あれこれ・まあ・のんとろっぽ

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マーラーのCD評・交響曲第9番

指揮者別 A - K

 

この曲について

9番は最も好きな曲の一つです。 しかも、名曲です。 ですから、誰の演奏でもそれなりに良いと思うのですが、なかなか決定盤がなく、現在所有するCDが200種類を超えています。 マーラーファンで9番の完成度が低いと言う人は少ないと思います。 けれども実は、マーラー自身が初演して音を確認した7番の方が完成度は高いのではないか、マーラーがあと5年長生きして自らこの曲を演奏したとしたら、細部にトーンバランスの変更などの改訂を加えていたのではないかと思ったりしています。 この曲は、とても魅力的ですし、最高傑作とする意見にも賛成ですが、実は完成していないのではないかと思うのです。 だから、いろんな演奏の存在が許されうるように思います。 決定盤に辿り着かないのはそのせいかもしれません。

交響曲第9番 指揮者別 LーZ

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****** 掲載項目数 238件 ******

 

アバドの演奏

レーベル:  DGG: 471624-2
演奏家:   Claudio Abbado / Berlin PO
日時・場所: September 6 & 7,1999
演奏時間:  total 79:05  ( 25:52 / 14:56 / 12:21 / 26:32 )
録音評:

 良好。 DGGのものとしては最良の部類。

演奏評:

 バランスの良い秀演。 アバドのマーラーの中では最良のものではあるまいか。 世評も良いが、私自身お勧め。

(追記)最近、聞き直してみた。 やはり、印象は名演というより、好演ないし秀演。 21世紀に入ってからのものに比べると、中間の楽章がやや荒々しい感じ。 悪くはないのだが。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  DGG : 423564-2
演奏家:   Claudio Abbado / Vienna PO
日時・場所: May 1987, Konzerthaus, Vienna
演奏時間:  total 78:40  ( 26:45 / 15:19 / 12:08 / 24:28 )
録音評:

 まずまずだが、やや解像度の悪い録音。

演奏評:

 初めて聴いたときには×だったが、聴き直してみると悪いと言う程ではなし。 しかし、ウィーンフィルの良さはあまり感じない。 期待したほど個々の音が美しくない。 どうせアバドの9番を聴くなら上記の方がお勧め。

総合評価:  ★★
レーベル:  EUROARTS: 2054008 DVD
演奏家:   Claudio Abbado / Gustav Mahler Youth O
日時・場所: April 14, 2004,National Accademy of St. Cecilia, Rome
演奏時間:  total 78:29  ( 24:44 / 15:11/ 12:53 / 25:41 )
録音評:

 私のDVDの再生環境がたいしたことないため、他のCDとの比較は困難だが、それでもかなり良い録音であることは間違いない。 DVDの9番の中ではトップクラスだと思う。

演奏評:

 ユースオーケストラであるにも関わらず、すごい。 各パートのソリストが名人ぞろいである。 また、弦の音が素晴らしい。 全体を通して言えることだが、技術水準が極めて高く、ミスらしいミスが全くないのである。 ライヴだと、メージャーなオーケストラの多くがこの水準に達していないので、これは驚く。 第1楽章冒頭から弦の豊かさに引き込まれる。 この楽章は、アバドの演奏の中でも最速である。 オケの若さをむしろ積極的に活かしているというか、エネルギッシュかつチャーミングな演奏である。 各パートもうまいが、何と言っても弦全体の動きが時にうねるがごとくでありながらしなやかで、ユースオケなのに何で?と思ってしまう。 やや弦が勝ちすぎるきらいもあるが、この曲ではこれは魅力である。 いつも気にしているベルだが、教会の鐘ではなく、チューブラーベルでもなく、真鍮の板らしきものを、柔らかいバチで叩いている。 そのため、衝撃音なしに響きの部分だけが聞こえる。 ガッティの演奏で使ってたのもこれだなと思った。 第2楽章は標準的なテンポだが、弦がしっかりリズムを刻むタイプの演奏。 ホルンのトレモロは合格点。 後半の加速も小気味良く、好演だと思う。 第3楽章は、幾分遅めかなと思うテンポだが、しっかりと音を刻んで行く感じ。 しかし、トランペットソロのところでほとんどテンポを落とさないので、結果的には速めの演奏となっている。 コーダ付近のアッチェルランドも危なげなくこなしている。 そして、終楽章は、このオケの売りである弦の音をこれでもかと堪能できる。 さらに、この楽章の演奏の後半部から徐々に会場の灯りが落とされ、舞台上も最後は薄暗がりの中での演奏になるという演出がほどこされている。 そして、弦楽器の最後の響きが消えた後もアバドはそのまま動かない。 静寂がいつまでも続き、我慢しきれなくなった客が拍手を始めるまで、薄暗がりの中に立ち続けるのである。 これ、反則だよね。 しかし、聴衆は大感激である。 まあ、ヴィジュアルな演出はともかくとしても、名演だと思う。 ちょっとホルンの音色に物足りなさを感じるのと、第3楽章のやり方が私の好みとずれるので、星3つはやらない。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  KARNA MUSIK: KA-138M CD−R
Belsona Classics: BECL0108/0109 CD−R
演奏家:   Claudio Abbado / Berlin PO
日時・場所: May 10, 1994, Musikverein, Vienna
演奏時間:  total 85:15  ( 27:35 / 15:28 / 12:47 / 29:25 )
録音評:

 KARNA MUSIK:   録音は、はっきり言って悪い。 変にもやもやした感じだし、フォルテでやや割れるところがある。 それに、なんかシャーシャーしたノイズが入る。
Belsona Classics:  こっちは優秀で解像度も良く、ノイズもない。 CD−Rとしてはトップクラス。 ただし、やや低音が薄い。 

演奏評:

 演奏は、かなり良い。 アバドの基本的解釈は、この頃から現在までほぼ変わっていないように思う。 細部には違いがあるものの、大筋では上述のユース管との演奏と同じである。 まず、第1楽章の弦の動きのしなやかさにぐっとくるし、木管楽器は全て言うことなし。 ベルは上述のと同じものだと思う。 ホルンの音色も良い。 第2楽章のホルンも危なげなし。 第3楽章のテンポの取り方も同じで、だから、私は気に入らない。 終楽章の弦も素晴らしい。 唯一この演奏の特徴と言えるのが、この楽章のコーダで、通常の演奏より極めて遅い。 時々、立ち止まりながら進む感じである。 このために、アバドの他の演奏より終楽章が3〜4分長くなっている。 その効果であるが、見事といえる。 最近のアバドがこれをやらないのは、体力的に無理なのかもと思ってしまう。 最後の1音が消えてから拍手が始まるまでは、この演奏ではまだ20秒強というところ。 演奏の内容はDGGのベルリンフィルとの演奏と互角かそれ以上であり、第3楽章の件を差し引いて、星二つ半だが、録音にかなり難があるので、星半分差し引くことにする。

追記:その後Belsona Classicsの方を入手して再試聴したが、やはり星2つ半という演奏評価は変わらない。 しかし、こっちは録音のマイナスはないので、総合評価を星2つ半に訂正する。 

総合評価:  ★★☆
レーベル:  KAPELLMEISTER: KMS-027/28 CD−R
演奏家:   Claudio Abbado / Berlin PO
日時・場所: August 25, 1994,London
演奏時間:  total 83:33  ( 27:37 / 15:16/ 12:51 / 27:49 )
録音評:

 アナログ録音らしいが、ノイズは最小限と言える。 音自体はきれいなのだが、ホールのせいなのか非常に残響が大きい。 第1、第4楽章ではさほど気にならないが、第2、第3楽章では、気分はもう大浴場!

演奏評:

 上述と時期的にもほぼ同じ。 解釈も同じと見てよく、楽器も同じものだと思う。 演奏の水準も遜色ない。 ただ、非常に音はきれいなのだが、ホールトーンが強すぎるのが中間楽章ではマイナスとなり、これも星2つどまり。

総合評価:  ★★
レーベル:  KAPELLMEISTER: KMS-098/99 CD−R
演奏家:   Claudio Abbado / Vienna PO
日時・場所: May 17, 1987,Vien
演奏時間:  total 79:06  ( 26:47 / 15:07/ 12:22 / 24:50 )
録音評:

 はっきり言って録音は悪い。 典型的な残響過多の風呂場録音である。 ために、細部がやや聞き取りにくい。 また、フォルテシモでときにサチる。 

演奏評:

 DGGのものとほぼ同時期のライブ。 演奏時間もほぼ同じだが、印象が違い、かなりいい演奏と感じる。 第1楽章から弦がきれいである。 ホルンかなり良い音を出しているが、最後のフルートとの掛け合いのはじめの所で吹き損ないがあり、惜しい。 第2楽章のホルンのトレモロは確信犯的にごまかして、テンポが遅くなるのを避けている。 中間部からのテンポアップは大きく、私好み。 特に最後の方はきわめて速い。 第3楽章も少し速めでなかなか良いテンポ。 トランペットソロでの減速はそこそこ。 このトランペットの音色が妙に暖かく、素敵だが天国的ではない。 最後は思いっきりアッチェルランドをかけているが、弦が完全に追随しており見事。 最終楽章の弦が実にすばらしい。 特に弱音のヴァイオリンがちょっと他では聞けない音色を出している。 おそらくウィーンフィルの9番としては最高の演奏の一つだろう。 録音がよかったら、星2つと3/4という所だが、何しろ風呂場っぽいのはつらい。

総合評価:  ★★
レーベル:  SunJay Classics: SUCD-111-K CD−R
       Valkyrie Disc:VD 1026(2) CD-R
演奏家:   Claudio Abbado / Berlin PO
日時・場所: May 12, 1995, Amsterdam
演奏時間:  total 84:01  ( 27:25 / 15:14/ 12:40 / 28:42 )
録音評:

SunJay Classics:  クリアで分解能が良く、残響も適度。 ノイズもほとんどないが、最終楽章終結部の再弱音のところでかすかにハムのようなノイズが入っている。 しかし、よほど注意して聞いていない限りわからないレベル。
Valkyrie Disc: クリアで高解像度。 残響適度で音も良いが、ホワイトノイズが多い。 しかし非常に魅力的な音である。

演奏評:

 1994年の演奏と非常に近い。 だから第3楽章にやや問題があるが、最終楽章は、最後にあの目一杯引っ張るやり方を採用しており、素晴らしい。 ただ、ホルンの出来が今ひとつなのと、わずかだが弦のアンサンブルが崩れかかるところがある。 ちょっと厳しいが、星は2つとしておく。
 PS:Valkeyrie盤を聴いたら、音がとても瑞々しく、演奏の熱さが伝わってきた。こちらはあと半分増やして2つ半あげたい。

総合評価:  ★★☆

アブラヴァネルの演奏

レーベル:  VANGUARD CLASSICS: 08 6177 72
演奏家:   Maurice Abravanel / Utah SO
日時・場所: May 3-10,1969
演奏時間:  total 82:44 ( 28:37 / 16:05 / 12:36 / 25:26 )
録音評:

 残響がやたら多く、時に風呂場で聞いているような感じの部分さえある。 ホールの残響ではなくて、人工的に付け加えたエコーか? やたら中低音が厚く、どうやらイコライジングしているようである。 聞いていてあまり気分の良い音ではない。

演奏評:

 イコライジングのせいか、やたら音響的に分厚いが、あまり豊穣な感じはしない。 全体に、テンポをあまり変化させないタイプの演奏である。 第1楽章はそれなりにまとまっていて、あまり奇異なところはないが、第2楽章は遅い感じがする。 軽やかさがなく、重ったるい。 第3楽章はかなり癖が強い。 演奏時間だけみると速めの演奏のように見えるが実際には遅い演奏で、中間部のトランペットソロのところから、通常速度を落とす所を、この演奏ではむしろ気持ちテンポアップするので全体としてこの楽章の時間が短くなっているのである。 実際に聞いてみると、あまり類のないグロテスクな第3楽章となっている。 終楽章もオーソドックスだが、大味である。 全体に残響が強すぎてソロ楽器が音響の中に埋没してしまい、すがすがしさに欠ける。 オケの音色は魅力的とは言えないが、事故らしい事故はない。

総合評価:  ★☆
レーベル:  VIBRATO: VLL480 CDーR
演奏家:   Maurice Abravanel / Utah SO
日時・場所: 1974
演奏時間:  total 82:19 ( 28:16 / 15:51 / 12:32 / 25:15)
録音評:

  テープヒスはそこそこだが、終始ブーンというハム音が聞こえており気にし始めると耳につく。 残響はほどほど。 高音部がややキンつく。 時々ガサゴソいうノイズがあるのと第1楽章と第4楽章で突然音量設定が動くところがある。

演奏評:

 第1楽章冒頭から標準的な速さで始まるが、途中からだんだん遅くなる。さらに速度的なメリハリも付けるが遅くなる方向に向かい続け、時にスローモーションのような動きも見せる。弦の音もホルンの音もまずまず。 ベルは普通のチュブラーベル。 第2楽章は冒頭から遅め。ホルンのトレモロはヘロヘロした音だが何とか吹けている。 弦がギシギシ刻んだり、アクの強い演奏。 中間部のテンポアップは少なめ。 そのあともテンポを揺さぶりながら、どんどん遅くなる。 最後にテンポ回復。 第3楽章冒頭、おそい! 異常に遅い。 その後おそろしく息の長いアッチェルランドで少しテンポアップするが、遅めの範疇。 トランペットソロのところではほとんどテンポダウンしないので、ここからしばらくはむしろ速め。ミスなく吹きこなしているが、音色に神々しさはない。 その後コーダに向かって少し速くはなるが、ラストのアッチェルランドはほとんどかけず、そのままゴール。最終楽章冒頭は標準的なテンポで引っぱりも控えめ、弦の音もホルンもまずまずで、平凡。 ところが、途中からどんどん遅くなり、ためや引っぱりが目立つようになる。 クライマックスは熱くはなく奇麗。 コーダは、ダイナミックレンジが取れないためpppではなくmpくらい。 死ぬようではないが穏やかできれい。 ユニークな演奏で評価は分かれるところだが、私は嫌いではない。 しかし、ノイズとの戦いは激しいので、かろうじて星2つ。

総合評価:  ★★

秋山和慶の演奏

レーベル:  fontec: FOCD6021/2
演奏家:   Kazuyoshi Akiyama / Kyushu SO
日時・場所: November 10,2011, Acros Fukuoka symphony Hall, Fukuoka
演奏時間:  total 84:22 ( 29:07 / 16:32 / 13:52 / 24:51 )
録音評:

 クリアで解像度良くノイズもない。 残響も適度で瑞々しい音である。 好録音。

演奏評:

 かなり独特のためや引っぱりのある演奏。 第1楽章冒頭からやや遅めのままテンポアップしない。 弦は濡れた良い音である。 後半にややテンポを動かすが、何か独特の間合いである。 ティンパニ連打後のタムタムは珍しい位重い音。 ベルは正しいチューブラベル。 最後のホルンとフルートの掛け合いの音色にやや不満は残るが、この楽章の出来は非常に良く★3つに迫る。 第2楽章はやや遅め、ホルンのトレモロは吹いてはいるが、揺らし方が遅いというか、音符の数が少ない。 この楽章はコントラバスが妙に頑張っている。 中間部になってもテンポアップしない。 この楽章はどうも重ったるい。 第3楽章は、冒頭からやや遅めでトランペットソロのところで更にぐっと遅くなる。 トランペットソロは下手ではないが、天使はおりてこない。 この部分でトランペットと掛け合いになるオケ部分がだんだん速度を落とすという珍しい荒技を使う。 それでいて、最後のアッチェルランドはかなりのレヴェルまで加速している。 第4楽章冒頭の弦の響きが独特で、分厚くはないがふわっとした感じで妙に暖かい。 これは非常に珍しいが、なかなか良い感じ。 この楽章も基本のテンポは標準的だが随所にためや引っぱりがあってテンポが動く。 ホルンの音色は悪いとは言えないが微妙。 最後は悲劇性を拒否した静かな死。 全体を通して異端の演奏に入ると思うが、日本の地方オケを使ってこの演奏をやってのけるのは凄いと思う。 この指揮者を見直した。

総合評価:  ★★☆

アルブレヒトの演奏

レーベル:  inseder: OS114-CD
演奏家:   Gerd Albrecht / Humburg State PO
日時・場所: 1991
演奏時間:  total 81:19 ( 26:22 / 16:52 / 14:21 / 23:44 )
録音評:

 音は悪くないが、ライヴなのに会場騒音がほとんどなく、拍手も切られている。 そのためにライヴ録音特有の臨場感がないのが残念。

演奏評:

 ライヴの割に事故がほとんどない。 かなりうまいオケだと思う。 第1楽章はかなりいい出来で期待させるが、第2楽章が遅くてノリが悪く間延びした感じになる。 第3楽章もやや遅めで重ったるい。  終楽章でときどき音が一瞬なくなる妙な間があく瞬間があり、音楽がプツプツ途切れる感じがする。 この楽章で最初にホルンソロが登場するところで、とんでもなく嫌な音色を出してくれる。 全体に弦はいい音を出しているのだが、金管群は時々分厚くなりすぎ、とくにホルンソロは荒っぽい。

総合評価:  ★★
レーベル:  Yomiuri: DMCL-30077
演奏家:   Gerd Albrecht / Yomiuri Nippon SO
日時・場所: December 13,1997 , Suntory Hall, Tokyo
演奏時間:  total 71:06 ( 22:13 / 14:57 / 12:05 / 21:51 )
録音評:

 素晴らしいと言うほどではないにせよ、十分な水準にあり、ノイズも少なく残響もまあまあである。

演奏評:

 まず、上記のものと演奏時間を見比べて頂きたい。 これは、まるっきり別人の演奏かと思うくらい変化している。 この演奏は9番の演奏の中では最速のものの一つである。 第1楽章冒頭から、速めのテンポを守っており、それほど速度的には揺さぶらないが、速さゆえにアンサンブルが崩れかかるところがある。 しかし、非常にダイナミックレンジの大きな演奏を繰り広げている。 弦は厚く、ブラスも力強い。 ベルはチューブラーベルと思われるが割と重めの音。 なにより、演奏が熱い! 第2楽章がすごい。 少し速めの演奏で弦の刻みがギシギシ言う感じ。 ここまで強い音を出している演奏は希有である。 ワルツと言うより、群舞のタップダンスと言いたい。 第3楽章も速く、それでいて重みがある。 弦がここでも頑張っていて、ブラスの咆哮に対決して負けない。 トランペットソロもうまいが、ここでテンポをあまり落とさない戦略が当たっている。 トランペットソロのあとの弦の動きが感動的である。 そして、第4楽章もきわめて速めの演奏ながら、弦は厚く、各管楽器はうまくて非常に満足感がある。
このディスクはアルブレヒトの常任指揮者就任記念として、読売日響の定期会員に配ったものらしく、きわめて入手性が悪い。 たまたまネットオークションで手に入れることができたが、正直なところ上記のCDを聞いた印象から、期待してはいなかった。 ところが、この演奏を聴いて、読売日響のレベルの高さに恐れ入ってしまった。 少々甘い感じもするが、この演奏を世に出してもらいたい願いを込めて、★三つ差し上げることにする。 

総合評価:  ★★★

アンチェルの演奏

レーベル:  SUPRAPHON: COCO-80028-29
演奏家:   Karel Ancerl / Czech PO
日時・場所: April 7-9 and 12-15,1966
演奏時間:  total 80:08 ( 27:09 / 15:22 / 13:39 / 23:58 )
録音評:

 テープヒスはかなり多めのため、ピアニッシモの所では耳につく。 あまり残響が強い訳ではないが、音像のフォーカスは甘め。 このためソロ楽器があまりくっきりしない。 しかし、聴き辛くはない。

演奏評:

 極めて自然体の演奏。 テンポ設定もオーソドックスで、強弱の付け方にも妙な癖はない。 第1楽章の中間部でティンバニーがテーマとなる4音を打ち鳴らす見せ場に、1つ叩き損なうという事故があり、結構目立つが、それ以外に大きなミスはない。 第4楽章の弦の響きのバランスが通常よりも少し中低音寄りに厚く心地よい。 全体に流れる音楽が暖かい感じがする(バーンスタインみたいに熱くはない)のが特徴で、聴き心地は良いがマーラーらしくないとも言える。 従って評価は分かれるだろうが、私はこういうのもあって良いと思う。

総合評価:  ★★☆

朝比奈隆の演奏

レーベル:  FIREBIRD: KICC158/9
演奏家:   Takashi Asahina / Osaka PO
日時・場所: February 15,1983, Festival Hall, Osaka
演奏時間:  total 86:18 ( 29:03 / 16:41 / 13:54 / 26:40 )
録音評:

 Direct degital recording と銘打っている。 そのためか、会場のノイズをよく拾っており朝比奈氏のつぶやき声らしきものも聞き取れる。 少し、高音がキンキンする傾向だがまあまあか。

演奏評:

 骨太な演奏と言える。 荒っぽいという意味ではなくて低音が分厚くてゴツいのである。 全体に、遅めの演奏には入るだろう。 特に第1楽章は、かなり個性的であり、エッと思うような所で、速度指定を無視して盛り上がりを作ったりしている。ホルンの音色は全体を通して美しくない。 低音のラッパ群が妙に頑張って目立っているために、第2楽章、第3楽はグロテスクでさえある。 これに比べると第4楽章は、割とまともで穏やかである。 お勧めとまでは言えないが、面白い演奏。 私は割と好きである。

総合評価:  ★★
レーベル:  大阪フィル: GDOP-2004
演奏家:   Takashi Asahina / Osaka PO
日時・場所: July 19,1975, Tokyo Bunkakaikan, Tokyo
演奏時間:  total 79:24 ( 25:38 / 16:13 / 13:06 / 22:59 )
録音評:

 FM東京の放送用テープが元音源。 ワンポイントマイク録音とのことで、音の定位は自然であり聞きやすい。 楽章の合間もテープ編集せずそのまま繋がっており、コンサートの雰囲気が良く出ている。 ピアニシモでテープヒスが聞こえるのはやむを得ないところか。 終楽章の勝負所で朝比奈氏のうなり声らしきものも聞き取れる。

演奏評:

 上記の8年前の演奏。 本質的には同じ方向性を持っているが演奏時間を見ても判るように、はるかにさっぱりとしている。 ラッパ群はそれほどバリバリやらないし、ギョッとするような特殊な解釈もない。 ライナーノートによると、ほぼスコア指示通りにテンポ設定して演奏しているらしい。 終楽章の出来が良いので聴き終わったあとの印象が良い。 曲が終わった後、適度に静寂が続いてから拍手が始まる。 当日の客の質の高さがうかがえる。 但し、ホルンの音色がどうも悪い。 このオケの伝統だろうか。 手に入るなら83年の演奏の方を勧めるが、こっちもまあまあ。

総合評価:  ★★

アシュケナージの演奏

レーベル:  EXTON: OVCL-00077
演奏家:   Vladimir Ashkenazy / Czech PO
日時・場所: March 14 and 15,2002,
Rudolfinum Dvorakova sin, Prague
演奏時間:  total 78:57 ( 26:24 / 15:35 / 12:43 / 24:15 )
録音評:

 HDCD対応だが、そうでなくとも非常にいい音質。 解像度高く、かつ適度な残響があるという離れ業を実現している優秀録音である。

演奏評:

 弦がきれいである。 管楽器も皆うまい。 演奏はオーソドックスで、あまり驚くような場所はない。 安心して聞ける感じだが、面白みに欠けるとも言える。 ぼんやり聞いているといつの間にか終わってしまう感じ。 どこをとっても、それなりに美しいのだが、惚れぼれと聴き入ってしまうところはないのである。 リファレンスとしては好適だが、愛聴盤とするには癖がなさすぎるか。

総合評価:  ★★
レーベル:  sydneysymphony: SS0201201
演奏家:   Vladimir Ashkenazy / Sydney SO
日時・場所: May 18-21,2011, Sydney Opera House Concert Hall
演奏時間:  total 82:04 ( 26:58 / 15:52 / 13:21 / 25:53 )
録音評:

 音はきれいでノイズはない。残響も適度であり好録音と言える。

演奏評:

 上記の9年後。 オケも変わってはいるが、それ以上にマエストロのアプローチが変わっている。 第1楽章冒頭、ややテンポは遅めでその後もあまり揺さぶらない。弦はすがすがしい音だがホルンがややエレファントしている。音響的にはかなり分厚い。第2楽章は快速運転で響きがちょっと独特。ホルンはバリつくがトレモロは何とかこなしている。途中テンポはかなり動かすが集結部に向かって目立って遅くなるのはユニーク。第3楽章前半は遅め。しつこいぐらいリズムの刻みが強調されている。何かグロテスクなくらいメリハリがある。トランペットソロのところでの減速幅は小さく、ここは普通の速さ。トランペットソロはうまいが無色透明。こういうのは珍しい。その後、後半はかなり快速運転に変わり私好み。最終楽章はやや遅めで粘っこい。弦の音色はまあまあだが、ホルンにもう少し柔らかさが欲しい。 全体としてユニークであるが、それがすべて魅力にはなっていない。星は2つ。

総合評価:  ★★
レーベル:  Valkyrie Disc: VD 1027(2) CD-R
演奏家:   Vladimir Ashkenazy / Berlin Deutch O
日時・場所: May 3 and 4, 1996, Berlin
演奏時間:  total 82:09 ( 27:35 / 15:21 / 12:44 / 26:29 )
録音評:

 驚くほどリアルな空間再現がされている。しかし、かすかなシュルシュル言うようなノイズが聞こえる。おそらくアナログ放送のエアチェック音源ゆえのノイズだろう。 しかし、そんな音源にしては、えらい生々しい音である。

演奏評:

 上記2つよりは前、前世紀の演奏だが、上記よりだいぶ良い。 第1楽章冒頭からやや遅め。弦とホルンが良い音を出している。途中でテンポは変えるが自然である。ベルは普通のチューブラーベル。 第2楽章は冒頭は標準的なテンポ。ホルンのトレモロは何とかこなしている。中間部でのテンポアップが大きく、後半は快速運転。第3楽章は冒頭からやや速め。トランペットソロのところでの減速幅は小さく、ここは普通の速さ。トランペットソロはうまいが地上的。その後、後半はかなり快速運転に変わり私好み。最後のアッチェルランドで限界を超え、アンサンブルが崩れる。 最終楽章はゆっくり、たっぷり歌い、豊穣な弦の音に包まれるが、すっとピアニシモになる瞬間、氷のような冷たい死の音楽が垣間見える。 この対比は凄い。 クライマックスはきっちり盛り上がるが下品にならない。最後は静謐な音楽を奏でて終わるが、あくまでも聞こえる音量を保っている。 今まで聴いたアシュケナージのマーラーの中ではこれが一番だと思う。 残念ながら、ライブ故の傷がある。 各楽章に1カ所、アンサンブルの乱れる所がある。 ノイズも気になるギリギリくらいの所にある。 本来星半分くらい減点すべき所だが少し甘くしたい。

