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マーラーのCD評・交響曲第10番
****** 掲載項目数 132 ******
解像度、残響ともまずまずでノイズはない。 まずまず良好な録音。
演奏評:テンポは標準的で、あまり揺さぶらず、流れにそった素直な演奏だが、非常に音色が良い。 カップリングの9番とは違い、ウィーンフィルの弦の良さを存分に引き出している。 管も健闘しており秀演である。
総合評価: ★★☆全体に鮮度が高く楽器の音が生々しい。 残響も適度である。 無音の部分でかすかに変なデジタルノイズがあるのが分かるが、演奏が始まると聞こえない。
演奏評:テンポは標準くらい。 大きくは揺さぶらず自然体。 弦が特筆ものに美しい。 うねるがごとき動きが時に涙ウルウルもの。 例の不協和音の直前の静止から雪崩れ込むような弦の入り方が独特。 トランペットソロの息継ぎは全く分からないほど巧妙である。 コーダは割とゆっくり目。 名演である。
総合評価: ★★☆残響適度。生々しいくらいのリアルサウンドだが、かすかにデジタル系のノイズがある。鑑賞の邪魔にはならないレベル。
演奏評:上記の5日後の演奏。 弦のうねるような動きがすばらしい。 標準的なテンポで、揺らすが自然。 低音は分厚くはないがいい音である。 不協和音のところで弦の入り方のずらし方が独特。 トランペットの継ぎ目が聞き取れない、見事である。 コーダはゆっくり。 星は2つ半
総合評価: ★★☆当時としては標準レベルの録音か。 残響は程々で弦の音が濡れていて、独特の魅力を放っている。 ピアニシモでかろうじて聞き取れるくらい小さい音だが、録音機材の回転音に起因すると思われる周期的な機械音がかすかに入っている。 しかし、これは鑑賞の妨げになるレベルではない。
演奏評:少し速めのテンポで、弦の音を全面に押し出した演奏。 あくまでも直球勝負だが、それがかえってこの曲に内在する狂気を滲み出させている。 弦が頑張りすぎて、一部やや荒くなるところもあるが、それがむしろ魅力にもなっている。 管楽器のレベルも低くはない。 期待してなかったが、意外に良い演奏だった。 9番であまりにもボロカスに言い過ぎたかなという感じがした。 ちょっと甘いけど、星2つ半差し上げる。
総合評価: ★★☆流石に時代が古いため高解像度録音とは言えないが、嫌なノイズは無いし、残響もほどほどで鑑賞には問題ない。
演奏評:下記に9年先立つ演奏だが、解釈の基本線は同じ。 下記のプロトタイプと言えようか。 細部に微妙な違いはあるものの、バーンスタイン流の特徴は共通しており、独特の魅力ある演奏である。 ただ、下記の方がより洗練されてチャーミングであり、音色においても負けているので、評価に差はつける。
総合評価: ★★☆DVDではなくCDの方の音だが、わりと見晴らしが良い。 当時の録音としてはかなり良好な好解像度で、歪み感のない録音。
演奏評:冒頭の弦楽合奏から上昇音形のところは、やや遅めくらいのテンポで、そのあと速度アップしないタイプ。 割と私好みのテンポ設定である。 何しろ弦が美しい。 ウィーンフィルの音色の良さを存分に引き出しており、木管群も泣かせる音を出している。 ただ、ホルンの音が硬いので、まあ★は2つ半かなあと思いながら聴いていた。 ところがクライマックスの不協和音の強奏のあとに残るトランペットがものすごく、うなってしまった。 さらにその後からコーダに向かい、実にゆっくりしたテンポを維持し、これが決まっている。 いわゆるレニー流のむせび泣く様な演奏でなく、もっと静かで、それでいて暖かみのある素敵なコーダである。 甘いかなあとは思うが、このコーダには★3つ。
総合評価: ★★★残響はそこそこ、解像度ピカイチとは行かないが十分なレベルであり、気になるノイズはない。
演奏評:冒頭からしばらくは遅め、その後は標準テンポくらいに戻るというのがベルティーニ流。 なかなか良いセンスであり、私好み。 この演奏は、ソリストもなかなか巧いが、やや残響が強いが故の低弦の解像度の悪さがあり、ここがマイナスポイント。
総合評価: ★★☆残響は上記と同程度と思われるが、8年前のこっちの方が解像度は上。 アナログ故のテープヒスは聞こえるが、気にならないレベル。
演奏評:これが一番古いものだが、解釈はほぼ同じ。 ユースオケならではの魅力というか、熱さがあるが、それが荒さにもなっていて一長一短である。 しかし、魅力は十分にあり、評価はこのくらいは出せる。
総合評価: ★★☆流石にこれは現代のデジタル録音であり、上記2つより格段に音が良い。 音の生々しさが違う。 細部まで良く拾えており、為にマエストロのうめき声まで録れてしまっているのが欠点。
演奏評:録音が良いばかりではなく、演奏もかなり高水準。 都響としては、最高水準にあるのではと思わせる演奏。 ただ、ソリストの音色においてケルンに負けてるのと、マエストロのうめき声がうるさいのが欠点。
総合評価: ★★☆クリアでノイズなし。 残響も私好みに控えめ。
演奏評:冒頭からテンポはそれなりに揺さぶる。 弦の音が非常にきれいである。 例の不協和音の所のトランペットは目立たないように息継ぎしている。 静かできれいな演奏だが、狂気が足りない。
総合評価: ★★かなり悪い。 ハムやら、シュルシュルいうノイズやら、ノイズが多く、音が全体に歪みっぽい。 かろうじて鑑賞に耐えるレベル。
演奏評:結構テンポを動かし、起伏の激しい演奏である。 ライブのブーレーズが時々見せる情緒的な演奏と言える。 オケのミスもなく、星2つ半に値する出来だが録音の悪い分減点する。
総合評価: ★★当時としては、まあまあかなというレベルの録音。 レンジも広くないし解像度もそれほどない。 しかし、鑑賞には十分なレベル。 嫌なノイズはない。
