したのかもしれないが、残念ながらオランダ放送フィルの機能的限界に突き当たり、一部でアンサンブルが崩れかかるところがある。 しかし、何か今後におおいに期待が持てる指揮者だと思う。 ちょっと甘いが星2つ半差し上げる。

総合評価:  ★★☆


室内楽編曲版(Klaus Simon 編)

ゲールの演奏

レーベル:  Ars Production: ARS38155 hybrid
演奏家:   Joolz Gale / ensemble mini
日時・場所: April, 2014, Berlin
演奏時間:  total 85:00 ( 28:22 / 16:50 / 13:56 / 25:52 )
録音評:

 ノイズなし。 残響適度。 優秀録音である。

演奏評:

 9番をあえて室内楽編成でやる必要があるのか?という疑問はさておき、出来はなかなか良いようにおもう。 大地の歌の室内楽版程度には聴ける。 編成は、弦楽5部が全てソロ。 木管はクラリネットが2人だがそれ以外の3つはソロ。 金管はホルン2人とトランペット1人のみ。 打楽器は2人だが、ティンバニはなし。 加えてピアノ1人、アコーディオン1人! 中間の2つの楽章が私の好みよりかなりゆっくりしているが、両端の楽章の出来が良く、特に最終楽章がすばらしい。 星は2つ半差し上げる。 

総合評価:  ★★☆

ヒメノの演奏

レーベル:  Gutman:番号なし
演奏家:   Gustavo Gimeno / CAMERATA RCO
日時・場所: June 27-29, 2014, MCO, Hilversum
演奏時間:  total 81:38 ( 27:24 / 15:30 / 12:48 / 25:56 )
録音評:

 ノイズなし。 クリアで残響適度。 これも優秀録音である。

演奏評:

 上記が出て間もなくこのCDも出た。 こういうことは珍しい。 こっちの方はコンセルトヘボウ管のピックアップメンバーらしいが、極めてうまい。 ホルン最高だし弦の音も素晴らしい。 テンポ設定も私好み。敢えて難を言うなら第3楽章のトランペットソロが地上的すぎる点くらいか。 少し甘い気もするが星3つ差し上げる。

総合評価:  ★★★


ピアノ独奏編曲版 第1楽章のみ

ブライアーの演奏

レーベル:  edition laura: CD004
演奏家:   Albert Breier (Pf)
日時・場所: May,1997
Konzertsaal der Universitaet der Kunste Berlin
演奏時間:  30:17
録音評:

 オンマイクな感じでとられていて、ノイズは特にないが、ピアノの音色があまり良くない。 残響はあまりない。

演奏評:

 まあ、これもゲテモノの類いではある。 そもそもこの曲をピアノ独奏でやろうというのに無理はある。 それをあえてやろうというからには、何をどう削って行くのかという興味が湧くところだが、この編曲がうまいかどうかを云々する前に重要な点がある。 ピアノへた! だから、編曲がまずいのか演奏技術のないせいかよく判らんもたつきが目立つ。 もし、通常以上にテクニックのあるピアニストにひかせたら、案外いけるかもしれないが、この演奏はダメ!

総合評価:  ★☆

交響曲第9番 指揮者別 A−K

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