総合評価:  ★★☆

バルビローリの演奏

レーベル:  EMI: CDM7631152
演奏家:   John Barbirolli / Berlin PO
日時・場所: January 10-18,1964, Berlin
演奏時間:  total 78:21 ( 26:53 / 14:53 / 13:38 / 22:57 )
録音評:

 1964年当時としてはまあまあか。 ただし、ボリュームを上げるとマスターテープのヒスノイズがはっきりと聞こえる。

演奏評:

 伝説の名演・名盤となっているもの。 両端の楽章のテンポは速めだが中間楽章はそうでもない。 それが、やや仇になり1〜3楽章は暖かいと言うよりぬるい。 演奏にはっきりした傷は無いのだが、何か悪魔的なものが欠けていて、しまりがない感じがする。 ところが、第4楽章になって、これが一変する。 速めの演奏には入るのだが、暖かい中にも筋が一本ピンと通り、背筋がぞくぞくするような心地よい緊張感も伴ってくる。第3楽章まで何だか冴えなかったホルンが、まるで別人のように泣かせる音を出すし、この楽章を聴くとベルリンフィルの弦は本当にこの曲にぴったりの音色だと思う。 第4楽章だけとれば、文句なしに星三つ。 この楽章のためだけにでも手に入れて損はない。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  HUNT: CDLSMH34003
CETRA: ARCD 2062
ETERNITIES: ETCD-196-S CD-R
演奏家:   John Barbirolli / Torino RSO
日時・場所  November 25,1960, Torino
演奏時間:  total 74:00 ( 25:07 / 15:04 / 12:51 / 20:58 )
録音評:

 少々ノイズが多く、良好な録音とは言えない。 おまけに、何故か第4楽章だけモノラル(CETRAおよびETERNITIESでは疑似ステレオ?)である。

演奏評:

 第4楽章が始まった瞬間、悔しいと思ってしまう。 全体がちゃんとステレオで録音されていたらなあと、ため息が出る。 オケがかなり実力不足であることをありありと見せながら、それでもとても魅力的な演奏である。 ベルリンフィルとの録音に4年先立つものだが、演奏の技術水準に大差があり、傷の多い演奏でありながら、第1〜第3楽章にあのぬるさがない。 ピンと一本張りつめたものがあり締まった演奏である。 さすがに第4楽章は弦の音色が比較にならず、ベルリンフィルの方が圧勝だが、それまではどっちかと言えば、こちらの方が私好みである。 しかし、終楽章がモノラルなのが痛い。

PS: その後、最終楽章がステレオと見られるCDを2種入手した。 確かにヘッドホンで聴いてセンターのピンポイントから聞こえてくる感じではなく、聴いていてつらくはないが、それまでの3楽章に比べて明らかに音場が狭く、音像がぼけていて楽器の定位がはっきりしない。 いわゆる疑似ステレオというやつだろう。 久しぶりにこの演奏を聴いてみたが、やはり非常に個性的で魅力に富むものの演奏の技術水準が低く、録音の質を考えると★2つはかなり甘めである。

総合評価:  ★★
レーベル:  The Philharmonic-Symphony Society of New York: NYP9810
演奏家:   John Barbirolli / New York PO
日時・場所: December 8,1962, Philharmonic Hall,New York
演奏時間:  total 79:50 ( 26:44 / 15:33 / 13:34 / 22:47 )
録音評:

 録音は悪い。 もともとラジオ放送用のモノラル音源だが、音がダンゴになって聞こえてくる。 ノイズはさほど気にならないが、音が歪みっぽく、聞いているのがやや苦痛である。

演奏評:

 上記2つの丁度中間頃の時期の演奏であるが、どちらかと言えばベルリンフィルとの演奏に近い。 録音が悪いためはっきりしないが、やや荒っぽい感じがする。 ベルリンフィルとの録音がある以上、これをわざわざ手に入れる必要はないと思う。

総合評価:  ★

バレンボイムの演奏

レーベル:  Warner Classics: 2564 64316-2
演奏家:   Daniel Barenboim/ Berlin State Opera O
日時・場所: November 15,2006, Philharmonie, Berlin
演奏時間:  total 77:56 ( 26:30 / 15:12 / 13:09 / 23:05 )
録音評:

 非常に良い音である。 クリオで残響も程よく、ノイズも無し。 優秀録音。

演奏評:

 全体にやや速めの印象を与える演奏。 第1楽章冒頭は通常からやや速め位で、途中あまりテンポは変えない。 最初のティンパニ連打あたりから速度は遅くなる。 弦と木管はきれい。 ホルンもまあまあ。 低音金管群は程よく分厚く悪魔的。 ただ、ミュートトランペットの音がキチャナイ。 ベルはチューブラではなく鐘を使っているようで、低く響くのはいいのだが、音程が狂っていて気になる。 しばしば通常は聞き取れないような細部が強調されていて面白い。 終結部で思いっきり引っ張るのが特徴的。 第2楽章は冒頭からやや遅め。 ホルンのトレモロはちゃんとやっている。 中間部は非常に速く、その後はまた遅くと、緩急の対比が非常に強い。 第3楽章は冒頭普通。 速くはない。 ところが途中で「ああそうだった」と気がついたかのように唐突に速くなる。 トランペットソロは通常のようにテンポダウン。 このソロは非常にきれいで理想的。 天使が降臨してくる。 最後のアッチェルランドはあまり無理せず無難な範囲。 最終楽章冒頭は思いっきり引っ張るが、その後はやや速めの速度を保つ。 弦が美しく好演ではある。 クライマックスはそれほど粘っこくはなく、終曲はきれいな弦のピアニシモが出来ている。 静かな死が成就されている。 評価は迷う。 部分的に非常に良い所はあるのだが、まだ未消化な感じもする。 あえて星2つにとどめる。

総合評価:  ★★
レーベル:  FKM: FKM-CDR-344/5
演奏家:   Daniel Barenboim/ Chicago SO
日時・場所: June,2006
演奏時間:  total 78:28 ( 26:05 / 15:37 / 13:40 / 23:06 )
録音評:

 クリアで解像度良く残響も適度だが、終始「シュルシュル」という雑音がかすかに聞こえており、弱音部ではやや気になる。

演奏評:

上記とほぼ同時期の演奏だが、オケの差があるのか、印象に差がある。第1楽章、第2楽章と比較的テンポを揺さぶっており、そのやり方はユニーク。弦は良い音だが中音域が厚め。ベルは普通のチューブラーベル。ホルンは全体にやや音質が硬いが第2楽章のトレモロは吹けている。第3楽章は遅めのテンポで冒頭から押すのでトランペットソロのところのテンポダウンは小幅。トランペットは良い音だが独特。天国の調べではないが地上的とも言えない。この辺りから盛り上げ方が凄い。ハープのグリッサンドがここまで強調されているのは珍しい。終曲部に向かってテンポアップするが、あくまでも無理のない範囲。最終楽章冒頭はかなり粘っこく引っ張った後、動きは有るが、穏当な範囲。低弦は薄めだが、弦全体が良い音色である。 クライマックスの前後は割とあっさりとしており、ことさら強調するのは嫌ったようだが、その後、穏やかな音楽が続く。 良い終曲部だと思うが、これは死の音楽ではなく終わりの音楽だと思う。 上記の物よりは心動かされる部分が多い。 ★は甘めだが2つ半。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  DECCA: 4811530
演奏家:   Daniel Barenboim/ Filarmonica della Scala
日時・場所: November 15, 2014, Teatro alla Scala di Milano
演奏時間:  total 75:06 ( 25:11 / 14:40 / 13:00 / 22:15 )
録音評:

 録音機器によるノイズは皆無である。残響はどちらかと言えば少なめで高解像度。 イヤにリアルに会場騒音を拾っており、フォルテッシモでマエストロの足を踏みならす音や、譜面をめくる音、マエストロの唸り声や、椅子の軋む音など、きっちり聞こえてくる。 それは、まあ良いのだが、ややハイ上がりなのか、高音部が幾分キンキンする。 がさつくというほどではないが、音に今一つ潤いがない。

演奏評:

上記の2つの演奏から8年経過しても、曲の解釈の基本ラインは変わっていないところが多い。 随所にユニークなところのある演奏だが、さらに全体に速くなっている。 年取るほど遅くなる指揮者が多い中、これは異例だが、冒頭間も無くから速いなと感じる。 速い中でテンポを揺さぶり、たまに通常くらいのテンポになるのが効いている。 解釈はユニークだが好きである。 しかし、オケの個々の楽器の音色に魅力がない。 また、ホルンの技量に問題があり、第2楽章のトレモロがかすかにしか聞こえないし、実際、吹けていない。 第3楽章は通常テンポでトランペットソロのところのテンポダウンはそれなり。 トランペットはやはり独特で、天国の調べではないが地上的とも言えない。 この演奏でもこのあたりからあとが良い。 ハープのグリッサンドが強調されているのも同様。 最終楽章冒頭はかなり速い。 クライマックスはかなり頑張るが、その後、穏やかな音楽が続く。 解釈は進化しているのだが、オケが今一歩なのだと思う。 ★は、やや厳しいが2つとする。

総合評価:  ★★

バルシャイの演奏

レーベル:  BIS: BIS-CD-632
演奏家:   Rudolf Barshai / Moscow RSO
日時・場所: April 13,1993, Moscow Tchaikovsky Conservatory
演奏時間:  total 75:25 ( 25:27 / 16:11 / 12:55 / 20:52 )
録音評:

 ライヴ録音だが、残響適度であり、そこそこの解像度も保たれている。 ノイズも少なく聞きやすい。

演奏評:

 全体に、音のエネルギーが強いと言うか、熱い演奏である。 第1楽章は割とオーソドックスで、弦の音も悪くないが、何しろホルンの音が妙にけたたましい。 ティンパニーのピッチもやや怪しい所がある。 しかし、これを差し引いてもまあまあの感じがする。 第2楽章が、この演奏中では最も個性的で、かなりテンポを大きく変え、メリハリをつけているので全体としては決して速い演奏ではないのにしまった感じがする。 第3楽章は速めだが、それでもロシア人指揮者の中ではゆっくりやっている方である。 第4楽章冒頭の引っ張り方に独特の節回しがある。 その後は快速演奏だが、音をしっかり出してきて分厚いので、慌てているような印象がなく、弦の音色は楽しめる。 しかし、ここでもホルンソロが金切り声をあげて全体をぶち壊しにしている。 速い演奏だが、音響的に厚く、わりに満足感の出る演奏のはずなのだが、ホルンのせいで星半分マイナスとしたい。

総合評価:  ★★

バーンスタインの演奏

レーベル:  Pandra's Box: CDPB232/3 CD-R
DGG: 435378-2
演奏家:   Leonard Bernstein / Berlin PO
日時・場所: October 4,1979, Philharmonie, Berlin
演奏時間:  total 81:52 ( 27:37 / 15:59 / 12:04 / 26:12 )
録音評:

 一時ネットなどでも話題となっていた「いじられた」DGG録音と、「いじっていない」CD-R盤とを聞き比べてみた。 確かに音場感はCD-R盤の方に分があるが、その差は大きくはなくテープヒスの残り加減は同程度、マエストロのうなり声や足踏みの音はDGG盤の方が良く拾っている。 DGG盤は2日分の(あるいはゲネプロの分も含めた)録音から編集したのではとの議論があるが、私はそれならそれで良いのではないかと思う。 スタジオ録音ならそういうことをやっているわけで、実際にバーンスタインの一連のマーラー録音ではその手法がとられているのだから、問題にすべきなのは、結果として出来上がったCDの出来がどうかに尽きる。 で、この2つのCDの最大の違いは、演奏終了後の拍手の有無である。 DGG盤には拍手がなく、CD-R盤には拍手まで入っている。 バーンスタインの意図なのかDGG側の考えなのか解らないが、彼の一連のマーラー録音では拍手がカットされている。 しかし、アバド/ベルリンフィルの9番で話題になったように、ライヴ録音での拍手は重要な演奏の一部だと私は思うのである。 このCD-R盤では約1分半ほど拍手が録音されているが、演奏終了後、数秒たった所でひとりの聴衆の遠慮がちな拍手から始まり、それが徐々に拡大して、止む無くフェードアウトされるまでずっと拍手のクレッシェンドが続き、その間ブラボーなどの叫び声は一切聞かれないという凄みのあるものである。 私は初めてこのCDを聞いたときこの拍手で背筋がぞくぞくした。 だから手に入るものならCD-R盤はそれなりに意味はあると思うが、演奏そのものを聞くためにはどちらでも大きな差はないと思う。 録音には不満はないレベルである。

演奏評:

 さて、問題の演奏内容であるが、あえて言うなら良い演奏と言うよりも激しい演奏ないし凄い演奏だと思う。 全体の流れとしてみた場合、バーンスタインのスタイルとして晩年ほど速度設定が遅くなる傾向にあり、これはマーラーとて例外ではないのだが、この演奏に関して言えば、2ヶ月前のボストン響との演奏に比べて、むしろかなり速いのである。 最終楽章を除き、各楽章とも1分近く速くなっている。 この差は単にテンポの差というレベルの問題ではなくそこに表現しようとしている音楽が違うとさえ感じられる。 具体的には、第1、第3楽章でとりわけ激しく荒々しいという、マーラーの音楽の本質から言えば必ずしも当てはまらない音楽が展開されている。 第3楽章は非常に速いが、軽快というイメージとは遠く、ある種の怒りさえそこに感じられる。 演奏全体を通じて、聴衆に対し非常に強い緊張を強いるような所があり、それが最後の拍手のありように現れていると思うのである。 実際に第3楽章では、あまりの荒々しい音楽表現に付いて行ききれず、一部で荒っぽくなったり、アンサンブルが崩れかかる所がある。 某評論家などは、オケがおそるおそるでちっとも名演でないなどと批判しているが、こんな要求をされてまともに応えきれるオケなどあるものかと思う。 むしろベルリンフィルはよくぞここまで付いて行ったという感じである。 では、これは名演なのかと言えば、バーンスタインの音楽として、録音に残されたものの中では最高傑作とも言えるものだと思う。 しかし、マーラーの9番と言う曲の演奏としては、何か違うというか、やり過ぎだよこれはという感じである。 で、総合評価として音楽的に星三つを与えることにする。 しかし、マーラー9番のお勧めとしては、むしろ後年のコンセルトヘボウ管との演奏の方を勧めるという立場を取りたいと思う。

総合評価:  ★★★
レーベル:  FIRST CLASSICS: FC-109-110
演奏家:   Leonard Bernstein / Boston SO
日時・場所: July 29,1979
演奏時間:  total 84:52 ( 28:48 / 16:47/ 12:30 / 26:47 )
録音評:

 割とクリアではあるが、テープヒスはしっかりと聞こえる。 全体で数カ所、会場騒音(ドタン、バタン、エックシ!の類)が驚くほど大きな音で入っている。

演奏評:

 伝説のベルリンフィル客演の2ヶ月前の演奏。 これも、ボストン響という他人の庭での演奏である。 バーンスタイン独特の引っ張り方があり、テンポを頻繁に揺らしているが、オケが完全には付いて行っていないような感じがする。 各楽章とも後半の方がノリが良くなっている。 個性的なのは第1楽章だが、出来の良いのは第4楽章か。 ただし、第4楽章の聴かせ所でホルンソロが出そびれるという事故を起こしており惜しまれる。

総合評価:  ★★
レーベル:  DGG: 419208-2
演奏家:   Leonard Bernstein / Concertgebouw O
日時・場所: May and June 1985, Concertgebouw, Amsterdam
演奏時間:  total 89:39 ( 29:52 / 17:26 / 11:47 / 30:34 )
録音評:

 このバーンスタインのシリーズは全てそうだったと記憶しているが、ライヴ録音を編集したものらしい。 しかし、会場の騒音や拍手などは全て整理されてしまっていて、スタジオ録音と大差なく聞こえる。 逆にいえば、よけいなノイズがなく聞きやすいとも言える。 残響の程度は適度であり心地よい。 DGGのこの頃の録音としてはトップクラスだろう。

演奏評:

 バーンスタインの9番として手に入る正規録音の中では1番最後のもの。 第1、2、4楽章は一番遅く、第3楽章は1番速いという一点だけみても、一番レニー節が炸裂している演奏と言えるだろう。演奏上の傷は最初の録音と並んで少ないように思う。 その中で、第1楽章冒頭のホルンソロが不安定で、いきなり心配させられる。 どうも、出だしの所でチューニングがずれており、数分間オケ全体よりピッチが高い状態で吹いている。 その間は音色も妙に硬質で情けない音がしている。 しかしその後は持ち直し、音色も満足の行くものに変化している。 第1楽章は出だしこそ、それほど極端に遅くはないものの、中頃からは粘っこくなり、時におどろおどろしいまでの引っ張り方が出てくる。 これを好む人と、逃げ出したくなる人に分かれるだろう。 私は、腰を浮かせながらもその場を離れられなくなり最後までつきあってしまう感じ。 昔はこういうのは大好きだったが、最近はもうひと味薄口の方が好みになってきた。 第2楽章は遅い! 遅い演奏の中では、弛緩した感じはなく良い方だとおもうが、クレンペラーのやっていたものほどの徹底性はなく、惚れ込んでしまうほどではない。 逆に第3楽章は速い! これは、極めて私好みと言える。 そして、第4楽章が最大の聴きものであるのはバーンスタインの他の演奏と同じ。 後半に強引と言えるほど引っぱり加減になる点を除けば、終楽章の演奏の中ではトップクラスと言える。 全体に楽器の音色がすばらしい。 弦の音は、コンセルトヘボウ管の美点が遺憾なく発揮されているし、ホルンも冒頭の迷走を除けば満足いくレベル。 第3楽章のトランペットソロも良い。 ただし、第1楽章のベルがチューブラーベルでないらしく、嫌な音色である。 どうも、コンセルトヘボウ管のベルは伝統的にこれのような気がするが、私はこの音は嫌いだ。 全体として私はバーンスタインの9番としてはこれを1番に押す。 第2楽章の速さの問題と第1楽章の冒頭のホルンの件があるので星三つとはしないが、人に勧めても良いものの一つとは思う。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  CBS: M3K42200
演奏家:   Leonard Bernstein / New York PO
日時・場所: December 16,1965
演奏時間:  total 79:34 ( 28:18 / 15:48 / 12:31 / 22:57 )
録音評:

 当時のアナログ録音からのリマスタリングとしては、テープヒスが少なく優秀。 しかし、楽器の配置がおかしい。 おそらくマルチマイクからのトラックダウンだろう。 だとすれば、その中ではましな方で、聞き難くはない。

演奏評:

 若い頃の演奏と言うこともあって、くどくない。 後年のバーンスタイン流ドロドロの世界の片鱗はあるが、異常な感じはしない。 その分、やや物足りないとも言えるが、このあたりは好みの分かれるところだろう。 第4楽章が一番出来が良いように思うが、ホルンの音色が今ひとつ私好みではない。

総合評価:  ★★
レーベル:  DGG: 072229-2 ( DVD )
演奏家:   Leonard Bernstein / Vienna PO
日時・場所: March 1971, Philharmonie, Berlin
演奏時間:  total 82:59 ( 28:16 / 16:17 / 11:43 / 26:43 )
録音評:

 これはDVDなので、普段聴くときと同じシステムでの比較ができないが、それを差し引いても同時期の録音としては、あまり大したものではないと思う。 しかし、映像はこの曲とウィーンフィルを知る上でとても参考になり面白い。

演奏評:

 まだバーンスタインが若いだけあって、ねちっこさは程々であり、私にとっては聴きやすい演奏である。 それでも、彼特有のうねらせ方は第1楽章、第4楽章でしっかりと発揮されており、それほど物足りない感じはしない。 両楽章では弦の良さが十分に出ているが、第1楽章中頃でティンパニーがテーマの4音を最初に叩くところで見事にチューニングが狂っており、慌てて直している様子が映像化されている。 また、この両楽章でのホルンの音色にもやや不満が残る。 何だか音色が硬いのである。 さらに、第2楽章で軽快に進む音楽がホルンの機動力の限界にあって律速されているのが解る。 要するに、ウィーンフィルの使っているあの独特の構造をしたホルンはマーラーの要求する機動性を満たせないのではあるまいか。 第3楽章は、12分を切るかなり速い演奏だが、それでも何とかホルンが付いてきたので褒めるべきだろう。 しかし、無理して速く吹いているため、この2つの楽章でのホルンの音色は芳しくない。 ウィーンフィルの9番の演奏の多くが第2楽章を遅めに演奏することが多いのはこの辺りにやむを得ぬ事情があったのかと独り合点している。 第3楽章はかなり速く、トランペットソロで減速するものの、それでも速いと言う感じ。 終楽章に至って、速度的問題による苦しさがなくなり、演奏全体に余裕が戻ってほっとするが、最後までブラスセクションからは惚れぼれするような音色は聴かれない。 でも、映像はとても魅力的なので、反則かとは思うが星半分おまけしよう。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  Lanne: LHC-7013 CD−R
演奏家:   Leonard Bernstein / Israel PO
日時・場所: September 5, 1985
演奏時間:  total 87:16 ( 28:10 / 16:40 / 11:28 / 30:58 )
録音評:

 録音は当時のものとしてはあまり良くない。 テープヒスは仕方ないとしても、なんだか音がキン付いて潤いがない。 解像度が今一で音抜けも悪い。 時々テープのトラブルと思われるノイズや座席のきしむ音が入る。 

演奏評:

 最近になって相次いでリリースされたイスラエルフィルとの録音のうち後の日付の方で、DGGのコンセルトヘボウとの録音に時期的には重なっている。 当然だが、DGGの録音とは非常に似た解釈となっている。 第1楽章冒頭からDGGよりもこっちの方がより自在にテンポを動かしているようである。 弦は甲乙付け難い音色を出しているが、金管はだいぶ荒いように思う。 ベルはこちらはチューブラーベルであり私好み。  第2楽章は、よりまともなテンポだが、ホルンのトレモロは残念ながらごまかし気味。 妙に明るい感じである。 テンポの変更はかなりメリハリあり、魅力的である。 第3楽章は、これも私好みの快速演奏。 トランペットソロは音色は良いものの、音程が時々怪しくなり残念。 でもここからしばらく感動的かつ華やか。 最後の方のテンポの揺さぶりは凄い。 最終楽章はゆっくり目のテンポでレニー節に十分陶酔できる。 いい出来である。 ただし、終曲のところで一瞬弦のアンサンブルが乱れるところがあるのが惜しい。 全体としてみて、テンポ的にはほぼ理想に近い演奏なのではないかと思うし、事故の少ないライブであるが、金管が荒く、木管の音色に魅力がないのが難。 録音の悪いことも加味すると、★は2つ止まり。

総合評価:  ★★
レーベル:  Lanne: LHC-7002 CDーR
ETERNITIES: ETCD-031/2-S CD−R
演奏家:   Leonard Bernstein / Israel PO
日時・場所: September 3, 1985
演奏時間:  total 84:22 ( 27:06 / 15:40 / 11:20 / 30:16 )
録音評:

Lanne:
録音はかなり悪い。 空間分解能が悪く、ステレオには違いないが、音がすべてセンターによっている。 ダイナミックレンジも大きくはなく、全体に音質が歪みっぽい。 客席でポータブル録音機で録音したのが露骨にわかるし、そのようなノイズも頻回に入る。
ETERNITIES:
こちらも良い録音とは言いかねるが、明らかに同一演奏の別録音。 ノイズはより少なく、空間的広がりがあるので、いくらか聴きやすい。 

演奏評:

 まず演奏時間を上記と比較していただきたい。 わずか2日違いだが、こちらの方が3分も演奏時間が短くなっている。 この3分が、とんでもなく大きな差を実は反映している。 この演奏に立ち会った人はものすごく幸福で、ものすごく不幸かもしれない。 これを聞いちゃったら、以後どんな演奏を聴いても物足りなさを感じてしまうのではなかろうか。 この日のイスラエルフィルはほぼ完璧である。 気まぐれとも思えるマエストロのバトンに完璧に追随している。 第1楽章では随所に独特のためや引っぱりを交えながら流麗であり、バーンスタインの他のどの演奏よりチャーミングである。 第2楽章も変幻自在にテンポを変える。 概して悪魔的であり、この傾向は第3楽章で結実する。 極めて速く禍々しいものに満ちあふれながら、熱い。 あまりにも激しい演奏のためトランペットソロでは天使ではなく堕天使がおりてくる。 そして終楽章でのテンポ設定は極めて独創的かつ魅力的である。 充実した時が流れた後に静かでひそやかな死が訪れる。 その凄みにおいて、あのベルリンフィルとの演奏を凌駕すると思う。 この日あまりにも凄い演奏をしちゃったものだから、2日後は燃え尽きた後だったのかも、と思ってしまう。 残念ながら録音は悪い。 噴飯ものに悪い。 しかしこれは、本当は歴史的名演なのである。 本当は星3つあげたい。 しかし、涙をのんで半分だけ削る。
PS:  ETERNITIESの録音を入手。 録音はだいぶましだが、まだ減点を免れるレヴェルによくはない。 評価は変更せず。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  helicon: 02-9656
演奏家:   Leonard Bernstein / Israel PO
日時・場所: August 25, 1985, Tel-Aviv
演奏時間:  total 88:32 ( 29:27 / 16:43 / 12:07 / 30:15 )
録音評:

 録音は上記のものよりはましだが、空間分解能はそんなに良くないし、音抜けも悪い。 しかし、鑑賞に耐えるレベルではある。 

演奏評:

 上記2つの直前の頃、同じオケとの前月の演奏。 9月3日よりは5日に近い。 従って、3日の演奏ほどの凄まじさはない。 しかし、ものすごい演奏には違いない。 ただ、解釈上は素晴らしいのだが、ホルンをはじめとするブラスセクションが非常に荒いのが残念。 この分を減点せざるを得ないので★は2つ半。

総合評価:  ★★☆

ベルティーニの演奏

レーベル:  EMI: CDS7543872
演奏家:   Gary Bertini / Koeln RSO
日時・場所: February 20,1991, Suntory Hall, Tokyo
演奏時間:  total 86:15 ( 27:58 / 15:55 / 13:48 / 28:34 )
録音評:

 ノイズは少なくきれいな音ではあるが、なんだかもやが1枚かかっているような感じで、楽器の音像がはっきりしない。 サントリーホールのせいかもしれないが、もう少し輪郭のはっきりした音が欲しい感じはある。

演奏評:

 弦の音が良い、ホルンの音が良い。 トロンボーンの咆哮もティンパニーの強打も適度に悪魔的で、うるさくないがメリハリが効いておりうまい。 全体を通して傷らしい傷がない、ライヴとしては優秀な演奏である。 ベルティーニの解釈は非常に私の好みに合う。 両端の楽章をゆったりと進めながら、第2、第3楽章をキリッとしめるやり方は大好きである。 第1楽章中でも適度にテンポを揺らしているが下品にはならない。 第2楽章の快速運転は小気味良く、中間部では適度にテンポを落としている。 第3楽章もかなり速めの演奏ながら、トランペットソロのところで減速した後、さらに速度を落としてじっくり効かせるという独特のやり方もみられて、これが結構説得力がある。 第4楽章冒頭では、いくつかの演奏でみられるような、のっけから目一杯引っ張ると言うやり方はとらず、もっぱら弦の音の豊かさに浸るのに適度なテンポを保ち、中間部で通常よりかなり速度を落とすという個性的なやり方をしている、ここらあたりは人によっては限界を超えて遅いと感じるかもしれない。 わたしはOKである。 この楽章で弦の音は特にすばらしく、ホルンの音色が泣かせる。 厳密に言えば、少々録音の解像度に不満があるが、それを言うのは贅沢すぎる気がするので、これは星三つです。

総合評価:  ★★★
レーベル:  fontec: FOCD9259/60
演奏家:   Gary Bertini / Tokyo Metropolitan SO
日時・場所: May 30,2004, Minatomirai Main Hall, Yokohama
演奏時間:  total 84:42 ( 27:57 / 14:58 / 13:34 / 27:48 )
録音評:

 適度な残響があり、細部にわたって解像度もよい優秀な録音である。 ただ、マエストロのうなり声を、ほぼ完全に拾っており、これが、瀕死の老人の喘ぎ声のように聞こえて、ややつらい。

演奏評:

 上述の演奏より10年以上経過し、ベルティーニ最晩年の演奏となっているわけだが、驚くほど解釈が変わらず、演奏時間もほとんど同じ。 年降るごとにずるずると演奏時間が伸びてゆくご老体が多い中で、これはなかなか凄いことだと思う。 もちろん、細部に違いはあるが、これはベルティーニの変化というより、オケの違い、ホールの違いによるところが大きいのではないかと思う。 第1楽章は、上述のものとほとんど同じ。 ただ、弱音器付のトランペットの音が何とも不安定で情けないのが傷である。 第2楽章もおおむね同じ解釈だが、ホルンが残念ながら速いパッセージをこなしきれていない。 中間部のテンポアップがより極端なので、演奏時間は短くなっている。 第3楽章はテンポの揺らし方が幾分穏便になった感じ。 この楽章のトランペットはなかなかいい出来である。 終楽章は、上述の演奏より冒頭からたっぷり引っ張るが、その後はかなり近似した演奏。 こっちの方が幾分熱いか。 全体に弦の音色が良いし、木管楽器のソロはみな出来がいい。 ホルンは第2楽章だけつらかったが、総じて音色が良く、許せないほど悪いわけではない。 都響としては、大健闘なのではあるまいか。 ケルン放送響との技術水準の差分を無視はしたくないので、差はつけるが名演である。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  KAPELLMEISTER: KMS-053/4 CD−R
演奏家:   Gary Bertini / Oslo PO
日時・場所: March 15,1996, Oslo
演奏時間:  total 88:10 ( 29:03 / 16:21 / 14:32 / 28:14 )
録音評:

 のっけから盛大に電気的雑音が乗っており、最後まで持続的にブーっという音が聞こえている。 ひどく気になる音で、現代録音としては最低。

演奏評:

 実は、悔しいことに入手できるベルティーニの演奏の中では最高の演奏なのではないかと思う。 ベルティーニ自身は円熟の極みにあって、オケもマエストロの要求に充分応えている。 解釈の基本はケルンとのものに近い。 演奏は文句なく★三つだが、録音は噴飯ものの☆1つ。 でも2つはあげないとベルティーニがかわいそう。 でも、これは売り物にならないものを無理に売ってる感じがする。

総合評価:  ★★
レーベル:  KAPELLMEISTER: KMS-163/4 CD-R
Lanne Histrical Collection: LHC-4033(2) CD-R
演奏家:   Gary Bertini / Stuttgart RSO
日時・場所: January 20,1984, Stuttgart
演奏時間:  total 97:53 ( 32:20 / 16:44 / 16:38 / 32:11 )
録音評:

 テープヒスはかなりはっきり聞こえる。 解像度はまずまずでマエストロのうなり声を拾っているくらいだが、全体に音響が中高音よりで、時に歪みっぽくなる。 また、全曲を通じて時々ピリピリというノイズが入る。 後からLanneのものも入手したが、残念ながら同一音源だった。

演奏評:

 入手できた範囲では一番古いものだが、こいつが一番異端的である。 異様に遅い演奏である。 しかし遅さが苦痛にならない。 全体を通して腹が据わっているというか、けして急がない。 中間の2楽章が私の好みとしてはかなり遅いのだが、実は緩急のメリハリはあり、これはこれで許すという感じ。 最終楽章も中間部以後を遅くするという彼独特のやり方が既にとられており、最後は静かな死を迎えている。 オケは非常にきれいな音を出しており、星3つあげても良い内容なのだが、録音に難があり、あえて星半分減点する。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  Weitblick: SSS0081-2
演奏家:   Gary Bertini / Vienna SO
日時・場所: February 3,1985, Musikvereinsaal, Vienna
演奏時間:  total 85:14 ( 28:09 / 15:27 / 13:09 / 28:29 )
録音評:

 テープヒスは聞こえるものの、まずまずの録音。

演奏評:

 上記の1年後の演奏だが、随分時間が短くなって、後年のものとほぼ同じになっている。 全体に良い音が出ており、これもかなりの好演なのだが、ホルンに難がある。 第1楽章では完璧に近い音色が出せているのに、一瞬どこを吹いているのか分からなくなったかのような、おかしな吹き方のところがあるし、第2楽章は明らかに技術不足でトレモロが吹き切れていない。 第4楽章は音色が硬く、私の好みからだいぶ外れてしまう。 この分のマイナスがあるので、これも星2つ半。

総合評価:  ★★☆

ブーレーズの演奏

レーベル:  DGG: 457581-2
演奏家:   Pierre Boulez / Chicago SO
日時・場所: December 1995, Medinah Temple, Chicago
演奏時間:  total 79:23 ( 29:17 / 16:03 / 12:38 / 21:25 )
録音評:

 全体に少々解像度を犠牲にしても美音を追求したような残響のかかった音である。 ノイズはないし、ある意味聞きやすいが生々しさはない。

演奏評:

 これも一筋縄では行かない演奏だと思う。 最初聞いたときは×だと思ったが、聞き直してみて考えが変わった。 演奏時間をみてもらえば解るように、前半の2楽章は遅め、後半の2楽章は速めであるが、実際にはそんなに単純でもない。 第1楽章は、かたくなに遅めのテンポを変えない。 ところが、第2、第3楽章はかなり自在にテンポを変えている。 特に第2楽章は個性的で、速めのテンポで始まりながら、途中多くの指揮者がテンポアップするところで逆に速度を落としている。 これが、結構説得力を持っていて面白い。 第3楽章はブーレーズにしては珍しく激しい音楽となっている。 そして、終楽章は終始速いのだが結構厚い音響であり、そんなに薄口の印象は残らない。 全体に、弦は良い音だしホルンもまずまず上出来。 第3楽章のトランペットソロはかなり理想的な音色でうまい。 しかしである。 ブーレーズのマーラーを聞くとどの曲でも感じることだが、なんかノーブルすぎないか?という気がする。 結構、悪魔的な部分は持っている演奏なのだが、マーラーってもっと下品な所があるものなのではないかと思うのだが。 しかし、そうした好みの問題はさておくと、これも一級品だとは思う。

総合評価:  ★★
レーベル:  ARKADIA: CDGI754.2
演奏家:   Pierre Boulez / BBC SO
日時・場所: June 6,1971, London
演奏時間:  total 84:38 ( 32:23 / 14:58 / 13:40 / 23:37 )
録音評:

 時代を考えても、あまり良い録音ではない。 全体に透明度を欠くし、テープヒスは仕方ないにしても、所々電気的なノイズが入っている。 フォルテッシモではサチる。 ステレオではあるし、鑑賞に堪えるレベルではある。 第4楽章がディスク2枚に分断されるのが難。  

演奏評:

 上記に24年先立つ演奏。 ブーレーズがまだ最近のように丸くなってしまう前の過激さが目立っていた頃のものである。 第1楽章は遅い。 エッシェンバッハと競るが、粘っているという感じでなく遅い。 でも、最初のティンパニー登場のところなんかなかなか鬼気迫るものがあって良い。 上述よりはテンポの動きがある。 ただし、アッチェルランドは少ない。 クレッシェンドとリタルランドを同時に行うという巨匠指揮者めいたこともやっている場所がある。 ホルンの音が妙に憂いを帯びているのが独特の魅力。 タムタムの音を短く切っているのが特徴的。 チューブラーベルを使っていると思うが、わりと重めのいい音である。 終わり近くで珍しくテンポアップするところがある。 第2楽章は上記のものとは違い私好みの快速テンポで始まる。 ホルンのトレモロも追随しているものの、全体に速すぎるテンポにぎりぎりのところで付いていっている。 ところが、中間部に入って通常と逆にテンポを落とすためにここで明らかにオケが余裕を取り戻している。 やはり、このやり方はユニークだが魅力的な設計である。 ただし、この楽章では指揮者がテンポをあまりにも振りすぎて、一部アンサンブルが乱れるのが惜しい。 第3楽章冒頭は遅い! クレンペラー並みとは言わないが非常に遅い演奏である。 刻むようにリズムを重ねながらそれと気付かないくらい少しずつ速度を上げてゆく緻密な演奏であり、上記の演奏とはまるで別物と言える。 そして、なんとトランペットソロからテンポアップする! そのあとのさびの部分でたっぷり粘って熱い演奏にはなっているが、物議を醸すようなアレンジである。 ここに限らず後半部分はかなりテンポを動かしている。 人によったら何だこれは!と立腹しそうだが、私は割と好きである。 第4楽章は冒頭から変なためは作らずナチュラル。 豊穣と言うよりはすっきり爽やかな弦の音である。 テンポは速い方だがあわただしくはない。 ホルンの音色はまずまず。 この楽章も結構テンポを動かしている。後半部のクライマックスはなかなか熱い。 最後はちゃんと死ぬように終わっている。 全体を通してユニークだがそれなりに熱く、最近のようにお上品すぎないのが良い。 いままで聞いたブーレーズのマーラーの中ではこれが一番である。 名演だと思う。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  World Music Express: WME-S-CDR 1015/6 CD-R
演奏家:   Pierre Boulez / Los Angels PO
日時・場所: May,1989
演奏時間:  total 79:36 ( 28:09 / 16:27 / 12:37 / 22:23 )
録音評:

 シャーシャー盛大にノイズが聞こえるし、時々プチプチ言う。 しかし、こもってはいないし鑑賞には十分堪えるレベル。

演奏評:

 時期的には上記2つの間になるが、演奏のスタイルはどちらとも違う。 オケの差もあるかもしれない。 何しろロスフィルは9番に限らずマーラーの後期交響曲の演奏自体珍しい。 第1楽章はだいぶ速くなって普通の遅めくらいの演奏になっている。 冒頭から弦の音がきれいだなと思う。 個々のソリストは結構うまい。 ただミュート付きトランペットの音がどうにも汚いのが気になる。 テンポはほとんどゆすらない。 ベルは普通のチューブラーベルと思ったが、よく聞くとなにか別の金属音が混じっている。 謎である。 第2楽章はのっけから遅い。 そして遅いまま中間部に至ってもテンポをかたくなに速めない。 じーさんとばーさんがゆっくりワルツを踊っているようである。 重ったるくはないのだが妙な演奏である。 第3楽章は標準的なテンポで気負わず淡々と進む感じで始まる。 醒めている感じではないが、あまりテンポを動かさないままトランペットソロに至り、心持ちむしろテンポアップする。 ここからのクライマックスまではブーレーズにしては珍しく熱い音楽が展開している。 その後のアッチェルランドも無理はしない。 この演奏でも、最終楽章は速め厚めである。 やはりロスフィルの弦は良い音を出している。 この楽章では結構テンポをゆすり、これが良い効果を出している。 最後のクライマックスに向かってアッチェルランドしながら昇って行くのはちょっと独特。 全体に音色がきれいで随所に聞かせどころはあるのだが、客演故かブーレーズにしては珍しくミスのある演奏であり、また、最終楽章で弦のピッチが一部怪しいところがあるのが残念である。 このため★は2つどまり。

総合評価:  ★★
レーベル:  VIBRATO: VLL 334 CD-R
演奏家:   Pierre Boulez / New York PO
日時・場所: June 27,1975
演奏時間:  total 73:32 ( 26:53 / 14:21 / 11:30 / 20:48 )
録音評:

 録音は悪い。 全体に歪みっぽい上に、ティンパニの音が異様に大きく、フォルテを叩くと必ずサチる。 そうでなくとも、なんだか共振しているような付帯音がまとわりつく。

演奏評:

 上記2つの更に間。 これもまた個性的な演奏である。 まず、極めて速い。 ブーレーズの演奏に限らずとも最速の部類に入る。 速い中でもテンポ変更が変幻自在で極めて魅力的。 中間の2楽章はやりすぎてやや荒くなるが、許す。 両端楽章のテンポの揺すり方もうならせる。 演奏の魅力は、1971年のBBC響とのものを凌ぎ、星3つをうかがう感じだが、いかんせん録音が悪い。 残念ながら星2つ。

総合評価:  ★★
レーベル:  MEMORIES: HR4493/94
演奏家:   Pierre Boulez / BBC SO
日時・場所: October 22,1972, London
演奏時間:  total 74:44 ( 26:55 / 15:20 / 11:51 / 20:38 )
録音評:

 録音は悪い、ノイズこそ少ないが、極めてデッドで音ががさつく。 おまけに、くぐもっていて、ひずみっぽい。  

演奏評:

 上述BBC響との演奏の翌年のものだが、驚くほど違っている。 まず、1年余の違いなのに演奏時間が10分も短くなっている。 特に両端の楽章が短くなり粘り気が薄い。 また、録音の悪さも手伝ってか、全体に音がチープである。特にブラスセクションがいけない。 この日のBBC響は出来が悪く、小さなミスも多いようだ。 解釈はそれなりに面白いが消化しきれてない感じ。 録音もかなり悪いので星2つ。

総合評価:  ★★

ブラウンの演奏

レーベル:  PANCLASSICS: PC10262 hybrid
演奏家:   Justin Brown / Badische Karlsruhe State Opera O
日時・場所: July 17-19,2011, Badische Staatskapelle Karlsruhe
演奏時間:  total  79:53  ( 26:55 / 16:02 / 12:40 / 24:16 )
録音評:

 クリアで残響はほどほど。 ノイズなく、まずまずの録音。

演奏評:

 第1楽章冒頭からやや速め。 中盤以降は引っぱり加減。 盛り上がりはあっても悪魔的。 何か張りつめた感じである。 タムタムの音が妙にすごみがある。 ベルはチューブラーベルだが響きが長め。 ホルンが独特の音色。 第2楽章冒頭から遅め。 ホルンのトレモロは怪しい。 変なアクセントのついた演奏である。 途中それなりにテンポアップはあるが、全体としては遅い。 第3楽章は冒頭から速め。 快速運転と言える私好みのテンポである。 トランペットソロのところでは、きっちりテンポを落とす。 このトランペットは破綻はないが、何か音色がイマイチである。 この後、かなり引っ張り気味に盛り上がるが、コーダでは再び速めとなり、最後のアッチェルランドはすごい。 このスピードを弦が完璧に弾きこなしているのは見事である。 最終楽章冒頭はお約束通り引っ張るが、その後は標準的なテンポ。 弦はそれなりに良い音だが、ホルンは何かクセの強い音である。 テンポはそんなに揺らさないが、クライマックスへ向かうクレッシェンドで独特の遅れるようなテンポの揺れがありユニーク。 コーダは静かできれいだが、死に向かう音楽ではない。 全体に中低音部の弦の音は良いが、高音部がかさつきがち。 ホルンの音も独特のクセがあり気になる。 悪い演奏ではないが、強烈にここが良いというところがない。 星は2つ。 

総合評価:  ★★

シャイーの演奏

レーベル:  DECCA: 4756310
演奏家:   Riccardo Chailly / Royal Concertgebouw O
日時・場所: June 14-18,2004, Grote Zaal, Concertgebouw, Amsterdam
演奏時間:  total 89:49 ( 30:29 / 16:55 / 14:01 / 28:24 )
録音評:

 最新の録音としては悪い方。 マルチマイクのミックスダウンらしく楽器の定位が判りにくくて頭痛い。 それに、何だかデジタルノイズらしきものが聞こえる。

演奏評:

 遅めの演奏である。 第1楽章は特に遅く、中でも冒頭の遅さでこれに匹敵するのはエッシェンバッハのものくらいだが、アンサンブルの乱れがないのはたいしたものである。 しかしここまで遅くなくても良いような気がする。 割と個性的な演奏に入ると言える。 テンポはそんなに揺さぶらないが、強弱の付け方はかなり独特で、「エッ?」と言うような盛り上げ方をする所が随所に見られる。 弦は厚いのに何だかザラザラしている。 ホルンの音色は悪いとは言えないが、ほれぼれするほどではない。 第2楽章はにぎやかで少々うるさい感じ。 第3楽章も同じ。 打楽器群の音が妙に深く重く響いて強烈だが生々しさに欠ける。 第4楽章は割と普通である。 弦は分厚いが豊かでない。 低音部が厚い割に、チェロやビオラが弱いのか? 面白い演奏ではある。 好き嫌いがかなり分かれるだろう。 名演とするには、いささかしなやかさに欠ける。

総合評価:  ★★
レーベル:  KAPELLMEISTER: KMS-042/3 CD-R
演奏家:   Riccardo Chailly / Berlin PO
日時・場所: September 29,1989
演奏時間:  total 83:18 ( 29:12 / 15:50 / 12:46 / 25:30 )
録音評:

 一応ステレオだが、問題が多い録音である。 まず、全曲を通して背景でかすかにヨーロピアンポップスのような曲が流れている。 おそらく、もともとのテープに入っていたもので、その上に重ね取りしたために起こった事故であろう。 最後の方で一瞬入っているチリチリノイズの性質から推し量ってCD−Rに起こす前の原音源はFMのエアチェックではないかと思われる。 ピアニシモは、このゴーストのおかげで全滅状態だし、フォルテになってくると、サチってくるのか、何だか歪みっぽくなる。 これらの問題を除いたとしても、残響が強すぎて、しばしば風呂場っぽくなる。

演奏評:

 カラヤンが亡くなって間もない頃の客演らしい。 上記に先立つこと15年だが、この演奏の時間をみると、82年のカラヤンのDGG録音(84:22 (28:10 / 16:38 / 12:45 / 26:49 ))にかなり近い。 皮肉なことに、カラヤンの亡霊の仕業か、後の演奏より出来がいいように思う。 一聴して、極めて自然体な演奏で、テンポその他、聴いていてストレスがない、私好みな演奏となっている。 さすがにベルリンフィルだけあって個々のソリストはうまい。 第1楽章の終わり頃にハープがちょっと混乱するようだが、それ以外に事故はないと思う。 しかし、どうもシャイーはこの曲に関して録音技師に恵まれないようである、いちどまっとうな録音を聴いてみたい。 総合評価だが、録音の分★半分ではなく1個減点とする。

総合評価:  ★☆
レーベル:  Karna Musik: KA-374M CD-R
演奏家:   Riccardo Chailly / Berlin German SO
日時・場所: 1988, Berlin
演奏時間:  total 85:58 ( 30:00 / 17:40 / 13:23 / 24:55 )
録音評:

 CD−R盤としては、そして、このレーベルの録音としてはかなりいい録音である。 周波数レンジも広く、鮮度のいい音である。

演奏評:

 第1楽章はかなり遅い演奏なのに不自然さがなくしなやかな好演奏。 ホルンの音色もなかなか良い。 第2楽章は遅すぎる。 破綻はないのだが、これは生理的につらい。 第3楽章は普通。 あまりにも普通だが、トランペットソロが破綻はないものの地上的。 また終曲部のアッチェルランドがあまりにも手ぬるく不満足。 最終楽章は悪くない。 とっても悪くない演奏。 まだ、後年の演奏ほどの個性はなく、ほどほどの秀演という感じ。 録音は上2つよりこっちがいいと思う。 星は2つどまり。

総合評価:  ★★
レーベル:  DIRIGENT: DIR-1283 CD-R
演奏家:   Riccardo Chailly / Royal Concertgebouw O
日時・場所: June 11, 2004, Amsterdam
演奏時間:  total 91:38 ( 30:40 / 17:20 / 14:25 / 29:13 )
録音評:

 残響は適度で解像度は高く、本来クリアな録音だが、ホワイトノイズが強く、滝のそばで演奏しているみたい。 ピアニシモでは必ず聞こえてしまう。

演奏評:

 DECCAの録音の直前のライブ録音であり、演奏時間はほとんど同じと考えられるが、聞いた時の印象はまるで違っている。 全体に弦も管も非常にきれいな音色を出している。 唯一弱音器付きの金管の音がきちゃないが、それ以外はホレボレする音が聞こえる瞬間が多い。 また、フレージングに独特のところが多々有り、魅力的である。 第1楽章は冒頭からゆっくり、ゆったり進める。 全てがきれいだが整いすぎて、やや悪魔的な物が足りない恨みはある。 ベルは明らかにチューブラーベルとは違い、何か妙な倍音列だが正体は良くわからない。 第2楽章はゆっくり目。 ホルンのトレモロはまあまあ吹けている。 中間部以後のテンポアップも大きくはなく、例のリズム処理も「ターータター」と普通。 速度が遅いためか今いちノリが悪い。 第3楽章は冒頭から標準的なテンポを続ける。 きれいで整っていて、ちゃんと仕事してますよという感じ。トランペットソロのところで適度にテンポを落とす。 このトランペットは独特で、地上的ではないが、天国的というほど高見にある感じでもない。 たどたどしい感じが有るがうまい。 あまり他で聴いたことがないタイプの演奏であり魅力はある。 この後の部分は遅めだが、最後のアッチェルランドは急に激しくなり限界線の2歩手前くらいまで突っ走る。 ここまで聴いて、ノイズの多さもあるし、★は2つかなと思っていたが。 最終楽章が、この演奏の特徴である美音に溢れ、非常に魅力的だったため、★は2つ半とする。

総合評価:  ★★☆

チョン・ミュン・フンの演奏

レーベル:  En Larmes: ELS 05-659/60 CD-R
演奏家:   Chung Myung-Whum / French Radio PO
日時・場所: June 25, 2005, Paris
演奏時間:  total 83:13 ( 28:31 / 16:19 / 13:16 / 25:07 )
録音評:

 ごく最近の録音であることを考えれば、水準並み以上のものではないが、必要なクリアさを備えつつそれなりに残響もあり、無難な音響バランス。 とりたてて気になるノイズはないし。 演奏の合間の会場騒音や終演後の拍手も自然な形で録音されている。

演奏評:

 第1楽章はやや遅め。 のっけから弦はいい音を出しているが、ホルンの音に難あり。 間抜けな音である。 テンポは適度に粘ったり走ったりして、指揮者の解釈は好感が持てる。 オケのパート間の実力にばらつきがある感じ。 タムタムはブーンという音、ベルは普通のチューブラーベルで無難である。 このベル登場の近傍でトランペットが出そびれてまるまる1フレーズ吹けないという事故が起きている。 第2楽章は遅めだが、遅めの中ではなかなか良い演奏であり、テンポも柔軟に動かし、ホルンのトレモロも破綻せず、遅いなりにワルツしている。 第3楽章は演奏時間以上に遅い印象を受ける。 刻み込むような弦の動きが面白く、トランペットソロはきれい。 この2つの楽章はトップクラスの出来だと思う。 終楽章は弦の厚みが見事。 実にいい音である。 ただここでもホルンの音は間抜け。 クライマックスもきっちり盛り上がっているが、バーンスタインみたいに汗臭くはない。 全体に指揮者の解釈は感心するところも多く、星3つ級。 また弦の音の良さも特筆ものであるが、ホルンの音がだめなのと、第1楽章のトランペットの事故の減点分を重く見て、星2つとしておく。 

総合評価:  ★★

ドラティの演奏

レーベル:  "O" "O" "O" CLASSICS: THO35 CD-R
演奏家:   Antal Dorati / Berlin RSO
日時・場所: May 30,1984, Philharmonie, Berlin
演奏時間:  total  86:21  ( 28:26 / 16:47 / 14:22 / 26:46 )
録音評:

 CD-R盤の中では割に良い録音。 テープヒスは聞こえるが気にならない程度、ライヴだが会場騒音はほとんどなし。 但し、終演後の拍手はしっかりと記録されている。

演奏評:

 オケの実力の高さを感じさせるライヴで、事故が少なく、弦の音色が大変きれいである。 第1楽章は、当初割りとオーソドックスに始まるが、妙に落ち着いた(冷めているのではない)感じであり、きれいである。 もう少し悪魔的な所があっても良いと思うし、少々ぬるい。 途中、ティンパニーの叩き損ないがある。 また、後半のチューブラーベルの音が妙に明るい。 第2楽章はかなり個性的である。 当初は遅いが、中間部で速くなった後、かなり頻繁にテンポを揺すっている。 特に終わり近くの緩急の落差は激しい。 ここでのホルンは極めてうまい。 第3楽章も遅い。 クレンペラーばりに遅く、少々この楽章もぬるい感じがする。 しかし、トランペットソロはきれいでうまい。 また、ハープの音色が独特で目立ちすぎる。 終楽章はひたすら弦の音色に浸っている感じ。 ここはなかなか聴きものである。ドラティのマーラーが他にも残っていないか興味をわかせる演奏ではある。

総合評価:  ★★

ドホナーニの演奏

レーベル:  DECCA: 458902-2
演奏家:   Cristoph von Dohnanyi / Cleveland O
日時・場所: May 1997, Masonic Auditorium, Clevelan
演奏時間:  total 84:28 ( 28:49 / 16:29 / 13:28 / 25:42 )
録音評:

 ノイズはなく、割と聞きやすいが、ホールの音響特性のためか低音楽器の解像度が悪く音階が聞き取りにくい。

演奏評:

 最初聞いたときは、×だと思い、1回聞いただけで二度と聞かず、そればかりかドホナーニという指揮者に対する興味も失っていたが、今回聞き直してみるとそこまでひどいとは言えまいという感想である。 演奏時間は割とオーソドックスで、第2楽章はやや遅い感じがするが、テンポ設定にはあまり不満な感じはない。 あまり、引っ張ったりせず、素直な演奏であり、音はきれいである。 弦もクリーヴランド管にしては豊かな音だと思うし、ホルンも合格点である。 第3楽章のトランペットソロも悪くない。 しかし、ブラス群全体としてもう少し悪魔的な響きが欲しい所がある。 トロンボーンを中心に、少々お上品すぎる感じがするのである。 ただ、木管の低音楽器の音色などに他の演奏であまり聞いたことのない響きを出している所があり、全く没個性な演奏と言う訳ではない。 特に第1楽章後半部で、一瞬ぎょっとするほど寂寞たる響きが漂う所があり、うなってしまった。 こういうのは、ぼーっと聞いているとつい聴き落としてしまうところである。 愛聴盤とする気にはなれないが、こういう演奏も有りかなとは思う。

総合評価:  ★★

ドゥダメルの演奏

レーベル:  DIRIGENT: DIR-0978 CD-R
演奏家:   Gustavo Dudamel / Los Angels PO
日時・場所: Februaty 2012, Los Angels
演奏時間:  total 86:19 ( 29:38 / 16:32 / 13:23 / 26:46 )
録音評:

 ややヒスノイズのようなノイズはあるが、透明感はあり、音場は広い。 ただし、低音方向はややこもる。 

演奏評:

 第1楽章冒頭は標準からやや速めの演奏で、若さに任せた爽やか系の演奏かと一瞬思ったが、最初のティンパニー連打のあたりでぐっとテンポを落としてから後は、思いっきりテンポにメリハリの付いた演奏になる。 弦の音が瑞々しいが、ホルンは今一歩。 ベルは重めの音だがチューブラーベル型のものをソフトスティックで叩いているのではないかと思う。 第2楽章は冒頭から遅めだが弦がギシギシいう感じで濃厚。 低弦はゴリゴリいう感じ。 ホルンのトレモロはなんとか吹けている。 中間部のテンポアップの幅は大きく軽やかで弾むよう。 その後もテンポのメリハリは強い。 第3楽章冒頭からやや速めの軽快な演奏。 トランペットソロでの減速は小幅。 割とあっさりとした吹き方。 その後の部分は異様に盛り上がり熱情的。 最後のアッチェルランドは限界近くまで突っ走るが弦が完全に付いていっており見事。 最終楽章冒頭は通常の引っ張り方だが、その後かなりテンポを動かす。 クライマックスは熱い。 コーダではテンポを揺すりつつ進むがそれほど音量は絞らない。 随所に光るところはあるが、まだ練り上げ途中の感じ。 星は少し厳しいが2つとしておく。

総合評価:  ★★

エルダーの演奏

レーベル:  URC: URC 0038/9 CD-R
演奏家:   Mark Elder/ Halle O
日時・場所: May 2010
演奏時間:  total 83:24 ( 30:22 / 16:01 / 12:38 / 24:23 )
録音評:

 解像度はそれなりに高いが、録音全体を通じてシュルシュルというノイズが聞こえ、ピアニシモのところでは気になる。

演奏評:

 第1楽章は冒頭からずっと遅いテンポを保ち、あまりテンポは揺さぶらない。 ホルンはまあまあ良い音。 ベルは大型のチューブラーベルか、柔らかい音で響きが長い。 第2楽章は標準的なテンポだが途中のテンポアップが少ないため後半は遅い。 ホルンのトレモロは吹ききれていない。 第3楽章は速めの演奏で淡々と進む。 トランペットソロになってもあまりテンポは落とさず、即物的。 最後のアッチェルランドは割と頑張って破綻ぎりぎりまで速い。 最終楽章は冒頭あまり引っ張らないが、その後は標準くらいのテンポ。 弦はそこそこ良い音を出している。 全体としてみて、それなりに個性的ではあるが、あまり魅力的とは言い兼ねる。 録音も悪いのでギリギリ星2つ。

総合評価:  ★★

エッシェンバッハの演奏

レーベル:  Sounds Supreme Production 2S-025 CD-R
演奏家:   Christoph Eschenbach / NDR SO
日時・場所: January 14,2001
演奏時間:  total 91:50 ( 33:04 / 15:43 / 13:08 / 29:55 )
録音評:

 最近の録音の割には、もう一つクリアさに欠ける。 会場騒音は多くはないが、拍手はちゃんと入っている。

演奏評:

 第1楽章は超遅演。 特に冒頭は尋常ではない遅さであり、オケが付いて来れずにアンサンブルが崩れている。 そこまでやるか?!と言う感じ。 途中から、少しテンポアップするからこのくらいですんでいるが、冒頭のままなら第1楽章だけで40分を超えていただろう。 第2楽章は打って変わって速め、かつ頻繁に速度変更する。 ここではNDRは完璧に追随しており、前楽章の汚名返上といった所、ホルンもごまかしなしである。 第3楽章もキビキビしていてなかなか良い。 トランペットソロの音色はまあまあと言う程度。 そして最終楽章は再び遅めである。 パターンとしては私の好みの演奏であるが、第1楽章は明らかにやり過ぎだと思う。

総合評価:  ★★
レーベル:  En Larmes CD-R
演奏家:   Christoph Eschenbach / NDR SO
日時・場所: January 14,2002
演奏時間:  total 88:15 ( 31:51 / 15:28 / 12:09 / 28:47 )
録音評:

 録音の程度は上述と同じくらいか。 音量が通常の者より大きめなのでヴォリュームを絞りたくなる。 それでいて、フォルテシモでサチらないのは立派。

演奏評:

 やはり第1楽章は遅いが、上述の演奏ほどまでの無茶はしていないので、アンサンブルはかろうじて崩壊しないで済んでいる。 その他の楽章もおおむね解釈は上とおなじだが、より練れている感じはある。 ただし、第2楽章のホルンの出来は悪い。 個性的であり、私好みのパターンでもあるしこっちはおおまけして星2つ半。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  NDR Edition
演奏家:   Christoph Eschenbach / NDR SO
日時・場所: February 18,1996
演奏時間:  total 89:49 ( 31:11 / 15:53 / 12:23 / 30:22 )
録音評:

 これは、なかなか良い録音だと思う。 ノイズなく、残響も適度。

演奏評:

 3つの中ではこれが一番穏当であり、一番聞きやすい。 それでも、一般の基準から言ってとんでもなく個性的である。 さすがに自主制作盤だけあって、出来の良い日の録音を選んだのだろう。 これは文句なしに星2つ半だが、これを手に入れるのは至難となっているのが残念。

総合評価:  ★★☆

フェドセーエフの演奏

レーベル:  RELIEF:CR991072
演奏家:   Vladimir Fedosseyev / Moscow RSO
日時・場所: December 5-7,2002, Great Hall of the Moscow Concervatory
演奏時間:  total  71:59 ( 24:52 / 14:13 / 12:12 / 20:42 )
録音評:

 最近の録音でもあり音は良いが、ややホール残響が強いため、細部の聞き取りにくい所がある。 そのためかライヴ録音にありがちな会場の騒音が耳に付くこともない。

演奏評:

 個性的という点では、また大物が1人増えたという感じである。 全体を通して非常に速い演奏であり、それでいて音をしっかりと出してくるで、何だか聞き慣れない不思議な味わいがある。 弦はいい音である。 それが両端の楽章でゆっくりではなく演奏されるので、この音にもう少し浸りたいと感じる。 ブラスはいかにもロシアのブラスらしい音なので、嫌だという人もあるだろう。 ホルンは結構うまいのだがときどきエッというような音がする。 トーンバランスが普通と違う処理をしていて、通常の演奏では聞き取れない弦の動きが目立っていたりするため、連日9番ばかり聴いている状況では新鮮な発見があり嬉しい。 この演奏のもう一つの特徴として、特に第1楽章後半で打楽器群が非常に強調されている。 ティンパニーが主役みたいに飛び出してきてギョッとするところがある。 また、タムタムが銅鑼ないしゴングと言いたくなるような、叩いた瞬間衝撃波を伴う独特の音を出している。 続く第2、第3楽章での弦のリズムの刻み方とならんで、ショスタコーヴィチを聴いている様な感じがする。 たまに聴くには面白い演奏だと思うが、ロシア音楽が好きな人以外には勧めない。

総合評価:  ★★

ガッティの演奏

レーベル:  KARNA MUSIK: KA-140M CD-R
演奏家:   Daniele Gatti / Orchestre Giovanile Italiana
日時・場所: October 11, 2004
演奏時間:  total 86:11 ( 29:02 / 16:14 / 12:40 / 28:15 )
録音評:

 CD−R盤としてはかなり良い方。 ライヴのわりに会場騒音は少なめで残響もほどほどであるが、第2楽章、終楽章などで指揮者のうなり声を拾っている。

演奏評:

 全体のテンポ構成は私の好みに近い。 第1楽章冒頭からゆったりめで始まるが、まず弦の音色の良さに気付く。 ホルンが少々音程が危なっかしいが、その後だんだん調子が出てくる。 ブラスは十分に悪魔的。 タムタムの音はほとんど聞こえず、ベルの音も叩いた瞬間の衝撃音はなく、その後の響きの部分だけ聞こえる。 ずいぶん思い切った解釈である。 割とテンポを揺さぶるが、引っ張り方に独特の癖があり、これはこれで面白い。 第2楽章は遅め。 重ったるくなってはいないが、軽快さはなくワルツにもなっていない。 ホルンのトレモロは一応吹きこなしているがぎりぎりで余裕がない。 第3楽章は私好みに速い。 最初からぐんぐん突っ走る感じ。 トランペットソロもテンポはあまり大きく落とさない。 トランペットソロそのものは及第点程度。 このあと、アッチェルランドがかかり、更に高速となって駆け抜けるように終わる。 正直なところこのオーケストラにとってこのテンポはきつい。 あたかも、「梢を掠めながら飛んでいた大型旅客機がいくつかの部品を飛ばしながら胴体着陸を敢行し、軽傷者はでたものの乗客は全員無事」と言うような演奏。 非常な緊張感はあり、ほめられたものではないが、何か癖になるようなスリルがある。 終楽章はこのオーケストラの弦の音の良さを存分に生かしている。 この弦は豊穣ではないが美音であり聞き惚れる。 遅めのテンポ設定は完全に成功している。 残念ながらホルンの音色が一部濁っているが、かなり高得点。 バーンスタインのような汗臭さなしに情緒的な高揚と沈静を経て静かな死を迎えている。 全体を通しての印象として、好きな演奏である。 第2楽章の遅いテンポはホルンへの配慮もありそうだが、再考して欲しい。 それ以外はかなり良い線をいっている。 オケが、音色は良いが技術水準的に今一歩な感じ。 少々辛いかもしれないが星2つとする。 しかしこの指揮者は、近い将来星3つの演奏をしそうな気がする。

総合評価:  ★★
レーベル:  KARNA MUSIK: KA-319M CD-R
演奏家:   Daniele Gatti / Orchestre e Coro del Maggio Musicale Fiorentino
日時・場所: April 30, 2006
演奏時間:  total 84:32 ( 27:57 / 15:30 / 12:36 / 28:29 )
録音評:

 ノイズが多いという訳ではないが、音質はあまり良くない。 何だか、がさつく感じで、時にキンキンうるさいこともある。

演奏評:

 上記と同じく、中間楽章が速いタイプの演奏。 第1楽章冒頭は割と速めかなと思って聞いていると、通常とは違うところで急に遅くなり、その後も、この楽章ではテンポが大きく揺れ続ける。 ただ、上記に比べるとオケが十分に付いて来れていない感じがする。 録音のせいもあるのだろうが、残念ながら弦の音にはあまり魅力がない。 管楽器はまあまあというところか。 ベルは、チューブラーベルかとも思ったが、どうも管状のものではなく、棒状のものを叩いているようである。 第2楽章は速めだが、ホルンは何とかトレモロを吹きこなしているようだ。 テンポをあまり変えないし、途中通常テンポアップするところでの速さの変化はあるが小さめである。 第3楽章は、極めて速いタイプであり、トランペットソロのところでもやや慌ただしいレベルまでしか速度は落とさない。 しかし、上述の演奏ほど軽快さを感じさせない。 何か不完全燃焼の感じ。 最終楽章がこの演奏では一番出来がいい。 充分厚い弦を堪能でき、また最後はちゃんと静かに死を迎える。 オケが祝祭管弦楽団で、要するに寄せ集めらしく、そのためか指揮者が空回りしているのかなという感じがする。 やはり、一度まともなオケでこの曲を指揮してみて欲しい。

総合評価:  ★★
レーベル:  En Larmes: ELS 11-889/90 CD-R
演奏家:   Daniele Gatti / French National O
日時・場所: September 15, 2011, Theatre du Chatelet, Paris
演奏時間:  total 90:20 ( 31:22 / 16:48 / 13:13 / 28:57 )
録音評:

 解像度は高く、残響も適度で見晴らしの良い好録音のはずが、常時キュルキュル、シュルシュルいうノイズのせいでだいなしになっている。 鑑賞には十分堪えるのだが、惜しい。

演奏評:

 上記と2つに比べてオケは数段上であり、マエストロの解釈も更に深化している。 速度は全体に遅くなって、ついに90分の大台越え。 まず、弦の音が良い。 また、ホルンの音が独特で変わっている。 随所でユニークなタメや引っぱりがあり、それがキマっている。 しかし、第2楽章は遅すぎるし、第3楽章のトランペットソロは素っ気ない。 ただ、そうは言ってもそれぞれの楽章に光るところはある。 最終楽章は非常に良い。 本来、ノイズは減点に価するレベルだが、あえて引かないことにする。 ★は2つ半。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  DIRIGENT: DIR-1028 CD-R
演奏家:   Daniele Gatti / Vienna PO
日時・場所: May 28, 2011, Leipzig
演奏時間:  total 88:27 ( 30:51 / 16:00 / 13:38 / 27:58 )
録音評:

サーッというアナログ系のノイズがずっと聞こえるが鑑賞には触らないレベル。 さらによく聞くとハムも乗っている。 しかし、解像度はよく、残響も適度。

演奏評:

上記の半年ほど前の演奏だがオケの違いが出ている。 第1楽章冒頭は通常くらいのテンポで途中から遅くなる。 弦はやはり良い音である。ホルンはまあまあ。ベルはチューブラーベルをハードスティックでたたいているようだ。 第2楽章は標準テンポで始まるが弦がギシギシ刻む。 ホルンは全然駄目。トレモロのところは聞こえない!テンポアップの幅は小さいし、全体にホルン以外のブラスは吠え過ぎて下品。第3楽章は遅い!トランペットソロのところではテンポあまり落とさず吹き方は素っ気ない。最後のアッチェルランドはそこそこ。最終楽章は弦がとてもきれいな音だが、高域を生かしており低弦は控えめ。全体に静かな演奏だが、コーダもあまり音量は絞らず、テンポもそんなに落とさないながら、所々止まるという離れ業をやって穏やかな死を表現している。 上記のものと比べるとヴィーンフィルの機能性の限界を露呈する一方、音色の良さを使っている場所もある。 ただ、完成度は上記に劣るように思うし第3楽章の遅さは気に入らない。 星は2つ。

総合評価:  ★★
レーベル:  URC: URC0190/1 CD-R
演奏家:   Daniele Gatti / Vienna PO
日時・場所: May 18, 2011, Madrid
演奏時間:  total 87:33 ( 30:41 / 15:45 / 13:26 / 27:41 )
録音評:

シュルシュルというノイズが聞こえ、ピアニシモではやや気になる。終わり頃になってなぜかハムも乗っている。 しかし、解像度はよく、鑑賞上は良好。

演奏評:

上記の10日前の演奏。 同じツアーのものだろう。 当然だが解釈上の違いはなくユニークだが同じ欠点がある。 こちらの方が上述よりやや極端に走るかなと思わせる所があるが大きな差ではない。第2楽章のホルンのトレモロのところは聞こえるが弱々しい。第3楽章はやはりおそ過ぎ、トランペットソロのところではむしろテンポアップしてしまう! やはり第3楽章が致命的で星は2つ。

総合評価:  ★★

ゲルギエフの演奏

レーベル:  DIRIGENT: DIR-0053 CD-R
演奏家:   Valery Gergiev / Swedish RSO
日時・場所: October 28, 2007, Stockholm
演奏時間:  total 74:02 ( 25:16 / 15:02 / 11:59 / 21:45 )
録音評:

 ホワイトノイズ系のシャーっという音がかすかだが持続的に聞こえており、無音に近いところでは更にハムがのっているのもわかる。それ以外にもブチっという音をはじめいろいろなノイズが耳につく。 ただし、音そのものはクリアで良い。

演奏評:

 ロシアの指揮者の多くがそうであるように、かなり速い演奏である。 しかし、けして爆裂系の演奏ではない。 むしろ、繊細とか、流麗とかいう方向を目指しているようである。 第1楽章はかなり出来がいい。 弦の音もホルンの音もきれいだし、流れに逆らわずにいて凡庸には流れない。 ミスも少ないが唯一、2回目のティンパニ連打の後、トランペットが出そびれて、1フレーズ完全に吹き損なっているのが惜しい。 第2楽章は速めで始まり、ホルンのトレモロも一応吹けている。 途中速度的メリハリがかなり効いており、なかなか好演。 第3楽章も非常に速い。 トランペットソロまでは最速の部類。 トランペットソロのところでの減速幅は十分だとは思うが、何か天国的響きになりきれず、現世的になってしまっているのが残念。 終曲部のアッチェルランドのところもかなり速いのだが、オケの限界に達してアンサンブルが崩壊するだいぶ手前で遠慮したのかなという感じがする。 最終楽章も速いが程よくテンポを揺さぶっており、急ぎ足な印象を持たせない。 各楽器がいい音を出している。 この楽章もかなりいい出来である。 全体を通して速めの好演であり、かなり私の好きなタイプだが、ノイズがかなり多いのと、第1楽章のトランペットの事故を重く見て、あえて星は2つにとどめる。

総合評価:  ★★
レーベル:  LSO Live: LSO0668 hybrid
演奏家:   Valery Gergiev / London SO
日時・場所: March 2 and 3, 2011, Barbican, London
演奏時間:  total 79:11 ( 27:02 / 15:10 / 12:35 / 24:24 )
録音評:

 ノイズ無くクリアで残響は少なめ。 高解像度だがダイナミックレンジを広くとっている分、全体として音量が小さい。

演奏評:

 上記の3年ちょっと後、オケも違うが、両端楽章が少しゆっくりになっている。 全体に静かな印象であり、これは上記の演奏とも共通する。 2日間のライブの編集だけあって、目立つミスは無いが、一部ホルンの音色が硬いなーと思うところがある。 また、ティンパニーを強調する傾向があり、第1楽章では、「えっ?」と思う様なティンパニのクレッシェンドがあったりする。 ベルはおそらくチューブラータイプ。 第1楽章終曲部に向かうホルンとフルートの掛け合いが非常に速いにも関わらずぴったり息が合っているのに感心した。 第2楽章はやや速めのテンポながらホルンのトレモロはちゃんと吹けていて私好み。 第3楽章は、やや速めでトランペットソロまで走り、少しテンポを落とす程度だが、トランペットソロは非常に美音である。 しかし、何か天国的ではない。 この後、この楽章はかなりテンポを揺さぶり、最後はアッチェルランドするまでもなく速いという状態で駆け抜ける。 最終楽章はちょっと独特の静謐さがあり、クライマックスではちゃんと盛り上がるが、その後は、きっちりとピアニシモを聴かせる。 コーダのテンポダウンはほどほどだが、ppppくらいの音量なので、引っ張りすぎないのは正解だと思う。 少し甘いかなとも思うが星2つ半。

総合評価:  ★★☆

ギーレンの演奏

レーベル:  haenssler CLASSIC
En Larmes: ELS03-448/9 CD-R
演奏家:   Michael Gielen / SWR SO
日時・場所: June 30-July 4, 2003, Konzerthaus, Freiburg
演奏時間:  total 84:05 ( 29:05 / 17:48/ 14:42 / 22:30 )
録音評:

 もともと、haensslerのものとCD−R盤とは別の録音と考えていたのだが、2日分の演奏のうち、CD-R盤は最初の1日の演奏のライブであり、haensslerの方は2日分のテープを編集したものらしい。両者を聞き比べても録音の品質の差しか感じないので、同一演奏として一括して扱うことにした。 haenssler盤はクリアで残響もほどよく、ノイズもほとんどない優秀録音であり、CD−R盤はこれに比べて勝るところがない。

演奏評:

 昔の演奏に比べるとだいぶ長くなっている。 第1楽章は冒頭こそそんなに遅くないが、その後だいぶ遅い演奏となる。 しかし、だるい感じはなく、弦の厚みもあり、遅めの演奏の中ではかなり上位にランクできるものと思う。 管楽器の音もきれいである。 この楽章だけなら星3つ出しても良いかなと思う。 ところが、第2、第3楽章が遅い。 とくに第2楽章の遅さは異様である。 中間部ではっきりテンポアップするのだがそれでも遅い。 第3楽章のトランペットソロでも、しっかりテンポを遅くして天使が降りてくるのだが、なにしろ遅い。 これは私の好みからだいぶ外れる。 最終楽章は、逆に速め。 特に、中間部以降で、ええっ?!というアッチェルランドをかけ、駆け足で終曲に向かう感じがする。 この部分は聞いていて、何だか慌ただしい。 しかし、終曲は見事! ちゃんと息絶えだえから臨終を迎える。 これは、星2つ止まり。

総合評価:  ★★
レーベル:  KARNA MUSIK: KA-303M CD-R
Von-Z: S-2-219/20 CD-R
演奏家:   Michael Gielen /Weimar State Opera O
日時・場所: August 25, 2006, Kongresszentrum,Weimar
演奏時間:  total 90:44 ( 31:01 / 18:37 / 16:07 / 24:59 )
録音評:

 CR−Rとしては、極めて良い録音と言える。 ノイズは皆無であり、音場感も良く、残響も適度。

演奏評:

 上記より更に遅い。 第1楽章からして、エッシェンバッハなみに遅いが、この楽章は遅くても充実している。 ワイマール国立歌劇場管というのは初めて聴いたが、なかなかうまいし音の良いオーケストラである。 その音の良さを活かした演奏と言える。 遅い中でも結構テンポを揺さぶっており、これがなかなか魅力的。 ベルは独特の余韻の大きな音だが正体は判らない。 この楽章だけなら★3つ級である。 第2楽章も最遅演の部類。 途中でテンポアップして普通の遅めの演奏になるが、その後再び遅くなり、コーダの部分も非常に遅い。 しかし、ここまではまだ許容できる。 第3楽章の遅さは異常である。 クレンペラーなみに遅い。 だから、トランペットソロのところで減速しないが、クレンペラーほどの徹底性は感じられない。 最終楽章は、また音が良い。 冒頭は標準的な中でのやや速めの演奏かなと思うが、中間付近でなぜかアッチェルランドがかかり、異様に速くなる部分がある。 その後、落ち着き、最後はちゃんと臨終の音楽が流れている。 中間部の2つの楽章がここまで遅くなかったら★2つ半なのだが・・

総合評価:  ★★
レーベル:  INTERCORD: INT860.913
演奏家:   Michael Gielen / SWF SO
日時・場所: April & August 1990
演奏時間:  total 79:05 ( 27:13 / 16:46 / 13:37 / 21:29 )
録音評:

 まずまず良好か。 曇ってもいないし、キンキンしてもおらず聞きやすい。

演奏評:

 昔のギーレンの演奏と言うことで、もっと即物的な温度の低い演奏を覚悟したのだが、割と普通。 それなりに粘る所は粘っている。 オケの出来も、まずまず。 10年後の演奏に比べれば随分とさっぱりしてはいるが、悪くはない。

総合評価:  ★★
レーベル:  DIRIGENT: DIR-0778 CD-R
演奏家:   Michael Gielen / NDR SO
日時・場所: September 26, 2010, Hamburg
演奏時間:  total 97:19 ( 32:54 / 19:20 / 16:03 / 29:02 )
録音評:

 解像度抜群で音の広がり感が素晴らしい。 残響は幾分強いが邪魔にならない。

演奏評:

 第1楽章冒頭から遅め。 遅めの中で絶妙にテンポを動かす。 各楽器の音も良い。 ベルは2種類のものを同時に叩いている様な独特の響き。 終曲部のフルートが素晴らしい。 第2楽章冒頭から遅めで、ホルンのトレモロをちゃんと吹かせる。 通常その後テンポアップする場合が多いが、この演奏では更に遅くなる。 中間部のテンポアップの幅は小さいが、その後だんだん速くなり、またテンポを落としたりと、遅い中で自在にテンポを動かしており、これがとてもチャーミングである。 例のターータターは、ターータッターだったり、ターータッタッだったりする。 第3楽章も冒頭からとても遅く、遅いままテンポを動かさず、トランペットソロまで引っ張る。 トランペットソロのところでの減速幅は小さい。 トランペットソロは3回出てくるが、最初ややくぐもった音で、2回目、3回目と進むにつれて、次第に澄んだ、晴れやかな音に昇華していく。 これは、心憎い演出である。 その後の部分に向かって盛り上がりは熱く、涙ウルウルもの。 その後縦横にテンポを動かす。 最後のアッチュルランドはそこそこだが、遅い中でやっているにもかかわらず、間延びしない。 最終楽章冒頭の引っぱりは通常程度だが、その後非常に遅いテンポを採用し、これが非常に魅力を放っている。 弦の音も、ホルンも良い音である。 最後に向かうクライマックスのあと、はじめて通常程度のテンポとなるが、程なく減速し、コーダはぐっと遅くなる。 止まりそうになりながら、最後に息を引き取る。 全体を通じて、超遅演であり、さすがに遅演慣れしているNDRはほぼ完璧にこなしている。 特に私の好みとずれる遅めの第2、第3楽章が極めて魅力的。 これは、やや甘だが、星3つ差し上げる。

総合評価:  ★★★

 

ギルバートの演奏

レーベル:  BIS:SACD-1710 hybrid
演奏家:   Alan Gilbert / Royal Stockholm PO
日時・場所: June 2-7,2008, Stockholm Concert Hal, Sweden
演奏時間:  total  82:22 ( 26:41 / 15:03 / 13:07 / 26:27 )
録音評:

 非常にクリアでノイズがなく解像度が良い録音。 残響も適度。

演奏評:

 第1楽章冒頭から割と標準的なテンポであり、アゴギーグの少ない素直な演奏。 音はきれいだが何だかすっきりしすぎている。 第2楽章は標準的なテンポだが、明らかにホルンはトレモロを吹けず、音を揺らす回数を端折るという珍しい誤摩化し方をしているが、ヘロヘロした音である。 中間部のテンポアップは大きめできびきびした感じがなかなか良い。 第3楽章は冒頭から標準的に速め。 トランペットソロに至って、かなりテンポを落とす。 このトランペットはうまいのではあるが、妙に音色がメロウであり、エレジーが似合いそうで、天国的響きとなりえない。 この後に続く部分は淡々としていて熱くならず、最後の部分もほとんどアッチェルランドがかからないので盛り上がらない。 最終楽章も冒頭から標準的なテンポ。 あまりエグイ引っぱりはなく、どちらかと言えば自然体。 弦は豊穣ではないがきれいであり、特に弱音が魅力的。 後半のクライマックスもちゃんと盛り上がるが、何となくお約束通りという感じが付きまとう。 優等生的な凡演かなと思っていたら、終曲のところでやってくれた。 遅い! 例の「死ぬように」終わる直前の弱音の弦楽合奏の部分に入ってから、思いっきり遅いテンポを採用している。 それでいて、弛緩せず、正しくテンションを保ったピアニシモ。 おそらく史上最遅の終曲だと思う。 最後の最後でこれが出来るんなら、その前にもっと何とかせんかい!と思ってしまうが、どうも、指揮者がオケの実力を熟知していて無理を避けたような感じがする。 と、すれば、いずれ機能性の高いオーケストラでやりたい放題出来る状況になった時、大化けするかも。 ともあれ、この演奏は星2つどまり。

総合評価:  ★★
レーベル:  URC:URC0083/4 CD-R
演奏家:   Alan Gilbert / New York PO
日時・場所: January 5, 2012, Avery Fischer Hall, New York
演奏時間:  total  80:38 ( 27:16 / 15:03 / 13:04 / 25:15 )
録音評:

やや残響は強め。 サーっと言うノイズはあるが、それほど目立たず、音はクリアで解像度はよい。

演奏評:

第1楽章冒頭から標準的なテンポだが途中自在にテンポを揺する。 ホルンをはじめとして各ソロ楽器の音が非常に良い。第2楽章冒頭からやや速めのテンポだがホルンのトレモロは完璧である。 途中のテンポアップもしっかりしており、私好みのきびきびした演奏。第3楽章も冒頭から速めで適度な切迫感がある。 トランペットソロの所でしっかり減速する。 トランペットはやや地上的な音だがうまい。 その後もテンポの揺さぶりがうまい。 最後のアッチェルランドもまずまず。 最終楽章冒頭標準的に引っ張る。 その後のテンポも標準的。 弦は豊穣と言って良い厚みがある。 ホルンがいい音を出している。 クライマックスも汗臭くなく盛り上がる。 終曲は上記ほど遅くないが静かな死の音楽。 やっぱり化けた。 かなり甘いが星3つ。

総合評価:  ★★★

ジュリーニの演奏

レーベル:  sardana records: sacd-179/80 CD-R
演奏家:   Carlo Maria Giulini / Vienna SO
日時・場所: 1975
演奏時間:  total 85:46 ( 30:40 / 17:08 / 14:08 / 23:50 )
録音評:

 録音はかなり悪い。 テープヒスが盛大に聞こえるし、音が籠りがちで鮮明さに欠け、音楽の細部が解りにくい。 ステレオ録音としては最低クラス。

演奏評:

 シカゴ響との演奏の前年のものであり、曲の解釈はほぼ同等と思われる。 録音が悪いため細かな音色の妙などは解らないが、オケの技術水準は遜色ないのではあるまいか。 録音がよければかなり魅力的な演奏ではないかと思うが、これは聞いていてつらいレベルの録音の悪さである。

総合評価:  ★☆
レーベル:  FKM: FKM-CDR-261/2 CD-R
演奏家:   Carlo Maria Giulini / Chicago SO
日時・場所: 1975
演奏時間:  total 85:46 ( 31:00 / 17:15 / 14:02 / 23:28 )
録音評:

 当時としては悪い方の録音。 テープヒスが目立ち、全体に音色が歪みっぽい。 たまに音の欠落もある。 音源となったテープの状態が悪そうである。

演奏評:

 DGGの録音の前年の演奏で、解釈的には近いが、こちらの方が荒削りな印象。 ライブだが大きな傷はない。 しかし、録音の悪さは差し引いてもホルンの音色が悪いしトランペットが力不足なのを感じさせるところがしばしばある。 唯一、音揺れがない点だけはDGG盤に勝るが、DGG盤の方を持ってたら、こっちは必要ないと思う。 録音の悪さ分を差し引いて星2つ。

総合評価:  ★★
レーベル:  DGG: 419966-2
演奏家:   Carlo Maria Giulini / Chicago SO
日時・場所: April 1976, Chicago
演奏時間:  total 87:57 ( 31:46 / 17:07 / 13:52 / 25:12 )
録音評:

 この録音には、正体不明の傷がある。 第1楽章冒頭から弦の音がずっとビブラートがかかった様に揺れ続けるのである。 この曲にとって弦の音は極めて重要であり、このノイズはある意味致命的であるが、演奏は独特であり捨てるには惜しいと誰もが思う所である。 かねがね残念に思っていたところ、シューベルトの8番と抱き合わせの廉価盤が発売された際に、このノイズが改善されているとの噂があり、実際にそっちも買ってみた。 確かに、その盤には手が加えられていた。 裏表紙にデジタル処理を加えた旨の表示があるし、CD初期のDGG盤の特徴であった各楽章が複数のトラックにわたっていて使い勝手の悪かったものが、楽章ごとに1トラックを割り振る形に修正されている。 実際の音であるが、確かに幾分ビブラートの様な揺れがましになっているようにも聞こえる。 しかし、さほど大きな改善とは言えず、むしろそれと引き換えに音場が狭くなり、音の生々しさがかなりそがれている。 音が死んでいる感じなのである。 おそらく、かなり癖の強いフィルター処理を掛けたのだろう。 再生装置のグレードが低い場合、この差は解らないかもしれないが、それなりの装置をもって聞く人にとっては、改悪となっているように思う。 従って、今から買うならば、新品はほとんど修整済みのものしか手に入らないと思われるので、出来れば中古市場を漁ってトラックが楽章ごとになっていないものを手に入れることをお勧めする。問題の音揺れの方は、第1楽章では目立つものの、他の楽章ではそれほど気にならない。

PS) smartbrain さんという方から御指摘いただき聞き直したところ、第4楽章も相当音揺れがひどいです。 訂正します。

演奏評:

 音揺れを人間の耳によるフィルターを掛けて聴くと、これは大変な名演である。 第1楽章はゆったりとして風格を感じさせるテンポ設定ながら、大味とならず、細かなトーンバランスにもうならせる配慮がみられている。 第2、第3楽章は遅めであるが、重ったるくならず遅いことに説得力を感じさせる。 特に第2楽章をこのくらい遅くして納得できる演奏は多くない。 第3楽章のトランペットソロの間の背景のヴァイオリンの動きがきっちり録音されていたり、細かな所にハッとさせられる所がある。 第4楽章も申し分なし。 弦の音もホルンの音もきれいだし、演奏そのものにはほとんど傷はない。 音揺れさえなかったら星三つなのだが。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  KAPELLMEISTER: KMS-246/7 CD-R
演奏家:   Carlo Maria Giulini / Swedish RSO
日時・場所: 1973, Stockholm
演奏時間:  total 84:46 ( 30:35 / 16:39 / 13:58 / 23:19 )
録音評:

 テープヒスは聞こえるが、楽器の定位などもはっきりした好録音。 第3楽章で1カ所音飛びがあるのが残念。

演奏評:

 上記の諸録音の2〜3年前の演奏だから、解釈的にはほぼ同様だが、各楽章とも少しずつ速め。 オケは音色が良く、非常に瑞々しい感じがする。 ホルンの音もまあまあ。 ライブゆえの事故は数カ所あるが致命的な感じではない。 これで、オケの技術水準がもう少し高ければ星3つをうかがう所だが、2つ半がいっぱいだろう。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  crntro storico: CSCD0108-2 CD-R
演奏家:   Carlo Maria Giulini / Philadelphia O
日時・場所: March 17, 1972, Carnegie Hall, New York
演奏時間:  total 90:41 ( 32:18 / 17:22 / 14:17 / 26:44 )
録音評:

 カーネギーホールの割にデッド。残響が少ない分解像度は高く、会場騒音をよく拾うし、マエストロの鼻歌が結構聞こえてくる。テープヒスと思われるホワイトノイズも常時聞こえてはいるが気にならないレベル。 しかし、音質が今ひとつで何だかキンつく。

演奏評:

 第1楽章冒頭からずーっと遅い。遅い中で更にためや引っぱりもある。弦は穏やかな厚みのある音だがホルンの音が何だかしまらない。 ベルは正しくチューブラーベル。 第2楽章も遅め。 ホルンのトレモロはなんとか吹きこなしているが、ぎりぎりであり、その後トレモロ以外の速いパッセージであからさまにたどたどしくなるところがある。 中間部で通常テンポアップするところも遅いままを強行する。 第3楽章も遅い。 この楽章冒頭のトランペットの音程が怪しく、その後ブラスが吠えすぎて荒っぽい。 弦が妙にギスギスしており、全体に緊張感が強いが荒い。 トランペットソロでのテンポダウンは少なめ。 きれいな音色だが地上的。 その後の部分はそこそこ盛り上がるが、やはり音色がざらつく。再現部でもテンポは遅めでアッチェルランドもそれほどかけない。 最終楽章は、弦の音色がまた良くなっている。 良い演奏だが、ホルンの音色だけが引っかかる。 通しで見て、遅演であることは目立つ。 面白い演奏なのだが、音質が悪くその分は減点したい。 星は2つ。

総合評価:  ★★
レーベル:  FKM: FKM-355/6 CD-R
演奏家:   Carlo Maria Giulini / Philadelphia O
日時・場所: 1974, Philadelphia
演奏時間:  total 87:37 ( 32:05 / 17:14 / 14:12 / 24:06 )
録音評:

ややキンつくし、フォルテシモで少しサチる感じはあるが、それ以上に問題なのが、非常にデッドで残響がほとんどないこと。 ライブ録音なのにこれは異常である。 おかげで、全体に音に潤いがない。 常々から風呂場録音よりデッドな方が良いとは言っているが、ここまでだとちょっと辛い。

演奏評:

上記の演奏にかなり近い。 全体に遅めだが、デッドで残響に埋もれない分、いろいろとアラも目立つ。 ホルンをはじめ、ブラスの音が総じてうるさく下品である。 第1楽章冒頭から遅く、各楽章のテンポ設定は上記の演奏に近い。 演奏の出来は上記より良いが、音響的には低弦が妙にガリガリいって変わったバランス。 どういうマイクセッティングなのか不思議である。 曲の解釈は、遅めの名演であって、星3つクラスなのだが、ブラスが駄目なのと、音が全体に魅力がなさ過ぎ、星は2つどまり。

総合評価:  ★★

ゴレンシュタインの演奏

レーベル:  MDG: MDG 648 1719-2
演奏家:   Mark Gorenstein / Russia State SO
日時・場所: February 20,2010, the Great Hall of Moscow Conservatry
演奏時間:  total 95:01 ( 30:07 / 17:45 / 15:10 / 31:56 )
録音評:

 ノイズは無いが、残響はかなり強めであり、解像度が今ひとつ。 鑑賞には支障ない。

演奏評:

 演奏時間をご覧になれば判る通り、超遅演の部類に入る。 ロシアの演奏家による9番としては珍しい。 この指揮者、なかなかの曲者とみた。 両端の楽章は典型的な遅演だが、だれない。 良い出来である。 中間の2つの楽章も遅く、特に第二楽章は極めて遅いが、独特の緊迫感があり、間延びしない。 やや、ホルンの音色は気に入らないが、スヴェトラーノフの頃よりは良いように思う。 全体に音響は分厚く、好みが分かれるところだろうが、私は好きな方の演奏に入る。 やや、甘いが星2つ半。

総合評価:  ★★☆

ヘンシェンの演奏

レーベル:  Yakult: NedPhO1016/17/18
演奏家:   Hartmut Haenchen / Nederlands PO
日時・場所: November 1995, Concertgebouw, Amsterdam
演奏時間:  total 82:21 (28:14/15:45/14:32/23:50)
録音評:

 残響もほどよく、細部も良く解る優秀録音。 コンセルトヘボウというホールの音の良さを十分に生かせている。 ノイズはない。

演奏評:

 第1楽章冒頭からゆったりと始まる。 弦の音が美しく、ホルンの音もやや硬めではあるがまずまずと言える。 あまりテンポは揺らさない。 タムタムの音も渋めでなかなか良い。 鐘は音色は良いのだが音程が曖昧であり、明らかにチューブラーベルではないが、これなら私は許容内。 中間部で陰影が良く描かれ適度に悪魔的である。 第2楽章のホルンのトレモロは残念ながら吹きこなせていない。 このオケはホルンの技術水準にやや難があるようである。 テンポ設定は少し遅めだが、重いというより堅い感じ。 全体に音色はきれいだが、遅いために後半で少しだれる。 第3楽章は標準的なテンポ設定で、弦が刻むようにしっかりと音を出している。 手堅い感じだが少々重い。 トランペットソロは大変きれいである。 ここではテンポは少し落とす程度だが、その後にかなり思い切ってテンポを落とす。 思い入れの強い演奏とはいえないが、盛り上がりはあり心地よい。 最終楽章は、標準より気持ち速めのテンポ。 弦が大変きれいで魅力的である。 ただ、ホルンはやはりイマイチ。 途中の盛り上がりもまずまずだが、終結部の手前のところで休止符にあわせてテープをつないでいるのが明らかに解る無音部分があり、致命的に興を削がれる。 装置のグレードが低ければ解りにくいかもしれないが、ヘッドホンで聴いていると結構気になる。 編集のミスと言えようか。 全体としては好演と言え、★2つ半も考えたが、ホルンの問題と、テープつなぎの点が気に入らないので2つに留めることにする。

総合評価:  ★★
レーベル:  ljublijanska banka: SF 006024-5
演奏家:   Hartmut Haenchen / Slovenian PO
日時・場所: September 27 & 28, 1995, Gallus Hall, Ljubljana-Slovenija
演奏時間:  total 82:10 (27:44/16:08/14:25/23:53)
録音評:

 細部まで見晴らしの良い高解像度録音だが、ホールトーンのせいか、超低域だけが強い残響をもって、もやつく。

演奏評:

 上記と同じ年の別のオケとの演奏。 ほとんど同じでも不思議はないはずだが、違いを感じる。 テンポはこっちの方が揺する感じ。 第2、第3楽章はより遅く、指揮者の意図はより徹底しているように思われる。 弦が非常に魅力的だが、ホルンが技術的に問題あり、特に第2楽章はひどい。 このホルンの問題をのぞけばこっちの方が良い演奏だと思う。 本当なら星2つ半だが、ホルンの分減点。

総合評価:  ★★

ハイティンクの演奏

レーベル:  PHILIPS: 464714-2
演奏家:   Bernard Haitink / Concertgebouw O
日時・場所: June 23-26,1969, Concertgebouw, Amsterdam
演奏時間:  total 80:45 ( 27:03 / 15:59 / 12:57 / 24:46 )
録音評:

 テープヒスはきっちり聞こえる。 録音のせいか弦の音がやや硬い。

演奏評:

 第1楽章は、かなりテンポをいじっている。割と熱っぽい演奏であり、ティンパニーが連打された後あたりから、かなりじっくりと時間をかけている。 鐘はやはりチューブラーベルではなく独特の音色である。 第2楽章は、ゆっくり目のテンポをベースとしながら中間部はきっちりとテンポアップしており、キビキビとして小気味良い。 ホルンはやや怪しいが及第点。 第3楽章は、何となく重い感じがする。ギシギシ言うようなメリハリをつけており、中間部のトランペットソロは何だか危なっかしい。 あまり速度を落とさないので全体としては演奏時間は短めとなっている。 最終楽章は無難な感じ。 本来ならコンセルトヘボウ管はもっと良い音がすると思うのだが、録音のせいなのか。

総合評価:  ★★
レーベル:  PHILIPS: 464321-2
演奏家:   Bernard Haitink / Concertgebouw O
日時・場所: December 25, 1987, Concertgebauw, Amsterdam
演奏時間:  total 88:59 ( 29:18 / 17:07 / 13:19 / 29:15 )
録音評:

 上記よりも18年も後のものだけに、明らかにこっちの方が音が良い。 個々の楽器の音が生き生きしている。 少々ノイズの入る所があるようだが気になるレベルではない。

演奏評:

 同じ指揮者、同じオケでありながらここまで違うか?と思うほど違う。 各楽章の演奏時間を見比べて頂きたい。 第3楽章を除けば、かなり遅い方の演奏に入る。 第1楽章冒頭からかなりゆっくりしたテンポでじっくり聞かせてくれる。 途中しばらくほどほどのテンポになるが、中間部では再びゆったりと存分にオケを歌わせており、ここは聴きものである。 弦の音はなかなかで、ブラスの音はややうるさい所もあるが、程よく悪魔的。 鐘の音はやはりチューブラーベルではなく不快。 第2楽章は遅い! しかし重ったるくはなく、中間部以後かなりテンポを揺さぶっているが、しなやかにワルツしている。 ホルンの音は小さめで聞き取りにくいが、トレモロはごまかしてはいない模様。 第3楽章も時間の割に遅めと感じる。 たっぷりと盛り上げにかかるがトランペットソロはまあまあと言う程度。 最終楽章がすばらしい。 ゆったりと美しく哀しく、しかも厚い弦の音を堪能できる。 木管楽器群の音も良く、ホルンもこの楽章に関しては上々の出来。 クリスマスコンサートシリーズの選集9枚組としてしか手に入らないのが難点だが、他の曲の出来も良く買って損はないものと思う。 ハイティンクのマーラーとしては最高の部類だろう。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  PHILIPS: 438943-2
演奏家:   Bernard Haitink / EC Youth O
日時・場所: April, 1993, Concertgebouw, Amsterdam
演奏時間:  total 84:57 ( 27:16 / 18:05 / 13:28 / 26:08 )
録音評:

 クリアかつ適度な残響あり。 ノイズもほとんどない。 優秀録音である。

演奏評:

 ヤフオクで何とかゲットしたが、えらい高いもんについてしまった。 現在、入手性は非常に悪い。 演奏は、上記と下記のちょうど中間的なものであるが、第2楽章がかなり個性的で、冒頭から超遅演である。 これは、遅すぎて踊ることもできないワルツ。 しかし、中間部では一気にテンポアップして、通常からやや速めくらいとなり、その後冒頭並みに遅くなったり、目一杯引っ張ったりと、テンポのメリハリが結構ある。 それでいて不自然にならないところが非凡な演奏と言える。 第1、第4楽章とも弦が良い音を出している。 全体に良い音だが、濃厚という方向ではなく清々しさを感じる。 名演というよりは、秀演ないし好演という感じ。 星は2つ半としておく。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  GNP: GNP145 CD-R
演奏家:   Bernard Haitink / Vienna PO
日時・場所: April 25,2004
演奏時間:  total 78:33 ( 25:49 / 16:30 / 13:14 / 23:00 )
録音評:

 ごく最近の演奏であるが、かすかにホワイトノイズの様なものが聞こえる。 テープヒスではないと思うが、何に由来するものか解らない。 音質はCD-R盤としてはまあまあと言う程度。

演奏評:

 上記クリスマスコンサートのライヴよりさらに17年後の演奏で、オケも違うが内容的にもまた変化している。 演奏時間を見ても、両端楽章が昔の形に回帰しているのが解る。 第1楽章は開始から標準的なテンポに戻っている。冒頭から弦の音はさすがと思わせる美音である。 中間部あたりから結構テンポを揺さぶり熱い演奏となっている。 ティンパニーの音程はまとも。 ベルの音はちょっと独特の響きの長目の音だが嫌な音色ではない。 第2楽章は遅めの標準と言う感じの演奏で、軽快さはないが手堅く、ホルンはトレモロを誤摩化さずに吹けている。 テンポの揺さぶりは少なめ。 第3楽章は普通のテンポで始まり、トランペットソロの所で普通に減速するオーソドックスなスタイルだがこの楽章に関してはブラスがバリつき過ぎるような気がする。 また、終結部で急にテンポアップしてアンサンブルが崩れかかっている。 終楽章は速めの演奏であり、冒頭からあまり引っ張ることなく薄口。 弦はそれなりに厚みを持った音だが少々ギスギスする感じ。 この演奏自体悪い演奏ではないと思うし、昔に比べるとウィーンフィルも大分この曲に慣れてきたのかなと思うが、上述のクリスマスコンサートのライヴを聞いてしまうと敢えてこっちは手に入れる必要はないかなと思う。

総合評価:  ★★
レーベル:  SUNJAYclassics: SUCD-184-K CD-R
演奏家:   Bernard Haitink / London SO
日時・場所: June 20,2009, BBC Proms
演奏時間:  total 90:36 ( 31:02 / 17:55 / 15:19 / 26:20 )
録音評:

 やや低音がかぶり気味ではあるが細部の見晴らしがよく、音色も優れた好録音。 CD−R盤としてはかなり水準が高い。 ただし、一カ所だけ第3楽章のトランペットソロが始まるまさにその瞬間にほんの数秒だが、録音機器のトラブルによると思われる異常音が入る。 このためにこの楽章はぶちこわしとなっており、何とも惜しい。

演奏評:

 上記より更に5年後。 オケも違うが演奏もまた変わって、クリスマスコンサートのころのものに近づいている。 演奏時間はこれまでの最長だが、第1楽章は終了後、チューニングするところまで録音されているせいで、実際には30秒くらい短い。 両端楽章は更に磨きがかかった感じであり、すばらしいというにつきる。 星4つやりたいくらいである。 しかし、第2、第3楽章が遅い。 それでも第2楽章はやたら分厚い音響ではあるが、まだ納得するところがある。 問題は第3楽章終結部で、何とももたもたした感じ、ハイティンクも老いたのかなあと考えてしまう。 それでも他が素晴らしいので星3つか2つ半か迷わなければならないところだが、第3楽章の録音の傷があるので星は2つ半とする。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  DIRIGENT: DIR-0343 CD-R
演奏家:   Bernard Haitink / London SO
日時・場所: July 20,2009, London
演奏時間:  total 91:21 ( 31:09 / 18:13 / 15:38 / 26:21 )
録音評:

 やや低音がかぶり気味ではあるが細部の見晴らしがよく、音色も優れた好録音。 CD−R盤としてはかなり水準が高い。 ノイズもない。

演奏評:

 上記の1ヶ月後、オケも同じ。 当然、解釈は同じと考えてよく、演奏の出来不出来の差がどうかというところだが、遜色ない。 最初、上記と同一の演奏だと思い込んで聞いていたが、微妙に印象が違い、後で1ヶ月後の演奏であることに気がついた。 微妙な差とは、こっちの方が第1楽章が幾分淡白なのと、第3楽章がもたつかず、出来がいいこと。 で、ノイズもないし、こっちは星3つかというと、さんざん悩んでやっぱり、2つ半。 やはり、中間2楽章が遅すぎる。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  Don Industriale: DI-08035B CD-R
演奏家:   Bernard Haitink / Cleveland O
日時・場所: March 29,1973, Severance Hall, Cleveland
演奏時間:  total 80:54 ( 26:45 / 16:55 / 12:36 / 24:38 )
録音評:

 録音は悪い。 終始ジーっと言うようなノイズが聞こえている上に、時々ガサガサというようなノイズも入る。 ダイナミックレンジも周波数レンジも幾分狭い。

演奏評:

 これは、かなり古い方で、1967年の演奏に近い。 第1楽章は、それほどいじっている感じはないが、冒頭のミュートトランペットの音が独特だったり、ティンパニーの音がくぐもった感じだったりと、音色が独特で陰影の濃い演奏になっている。 第2楽章は冒頭からやや遅め。 ホルンはトレモロを吹ききれず、ゾウの叫び声のよう。 中間部のテンポアップも大きくはなく、ゆっくりしたテンポだが、ゆっくりの中での揺さぶりはある。 第3楽章は私好みの速めのテンポ。 しかし、トランペットソロでテンポをあまり落とさないため、天国には到達していない。 その後の部分も割とあっさりしており、最後のアッチェルランドも並のレベル。 最終楽章冒頭はあっさりめで、あまり引っ張らない。 テンポは標準で、弦は普通にきれい。 ホルンの音色はほどほど。 後半のクライマックスは熱情的でそれなりに引っ張る。 最後はきっちり死ぬように終わっている。 まずまずの好演かとも思うが、何しろノイズの多い録音のため、星はおまけしても2つどまり。

総合評価:  ★★
レーベル:  BR Klassik: 900113
演奏家:   Bernard Haitink / Barbarian RSO
日時・場所: December 15-16, 2011, Philharmonie, Munhen
演奏時間:  total 79:53 ( 26:47 / 16:08 / 13:16 / 23:10 )
録音評:

 音はクリアでノイズはないが、低域の残響が強め。 やや、低音部がかぶり気味。 しかし、解像度は悪くない。

演奏評:

 第1楽章冒頭から標準からやや速めで進むが、途中かなり独特のためや引っぱりがあり聴かせる。 結構起伏が激しくハイティンクの演奏の中では熱いほう。 ベルはチューブラーベルだが重めの音。 第2楽章は当初は速め。 それでもホルンのトレモロはちゃんと吹いている。 途中のテンポアップの幅は小さめ。 終盤になって突如遅くなり、目一杯引っ張る。 楽章全体にメリハリが強く、弦はゴリゴリいうし、ブラスは吠える。 第3楽章は私好みの快速運転だが、音響的に分厚い。 トランペットソロは、それなりにうまく音色はきれいだが、速めで淡々としており天国的でも地上的でもない。 終盤のアッチェルランドは控えめ。 最終楽章は冒頭引っ張った後は速め。 音響的に厚く、弦はいい音を出している。 テンポは速めで、熱い部分もあるが全体としてみて手堅い感じ。 全体を通してみると、低弦とブラスが分厚く、やや荒々しいくらいにすごみのある演奏。 星は2つ半。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  Royal Concertgebouw Orchestra: RCO12101 disc9 DVD
演奏家:   Bernard Haitink / Royal Concertgebouw O
日時・場所: May 13 and 15, 2011, Concertgebouw, Amsterdam
演奏時間:  total 86:16 ( 28:07 / 16:56 / 13:32 / 28:44 )
録音評:

 DVDなのでCDと再生環境が違うが非常に良い録音だと思う。 適度な残響がありながら、解像度が高く個々の楽器の音を細部まで拾えている。 また、このオケの音の良さを非常に良く表現できている。 マーラーはこういう音で聴きたいというのが実現できている。