演奏評:これは、全集版のアダージョの演奏ということになっているが、あまりに特殊な演奏に驚く。 起伏が極めて激しく、荒々しいとさえ言える。 そして、耳慣れない音がいっぱい聞こえてくる。 カーペンター版の第1楽章でもここまで違っていないように思う。 過激な演奏、異形の演奏と言え、賛否が分かれるところだろう。 非常に面白いのだが好きかと言われると考え込む。 かなり迷ったが、★2つ半差し上げることにする。
総合評価: ★★☆ノイズはなく、解像度は流石に現代録音だけあって十分。 残響も適度でありDGGの録音としては良い方。
演奏評:最近のブーレーズのDGG録音のマーラーに共通する特徴だが、きれいで御上品である。 上記2つに比べるとだいぶ荒々しさが削げており、完成度は上がっているが、面白みも減っている。 悪い演奏ではなく人に勧められるレベルにはあるが、上記を聴いてしまうと差を付けたくなる。
総合評価: ★★当初、LIVE SUPREMEの方は2003年3月とだけ記載されていて、演奏時間が違うので別演奏かと思ったのだが、会場騒音の内容から判断して、同一演奏と考える。 録音の質には両者にほとんど差がなく、クリアで解像度の良い好録音である。 En Larmesの方が拍手がカットされている分演奏時間が短く記載されている。
演奏評:冒頭から遅く、遅いままにこだわったような演奏。 速度的に変化はあるが、遅いところからより遅いところへという変化。 しかし、過酷なまでに遅いにも関わらず、アンサンブルが全く乱れない。 見事である。 そして、この遅さが独特の魅力を放っている。 ちょっと甘いが★三つ差し上げる。
総合評価: ★★★現代の録音としては悪い方。 ホワイトトイズ系の雑音が多いし、やや混濁気味の音。解像度や残響はまあまあ。
演奏評:テンポは標準からやや速めくらいであまりメリハリはない。中音域の弦は良い音だがヴァイオリンの音がキン付く。フレージングに「おっ」と思わせる所はあるが穏やかな演奏である。不協和音の後に残るトランペットはブレスなしのようであり見事。 秀演ではあるが★は2つ。
総合評価: ★★残響もほどほどで解像度も十分。 音質もいい。 ただし、たまに変なノイズが入る。 減点するほどではない。
演奏評:標準の中の遅めのテンポで時に更に遅い部分を交える。 揺さぶり方が魅力的である。 時に雄大と言って良いくらいスケール感があり、独特。 非常に魅力的な部分も多いが、時にえっ?と思うくらい変なところもある。 例の不協和音の強奏へ向かう途中のテンポの落とし方は凄い。 この後のトランペットは複数の奏者がそれと判らないようつないでブレスなしに見せかける演奏と、明示的ではないがブレスがそれと判る演奏があるが、この演奏は前者。 ただし、二人の奏者の音色があまりにもはっきり違うために、交代した瞬間がはっきり判るという失敗作。 全体としてみて、非常に魅力的だが、再考すべき点も多々ある演奏。 ★は2つ半。
総合評価: ★★☆最近の録音にしては解像度が今ひとつだが、ノイズはなく、残響も適度。
演奏評:演奏時間を見るとかなり短いが、聴いていて急ぎ足な感じではなく、速度的なメリハリが非常に利いている。ユニークで魅力的な演奏。 これで、ホルンの音がもう少し私好みだったら星3つなのだが。
総合評価: ★★☆現代の録音には幾分譲るところがあるが、まずまず解像度も高く、残響も適度。 ノイズもほとんどない。
演奏評:全曲版に15年以上先立つ演奏だが、その第1楽章とかなり近いのに驚く。 当時のギーレンは冷徹なイメージがあったのだが、この演奏を聴くとそんなことはない。 昔からこの曲にはギーレンは合うのだろう。 録音が古いのと、幾分弦やブラスが音色的に劣るところがあるので、その分差をつけることにするが、非常に良い演奏である。
総合評価: ★★☆そこそこ解像度はあるが、ノイズが入るところがある。 しかし、気になるほどではない。
演奏評:いかにもジュリーニらしい、落ち着いたテンポでじっくり攻める感じ。 テンポはあまり振り回さないが、味わいのある演奏。 ただし、ホルンの音色がイマイチなのと、例の不協和音のフォルテの頂上で鳴り響くトランペットがあまりにもあからさまに息継ぎしているのが残念。 ちょっと厳しいが、★は2つとしておく。
総合評価: ★★クリアで残響も程よく美音。 解像度もまずまずである。
演奏評:冒頭の弦楽合奏と、それに続く上昇音型、更にその先でしばしば速度アップするところまで一貫して遅めの速度を保っており、それがゆったり雄大とさえ言える説得力を持っており、非常に魅力的な演奏である。 音が非常に良く、技術水準も確かであり、やはりベルリンフィルはマーラー後期に向くオケだなあとつくづく思った。 前半は本当に名演であり星3つを考えていたが、後半少しテンポアップしてから、やや淡白になる傾向があり、特にコーダで食い足りなさを感じた。 このため、星は2つ半とする。
総合評価: ★★☆クリアで残響も程よく美音。 解像度もまずまずであるが、冒頭からずっとキュルキュル、シュルシュルというノイズがかすかになり続けており、気にし始めると気になる。
演奏評:遅めのテンポを基本に緩急のメリハリをつけるやり方が実に壷にはまっている。 各楽器のソロもうまく音が良い。ホルンもトランペットも申し分ない。 不協和音の強奏以後とくに凄い。 全曲版よりずっと上のグレードで演奏自体は完成している感じ。 ただ、録音が・・・ノイズが・・・ ★半分涙を飲んで減点。
総合評価: ★★☆残響もほどほど、ノイズもなくまずまずといったところ。 きれいな音である。
演奏評:クック版の5年ほど前の演奏だが、ほぼ同じ時間。 印象も類似しており、悪くない。 しかし、21世紀になってからのものを聴くと負ける。
総合評価: ★★解像度もまずまずで、残響は割と少なめのデッドな音。 電気的ノイズはなし。 ただし、最初から最後までマエストロの鼻歌?が聞こえ、耳障り。
演奏評:非常に遅く、粘りやためが独特でユニークであり、解釈は素晴らしい。 しかし、この極端なテンポにオケが応えきれていない。 特に中音域の弦のアンサンブルが乱れる。 この技術水準上の問題で★半分減点。 また、マエストロの鼻歌がうるさい分で★半分減点。
総合評価: ★★優秀録音である。 解像度良く、残響適度でノイズもない。 しかし、下記を聴いてしまうと、音に潤いが不足しているように感じてしまう。
演奏評:下記のものとほぼ同時期の演奏であり、従って解釈は同じと考えられ、演奏そのものの出来不出来の差のみである。 これも非常に良い演奏だとは思うが、下記と比べると、音の良否のみでなく差があり、こっちの方が随所でおとなしい感じがする。 下記と差はつけたい感じはあるので、星はこのくらい。
総合評価: ★★☆CD-Rとしてはこれ以上は望めない超Aクラスの録音。 解像度よく、残響適度。 会場騒音以外のノイズはない。 そして、音が実に良い。 演奏の細かなニュアンスが実に良く聞き取れる。
演奏評:実は、パーヴォの演奏を聴いたのは、このCDが初めてだった。 七光りの口だろうと思い、父ヤルヴィのマーラーがあの程度だからと、全く期待してなかったのだが、己の不明を心底恥じる結果となった。 パーヴォはこの年で既に父を遥かに凌駕する高みに達していると思う。 ものすごいアダージョである。 ゆっくり目のテンポが実に板についており、テンポの揺さぶりも極めて高い説得力をもつ。 何と耽美的、何と情緒的。 感情的ではなく! ギーレンじいさんがようやく到達した地点に既に立っている。 いずれ、全曲版をぜひ振ってほしい。
総合評価: ★★★残響はほどほど。 解像度も悪くはないはずの録音だが、異様に会場騒音を良く拾う。 さらにマイク位置のためだろうが、空調だか何だか機械騒音と思われる低音ノイズが最初から最後まで続いており、ピアノ以下の弱音が全くスポイルされている。
演奏評:上記2つより2年後。 マエストロの解釈には磨きがかかり、更に大胆な引っぱり等も見られているが、オケが落ちる。 技術的破綻はないが、音色が悪い。 その分で本来は★2つ半の所だが、何しろ致命的なノイズが続いているので、★半分更に減点する。
総合評価: ★★残響はほどほど。 解像度も悪くはない。ノイズもほとんど気にならない。
演奏評:上記より2年前、つまりフランクフルト放送響とほぼ同時期の演奏。意外なことに、上記より更に極端なテンポ変更がなされており、同時期にオケによってかなり違うやり方を使い分けていたことになる。 まったくこの指揮者の幅の広さは凄い。 こちらの演奏の方がオケの出来はいいが、テンポの動かし方が大胆と言うか、極めてユニーク。 それでいて魅力的。 これは星2つ半。
総合評価: ★★☆録音はあまり芳しくない。 何かずっとハムが乗っているし、もやってる感じで解像度が低い。
演奏評:カップリングされてる9番とはオケが違っている。 このオケはユースとは思えないほど達者である。 ジャッドの解釈は9番より更に冴えている感じ。 緩急のメリハリが非常に付いた演奏で、間違いなく名演。 ただ、録音が悪いので、星2つか、2つ半かで迷いながら聴いていたが、コーダの部分が非常に良い。 この部分はバーンスタイン/ウィーンフィルの名演に迫る出来である。 で、星2つ半差しあげることにする。
総合評価: ★★☆ノイズなし。 やや残響は強いが、こもる感じはなく、クリア。
演奏評:幻のHDCレーベルで、現在入手は極めて困難。 演奏は独特。 冒頭は普通のテンポだが、その後遅めをキープ。 テンポは大きくは揺さぶらないが、時々止まる。 何より音色が独特である。 あまり聴いたことの無い音がするのでなんでか考えたが、ブラスの楽器の音色が変わっているためのようである。 技術水準は高いが、この音色はあまり良いと思わない。 指揮者の解釈は悪くないが、★は2つどまり。
総合評価: ★★当時のアナログ録音としては、まずまずの水準。 やや、残響が強めだが、これはこのホールの特徴。
演奏評:全体に速めだが、急ぎ足という感じは無く、音はたっぷり出ている。 弦が異様に元気良く、それが魅力の演奏だが、時に過ぎて荒くなるのが残念。 星は2つとしておく。
総合評価: ★★サントリーホールにしてはクリアで残響も適度。 ノイズもなく好録音。
演奏評:9番を聴いたときには、それほどとは思わなかったが、この演奏は素晴らしい。 冒頭はかなりゆっくりだが、その後は適度に速度的なメリハリがある。 音楽が非常に滑らかであり魅力的。 日本のオケでこの音が出るのは嬉しい。 ちょっと甘いかもしれないが、星三つ差し上げる。
総合評価: ★★★解像度の高い録音ではないが、残響適度で良い音である。 ノイズも無い。
演奏評:冒頭の弦楽合奏の途中から遅くなり、続く上昇音形以後ずっと遅めという珍しいパターン。その後いつの間にか通常速度になっているので、結果的にこのくらいの演奏時間になっている。 ユーニークなことをやってる割に、それが魅力にまでなっていない。 弦はそこそこ良い音だが、ブラスの音がやや荒い。 例の不協和音の後のトランペットは、途中で恣意的にブレスしているし、音が悪い。 ものすごく悪いところも無いが、それほど魅力的なところも無い。 優等生的な訳でもないが。
総合評価: ★★クリアで残響も適度。 音質的に非常に魅力的である。 ノイズはない。