演奏評:

 コンセルトヘボウ管の自主制作によるマーラー交響曲全集の1枚で、ハイティンクが振っているのは9番だけ。 しかし、素晴らしい演奏である。 両端の楽章は遅めだがだれないし、随所で独特の「ため」があり、これが極めて魅力的。 中間の2つの楽章も重ったるさがなく良いテンポ。 第2楽章のホルントレモロも合格。 第3楽章のトランペットソロもちゃんと天国的。 全楽章を通じて個々の楽器の音色が良くチャーミングである。 あえて注文を付けるとすれば第3楽章後半、もう少し突っ走って欲しいが、それは老マエストロには無理なので、ハイティンクのものとしては最高のものと考えていいのではないか。 ★は3つ差し上げる。

総合評価:  ★★★

ハラスの演奏

レーベル:  NAXOS: 8.2550535-6
演奏家:   Michael Halasz / Polish National RSO
日時・場所: March 26 & April 3,1993,
Concert Hall of the Polish Radio, Katowice
演奏時間:  total 83:49 ( 28:51 / 16:56 / 13:39 / 24:23 )
録音評:

 残響もほどほどあり、聞きやすい。 まずまずである。

演奏評:

 バジェットプライス用のバジェットな演奏かと思ったら、そうでもなかった。 ポーランド国立放送響はなかなかレベルの高いオケのようで、個々の楽器のソロに光る所が多い。 ホルンソロは全曲を通してきれいな音を出しているし、木管楽器も健闘している。 第1楽章は、遅めではあるが、あまり奇をてらった感じのない手堅い演奏である。 第2楽章は遅い。 しかし、だれた感じはなくしっかりと音を出してくる感じ、ホルンのトレモロは当然誤摩化しなし。 遅め故、好みとは言えないが許容内。 第3楽章は、標準的な速さで始まるがトランペットソロの所から、実に思い入れたっぷりにテンポを落とす。 涙ウルウルものである。 この手の第3楽章の演奏は久しぶりに聴いた気がする。 第4楽章も弦の音が魅力的であり、まずまず合格点。 総合評価をどうするか、ちょっと迷ったが第3楽章の出来に免じて星2つ半。

総合評価:  ★★☆

ハーディングの演奏

レーベル:  Harvest Classics: HC06104 CR−R
Sun Joy Classics: SUCD-26-K CR−R
演奏家:   Daniel Harding / Dresden State Opera O
日時・場所: January 7,2007, Semperoper, Dresden
演奏時間:  total 88:28 ( 31:04 / 15:36 / 13:05 / 28:43 )
録音評:

 クリアで適度に残響もあり、ノイズはない。 CD−Rとしてはトップクラスの好録音といえる。 

演奏評:

 極めて個性的で魅力のある演奏である。 第1楽章冒頭は標準の中でのゆったりめくらいだが、最初のティンパニ連打のあたりからぐっと遅くなる。 ここから続く部分の寂寞とした感じは凄い。 目一杯遅く引きずるような重い音楽が続いている。 第1楽章からすでに死の音楽を始めるのかという感じ。 こういうのは初めて聴いた。 第2楽章は冒頭は標準的なテンポでありホルンのトレモロは合格。 中間部もちゃんとテンポアップし小気味良い速さ。 後半出現する例の「ターータター、ターータター」というリズムだが、「ターーッタター、ターーッタター」というふうに跳ねる。 これは、ルイジやクーベリックのやり方とも違う、ハーディング特有の節回しである。 全ての部分でこのリズム回しを採用しており徹底している。 第3楽章は普通。 トランペットソロもまずまず無難であり、この演奏の中ではここだけが平凡である。 最終楽章冒頭は思いっきり引っ張る。 その後はしばらく通常くらいのテンポを維持する。弦の音色は良いしホルンもなかなか良い。 終盤のクライマックスで再び思いっきり引っぱり、その後はどんどんテンポは遅くなって、超遅演に変貌。 最後は本当に息が絶えるように終わる。 解釈の域を超えて編曲に近づく類いの演奏だが強い説得力があり、私はこういうのは歓迎。 ただし、一部オケが付いて行ききれないかなという所がある。 第3楽章が今ひとつなのも含め、星は2つ半とする。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  En Larmes: ELS12-900/1 CR−R
演奏家:   Daniel Harding / Swedish RSO
日時・場所: April, 2011
演奏時間:  total 83:47 ( 29:04 / 15:33 / 12:41 / 26:29 )
録音評:

 音質は非常に良いが、かすかにシュルシュルいうノイズがある。 残響と解像度は良好。 

演奏評:

 上記の4年後の演奏。 オケが違うせいもあるのか、微妙な違いがある。 まず第1楽章が2分も短くなっており、ためやひっぱりなどがだいぶおとなしくなっている。 しかし名演には違いない。 弦の音も木管もいいが、ホルンがややエレプァント系になってしまうところがあり残念。 第2楽章はテンポ設定はほぼ上記と変わらず。 ホルンはややクセがあるがトレモロは完璧。 テンポアップはいい感じ。 「ターータター」は一部「ターーッタター」が残っているものの、だいぶ普通になっている。 ただ、引っぱりやタメが強くなり、よりエレガントになった。 第3楽章冒頭は少し速めになり、そこは買える。 その後、やや遅めでトランペットソロのところで減速は大きくない。 トランペットソロは無難。 最後のアッチェルランドは控えめ。 やはり、この楽章は課題がある。 最終楽章冒頭で思いっきり引っ張るのは同じ。 その後、例のクライマックスでの引っぱりはもっと極端になり空前絶後。 その後もテンポ遅めで時々止まりながら最終的に静謐な死を迎える。 最終楽章は非常に出来が良い。 全体としてみると、上記の方が個性的な分魅力的だが、この演奏も悪くはない。 ★は2つ半出せる。

総合評価:  ★★☆

ヘルビッヒの演奏

レーベル:  LIVE SUPREME: LSU1007-2 CD-R
演奏家:   Gunter Herbig / Saarbrucken RSO
日時・場所: March 2002
演奏時間:  total 79:51 ( 27:28 / 16:51 / 12:11 / 23:21 )
録音評:

 デジタル録音と銘打っているのにテープヒスがしっかり聞こえる、何なんだろう。 音は良好。 少し遠目から聞こえ、自然な感じ。 結構細部の音を良く拾っている。 響きがすばらしい。

演奏評:

 第1楽章は標準的なスピードだと思うが、ここのところ重戦車ばかり聞いていたせいか、軽快で清々しくさえある。 ティンパニーが最初に登場するあたりで、テンポをぐっと落とし曲想が変わった感じを強調している。 面白いやり方だと思う。 この後も大胆にテンポ変更を行っていく。 70代の巨匠とは思えないほど若々しさを感じる。 ホルンの音色がなかなか良い。 ベルは私好みなチューブラーベル。 とても魅力的な第1楽章である。 第2楽章は遅め。 重い感じではないが、しっかり音を出している。 当然ホルンのトレモロはごまかしなし。 途中テンポアップするところからは、飛び跳ねるよう。 やっぱり若々しい。 テンションが高いのである。 テンポ変更はやはり大胆。 第3楽章は最速の部類、アンサンブルが乱れる寸前のところでがんばってる感じである。 トランペットソロはきれいだが、それほどテンポは落とさない。 後半、どんどんアッチェルランドしていき、荒々しくさえなる。 これもちょっと珍しい。 第4楽章冒頭は結構引っ張る。 このオケにしてはずいぶん濃い音を出している。 この楽章のホルンはまあまあという程度。 結構盛り上がるところはテンションが上がり劇的である。 バーンスタインとの差は汗臭さがないことか。 全体としてみると起伏をちゃんと作った演奏と言える。 第1楽章だけなら星3つ。 通しで聴いて星2つ半というところか。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  BERLIN CLASSICS:0017952BC
演奏家:   Gunter Herbig / Saarbrucken RSO
日時・場所: September 16,2001,Congresshalle Saarbrucken
演奏時間:  total 79:54 ( 27:22 / 16:57 / 12:11 / 23:24 )
録音評:

 解像度が高く、ノイズはほとんどない。 残響も適度であり優秀な録音と言える。 コントラバスを中心とする低音楽器の音をとてもうまく拾っている。

演奏評:

 上記に先立つこと約半年で、解釈は全く同じと言って良い。 しかし、演奏の出来は更にこっちの方が良いように思う。 やはり第1楽章は素晴らしく文句ない。 第2楽章は遅めだが中間部のテンポアップするあたりから縦横にテンポを動かし、とてもチャーミングな演奏になっている。 遅めでもこれは許す。 第3楽章の速さも特筆もの。 時間は同じなのだが、トランペットソロでもう少しテンポを落としており、その分、終盤のアッチェルランドがものすごいことになっている。 おそらくこのオケの限界まで加速しており、あと1分続けたらアンサンブルが崩壊していただろう。 壮絶な第3楽章である。 そして、最終楽章は音が良い! やー、ほんとほれぼれする弦である。 第2楽章以外全部★3つ。 第2楽章も遅めのものとしては異例だが2つ半は出して良いと思う。 で、いささか甘いが総合評価は星3つ。 おすすめ!

総合評価:  ★★★
レーベル:  DIRIGENT: DIR-0584
演奏家:   Gunter Herbig / Gran Canaria PO
日時・場所: October 23,2009, Las Palmas de Gran Canaria
演奏時間:  total 75:40 ( 24:55 / 16:02 / 12:21 / 22:22 )
録音評:

 最近の録音にしてはノイズっぽいし、フォルテでややサチる感じがあり、音場がすっきりしない。 鑑賞に堪えるレベルではあるが。

演奏評:

 上記のものから約7年経過し、オケも違っているが、本質的には同じ解釈。 ただし、第1楽章はよりさっぱりしている。 マエストロはかなりの高齢になるはずだが、相変わらず元気。 流石に若々しいとまでは行かなくなっているが、まだまだ熱い演奏であり、同質の魅力がある。 オケもなかなか健闘しているが、上記ほど限界を極めさせられてはいない。 録音がやや難ありという点も含め、★は2つ半。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  En Larmes: ELS 10-835
演奏家:   Gunter Herbig / Columbus SO
日時・場所: Novenber 25,2009
演奏時間:  total 79:03 ( 25:58 / 17:27 / 13:17 / 22:21 )
録音評:

 解像度は悪くなく、残響もややデッドで好ましいのだが、全編を通してシュルシュルキュルキュル言うノイズが載っており、更にハムも無視できないレベルで混入している。 残念である。

演奏評:

 上記と時期的にはほぼ同じ。 解釈の基本には従って差はないが、オケの差がはっきり現れている。 何しろコロンバス響というのはアメリカの片田舎の中小企業という感じのオケで、弦の人数が少ないのがはっきり響きに出ている。 音色は良いのだが、中音域の弦の厚みに欠ける。 また、ホルンは下手ではないのだが、音色がやや吹奏楽より。 第1楽章はややテンポ変更はおとなしめで手堅いようにも思うがまずまず良い出来。 ベルは重めの音のするチューブラーベル。 第2楽章はホルンの実力に合わせたのか、よりスローテンポ。 このため、ホルンのトレモロは何とか合格点。ちょっと飛び跳ね方が重いか。 第3楽章は冒頭から標準くらいで、ヘルビッヒにしては遅めのテンポ。 トランペット・ソロはまずまずでちゃんとテンポも落ちる。 アッチェルランドもこの演奏では無理せずほどほどである。 最終楽章の弦はなかなか健闘しており聴かせる。 ただ、ホルンの音色はダメ。 全体として、このオケからこれだけの演奏を引き出したのはさすがだと思う。 録音のひどい分は減点しないことにする。

総合評価:  ★★
レーベル:  NSO Live:
演奏家:   Gunter Herbig / Philharmonia Taiwan, the National SO
日時・場所: September 24,2009
演奏時間:  total 79:24 ( 25:55 / 16:21 / 12:29 / 24:38 )
録音評:

 残響は気持ち強めだが、解像度を損なうことなく、むしろ弦の響きを魅力的にしている。 ノイズもなく、優秀な録音と言える。

演奏評:

  上記2つとほぼ同時期の演奏。 ヘルビッヒは、このオケが今後ベースキャンプになるらしい。 初めて聴くオケだし、まあ、ドサ回りが行き着くところに行き着いたのかなーと、なかば同情的な気分で聴き始めて驚いた。 このオケ良いじゃん! 弦が良い音色出してるし、かなりオケの機能が優れてます。 少なくともザールブリュッケンの放送響には負けてません。 この演奏ではほぼやりたいようにやれてるのではないかと思う。 解釈の基本はぶれない人だなーとおもうが、より濃くなってる感じがします。 敢えて難を言えば、第1楽章冒頭部分で、ブラスセクションと弦のチューニングがかすかにずれてること。 これ、気にならない人は気づかない程度ですが。 それにしてもこのアルバム、カップリングがマーラーの6番にブルックナーの9番と目一杯濃いです。 評価は、少し甘いけど★3つあげましょう。

総合評価:  ★★★

ホーネックの演奏

レーベル:  DIRIGENT: DIR-1526 CD-R
演奏家:   Manfred Honeck/ Suisse Romande O
日時・場所: April 2, 2014, Geneve
演奏時間:  total 84:14 ( 26:13 / 15:17/ 14:43 / 28:01 )
録音評:

 音質的には悪くないが、傷の多い録音である。 第1楽章冒頭で音量が異様に小さい。 間も無く改善されるが、なんか音場が狭いなと思ったら途中で改善されたりと、録音機器の調子が悪かったのか。 アナログっぽいホワイトノイズがけっこう聞こえるが、表示はDDD。 致命的なのは第2楽章後半でテープのつぎはぎに失敗したような不連続部分があること。 そういう問題点を除けば、音自体は魅力がある。

演奏評:

 第1楽章から随所にユニークなところはみられるが、まあ手堅い範囲内。 テンポは標準的、全体に弦とホルンの音は綺麗だが中高音よりで、低音はやや弱い。 第一楽章は、一部にユニークな音が聞こえるところはあるが、無茶はやらず、弦とホルンの音の良さで加点している。 ベルは普通のチューブラーベル。 第2楽章はテンポは標準だが、ホルンは最初から速いパッセージを諦めている。 潔いくらいトレモロは吹いていない。 中間部のテンポアップはそれなりに大きめ。 レイのリズム処理はターータターは少数でターッタッタを多用している。 第3楽章も通常テンポで無理はしない。 トランペットソロでの減速も普通。 トランペット時はかなりいい音で、天使が降りてくる。 その後の部分もかなりいい感じ。 最終楽章は、弦とホルンの音の良さを生かしてポイント高いが途中、フルートが出る場所を間違えて迷走するところがあり、大変惜しい。 全体としてみると、魅力的なところは多いものの、ミスや事故が多すぎる。 相殺されて星は2つ。

総合評価:  ★★

ホーレンシュタインの演奏

レーベル:  BBC Music: BBCL4075-2
演奏家:   Jascha Horenstein / London SO
日時・場所: September 15,1966, Royal Albert Hall, London
演奏時間:  total 87:38 ( 29:55 / 16:57 / 13:56 / 26:50 )
録音評:

 ホーレンシュタインのCDの中では最良の部類。 やや会場の騒音を拾いすぎるのが難点。 終楽章では、フォルテに一瞬先んじてマエストロの足音が聞こえる。

演奏評:

 とにかく、第1楽章が凄い。 この曲の悪魔的な部分がこんな風に発露されている演奏は稀である。 ホルンの漂うがごとき柔らかい音と、トランペットをはじめ、他のブラスの悪魔的なけたたましい響きの対照が特徴的である。 テンポはかなり自由に揺らしているが、後輩の指揮者たちよりも遙かにしなやかにやっている。 特に第1楽章終結部あたりは、作曲者の指示を守るのではなく、かなりホーレンシュタイン節が出ているようだが、非常に充実しており、終了と同時に思わず出てしまった聴衆の拍手が入っている。 それも、何十人もいそうな盛大な拍手である。 しかし、この第1楽章終結部はそれに値すると思え、拍手してしまった人たちを無知と揶揄する気になれない。 第2、第3楽章も細部までしっかりと音を鳴らしている。 第4楽章も冒頭から弦の豊かな音に魅了される。 但しこの楽章のホルンの音色はいただけない。 弱音では神業的美しさを出していたのだが、この楽章で初めてフォルテとなったとき、それまでと打って変わって柔らかさを失ってしまっている。この点のマイナスで、終楽章だけは、バルビローリ/ベルリンフィルに一歩譲るが、総合ではトップクラスのお気に入りである。

総合評価:  ★★★
レーベル:  Music & Arts: CD235
演奏家:   Jascha Horenstein / London SO
日時・場所: April 21,1966
演奏時間:  total 89:13 ( 29:24 / 16:53 / 14:54 / 28:02 )
録音評:

 録音はかなり悪い。 一応ステレオらしいが音場がかなり狭く、個々の楽器の解像度も悪い。 テープヒスも多めであり、やや歪みっぽい音である。

演奏評:

 上記に約7ヶ月先立つ演奏。 オーケストラは同じであり、当然同じ解釈かと思うとさにあらず。 演奏時間に注目していただきたいが、前半2楽章はかなり似通った演奏ながら、後半の2楽章はそれぞれこの演奏の方が1分くらいずつ長い。 この差ははっきりと出ている。 第3楽章はかなり遅い感じがする。 そして、遅いまま突き進んでほとんどおなじテンポのままトランペットソロに入る。 クレンペラーのやり方に似ている。 また、終楽章はバーンスタインばりに粘りに粘る感じであり、上記の演奏とはだいぶ様子が違う。 残念ながら、ホルンの音色が問題なのは上記の演奏と同じ。 なぜこのような差があるのか、ホールの響きの違いを考慮したにしてもここまで変えるものなのか。 この指揮者はなかなか一筋縄では行かない。 どちらが良いかは好みの問題だが、録音の程度に雲泥の差があり、人には上記の方を勧める。 私の個人的好みからするとこっちも捨てがたい。 演奏だけなら星三つ。 録音だけなら星ひとつ。 中を取って二つとしておく。

総合評価:  ★★
レーベル:  VOXBOX: CDX25509
演奏家:   Jascha Horenstein / VSO
日時・場所: June 1952
演奏時間:  total 85:05 ( 29:13 / 17:25 / 13:14 / 25:13 )
録音評:

 時代からしても当然モノラル録音であり、それもあまり優秀とは言えない。 テープヒスははっきりと聞こえ、ダイナミックレンジは狭く、やや歪みっぽい音であるが、私は何とか許容限界内。

演奏評:

 録音の悪条件にもかかわらず、非常に魅力的な演奏である。 上記2つに10年以上先立つ分指揮者がエネルギーを発散させている感じ、それが悪魔的なところをより悪魔的にしている。 とりわけ第2、第3楽章の揺さぶり方が凄い。 第2楽章は超遅演の類いに入るのだが、テンポを実にしなやかに操ってみせる。 これは、ホーレンシュタインの名人芸だと思う。 残念ながら録音のせいで最終楽章の弦の音色は楽しめないが、仮に録音が良かったら、これがホーレンシュタインの中で1番かもしれない。

総合評価:  ★★
レーベル:  Disques Montaigne: WM362
演奏家:   Jascha Horenstein / French National O
日時・場所: June 6,1967
演奏時間:  total 82:37 ( 27:10 / 16:44 / 13:43 / 25:00 )
録音評:

 上記3つよりも録音は上と思われるが、機材の加減か突然数十秒程度モノラルとなるところが数カ所ある。 少々テープヒスは聞こえるが聴きやすい録音である。

演奏評:

 評価は大いに悩む。 ホーレンシュタインの他のどれとも違っており極めて個性的と言える。 傷もいっぱいあるが宝もいっぱい眠っているという演奏。 まず、第1楽章の冒頭のホルン。 何じゃこりゃ! 酔っぱらいのおっさんが鼻歌まじりに吹いている様な脳天気な「パオー」と言う音で、思わず「やめてくれェ!」と叫びたくなったが、同時にこの時点で弦の音色がただならぬことに気づく。「これ、すごいんでないかい」 テンポ設定は速からず遅からずで私にとっては上々である。第2楽章はゆっくりしているが、遅めの演奏としてはだれたところがなく好演。 第3楽章は心持ち遅めで始まりずっと同じテンポのままで、トランペットソロに至っても減速しない。 これは他の演奏でも見られるホーレンシュタインのスタイル。 そして最終楽章であるが、見事な弦の音色である。 全体を聞いての印象だが、この演奏は死に向かう音楽ではないと思う。 ある種の妖気を放っているような魅力があるが、何かエネルギッシュであり、死ぬ気はさらさらないと言う感じ。 何か違う気がする。 星3つはやれないが、異彩を放つ怪演なので、2つ半は与えたい。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  Music & Arts: CD-785
演奏家:   Jascha Horenstein / American SO
日時・場所: November 10,1969, Carnegie Hall
演奏時間:  total 79:30 ( 25:52 / 16:54 / 12:38 / 25:07 )
録音評:

 基本的には時代相当の音であり、テープヒスははっきり聞こえるものの、ほどほどの残響で、クリアーである。 但し、録音上の傷が2カ所ある。 まず、冒頭。 どうも、セッティングミスがあったらしく音が小さい上に遠い。 これはモノラルかと思っていると、最初のホルンソロの途中から音量が大きくなるとともに、音場がパノラマ的に広がり始め、まともなステレオ空間が出現するという希有な体験が出来る。 また、終楽章の途中で1分ほどチリチリいうノイズが入っている。

演奏評:

 これまた個性的な怪演である。 ホーレンシュタイン最後の9番だと思うが、振っているアメリカ交響楽団の個性がよくも悪くも強いようである。 全曲を通して弦はなかなか魅力的な音を出しているが、ホルンとトランペットは力不足を感じるところが多々ある。 ブラスセクション全体で見た場合、少々やりすぎというくらいよく吠えている。 このため、非常に悪魔的な響きに満ちているが、リハーサルが不足しているのかブラスの事故が目立つ。 トランペットが2度ほど出そびれているし、第1楽章のベルが登場するあたりで、ブラス全体が数小節にわたって間違った和音を鳴らしている。 第2楽章のホルンのトレモロは怪しいし、安心して聞ける感じではない。 しかし、何か妖しい魅力を放つ点では上記の演奏と共通している。 ミスが非常に目立つので、星半分減らして、2つとする。

総合評価:  ★★
レーベル:  Disco Archivia : 053
演奏家:   Jascha Horenstein / Vienna SO
日時・場所: BFA tape Vienna Fest 1960
演奏時間:  total 79:45 ( 26:44 / 15:42 / 12:12 / 25:07 )
録音評:

 かなり怪しげな音源であるが、放送用テープらしく、モノラルである。 雨降りのようなノイズが持続しており、ワイドレンジもなく、およそ良い録音とは言い難い。

演奏評:

 録音状態が悪く、細部が聞き取りにくいが、ホーレンシュタインの演奏の中では最も平凡なものかもしれない。 それでも、名演奏という水準には達しているような気がするが、敢えて手に入れることをお勧めする理由はない。 録音のマイナス分で★1つ半とする。

総合評価:  ★☆
レーベル:  World Music Express : WME-M CDR-1203/4 CD-R
演奏家:   Jascha Horenstein / Vienna SO
日時・場所: 1960
演奏時間:  total 76:30 ( 24:42 / 15:30 / 12:11 / 24:07 )
録音評:

 モノラルとしては普通のレベルか。 ダイナミックレンジは狭く、テープヒスはそれなりに聞こえる。 やや音がこもる傾向があるが聴けないレベルではない。 

演奏評:

 第1楽章は、ホーレンシュタインのもののなかでは一番速く、流麗という感じ。 ホルンも弦も悪くないが、1カ所ホルンがトチっているのが残念。 ブラスは全体としてはやや控えめ。 第2楽章は普通くらいのテンポ。 ホルンはちゃんと吹いているようである。 中間部のきびきびしたテンポとその後の動きも良く合格点。 第3楽章はそれほど速いとは感じず普通のテンポだが、トランペットソロのところ以後もほとんど減速しないので演奏時間は短め。 しかし、終曲に至ってのアッチェルランドもたいしてかからないのでメリハリは今イチである。 最終楽章は、あまり引っ張らず、速めの演奏。 最後の2分は拍手が入っているので、実質22分だが、慌ただしい感じはしない。 速めの中では秀演といえる。 しかし、やはりホーレンシュタインにはもうちょっと、濃い演奏をつい期待してしまうので、全体として食い足りない感じがしてしまう。 せいぜい星2つどまり。

総合評価:  ★★

飯守泰次郎の演奏

レーベル:  fontec: FOCD9449/50
演奏家:   Taijiro Iimori / Tokyo City PO
日時・場所: November 14,2008, Concert Hall, Opera City, Tokyo
演奏時間:  total 82:22 ( 27:18 / 15:50 / 13:00 / 26:14 )
録音評:

 クリアで残響はほどほど。 しかし、最後のクライマックスのフォルテシモがサチらないようにレベル調整しているらしく、全体に音量は小さめ。 しかし、マエストロが終始つぶやいたりうたったりしているのがかすかに聞こえる。

演奏評:

 はっきり言って、このCDは全く期待していなかった。東京シティ・フィルはNHKの歌謡番組とかのイメージしかないし。 弱小オケがせいぜいまじめに頑張って優等生的な凡演をやってるのではと危惧していた。 ところが、これが、結構面白い。 第1楽章こそ冒頭から標準的なテンポで始まるが、ややフレージングが引っぱり加減だし、思いのほか弦がきれいでホルンも悪くない。 低弦が頑張っててズンとくる。 タムタムがドンッという太鼓のような音なのが変わっている。そして、ベルだがいったい何を叩いているのだろうか。 およそ、ここまでピッチを無視して独特の甲高い音を出している例を聞いたことがない。 第2楽章は冒頭から標準的な速さでホルンのトレモロも何とか吹けている。中間部のテンポアップも普通だが、その後、例のターータターあたりからテンポを揺さぶるようになり、音楽そのものがだんだんヒートアップしてくる。荒々しいとさえ言えるくらい。 最後の最後は凄い。 第3楽章冒頭は少し遅めだが、しばらくして唐突にテンポアップし私好みの速さになる。 トランペットソロはいい感じに天使がおりてくる。終曲部のアッチェルランドに入る前から既に駆け足になっていて、ブラスや打楽器を中心に飛び出そうとするのを指揮者が必死に押さえているという感じ。 逆に、突っ走った指揮者にオケがついていけないパターンなら時々あるが、このパターンは初めて経験した。 最終楽章は冒頭思いっきり引っ張ったあとは標準的なテンポ。 弦が分厚く細部を引っ張り気味、 そしてクライマックスで目一杯引っ張る。 おそらく史上最長。 このときマエストロが小声でセーノとかけ声をかけているのが聞き取れる。 この後は静かに無難に死んでいる。 非常に野心的で面白い演奏である。 東京シティーフィルは大健闘している。 星はでも2つ半までは届かない。