演奏評:演奏時間からすると速めだが、実際に聴いてみると急ぎ足な感じはない。 ソリストたちの音色も含め、音が良いなあと思う。 解釈も奇をてらったところはなく、まずまず良い演奏。 ただ、小さなミスはあり、ここぞというインパクトがないので★は2つくらい。
総合評価: ★★クリアで解像度良く残響もほどほど、ノイズも少ない好録音。
演奏評:下記ほどではないが、濃い演奏。 やはり冒頭から引っぱり、テンポは動かす。 一般にはこっちの方が聴きやすくお勧めなのだろうが、下記には差をつけたい気もする。 さんざん悩んだが、結局辛目に星2つ半。
総合評価: ★★☆ノイズなく残響も適度であり、CD−Rとしてはトップクラスの録音。
演奏評:遅めの演奏だが、遅さに説得力がある。 音響は厚めだが、マーラーにしても耽美的に過ぎるくらいで、途中スクリャービンでも聴いてるみたいな心持ちになったくらい。 まさに、腐敗か発酵か紙一重みたいな音楽で、はまるか拒絶反応が出るか。 マゼールのマーラーとしては出色。 私は、はまった。
総合評価: ★★★クリアでノイズなく残響適度。 分解能はそれほど良いとは言えないが、聴きやすい。
演奏評:ウィーンフィルの弦の音の良さが生きている。 解釈は上記の、よりアルカイックなヴァージョンと言え、だいぶさっぱりしているが、それでも熟れた音に満ちている。 星2つ半ではちょっと辛いかも。
総合評価: ★★☆時期を考えれば解像度良くクリアな録音。 残響も適度であり、気になるレベルのノイズはない。
演奏評:やはり、この指揮者は一筋縄ではいかない。 冒頭こそ普通のテンポかなと思ったが、すぐに思いっきりテンポを揺さぶり始める。こういうことやる(やれる)指揮者は現代にはいないのではないかと思う。楽員から総スカン食うよね、今なら。ともかく緩急の幅が大きい上に、唐突なので、時々ついて行ききれない楽員が出てきてアンサンブルが崩壊寸前に陥る。ためや、引っ張りはやり放題で、ブルックナーストップばりの停止も2回ほど行なっている。この曲でこういうことになるのは極めて珍しいのではないか? むしろ予定調和的にノテーっとテンポを固定する演奏が多いと思う。 とってもユニークというか奇怪な演奏である。オケはそれでも頑張っている感じ。後半の不協和音の後トランペットが残る部分あたりからは、そういうやんちゃはせずに、じっくりしみじみ型の演奏に変貌。ここからは、なかなか聞かせる。全体としての評価は大いに悩む。面白さではピカイチだが、アンサンブルが崩れるのはマイナスポイント。 しかし、ここは甘くしたい、 星2つ半。
総合評価: ★★☆ノイズはないが残響はやや強め。 聴き辛いというほどではないが、音の鮮度が落ちる感じがする。
演奏評:聴いているときは、ゆったりめのテンポと感じていたのだが、あとで演奏時間を見て短いのに驚いた。 あまりテンポは揺さぶらず、どっちかと言えば美音追求タイプの演奏。 これはこれで悪くはないのだが、何かマーラーにしては毒が無さ過ぎる。
総合評価: ★★ノイズはなく残響ほどほど。 高解像度とは言えないが、時代を考えれば割と良い録音。
演奏評:メータが一番いきいきしてチャーミングだった時代の演奏。 テンポは非常に速く、きびきびしていて、それでいて時にはっとする様な一瞬の間を作る。 ロスフィルも良い音を出している。 明らかに上記より上をいく演奏。 この演奏にはちゃんと毒もある。 名演だと思う。
総合評価: ★★☆DDDとなってはいるが、ホワイトノイズがかすかにある。 録音はクリアで十分に透明度が高く、残響も適度である。
演奏評:冒頭、ゆっくりした中で独特の引っ張り方をする。 また、その後もフレージングが独特で一瞬止まるかと思わせるような間があり、これが中々魅力的。 音響構造としてはやや中高域よりで、重低音は出ていない。 弦は当初はイマイチで乾いた音かなと思ったが、次第に憂いを帯びたような良い音色に変わってくる。 演奏そのものが途中からぐんぐん良くなってくるので、最初からちゃんとやらんかいと言いたい所だが、いかにもフランスらしいとも言える。 不協和音のところのトランペットは強烈な音ではないが、息は長くしっかりしている。 その後の部分がとりわけ美しく、ホルンを含めた管楽器のソロ、特にオーボエが実に良い。 冒頭からこうだったら星3つだが、落差があるので2つ半。
総合評価: ★★☆会場騒音が目立つ。ややデッドな音。 モノラルとしてはまあまあのレベルだがノイズ感が強い。
演奏評:標準的なテンポだが結構テンポをゆさぶっている。楽譜はクルシェネク版のように思うが、異例なほど熱い演奏になっている。 ライブゆえの傷もあり、録音のハンデもあるが★は2つ。
総合評価: ★★やはり会場騒音が多いが、こっちの方が幾分ましか。
演奏評:上記と一日違い。 オケは実は同じであるし、上記の日付の記載が間違っていて同一演奏の可能性もあるかと思ったが、どうやら違う演奏のようである。 しかし、当たり前だが解釈は同じ。 演奏も同水準か。
総合評価: ★★時代を考えれば、やむを得ないが、良い録音とは言いかねる。 テープヒスとは違うがホワイトノイズ系のシャーっという音が聞こえるし、ハムも乗っている。 しかし一応鑑賞には耐えるレベルである。
演奏評:演奏時期を考えると、これは全集版の楽譜が発行される以前なので、クルシェネク版しか発行された楽譜はなかったはず。 しかし、そんな版の問題以前に特殊な演奏である。 おそらく、ミュンシュがマーラーと取り組んだことなど、これ以前にも以後にも無いんじゃないかと思われるが、この未完成の楽譜からいかにマーラーらしい音楽を生み出すか、という発想は全くない。 しかし、目の前にある楽譜から、何の先入観も無く、ミュンシュの音楽をやろうとした感じである。 これだけテンポを大きい幅で揺さぶるというか、振り回している例は他に無いと思う。 そこに展開されている音楽は、いかにもライブのミュンシュらしく、荒々しいまでに熱い。 ただ、惜しむらくは、あまりにも極端な要求のためオケに余裕が無く、時にボストン響とは思えないほどチープな音が聞こえてくる。 異端中の異端であり、怪しい魅力に富んでいるだけに、非常に惜しい。
総合評価: ★★ノイズは無いが、妙にキンついた硬い音質で、ヴァイオリンの音は明らかにおかしい。 残響はそこそこだが。
演奏評:冒頭から遅めのテンポで、その中でも独特の引っぱりがあり、なかなかの好演だと思うが何しろ音質が悪い。 また、コーダに向かう部分で、唐突とも言えるカットがある。 全く理不尽なカットであり、耳を疑った。 編集されたもののようで、おそらく演奏者には責任はなさそうだが、本来★1つ減点するくらいの傷である。 録音の悪さも加味すると相当の減点だが、本来は良い演奏だと思うので、大まけで星2つとしておく。
総合評価: ★★そこそこクリア。 ノイズはなし。 低音部の残響がやや強いか。 鑑賞上大きな問題はない。
演奏評:冒頭の弦楽合奏は非常にゆっくりしているが、それ以外は標準的な速さ。 堅実に良い音を出しているし、冷たい演奏ではない。 そこそこの秀演という感じ。
総合評価: ★★ノイズ無く、解像度もまずまず。 残響も程よく聴きやすい。
演奏評:遅めの演奏だが、速度的なメリハリは結構ある。 ボストン響の音色の良さを存分に生かしている。 美音であり、繊細とさえ言える。 良い演奏だし、星3つを考えながら聴いていたが、何か引っかかる。 星3つとするには何か足りない様な気がして考えていたが、禍々しさが足りないことに気がついた。 9番ならこの方向で文句なしの名演が出来上がるのだが、この曲は更に「毒」が必要なのだ。 で、2つ半。
総合評価: ★★☆ノイズはなく歪み感もないが、透明度が高いという感じも無く、そこそこ。 残響は少なめ。
演奏評:チェコフィルにしては音に魅力が無い。 演奏は標準的な速めの演奏で流れに全く逆らわない自然なテンポ。 レファレンスたりうる秀演である。 しかし、あまりにも癖が無く、それでいて音色で聞かせるところがある訳でもないので、何か物足りない。 星は2つどまり。
総合評価: ★★ノイズはほとんどなく、残響もほどほど。 まずまずの録音。
演奏評:冒頭の弦楽合奏が極めて遅い。 その後も、かなり遅めの部分が多い。 弦の音が驚くほど良いため、この遅めのテンポがハマる。 ただ、ブラスの音が・・・特に、ホルンの音が・・ ロシアの軍楽隊。 評価は、星2つか2つ半かで最後まで迷ったが、やっぱりブラスの音は悪い。
総合評価: ★★ノイズ無く、音はきれいだが、少し残響は強めで高解像度とは言えない。
演奏評:最初から最後まで遅いテンポを貫き、ほとんどテンポを動かさない。 立派というより、かたくなな感じで、遅すぎるため、やや弛緩する。 音は非常にきれいなのだが、それが生きてこない。
総合評価: ★★ノイズ無く、音はきれい。 残響は少なく高解像度。 マエストロの足を踏み鳴らす音を克明に拾っている。
演奏評:まず、ピッチが高い。 通常より1音以上高く、聴き始めた瞬間、「えっ」と驚く。 アナログマスターで録音より速く回して再生したのかと思ったが、拍手その他の会場騒音のピッチから推して、実際にこのピッチで演奏されたらしい。 何らかの都合にしては高すぎる。 管楽器がチューニングでずらせる範囲を明らかに越えている。 とすると、確信犯? 一音高めに移調して演奏している? マーラーののその他の交響曲の演奏もなかなか一筋縄では行かず、このおっさんならやりかねないな、と思いつつ聴くことしばし、これはこれでなかなか良いのである。 冒頭、通常の演奏に比べると陰影は薄いが、何となく不安感が強く、けして明るすぎるようにはならない。 全体にテンションが高く熱い演奏。 低音ブラス群はこのピッチの方が響きが穏やかで豊穣である。 トランペットのハイトーンは厳しいかなとも思ったが、こともなげにこなしており、全体といていい仕上がりである。 甘いかなと思うが星2つ半。
総合評価: ★★☆CDの方はかなり問題がある。かなり録音が悪く、聞くのが辛いぎりぎりのところ。 ステレオ録音としては最低ランク。 マスタリングにかなり問題あるようである。 配信の方はだいぶましで、鑑賞には十分耐えうるレベルだが、やはり歪み感は目立つ。
演奏評:CDの方は何故か冒頭の弦楽合奏がカットされており、いきなり上昇音形から始まる。 このため、演奏時間が1分半ほど短くなっている。オケの表記も違うし、はじめは別演奏かと思ったが、聞き比べてみると、配信の方と同一演奏だと判った。 録音も配信の方が良いため配信の方を評価の対象とする。 非常にユニークな演奏である。 冒頭は標準からやや遅め程度だが、中間部で異様に遅くなりスローモーションの様な部分が続く。 いかし、だれないのは立派。 音響構造が通常の演奏と違う場所が随所にあり、それなりに説得力があって面白い。 本来なら星2つ半でもいいかなと思うが、かなり音は悪いので、星1/4減点し端数は切り捨てる。
総合評価: ★★ノイズ無く残響適度。 音が瑞々しくきれいである。
演奏評:実はこれ、「マーラー」という映画のサウンドトラックである。 だが、10番アダージョは通しでも入っているので取り上げた。 ともかく音がきれいである。 弦も管もすばらしい。 唯一、冒頭部分のホルンの音は気に入らないが、それ以外は見事。 全体に速めの演奏だが、自在にテンポを動かし引っ張るべきところは引っ張る。 不協和音につづくトランペットもブレスを聞かせないやり方で立派。 名演である。
総合評価: ★★☆モノラルだしクリアとは言い兼ねる。 しかし、録音年代を考えたら優秀な方か。ノイズはそれほど目立たず鑑賞には耐えるレベル。