総合評価:  ★★

インバルの演奏

レーベル:  DENON: 60CO-1566/67
演奏家:   Eliahu Inbal / Frankfurt RSO
日時・場所: September 24-27,1986, Alte Oper, Frankfurt
演奏時間:  total 80:59 ( 28:16 / 16:32 / 12:32 / 23:39 )
録音評:

 DENON自慢のワンポイント録音の類。 いい録音である。

演奏評:

 どこが悪いということなく、必要なものはすべてクリアしている。 悪魔的な響きさえちゃんと含まれている。 それでいて、一押しには絶対ならない。 何かが欠けている感じがする。 テンポ設定と言い、トーンバランスと言い、申し分ないのだが、なぜかわくわくする感じがないのである。 優等生的すぎるのか。

総合評価:  ★★
レーベル:  DENON: COCO-80116-17
演奏家:   Eliahu Inbal / Japan PO
日時・場所: November 19, 1979, Tokyo Bunkakaikan, Tokyo
演奏時間:  total 80:59 ( 26:58 / 16:30 / 12:37 / 25:26 )
録音評:

 テープヒスはあるもののクリアで良好。

演奏評:

 日フィルはかなり健闘している。 第1楽章から弦はわりときれいだし、ホルンもまあまあ許容内の出来。 テンポは標準的でそれほど引っ張ったり粘ったりはしないが、そこそこ熱い。 これは上記と明らかに違う。 中間部でかなりテンポを落とすが、すぐに戻し、重くならない。 タムタムはゴーンという音。 ベルはふつうのチューブラーベルのようである。 第2楽章は遅めのテンポではあるが、ホルンはごまかしなし。 テンポアップするところも無理せず、軽快とは言えないが手堅い。 後半、ちょっと遅いが故に退屈なところあり。 第3楽章は標準からやや遅めのテンポで始まるが、これも手堅く、怒濤のというイメージではない。 トランペットソロはきれいだがここから後の部分であまりテンポを落とさないため、全体として演奏時間は短い方になる。 終わり近くでかなり激しくアッチェルランドをかけるが崩れなかったのは立派。 最終楽章は冒頭を少し長めに引っ張った後は標準的なテンポとなるが、弦の厚みで押しまくるタイプではなく、ピアニシモの繊細さを大事にしている。 結構メリハリが強く、特に集結部へ向かう途中のクライマックスではマエストロが飛び跳ねたりうなったりする音が盛大に入っている。 ホルンソロは楽章のはじめの方は硬くていただけない音だったが、後半すばらしい音を出しており、合格点をあげたい。 問題点はあるし、少々甘い気もするが、インバルの熱さと日フィルの健闘に免じて星2つ半。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  LANNE: LHC-4017
演奏家:   Eliahu Inbal / Frankfurt RSO
日時・場所: January 17, 1980, Hessen
演奏時間:  total 87:11 ( 29:27 / 18:31 / 13:47 / 25:26 )
録音評:

 いわゆる雨降りノイズというか、シャーというノイズが全曲通しで入っており、さらに最終楽章ではブーっと言う低域のノイズが加わっている。 低音部の残響が強く、部分によっては風呂場すれすれとなる。 全体に音質がやや歪みっぽい。 かろうじて鑑賞に耐えるレベル。

演奏評:

 上記の1年後の演奏であり、オケは違うが解釈は似ており、更に極端になっている。 第1楽章は後半部分がかなりゆっくりとなっており、ここから第2、第3楽章と異様に遅い。 弦楽器はまあまあだが、明らかにホルンは質が低く、音は悪いし、これだけ遅い第2楽章でもトレモロがちゃんと吹けない。 第3楽章のトランペットソロは、きれいな音だがテンポを落とさず淡々としている。 テンポが遅いままなので、コーダのアッチェルランドも安全運転。 最終楽章は割と出来が良く、特にコーダはすばらしい。 録音は本来減点すべきレベルだが、おまけして星2つ。

総合評価:  ★★

井上道義の演奏

レーベル:  EXTON: OVCL-0004
演奏家:   Michiyoshi Inoue / New Japan PO
日時・場所: June 9,2000, Sumida Triphony Hall, Tokyo
演奏時間:  total 85:08 ( 29:52 / 17:06 / 14:01 / 24:09 )
録音評:

 非常にクリアであり、音場表現もしっかりした優秀録音である。

演奏評:

 第1楽章はかなり長い方で、終始遅めのテンポで押しているが、妙に冷めた感じがする不思議な味わいの演奏である。 残念ながら弦がいささか薄いため、ホルンが突出してしまったり、打楽器がややうるさく感じてしまうところがある。 第2楽章も遅めだが、やはり温度が低いため弛緩した感じがする。 第3楽章に至り、テンポが急に速まったためか、何かに憑かれたような熱い演奏に変わる。 中間部のトランペットソロは非常にきれいでうまい。 終楽章は、やはり弦の厚み不足は感じるが、わりと頑張っている方か。 マーラーの交響曲を集め始めるにあたって、従来から持っていた日本のオケの水準は低いという先入観を捨てて聴くようにしているが、この演奏なども、世界市場で十分勝負できるものと思う。 正直なところ、ややくどい感じはあるが、どちらかと言えば好きなタイプの演奏である。

総合評価:  ★★
レーベル:  MAMI RECORDS: NAMI-002
演奏家:   Michiyoshi Inoue / Kyoto University SO
日時・場所: January 13. 1987,Suntory Hall, Tokyo
演奏時間:  total 74:40 ( 26:42 / 15:29 / 12:24 / 20:05 )
録音評:

 冒頭部でかすかにキーンというノイズが聞こえるが間もなくこれは消える。 その後はノイズらしきものはない。かなりデッドな録音だががさつくほどではなく、解像度は非常に良いので、マーラーの交響曲の録音としては理想的。 細部まで聞こえ、会場騒音もかなり拾っている。

演奏評:

 伝説の名演と言われたライブCDでたまにオークションに出ると高値取引されるが、基本的に手に入れにくいアイテムである。 マエストロの後年の演奏とはだいぶ違い、全体にすっきりしていて速い。 特に後半の2つの楽章は最速の部類である。 第1楽章冒頭こそ標準やや遅めかなと思うが、すぐに、標準早めくらいになる。 第1楽章はまずまずだが、この段階ですでにややホルンに難があることがわかる。 それ以外の楽器はまあまあ。 ベルは普通にチューブラーベル。 第2楽章冒頭は遅め。 しかしホルンのトレモロは努力してギリギリ吹ききれていない。 その後、途中テンポアップする幅は大きく、以後テンポの変え方は素晴らしい。 第3楽章は冒頭から快速で突っ走る。 トランペットソロでの減速は小さく、音色は良いが、天国的にならない。 再現部からのテンポアップも凄く、コーダのスピードは最速の部類だが弦が完全に追随できており、驚く。素人オケならではか。 最終楽章は史上最速の部類。 でも慌ただしさは感じず、これはこれで説得力はある。 全体に楽器の音色はそれほどではないが、音大ではない学生オケの演奏とは思えない技術水準であり、アマチュアがこのレベルのマーラーをやられたらプロが困るレベルではある。しかし、稀代の名演かというと、そこまではいかない。 特に、ホルンの技術水準に問題があり、ミスが多い。 ただ、私はこのテンポ設定は大好きだし、明らかに上記より好きな演奏である。 甘いとのお叱り覚悟で星2つ半。

総合評価:  ★★☆

ヤンソンスの演奏

レーベル:  SIMAX Classsics: PSC1270
演奏家:   Mariss Jansons / Oslo PO
日時・場所: December 13 & 14, 2000, Oslo Concert Hall, Oslo
演奏時間:  total 81:11 ( 25:56 / 16:27 / 14:05 / 24:43 )
録音評:

 割とクリアであり、残響もほどほど。 ノイズはほとんどない。 良い録音である。

演奏評:

 全体を通じて受ける印象は、冷静かつ的確。 情に流れた熱い演奏ではないが、メリハリの利いた好演である。 第1楽章はテンポの変更は頻繁だが、それが実にしなやかに行われているのが特徴である。 各ソロ楽器もうまい。 第2楽章は遅めではあるが、遅めの中では最良の部類か。 ホルンのトレモロはごまかしなし。 途中、テンポアップする所はちゃんとテンポアップしてキビキビした感じを与えている。 第3楽章もやや遅めの部類だが、出だしの速さは普通か。 私の好みよりは遅いが、これはこれで悪くない。 トランペットソロの音色はなかなかのものである。 最終楽章もまずまずで、弦の厚みはベルリンフィルあたりには一歩譲るが、良い音である。 粘っこい演奏ではないが、適度にしっとりしている。 このタイプの演奏としてはトップクラスと思う。

総合評価:  ★★☆

P.ヤルヴィの演奏

レーベル:  World Music Express: WME-S-CDR 1270/1
DIRIGENT: DIR-0159 CD-R
演奏家:   Paavo Jarvi / Frankfurt RSO
日時・場所: April 2, 2007
演奏時間:  total 80:51 ( 27:30 / 15:41 / 12:52 / 24:48 )
録音評:

 いずれもラジオ放送音源と見られる。このためか、ダイナミックレンジは通常CDよりは狭くアナログディスク並み。 音そのものはきれいで分解能もよいのだが、いずれもシャーッというノイズが入っており、更によく聞くとハムも聞こえている。両者を比較するとDIRIGENTの方がノイズは小さく聞きやすいが、音の鮮度はWMEの方がわずかに上回るように思う。

演奏評:

 非常に個性的かつ魅力的な演奏である。 第1楽章は通常より遅いテンポと速いテンポが交錯し、しかもその切り替わりが実にしなやかというか鮮やかである。 リハーサルの時間が十分取れなかったのか、その自在なテンポ変更にわずかにアンサンブルが乱れるところがあるのが残念。 第2楽章は当初速く、途中テンポを落とすところは落とすが総じて速くきびきびした演奏でいて、しっかりワルツしている。 ホルンのトレモロもごまかしなし。 第3楽章は非常に速く、トランペットソロのところで程よくテンポダウン。 このトランペットは非常にいい音色。 その後、終曲部のアッチェルランドは史上最速の部類ながらいっさい乱れなし。 凄い! 最終楽章は、ほぼ完成されている。 完成されすぎているといっていいくらい。 この指揮者は本当に凄いマーラーを聞かせてくれる。 録音に難があるがその分は減点しない。 しかし、いずれまだ上の演奏が出てくると思うので、その分に差を付けるため星2つ半にする。

総合評価:  ★★☆

ジャッドの演奏

レーベル:  Nuova Era: NE7340
演奏家:   James Judd /Gustav Mahler Youth O
日時・場所: April 25, 1990, Bratislava
演奏時間:  total 81:33 (27:31/15:40/12:36/25:46)
録音評:

 ライヴ録音と思われるが、会場騒音らしきものが非常に少なくわずかに最終楽章の最後のピアニシモのところで客席の咳払いが聞こえる程度、拍手もカットされている。 従ってノイズはほとんどなく、残響も程良く聞きやすい。

演奏評:

 全体に熱い演奏である。 第1楽章は遅めの演奏で、さほど頻繁にテンポを揺すったりはしないが粘る所は粘っている。 弦の音はきれいだが、ホルンが時にやや鋭すぎる音を出し、バスクラリネットが妙につぶれたような音で不気味である。 ベルは普通の音。 ティンパニーはやや騒がしい音であるがピッチは正しい。 程よく悪魔的な好演といえる。 第2楽章は途中までは遅めだが中間部あたりから速くなる。 ホルンのトレモロはやや怪しい。 少々ブラスがバリつきすぎるか。 第3楽章は標準的なテンポでノリは良い。 トランペットソロはまあまあだが、音色的に今一歩。 終結部で急に速くなりそのまま突っ走って終わる。 最終楽章は出だしから弦が良い音を出している。 ベルリンフィルあたりに比べると、低弦が薄めだがこれはこれで良い音だと思う。但し、ホルンが音色的に私の好みからずれる。

総合評価:  ★★
レーベル:  asian youth orchestra: 2012 concert tour
演奏家:   James Judd / Asian Youth O
日時・場所: August 28, 2012, Tokyo Opera City Concert Hall
演奏時間:  total 89:32 ( 29:00 / 16:02 / 13:30 / 31:00 )
録音評:

 ホールのライブの割りに残響は少なめ。 解像度はそこそこか。 マイクセッティングのせいかステージ上の騒音を良く拾っている。 指揮者の息づかいも聞こえる。 それ以外にノイズはない。

演奏評:

 全体に遅めの演奏である。 オケも違うが指揮者が20年歳とったせいか、上記よりだいぶ遅くなり、無難になったように思う。 テンポをあまり動かさなくなっており、遅い演奏の割にはあまり個性的な感じはしない。 中で第2楽章後半のターータターのリズムがターーッタターとなる部分が多いのが特徴。 ライブゆえの傷がブラスセクションに目立つ。 これは減点ポイントになるレベルの傷になっている。 とは言え、星2つは出せるレベルにはある。

総合評価:  ★★

カヒーゼの演奏

レーベル:  OUVER PICTURE: DVD7056926-5 DVD
演奏家:   Djansug Kakhidze / Tbilisi SO
日時・場所: 不明
演奏時間:  total 84:29 (27:27 / 15:43 / 12:02 / 29:17 )
録音評:

 DVDであるため、CDとは単純に比較出来ないが、AIFFファイルの形にしてiPodに取り込んで聞いてみる段階で、はっきり言って音は良いとは言えない。 DVDなので当然画面があるわけだが、指揮者のアップとオーケストラの遠景およびクローズアップ数通りのみで至ってシンプルである。

演奏評:

 以前、HDCレーベルで一部のマニアに大いに受けたグルジアの雄、カヒーゼ/トビリシ交響楽団によるマーラー9番というだけで、そんなもん存在したのか?と言う感じ。 ヤフーオークションに出ているのを発見して思わず手に入れてしまった。 このDVD、何とブラジル製で、パッケージはポルトガル語のため詳細はさっぱり解らず、何処で何時演奏したのを記録したものやら。 ただ、どうもヨーロッパのどこかのホールでのライヴらしい。 で、演奏であるが、期待に違わず極めて個性的な演奏である。 オケは決してうまくない。 しかし、このオケは音色が独特でひと味違ったマーラーに仕上がっている。 第1楽章は遅めでテンポを揺さぶる。 随所で聞き慣れない音色にぶつかり新鮮な感動を覚えたりする。 第2楽章はまずまずの軽快さだが、ホルンのトレモロは怪しい。 第3楽章は息せき切って突っ走っている感じ。 オケの実力以上のスピードを要求されており、アンサンブルが崩れそうになりながら、どうにか大事故に至らずに終わる。 最終楽章は弦の音が魅力的で、テンポもそれなりに動かしており結構満足。 終結部であまり音量を落とさずに終わっており、これがなかなか良い。 演奏時間が長めになっているが、これは終演後の拍手が最後まで入っているためで、実際の演奏時間は3〜4分短いと思う。 全体を通じて言えるのは、うまくないけど面白いこと。 星2つがせいぜいかなとも思うが、何か肩入れしたい気もする。 2つ半としておく。

総合評価:  ★★☆

カラヤンの演奏

レーベル:  DGG: 439678-2
演奏家:   Herbert von Karajan / Berlin PO
日時・場所: November,1979, February & September,1980, Berlin
演奏時間:  total 85:46 (29:05 / 16:42 / 13:15 / 26:44 )
録音評:

 全体に硬質で低音が弱めである。 この頃のDGGの、と言うかカラヤンの録音の特長と言えようか。 それに、この録音はノイズも多いように思う。

演奏評:

 バーンスタインの伝説の名演の1ヶ月後から録音を開始し10ヶ月を費やしている。 バーンスタインを意識していないはずはなく、実際にことさら違うことをやろうとしすぎて随所で破綻している。 参考のためにバーンスタインの「あの演奏」の演奏時間を再掲してみると、( 27:37 / 15:59 / 12:04 / 26:12 )となっており、意外なほどカラヤンの演奏時間はこれに近い。 しかし、内容はかなり違っている。 第1楽章冒頭、エッシェンバッハなみに遅いテンポで始まるが、非常に無理をして不安定な感じがする。まもなくテンポは速まるものの、遅めではある。 録音のせいもあるが、弦の音がギスギスして潤いがなく、ために魅力半減となっている。 ことさら他と違うことをやろうとしているのか、弦の内声部を強調したり、あまり聞き慣れない音が聞こえてくる。 ベルは「教会の鐘」をハードスティックで叩いているため、この場合の欠点である音程のあいまいさが耳に付く。 個々のソリストはそこそこうまいが、どこかおっかなびっくりの感じが残る。 第2楽章は異様に遅い。 時間的にはこれより遅い演奏もあるが、聴感上はこれが一番遅いように感じる。 演奏全体に重く、ホルンソロはちゃんと吹きこなしてはいるが、軽やかさがない。 中間部でテンポアップはしているが、テンポが上がりきらない感じ。 第3楽章は速めの演奏だが荒い。 トランペットソロのところではきっちりとテンポを落とし、トランペットそのものはまあまあうまいのだが、途中から加わる副旋律の楽器や、その他の音響がかなり強く、トランペットソロが埋没しがちという珍しいパターンである。 最終楽章冒頭はお約束で引っ張るという感じだが、その後は普通。 録音のせいでベルリンフィルの低弦の魅力が殺されていると言うことに尽きる。 全体を通しての印象は一言、「未消化」。 あえて、この曲を取り上げなくてもカラヤンの評価は変わらなかっただろうに、これに挑戦したのは賞賛に値すると思うし、ライバルの名演にぶつけるのに追随したような演奏は出来ないのだから、それは大変であったろう。 この演奏にはその苦労の痕が見える、しかし、まだ報われていない。 その答えは一連の82年の演奏まで待たねばならない。 評価はぎりぎり★2つ。

総合評価:  ★★
レーベル:  sardana: sacd-223/4 CD-R
演奏家:   Herbert von Karajan / Berlin PO
日時・場所: May 1, 1982
演奏時間:  total 84:01 (28:26 / 16:40 / 13:01 / 25:54 )
録音評:

 CD−Rとしては、こんなものかなと言う程度。 デジタル録音だと思うが、テープヒスのようなシャーというノイズがかすかにのっており、ピアニシモではそれと判る。 残響はまずまずで聞きやすい。 会場騒音はあまり聞こえないが、第1楽章前半に舞台上で、はでに物を落としたと思われる音を拾っている。

演奏評:

 第1楽章冒頭からゆっくり目でいわゆる「ベルリンフィルの低弦」の厚みを感じる演奏である。 テンポはあまり細かく動かさないし、強弱の動きも細かくない。 しかし、ぼやけているではなく、常に緊張感が持続している感じがする。 ベルその他の打楽器はごくオーソドックスに通常のオーケストラに配置されている物を使っているようである。 第2楽章は遅い。 遅いがそれ以上に特徴的なのは、弦楽器群のみならず管楽器も含めてスタッカートが極めて強調されている点で、このため異様にごつごつした演奏となっている。 ホルンソロは破綻なく吹きこなしているが、何となくぎこちない。 中間部でテンポアップはするがそれでも遅い感じ。 重いのでますますそう感じるのだろう。 あえてしなやかさを拒否している感じがする。 第3楽章は私好みに速いが、快速演奏と言うにはほど遠い。 この切迫感は何なのだろう? 聞いている途中でショスタコーヴィチの10番の第2楽章を連想してしまった。 そういえばカラヤンはショスタコは10番しか演奏しなかった。 ともかく速いが何だか重苦しい。 そしてトランペットソロではちゃんとテンポを落とし、うまいのだが、なぜか天使が舞い降りてこない。 天国的な昇華はないのである。 この部分に続くクライマックスでは、熱情的な高揚を見せはするのだが、不思議な演奏である。 そして最終楽章は予想通り冒頭部はかなり引っ張る。 しかし、その後は中庸からやや速めくらいのテンポ。 ただし、分厚い! 弦楽合奏が重戦車の大群のように押し寄せてきて、豊穣を通り越し、何だか追いつめられているような気分になる。 ごめんなさい、私が悪かったですぅと言う感じ。 これは第1楽章にも共通して言えるのだが、内声部の弦の音が強調されているために、普通あまり聞き取れない弦の動きが聞こえ、それがまたことさらに美音であったりする。 これは結構目立つので、カラヤンの演奏を評して「美しさばかりを強調する」という人がいるのも判る気がする。 しかし、全体を通して聞いてみると、これは上滑りな美しき演奏などからは程遠い。 冷めた演奏ではないが、さりとて熱演や爆演でもない、強いて言えば烈演とでも言おうか。 カラヤンの9番はこれを最初に聞いているので、あと3つも聞き終わったところで、総括したいと思う。 とりあえず、この演奏は★2つとしておくが、★3つとも成りうる要素をはらんでいると思う。

総合評価:  ★★
レーベル:  sardana: sacd-258/9 CD-R
演奏家:   Herbert von Karajan / Berlin PO
日時・場所: August 27,1982, Sarzburg
演奏時間:  total 80:50 (27:08 / 16:19 / 12:35 / 24:48 )
録音評:

 上記のものと同程度だが、ややノイズは少ない。 しかし、低音部が弱め、ややハイ上がりな録音のようである。

演奏評:

 上記のほぼ4ヶ月後の演奏。 この間に随分こなれてきたように思う。 第1楽章が冒頭から標準的なテンポになっている。 まだ、幾分音響バランスが変わっているが、それでもだいぶ聞き慣れた音以外の物が聞こえなくなっている。 ホルンの音はまあまあ、フルートがとても魅力的な音を出している。 やはり、テンポはあまり動かさないが要所ではちゃんと変化させており、意固地な感じはない。 ベルは教会の鐘タイプのものを、おそらくソフトスティックで叩いているのだと思う。 このタイプのものとしては音程はまとも。 第2楽章は遅めではあるが、不自然な遅さではなくなっており、スタッカート強調型の演奏ではあるものの、上記のようなごつごつしたところは消え、だいぶかろやかさが出てきている。 ホルンソロも危なげなく、中間部のテンポアップもスムーズ。 これは許容範囲内の演奏に到達した。 第3楽章は更に演奏時間が短くなったが、出だしのテンポは少しゆっくりになって荒々しさが削げ快速運転になっている。 トランペットソロのところで、以前ほど極端な減速をしなくなったため演奏時間全体では短くなったもの。 最終楽章も冒頭の引っ張り方はより穏便な感じになっている。 録音のせいで上述の演奏ほど弦の厚みがないのが残念。 特殊なところはほとんどなくテンポは標準より気持ち速め。 悪くはないが、強い魅力もない。 全体を通しての感想であるが、5月の演奏よりも明らかに普通の演奏になっている。 肩に変な力が入っていたのが抜けたという感じだが、毒もなくなってしまった感じ。 5月の演奏の方がある意味魅力的か。

総合評価:  ★★
レーベル:  DGG: 410726-2
演奏家:   Herbert von Karajan / Berlin PO
日時・場所: September 20-30,1982, Berlin
演奏時間:  total 84:22 (28:10 / 16:38 / 12:45 / 26:49 )
録音評:

 これは、ノイズもないし、残響も適度で周波数的なバランスも正常。 良い録音である。

演奏評:

 上記より更に1ヶ月ほど後の録音。 普通に考えたら、82年の3つの演奏はかなり似通ってきそうなものだが、三者三様と言える。 この録音は8月の演奏の延長線上よりは、5月の演奏の方に傾いているように思う。 それだけ、毒が戻って妖しい魅力を放っている。 第1楽章冒頭、ホルンの出がおかしい。 傷と言えば傷だがあえて編集していないのが良い。 この録音の特徴だが、弦が微かに憂いを帯びた音色を初手から出している。 ベルリンの弦の良さがここに来て初めて発揮された感じである。 また、前出の3つの演奏では、あまり細かいテンポ変更を嫌う節があったのだが、この演奏ではどういう風の吹き回しか、曲の息づかいに合わせてテンポをゆする場面も見られている。 何か、1つ吹っ切れたのだろうか。 この楽章のホルンとフルートの音色は極めて良い。 ベルは普通のチューブラベルに戻している。 あと1つ、中間部のあの寂寞たる場所で、死を感じさせる音楽をさりげなく差し挟んでいる。 第2楽章は8月の演奏よりは遅め。 しかし、ごつごつした感じはなし。 遅めの中では良い演奏と言えるレベルに達している。 第3楽章は速い演奏だが5月の演奏の、あの切迫感が戻っている。 トランペットソロから後の部分も天国的な感じは出さず、あくまでも地上的な音楽が流れている。 天使が舞い降りるのを拒否しているがごとくである。 最終楽章は弦が堪能できる。 また木管楽器群が実に良い。 しかし、きっちりと死の音楽になっているように思う。 思うに、この演奏に至ってようやくカラヤンは自分の9番を完成させたのではあるまいか。 ただ、5月の演奏からこの演奏に至る間に削ぎ落とされたものもあり、その中には捨てるに惜しいものも含まれていたように思う。

総合評価:  ★★☆

カスプチクの演奏

レーベル:  DIRIGENT: DIR-0459 CD-R
演奏家:   Jacek Kaspszyk / Wroclaw PO
日時・場所: May 29,2009, Warsaw
演奏時間:  total 84:50 ( 26:55 / 15:44 / 13:18 / 28:53 )
録音評:

 あまり潤いのある音ではないが、クリアで解像度は良く、残響もそこそこ。 現代の録音としてはまあまあか。

演奏評:

 この指揮者もオケも初めて聴く。 指揮者は結構才能のある人ではあるまいか。 テンポの動かし方や音響設計などにセンスの良さを感じる。 オケの方も全体としてはまあまあのレベルにあると思うが、ホルンがどうもいただけない。 妙に吠えまくっていて音色が汚すぎる。 また、ミュート付きブラスの音が一様に汚く音程も怪しい。 第1楽章は割とオーソドックスな感じでテンポもほどほどゆさぶっている。 鐘は普通のチューブラーベル。 第2楽章は最初はやや遅めだが、ホルンのトレモロは怪しい。 その後のテンポアップは子気味よい。 第3楽章も私好みの速め。 トランペットソロはうまいが、何か地上的。 その後のアッチェルランドは控えめ。 そして、最終楽章が素晴らしい。 冒頭から思いっきり引っ張って、遅いテンポで押すのだが、これが実に良い音である。 弦が素晴らしい。 また、この楽章に限ってはホルンも健闘して良い音を出している。 この楽章だけなら星3つをうかがう勢いだが、全体を通してみると、熱い演奏ながら、荒い。 そのため星は2つどまり。