演奏評:この時期の演奏としては異例に遅い。 この時期は全集版も出版前でクルシェネク版の演奏のはずであり、この版の演奏でこれだけ遅いのは記憶にない。 冒頭の弦楽合奏から上昇音形あたりまで、今時の標準の中の遅めくらいで始まるが、その後、演奏が進むほどに遅くなり、時に止まりそうになる。 どちらかというとシェルヘンのマーラーは疾風怒濤型で速いのだが、この演奏では、晩年の5番の演奏でみられたような、少々無茶なくらい遅いやり方をしている。 非常にユニークで面白いのだが、録音のハンデは感じさせるので星は2つ。
総合評価: ★★上記より8年後だが、けして良好な録音とは言い難い。 会場騒音らしき謎のノイズが終始聞こえており耳障り。 音も、全体にキンつく。
演奏評:これは一転してシェルヘンらしい疾風怒濤型の演奏で、全体としてはかなり速めだが、速度の揺さぶりが激しく、時に完全静止する。 何か麻薬的な魅力があるが、録音がかなり悪いため正気に帰れる感じ。 星はこれも2つ。
総合評価: ★★クリア、高解像度。 非常に透明度の高い音に仕上がっておりノイズはない。
演奏評:冒頭から透明感のある澄んだ音で、標準より気持ち遅めくらいのテンポで音楽が進んでいく。 多少テンポが動く所はあるがゆったりとした演奏に徹して良い音をたっぷり聴かせている。 ただ、ホルンの音が、どうもあと一歩抜けきらない感じで残念である。 それ以外は減点箇所がなく、クライマックスの不協和音後にトランペットが残る所は見事に継ぎ目なしブレスなしで吹ききっている。★3つ出しても良い演奏だが、どうもホルンが気に入らないので半分減点。
総合評価: ★★☆臨場感あり、高解像度だが、シュルシュルというデジタル系のノイズがかすかにのる。 また終始、マエストロの低いうなり声が入り耳につく。
演奏評:快速テンポで、時々揺さぶりもかけるし、1回だけブルックナーストップみたいな静止ませある。 熱い演奏だが、ややあざとい感じもある。 音響的に何だか変なところがあり、あんまり聞いたことのない音色のする部分が少なくない。 そのせいか、ノイズのせいなのか、何かうるさく聞き疲れする。 ★はちょっと厳しいが2つ。
総合評価: ★★ノイズ無く残響は適度。 好録音。
演奏評:冒頭から一貫して遅めの演奏だが、弛緩した感じが無く、弦の音が非常に良く響き、ブラスもまずまず。 随所にユニークな解釈はあるが、説得力はあり名演である。 途中、わずかにスピードアップするところがあり、ここでやや弦が荒れるのが惜しい。 ★は2つ半。
総合評価: ★★☆クリアで解像度良く、残響も適度。 好録音。
演奏評:全体を通して非常に遅いテンポをつらぬき、それでいて弛緩せず、非常に美しい音楽が展開されている。 とにかく弦の音が素晴らしい。 また、ライブだがミスがなく、ライブ故の熱さもある。 遅めの演奏の中では出色といえる。 これは、星三つ差し上げたい。
総合評価: ★★★かなりDGGの録音としては解像度が良い方。 残響も適度。 ピアニシモになると何か低音のノイズが入るなと思ったら、ホールの外を通る車の音だった。
演奏評:上記より更に遅く、流石にやや弛緩した感じになってしまうところはある。 音は非常にきれいだが、上記に比べるとやや温度が低い感じ。 途中で星2つにするか、2つ半にするか考えていたが、不協和音強奏のトランペットが見事。 その後コーダに入ってものすごく良い演奏になる。 この部分だけなら上記を凌ぐ。 星は2つ半としておく。
総合評価: ★★☆ノイズ無く残響は適度。 まずまず。
演奏評:かなりテンポを揺さぶる。 思いっきり引っ張ったり、時に停止までする。 しかし、総じて快速運転のところが多いため演奏時間はかなり短い。 木管楽器が良い音を出しているが、弦の厚みが今一歩で、豊穣ではなく爽やかになってしまっている。 でも良い演奏である。 ★は2つ半。
総合評価: ★★☆ノイズは無く残響もほどほど。 高解像度ではないが、音場は良い。 弦の音が良く採れている。
演奏評:録音時間を見れば、お分かりの通り超遅演の部類に入る。 冒頭の弦楽合奏から上昇音形を過ぎ、通常テンポアップするところでも遅いまま。 その後も意固地なまでに遅く、時にスローモーションのようになり、一瞬止まりそうにさえなる。 しかし、不思議と弛緩せず、この遅さが弦の美しさを際立たせている。 ただし、ホルンが吹奏楽になってしまい興を削ぐ。 惜しいけど星2つかなと思ったが、例の不協和音の強奏の近辺の音響処理が独特で魅力があるので2つ半とする。
総合評価: ★★☆このシリーズの中では良い方の録音か。 ノイズはないし、歪みっぽくもない。 残響もほどほど。
演奏評:7番や9番に負けずおとらずユニークな演奏である。 音色が何か聞き慣れないし、妙に熱い。 かなり面白く、どうしようか迷ったが一応自重して★2つ。 しかし、ちょっと変わったのも良いかなと思われる向きにはお勧め出来るレベル。
総合評価: ★★解像度は非常に良く、会場騒音もかなり拾っている・・というか、会場外の何らかの低音ノイズをずっと拾っている。 また、マエストロのシュッとかツシュッという掛け声(というか息を吐き出す音?)もけっこう頻繁に拾っており、時に気になる。
演奏評:冒頭から遅めのテンポを貫いており、その遅いテンポの中で少しテンポは動かすが、徹底して遅めであり、そこが魅力。 不協和音の強奏とその後のトーンクラスターみたいなところは、わざと、フォルテシモまで音を出し切らずに、良い効果を上げている。 その後は、通常くらいのテンポにスピードアップしているが、違和感はない。 フェニーチェ劇場管は、地方の劇場付きオケだからと馬鹿にしていたら、とんでもなく優秀なのに驚いた。 良い音であり、機能性も確かである。 イタリアのオケのトップ水準に達しているのではなかろうか。 テイトのマーラーというのは、かなり珍しいように思うが、すばらしい。 低音ノイズとマエストロの発する「ノイズ」が気になるので★半分減点して2つ半。
総合評価: ★★☆ノイズはなく、残響もそこそこだが、音の鮮度はそれなりか。 当時としては水準並みの録音だろう。
演奏評:テンシュテットの10番アダージョはかなり個性的だが、これはその中ではおとなしい方か。 スタジオ録音のせいで、どうしても冷静になってしまうためかと思う。 それでも冒頭の弦合奏からして遅く、ためや引っぱりは独特で強い。 例の不協和音に重畳してくるトランペットはパワフルだが、2人で吹いているのがはっきり判る。 かなり面白いが、うなるところまでは、あと一歩。 ★は2つ半。
総合評価: ★★☆解像度は高く音の鮮度が良い。 会場騒音を異様に良く拾っている。 しかし、ノイズがかなり多い。
演奏評:上記の4年後の演奏だが、解釈は更に深化し、ライブ故か変幻自在にテンポを振り回す感じ。 非常に魅力的な演奏になっている。 不協和音のところのトランペットは一人で吹いているように聞こえるが、残念ながら、はっきりブレスがわかる。 残念ながらノイズが気になるので★半分減点。
総合評価: ★★☆解像度はまずまずだが、残響は気持ち強め。 ノイズは少なく、好録音。
演奏評:上記と2週間しか違わない、同時期の演奏だが、オケの違いがはっきり出ている。 弦の音が実に良い。 これを生かす様な演奏スタイルである。 テンポは自在に振り回す。 細部でもいろいろと個性の強いことをやっているが、いささかやりすぎて下品になるところがある。 ウィーンフィルを下品なところまで鳴らすこと自体凄いこととは思うが、マイナスポイントには違いない。 星は2つ半。
総合評価: ★★☆解像度はまずまずでノイズなし。 残響はやや強めだが、邪魔にならない。
演奏評:冒頭はやや遅めだが、通しでみると、やや短かめの演奏時間。 しかし、そんなに単純でもなくて、引っ張るところは結構引っ張りテンポは柔軟に動かす。 実は、この指揮者を聴くのは初めてである。 DGGが派手に売り出そうとして失敗したという印象だった人で、マーラーなんか振りそうもないと思ってたが、聴いてみたらなかなか良い。 ミュンヘンフィルのマーラーも初めて聴く様な気がするが、素晴らしい。 弦が実に良い音を出しているし、ホルンもほぼ理想的。 曲の解釈はオーソドックスのようでいて、音の消え方が独特だったり、この指揮者、なかなか曲者とみた。 マーラー前期よりも後期に向く私好みのタイプ。 おまけして、星3つ差し上げる。
総合評価: ★★★録音は本質的には驚異的に良い。 極めて高解像度で、空調の超低音のノイズも拾ってしまうほどである。 そして楽器の音が素晴らしい音で採れている。 弦の音が濡れている。 極めて生々しいのである。 残念ながらチリチリいうノイズがある。 無音に近いところで、かすかなハムが聞こえる。 曲の最後の部分でチリチリノイズの大きいのが一瞬入る。 極めて惜しい。
演奏評:全体に標準からやや遅めだが、テンポを随時揺さぶる上に、MTTがマーラーの曲で時々やる手法だが、ブルックナーストップばりの静止が見られる。 こうしたテンポの揺さぶりが実に巧く決まっている。 アダージョのみの演奏にしては、異例なほどドラマチックな出来となっており、厚みが凄い。 音の良さも相まって星3つあげたいところだが、終わり寸前のノイズを重く見て涙を飲むことにする。
総合評価: ★★☆上記と違い、ノイズは全くない。 本来解像度の高い好録音である。 しかし、上記と比較すると音に潤いがなく乾いた感じ。 ハイブリッド盤ゆえの欠点か?
演奏評:上記より半年後、同じメンバー、同じ場所での演奏。 3日間のライブとなっているが、継ぎ接ぎした痕らしきものはないので、ゲネプロを含めた3日間の演奏の中で一番良いのをテイクしたということなのだろう。 曲の解釈は同じであり、演奏上のミスがないのも同じだが、上記の方が、何かノリが良いように感じる。 録音も上記の方が魅力的であり、手に入るのなら上記の方がお勧め。こっちは減点ポイントは無しで星2つ半まで。
総合評価: ★★☆やや録音の音量を絞り加減に録ってあり、通常よりボリュームを上げる必要がある。 クリアで残響も程よく、ノイズはない。
演奏評:これは、上記より10年くらい前の録音で、演奏時間はあまり変わらないが、音楽の質に違いを感じる。 静かな演奏である。 細部まで研ぎすまされたようで非常にきれいな音がしている。 テンポは遅めの中で、それでも細かな揺らぎがある。 時々、えっ、どうして?と思うような駆け足になるところがある。 その駆け出し始める所が何とも優雅で魅力があるのだが、ちょっと走りすぎる。 後半の不協和音のところで、ややトランペットが弱く物足りない。 ここが弱点。 良い演奏だが、やはり星は2つ半。
総合評価: ★★☆解像度ほどほど、残響は強くはなく、ノイズも気になるものはない。 まずまずの録音。
演奏評:テンポは標準的で、あまり揺さぶらない。 ライブだが、ミスは無く、それなりにノリも良い。 悪くはない演奏である。 でも、ここがというインパクトが乏しい。 星は2つとしておく。
総合評価: ★★ノイズは無くクリア。 残響もほどほどであり、聴きやすい。
演奏評:ミニマムのオケで通常管弦楽を演奏するというコンセプトなので弦楽器が異常に少ない。そのため、弦のパートが全てソロというとんでもない事態になっている。 まあ、その割には健闘しているが、この曲の特徴である弦の豊穣な響というのは、やはり出せるはずはない。どこぞの室内管弦楽団と違ってピアノだのアコーディオンだのを持ち出さないところは良いと思う。 各楽器がみんなソロなので、個々の奏者の技量がもろに出るが、まずまずである。 一番技術的に弱いのは、皮肉な事に高音部の弦3人だろう。曲の解釈がどうこういうより以前に、この編成でやることの是非の方が問題だろうが、速めの演奏として解釈にはそれなりの評価は出せると思う。ただ、わざわざこれを聴くのはゲテモノ趣味ギリギリのところか・・ 星は2つはあげる事にする。