総合評価:  ★★

金聖響の演奏

レーベル:  SPEX: OVCX-00060
演奏家:   Seikyo Kim / Kanagawa PO
日時・場所: May 28, 2011, Yokohama Minato-Mirai Hall, Yokohama
演奏時間:  total 81:08 ( 27:32 / 16:23 / 12:55 / 24:18 )
録音評:

 ホールの特性なのだろうが、低音部の残響が強く、DSD録音という割に解像度は今ひとつ。 まあまあという程度。

演奏評:

 日本の地方オケとしては非常に高水準だと思う。 特にホルンは非常に良い音色。 第1楽章はやや遅めだがあまりねちっこくはなく、テンポもあまり動かさない。 弦の音色はそこそこ程度だが、管楽器は良い音を出している。 ベルはソフトスティックを使っているのか叩く瞬間の打撃音が全く聞こえず余韻のみ聞こえるという珍しいやり方。 第2楽章は遅い。 にもかかわらず、ホルンのトレモロはイマイチ。 中間部のテンポアップ後は良い出来。 第3楽章は前半は遅めだが、トランペットソロでの減速がなく、その分演奏時間が短めとなっている。 最終楽章は割とあっさり目。 オケのせいではなく、指揮者の解釈の問題だと思うが、それなりのレヴェルにあるオケのようだし、もう少しタメや引っぱり、音響的な強弱を付けても良いのではないか。 何か聴いててフラストレーションを感じる。 ★は2つ。

総合評価:  ★★

クレンペラーの演奏

レーベル:  EMI: CMS7632772
演奏家:   Otto Klemperer / New Philharmonia O
日時・場所: February 15-24,1967, Kingsway Hall, London
演奏時間:  total 86:30 ( 28:19 / 18:39 / 15:21 / 24:11 )
録音評:

 この時代のEMI録音としては、むしろ悪い方ではなかろうか。 全体にクリアさに欠けるし、音像もあいまいである。 テープヒスも多め。

演奏評:

 世評は悪くないらしいが、私にはやや不満が残る。 音が全体に美しくない。 第1、第4楽章の出来が、クレンペラーにしては、今ひとつのように思う。 第2楽章の遅さは異様であるが、妙に説得力がある。 これはクレンペラーの9番の特徴のようである。 第3楽章も遅め。 一音ずつ確認しているような音の出し方が少々くどいが、悪くない。 しかし、繰り返すが音が良くない。 この曲の魅力である弦の豊かさが感じられず、ホルンの音色がしっくりしない。

総合評価:  ★★
レーベル:  HUNT: 2HUNTCD563
演奏家:   Otto Klemperer / New Philharmonia O
日時・場所: August 1968, Usher Hall, Edinburgh
演奏時間:  total 90:25 ( 29:18 / 19:03 / 16:03 / 26:01 )
録音評:

 EMI盤の翌年の録音だが、モノラルらしい。 モノラルとしては聞きやすい方だと思う。

演奏評:

 EMI盤より更に遅く、特殊な演奏の部類に入ってくると思うが、より徹底しているとも言え、妙な魅力を発散している。 私はEMI盤より良いと思う。 第1楽章の出来は、明らかにEMI盤を凌ぐ。 第2楽章もこっちの方が更に良い。 しかし、第3楽章はここまで遅いと少々辛くなってくる。 ヘッドホンステレオでこの楽章を聴きながら歩いていると、通常はつい早足になって疲れるが、この演奏では遅すぎて歩きにくい。 しかし、この遅さのせいで、中間部のトランペットソロが出てくるところも、唐突にテンポが遅くなる感じにならない。 これが狙いなのかと思いたくなる。 終楽章は手堅くまとまっており、好演である

総合評価:  ★★
レーベル:  NUOVA ERA: 033.6709
Music & Arts: CD1123
演奏家:   Otto Klemperer / Vienna PO
日時・場所: June 9,1968
演奏時間:  total 84:27 ( 28:02 / 18:08 / 14:04 / 24:13 )
録音評:

 Music & Arts 盤の方がよりクリアになっており、会場の騒音なども含めて細部まで音はよく拾えている。 しかし、全体に音は硬めで幾分キンキンする。 あまり、残響のない録音だが、カサカサしている訳ではない。 それなりにテープヒスは聞こえるが気にならないレベル。

演奏評:

 小さな傷の多い演奏である。 第1楽章の初めの方で早速ホルンがこけているし、全曲通じてテンポアップする瞬間にアンサンブルが乱れる傾向がある。 これは、指揮者の振り方に問題があるのかもしれない。 しかし、全体に天下のウィーンフィルにしてはと思わせる所が多すぎる。 クレンペラーはこの演奏が気に入らなかったらしいが頷ける。 全体の印象としては、ウィーンフィルにクレンペラーが引っ張られてしまった感じ。 9番はこの時期に集中して録音されているのだが、他のどの演奏よりもこの演奏が速い。 第2、第3楽章の独特の遅い演奏にクレペラーの9番の特徴があるのだが、この演奏では不徹底な感じで、第2楽章などはどうにもぎこちない感じがするし、第3楽章は明らかに本来の意図よりも速すぎるためトランペットソロの部分が慌ただしくなってしまっている。 どうも、ウィーンフィルとこの曲は相性が悪いのではあるまいか。 この演奏でも、第2楽章のホルンは付いていくのが精一杯の感じだし、第1楽章のティンパニーのチューニングが怪しく、後年のバーンスタインのDVDで感じたのと同じ欠点があるように思う。 終楽章冒頭の弦の音色は流石とうならせるものがあるが、全体にラッパ群はホルンも含めて音色が汚い。 それでも、ぼんやり聴いているとそれなりによく聞こえてしまうところがウィーンフィルの魔力か。

総合評価:  ★★
レーベル:  Navikise: NAV-4017/8 CD-R
演奏家:   Otto Klemperer / Israel SO
日時・場所: 1970
演奏時間:  total 92:11 ( 30:26 / 19:22 / 16:24 / 25:59 )
録音評:

 盛大にヒスノイズが入っている上に時々音が途切れる。 第1楽章の終わり近くと第4楽章の一部でかすかに全く関係のないピアノ曲のゴーストのようなものが数分間聞こえる。 一体これはなんなのか? 謎である。

演奏評:

 そもそもイスラエル交響楽団というのがどのような団体なのか良く判らない。 イスラエルフィルとの関係はどうなのだろう? どうも同一団体らしいのだが。 この演奏の時点では、お世辞にもうまいオケとは言えず、特に第1楽章冒頭からしばらくは、いつ崩壊するかとハラハラするほどアンサンブルが危うい。 ソロ楽器が出そびれて誤魔化している所も何カ所かあるようだ。 極めて怪しげな音源だが、演奏内容はクレンペラー晩年のものだろうと納得がいく。 それまでの、クレンペラーの特徴が究極まで進んだ感じ。 特に第2楽章の異常な長さ。 しかし、この異常に遅い第2楽章は決してだれておらず、聴いていて辛くならない。 そして第3楽章の遅いままトランペットソロ登場まで引っ張ってゆく荒技もこの演奏が一番堂に入っている。 最終楽章は結構豊かな音を聞かせていて、むしろEMI盤よりいい音であり、大きな事故もない。 全体を通じてホルンが健闘しているのも高ポイント。 うまいオケでこれをやっていてくれていたら星三つなのだが。

PS: ここまで書き込んだ後で、ウィーンフィルとの演奏を聴いて気がついたのだが、アンサンブルの乱れはオケのせいではなくて、クレンペラーの振り方にあるのではないかと思う。 この時期のクレンペラーはかなり体が不自由だったはずであり、その影響が出ていたのかもしれない。 だから、クレンペラーの指揮に慣れていたニューフィルハーモニア管ではアンサンブルの乱れからまぬがれたのかもしれないと考えた次第。

総合評価:  ★★

クレツキの演奏

レーベル:  DOREMI : DHR7850/1
演奏家:   Paul Kletzki / Israel PO
日時・場所: May 1954, Tel Aviv, Israel
演奏時間:  total 71:18 ( 24:23 / 12:32 / 10:40 / 23:43 )
録音評:

 これは、通常のアナログテープからのマスタリングではなくて、LP盤を再生したものがマスターとなっているものと思われる。 当時のモノラル録音としては、レンジ等はまあまあかと思うが、盤面のゆがみに起因すると思われる低周波のゴロが終始聞こえ、ピアニシモでは耳障りとなる。 また、冒頭で、盤面の傷によると思われるノイズが数回入っている。

演奏評:

 第2楽章にカットがあるが、あまり気になるほどではない。 全体に速めの演奏であり、特に第3楽章の速さが目立つが、アンサンブルが危うくなるような無茶をしているところはない。 録音のせいで、音色を楽しんだりするような聞き方は無理であるが、演奏自体はまあまあか。 演奏は星2つ+アルファくらいだと思うが、ピアニシモでゴロノイズがかなり気になるレベルだし、カットはあるしで総合評価はこの程度。

総合評価:  ★☆

小林研一郎の演奏

レーベル:  EXTON : OVCL-00278 SACD hybrid
演奏家:   Ken-ichiro Kobayashi / Japan PO
日時・場所: January 25 & 26 , 2007, Suntory Hall, Tokyo
演奏時間:  total 86:51 ( 28:32 / 16:34 / 13:25 / 28:20 )
録音評:

 hybrid のCDとしてはトラブルもなく、残響や解像度もまずまず。 サントリーホールでの録音としては優秀な方と思う。

演奏評:

 第1楽章は標準からやや遅めくらいのテンポだが、独特のためや引っぱりがあり、なかなかユニークだが説得力はある。 弦の音はなかなかのものだが、ホルンがやや硬い。ベルは私好みのチューブラーベル。 第2楽章は冒頭からずっと遅めで進む。 低弦が妙に頑張ってゴリゴリいっており無骨。 ホルンのトレモロは一応吹いているが、音はへろへろである。 ワルツの軽やかさはなく、兵士の踊りという感じ。 終結部直前でテンポアップするが、これはその直後に思いっきりリタルダンドをかけるための布石。 第3楽章は標準的な速さからやや遅め、正しくアンダンテで歩きやすい速度を保っている。 トランペットソロの直前で引っぱるという珍しいことをやり、ソロに入る瞬間ではそれほどテンポが落ちない。 トランペットソロは普通にきれいでうまい。 第4楽章冒頭は通常程度に引っ張るが、この時めいっぱいマエストロの踏ん張り声が聞こえる。 弦は素晴らしい音だが、ホルンはやはり音色が悪い。 全体を通して遅めの演奏であり、テンポ設定や細部の描き方に独特のところがあって、しかも説得力はある。 知人で実際にこのコンサートに出掛けた人は絶賛していたが、なるほどと思わせるに足るものがある。 日フィルは大健闘と言えるだろう。 日本のオケでこの弦の音色は凄い。 しかしである。 残念ながらホルンだけが水準を下げている。 技術的にも音色的にも物足りない。 ホルンのマイナス分差し引いて、星2つ半とする。

総合評価:  ★★☆

コンドラシンの演奏

レーベル:  VEHENIYA: CDVE04253
演奏家:   Kiril Kondrashin / Moscow PO
日時・場所: 1964, Moscow
演奏時間:  total 73:56 ( 24:47 / 15:25 / 11:53 / 21:51 )
録音評:

 ノイズは少なく、テープヒスはピアニッシモの所でわずかに聞こえる程度。 全体に高音がややきつくキンキン聞こえがちである。 残響は程々で解像度はまあまあ。

演奏評:

 全体に速い演奏だが、熱い演奏である。 第1楽章冒頭部でホルンが実に不安定で情けない音を出し、ハラハラするが、その後はまずまず安定する。 しかし音色はどうも好みではない。 結構テンポは揺らすが、アンサンブルは崩れない。 後半部に登場する鐘はどうもチューブラベルではないようで、変に残響が長くキーンという音がしている。 第2楽章はキビキビしていて心地よい。 第3楽章は速い。 時間の所をみていただくと解るが、史上最速の部類の第3楽章だと言えるだろう。 これは、快速運転で進んできて、トランペットソロになっても速度を落とさず、そのまま通り過ぎてしまうという特殊な演奏をしているためである。 終楽章は速いが熱い。 快速運転でもあまり物足りなさを感じさせない所はたいしたものである。 ただ、この楽章でもホルンソロの音色がかなりのダメージを与えている。 この件がなければ星2つ半だが...

総合評価:  ★★
レーベル:  Altus: ALT-018
演奏家:   Kiril Kondrashin / Moscow PO
日時・場所: April 16, 1967, Tokyo Bunka Kaikan, Toky
演奏時間:  total 69:31 ( 23:38 / 14:32 / 11:32 / 19:49 )
録音評:

 録音そのものではなく、テープのコンディションに問題があり第1楽章冒頭の数分間と第4楽章の冒頭付近で音が揺れる。 特に第1楽章はひどく、左チャンネルで音飛びしているところがある。 この傷を除けば、東京文化会館大ホールという音響的に芳しくないホールの録音にしては良い方だと思う。

演奏評:

 モスクワフィル日本公演のライヴ。 全体に弦は健闘しているがホルンの音色に難があるのは上記と共通。 第1楽章は快速かつ流麗。 速めの演奏としては好きな解釈である。 ホルンは技術的には難はないが、音色が吹奏楽っぽい。 ユーフォニュームみたいな音色である。 これは奏者の個性と言うより楽器のせいではないだろうか? ロシアのオケではときどきこういう音に出くわすことがある。 タムタムなどは適度に重みのあるいい音を出しているのだが。 ベルは、この演奏では普通のチューブラーベルを普通に叩いている。 私はこれでいい。 第2楽章は標準からやや速め。 ホルンはトレモロを吹きこなしている。 ただ音色がやっぱり吹奏楽。 途中適度にテンポを落としたりして、私好み。 第3楽章は冒頭、アッチェルランド気味に始めるという珍しい演奏。 やはり速い。 トランペットソロではほんの少しテンポをゆるめるものの、速い。 アンサンブルは速さ故に余裕がない感じがするが、崩れる気配はない。 終楽章は冒頭少し引っ張ったあと、中音部の弦主体に流麗な音楽を構成している。 なのに、ホルンが終始吹奏楽をやってぶちこわしにしてくれる。 速めではあるが、あわてた感じはない。 ただ、死に向かう音楽ではなく、終わり方はさっぱりしている。 上記と比べて一長一短で何とも言えない。 マイナスポイントは指揮者ではなくオケのせいである。 彼は亡命後に9番をどこかで演奏していないのだろうか? それが、CD−Rあたりで出てきたら、おそらく「買い」である。

総合評価:  ★★
レーベル:  LANNE Historical: LHC-7109 CD-R
演奏家:   Kiril Kondrashin / Moscow PO
日時・場所: November 2, 1973, Amsterdam
演奏時間:  total 79:08 ( 26:59 / 15:34 / 12:34 / 24:01 )
録音評:

 テープヒスはそれなりだが、やや歪みっぽくキンつく。 最終楽章の途中でマスターテープのトラブル(わかめ?)と思われる異常音が一瞬聞こえる。 鑑賞に大きな支障がある訳ではないが、あまり良い録音とは言い兼ねる。

演奏評:

 上記より更に6年あとの録音だが、かなり演奏時間が延びて普通の長さになっている。 では、平凡になったかというと、そうとも言えず、テンポ設定に独特の個性が見える。 各楽章とも悪くない出来だが、特に両端の楽章が良い。 ホルンはだいぶましになっているが、まだ吹奏楽っぽいところがあり、特に最終楽章でこれが仇となる部分があり惜しい。 少々厳しいが星は2つとしておく。

総合評価:  ★★
レーベル:  LANNE Historical: LHC-7027 CD-R
演奏家:   Kiril Kondrashin / Moscow PO
日時・場所: May 2, 1971, Prauga
演奏時間:  total 74:51 ( 25:37 / 14:59 / 12:08 / 22:07 )
録音評:

 ホワイトノイズ系の音がかなり大きく入っている部分がある。 特に冒頭は雨の中にいるごとくである。 音質も全体にやや歪みっぽく、録音としては苦戦である。

演奏評:

 上記2つの中間の時期で演奏時間も中間だが、どちらかというと1967年の演奏の方に近い。 解釈はほぼ似ているし、魅力も欠点も同じものを感じる。 ただ、演奏の出来は1967年の方が上か。 録音が悪いこともあり、あえてこっちを押す要素はない。 星は2つとしておく。

総合評価:  ★★

コウトの演奏

レーベル:  DIRIGENT: DIR-0549
演奏家:   Jiri Kout / Prague SO
日時・場所: June 18, 2008, Prague
演奏時間:  total 80:29 ( 27:03 / 16:10 / 13:35 / 23:41 )
録音評:

 やや残響が強く低音部の解像度が悪い。 ノイズはないが、最近の録音としては優秀とは言えない。

演奏評:

 この指揮者は全く知らなかった。 プラハ響というのも初めて聴いたが、おそらくうまいのだと思う。 演奏はオーソドックスな直球勝負の名演であるはずだった。 しかし、第1楽章冒頭で大事故が起こってしまっている。 ホルンが出だしで間違えて数小節早く出過ぎてしまい。そのまま約2分間ずれたまま演奏してしまっている。 その間、休符があるので、そこで調整されそうなものだが、休符の後、更にずれたまま演奏してしまい、弦の一部が引きずられそうになって、アンサンブルが崩れたりしている。 プロのオケでこういう事故はかなり珍しいのではあるまいか。 ただし、このホルン、ド下手なのかというと、そうでもなく、第2楽章のトレモロは苦もなく吹きこなしてしまうし、全編にわたって良い音色を出している。 この事故さえなければ星2つ半は固いところなのだが。

総合評価:  ★★

クーベリックの演奏

レーベル:  audite: audite 95.471
演奏家:   Rafael Kubelik / Bavarian RSO
日時・場所: June 4, 1975, Bunka Kaikan Concert Hall, Tokyo
演奏時間:  total 78:41 ( 26:44 / 16:13 / 13:21 / 22:23 )
録音評:

 東京文化会館大ホールという音響的にはデッドで不利な条件下での録音ながら、十分な品質を確保したものとなっている。 テープヒスはあるが目立たず、録音上の傷はない。

演奏評:

 DGGの録音と比較すると、路線の変更はないと思うが、やはりこちらの方がよりこなれている感じがする。 第1楽章は、中心線は標準的なテンポに置き、小幅ながら自在にテンポを動かして速度的なメリハリが付いている。 ブラスも適度にばりつき、ほどよく悪魔的。 おそらくホールのせいで楽器の音色に潤いが足りない感じがするのが少し残念。 ベルはチューブラーベルだと思うが、妙に余韻が長い。 第2楽章は、冒頭はほぼ標準的なテンポ。 ホルンのトレモロはやや危なげだが、何とか吹きこなしている。 中間部でのテンポアップの幅が小さく、これ以後テンポを結構遅い方向に揺さぶるので、全体の演奏時間としてはやや長めとなっている。 そして、後半のリズムの刻みだが、ターータターではなく、ターーッタターと弾むように刻んでおり、なかなか魅力的なワルツとなっている。 第3楽章は標準的な速度で始まるが、トランペットソロのだいぶ前に、あらかじめ少し遅くなり、トランペットソロでの減速は少なめ。 このソロはやや苦しそう。 終楽章は素晴らしい。 弦は分厚くないが、優美で豊かである。 理知的であるが冷徹ではなく、ピアニシモが非常に魅力的。 全体として弦の音色は二重丸、ホルンは○、トランペットは今イチ。 少々迷ったが、おおまけで★2つ半。

総合評価:  ★★☆
レーベル:  VIBRATO: 2-VLL130 CD-R
Karna Musik: KA-129M CD-R
演奏家:   Rafael Kubelik / New York PO
日時・場所: January 24, 1978
演奏時間:  total 78:41 ( 27:53 / 16:21 / 13:46 / 23:47 )
録音評:

 アナログライブ録音のデジタルリマスター。音の鮮度はまあまあだが、結構テープヒスが目立つのと、ハムらしきノイズがずっと入っている。 さらに、終楽章の終了直後の静寂をテープ編集でカットしていきなり拍手に繋いだ痕が歴然としている。

演奏評:

 全体に、弦の音色はまあまあだが、管の音が悪い。 クーベリックの演奏としては一番テンポは遅いが、各楽章ごとの傾向はDGGの録音の頃から変わっていないようである。 第1楽章でわりと小さくテンポを揺するところや、第2楽章でのターーータタというリズムなども同じ。 ただし、このリズムはだいぶスムーズになっている。 第2楽章のホルンは完璧。 ホルンは技術的には特級だが、音色は2級。 第3楽章は、初めからテンポは少し遅め。 トランペットが下手である。 第4楽章は一番出来がいい。 これは、星2つ半あげられる。 演奏は平均すれば、星2つというところ。 録音のマイナス分を本当は差し引かなければならないが、大まけで星2つとする。

総合評価:  ★★
レーベル:  DGG: 445018-2
演奏家:   Rafael Kubelik / Bavarian RSO
日時・場所: February 28-March 4, 1967
演奏時間:  total 77:01 ( 25:57 / 16:01 / 13:17 / 21:46 )
録音評:

 テープヒスはそれなりに入っているが、鮮度の高い音であり、残響も適度である。

演奏評:

 クーベリックはライヴとスタジオ録音では別人であり、ライヴの方が断然良いという向きもあるが、どうしてどうして、優等生的な無難な演奏を予想していたら、けっこう個性的だった。 この演奏はライヴではないものの、何度も取り直して編集したものとは違うようで、ところどころライヴではないかと思いたくなるような傷がある。 第1楽章は冒頭からわりと標準的なテンポであり、ほどほど厚めの音響で聴き心地が良いが、よく聴くと、小幅なテンポの変化は多い。 細かなところまで気を配っている感じがする。 ところが、中間部の2回目にティンパニが強打で出現するところで見事に音程が狂っている。 ライヴでもないのにこの目立つミスを何故取り直さず放置したのか謎であるが、編集して継ぎはぎとなるのを嫌ったものと推測する。 確かに、この部分以外は良い出来の演奏だと思う。 ちなみに、ベルは普通のチューブラーベルである。 第2楽章は冒頭から遅目である。 遅めだからホルンは何とか付いて行っているが、あまり余裕はない。 木管のスタッカートが異様に強調されている。 こんなのは他で聴いたことがない。 また、後半部で独特なリズムの刻み方をしている。 通常の演奏で、ターータター、ターータターと聞こえるところがかなりの部分でターーータタ、ターーータタと聞こえる。 これもかなりユニークで、他で似たようなことをやっている例は、わずかにルイジの演奏しか思いつかない。 ルイジの演奏よりこの演奏の方が時期的にはだいぶ速く、このリズムの刻み方はクーベリックの発案なのかもしれないが、ルイジが優雅にしなやかにやってのけるのに比べると無骨でぎこちない。 第3楽章は標準的な速さで始まり、トランペットソロに入るだいぶ手前でテンポを落とすという珍しいことをする。 そして、トランペットソロのところではあまりテンポを落とさない。 その後もあまりテンポを動かさず、割とあっさり終わってしまい、何だか肩すかしを食ってしまう。 終楽章は適度に厚い弦の音響を堪能できる。 アナログ時代の録音のこととて、ダイナミックレンジに限界があり、消え入るようなpppはなく、mpくらいの感じで終わる。 1、4楽章だけなら星2つ半あげても良いと思うが、第2楽章がまだまだ未消化な感じがするのと第3楽章が薄っぺらなので、星は2つにとどめておく。 しかし、無視すべき凡庸な演奏ではない。

総合評価:  ★★
レーベル:  World Music Express: WME-S-CDR-31242/3
  VIBRATO: 2VHL 532 CD-R
演奏家:   Rafael Kubelik / Boston SO
日時・場所: January 21, 1967, Symphony Hall, Boston
演奏時間:  total 77:01 ( 25:56 / 15:12 / 12:55 / 22:14 )
録音評:

 World Music Express: 会場騒音を良く拾っており、かなり分解能が高い。 当時の録音としてはかなり優秀である。 第1楽章終わり頃にパリパリというようなノイズが入る。 また、各楽章終了後に20〜40秒くらいチューニングなどの音が入っているため、実際の演奏時間は全体で2分ほど短い。
 VIBRATO:  上記と別録音。こっちの方はノイズは多いし、モノラルで歪っぽいしで、かなり状態の悪い録音。

演奏評:

 第1楽章は、冒頭あまり引っ張らず、標準的なテンポであり、上記とよくにた解釈であるが、音響的にかなり個性的で、低温金官群が異様に克明に聞こえてくる。 このため非常に悪魔的。 この楽章のホルンはまずまずである。 第2楽章は標準的なテンポでホルンのトレモロはぎりぎり合格点。 しかし、この楽章のホルンは独特のゾウが吠えるがごとき音色であり、ほめられたものではない。 中間部のテンポアップは少なめ。 例のリズムは上記より1ヶ月前の演奏であるのに、後の演奏で見られるターーッタターと弾むタイプ。 どうもここは迷っていろんなのを試していたのだろうか。 第3楽章は標準的なテンポだがブラスが分厚く刻み、吹奏楽のよう。 トランペットソロはあまりテンポダウンせず、出来はまあまあ。 最後のアッチェルランドは並程度。 最終楽章は弱音の弦が非常にきれいである。 この楽章の出来は良い。 全体に、ブラスがやけに分厚い。 録音の関係かと思うがボストン響のイメージとだいぶずれを感じた。 面白い演奏だが、まあ星は2つとしておく。

総合評価:  ★★

クーンの演奏

レーベル:  OEHMS CLASSICS: OC345
演奏家:   Gustav Kuhn / Marchigiana PO
日時・場所: February 2004, Teatro della Muse Ancona
演奏時間:  total 84:37 ( 28:27 / 16:35 / 14:14 / 25:21 )
録音評:

 かなり優秀な録音である。 ノイズはないし、残響も適度。

演奏評:

 このCDを聴くまで、このオーケストラの存在自体知らなかったが、なかなかうまいと思う。 第1楽章冒頭から分厚い音である。 テンポは自在に動かしており結構私好み。 コントラバスの動きが非常に明瞭に聞き取れる。 ベルは普通のチューブラーベルだと思う。 第2楽章は標準的な速さで始まる。 ホルンソロはちゃんとトレモロを吹きこなしている。 この楽章もコントラバスの動きがよく聞き取れる。 途中、テンポアップするところの幅が狭く、むしろその後、速度が落ちる。 第3楽章もわりと標準的な速度で始まり、トランペットのところで普通に速度を落とす。 トランペットはかなり癖のある吹き方をしており、フレーズを妙に引っ張る。 この楽章は後の方に行くほど遅くなる。 終楽章は、オーソドックスな名演。 弦が本当に魅力的である。

総合評価:  ★★

交響曲第9番 指揮者別 L-Z

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