総合評価: ★★この年代にしては今ひとつ。 解像度が悪く、残響もなくて音に潤いがない。
演奏評:そもそも、この曲をなんで弦楽合奏でやろうなどと考えたのか不思議だが、出来上がった音楽もかなり不思議な代物となっている。 このCD、シェーンベルクの弦楽版「浄夜」とカップリングされているが、あれと共通した不気味さがある。 ゲテモノ好きとか、コレクターとかでもない限り、わざわざ手に入れるほどのものではないだろう。
総合評価: ★
解像度良く、残響も適度。 ノイズなし。 優秀な録音である。
演奏評:ごめんなさい! 私が悪かったですゥ。 上記でさんざん貶しておきながら、節操がないんですが、この演奏で聴く限り、この編曲版見事です。 弦のみで、ここまで原曲の雰囲気が伝わるとは。 おまけに音も、熱さも凄い。 これは、★3つも納得です。
総合評価: ★★★残響適度。 解像度はまあまあ。 とにかく音が良い。
演奏評:最初、勘違いしたが、オーベルニュ管弦楽団という団体は、実は弦楽合奏団なので、当然演奏するのも弦楽合奏版。 これも、上記に負けず劣らずの名演奏。 とにかく弦の良さが全面に出ている。 これもお勧めです。
総合評価: ★★★録音年代を考えたら驚異的に良い録音と言える。 ステレオだし、ノイズも少なく音も歪みっぽくない。
演奏評:この演奏が録音された1959年の段階では、まだこの世に補筆完成版は存在せず、マーラー協会による全集版のアダージョもなかった。 で、この演奏は何かというと、今はほとんど顧みられなくなったクルシェネク版というのが使われている。 残された自筆稿を演奏するために、アルマ・マーラー自身の依頼で、クルシェネクが2つの楽章のみ補筆したもので、クック版に似ているが微妙に違いもある。 速めのテンポであり、演奏は悪くはないが、資料的価値以上に魅力的とまではいかない。
総合評価: ★★録音はかなり悪い。 モノラルで歪みっぽく、音響バランスが変。 長く聴いているのはつらいレベル。
演奏評:上記と同じ版の演奏と思われるが、だいぶゆっくりしていて、テンポを揺すったりもする。 悪い演奏ではなさそうだが、録音の悪さをカバーするには至らない。
総合評価: ★☆
モノラルの割にはまあまあか。
演奏評:始まりこそ遅いが間もなくテンポアップし、その後も結構テンポを揺さぶる。 このこと自体この曲では異例である。 演奏としては面白いと思う。
総合評価: ★★
ものすごくクリアという訳ではないが、まずまずの好録音。 残響はやや少なめだが、マーラーはこのくらいの方が良いと私は思う。 ノイズはない。
演奏評:第1楽章はかなりのハイテンポ。 変なためや引っぱりはなくすっきりしている。 第2、第3楽章もテンポはあまり揺すらず、ねちっこさはない。 ブラスセクションは割と頑張っており、この辺りまでは、まずまずだけれども、星2つかなと思っていた。 第3楽章と第4楽章の間の時間が妙に長く、ちょっと珍しいパターン。 第4楽章も、どちらかといえば速めで、速度的なメリハリは少ないが、熱い演奏であり、テンションが高い。 そして、最終楽章は冒頭からバスドラムの音が凄い。 再生装置の限界を超える地響きのような低周波振動を伴っている。 この楽章だけ通常より遅めのテンポを採用しており、これが成功している。 非常な名演であり、特に後半、あの不協和音のフォルテシモが終わった後、コーダに向かう部分は涙ウルウルもの。 この部分だけなら一番の名演かも。 全体を俯瞰してみると微妙なところだが、これだけ出来の良い最終楽章はちょっと望めないように思う。 少し甘いが星2つ半とする。
総合評価: ★★☆録音ははっきり言って悪い。 第2楽章に音飛びがあるが、それよりも全体にクリアさが不足しており、時々デジタル歪みのような妙なノイズが入る。
演奏評:上述のものから20数年が経過したごく最近の演奏だが、基本的な解釈はあまり変わっていない。 ただし第1楽章は遅くなり、けっこうためや引っぱりが見られるようになっている。 後ろの2つの楽章の出来が良いのも同じ。 楽章のつなぎ目のバスドラムは2発であり、最近の演奏なのに古いヴァージョンの楽譜を使っているらしい。 しかし、それ以上に特徴的なのがバスドラムの叩き方で、「ドンッ」とか「ドーン」とかでなく、「ドドドン」と装飾音を伴っている。 これは、他で聴いたことのない叩き方で、シャイーのアイデアかと思うが異様である。 全体として、この日のゲヴァントハウス管の出来が良くなく、ブラスのミスや弦の出損ないがあったりして、良い評価が出しにくい。 録音の悪いのもマイナスである。
総合評価: ★★クリアでノイズはない。 残響も適度であり、マーラーはこういう風に録って欲しいという録音。
演奏評:第1楽章冒頭速いなと思わせた瞬間にスッとテンポを落とし、以後自在にテンポを動かしていて、時にたっぷり引っ張るかと思えば、いつの間にか自然にテンポが変わっていたりと、実にしなやかな演奏である。テンポ設定には、いちいち説得力があり、それでいて随所にユニークなところが見られる。通してみると速めの演奏なのだが、あわただしい感じが全くなく、不満が残らない。音響的には分厚くはないが、適度な厚みはあり、個々の楽器はほぼ妥当な音色である。ただ、終楽章のミュートトランペットの音だけは安っぽくてキチャナイ。 この指揮者は、かなりの実力派と見た。 7番や9番も聞いてみたいところである。 星は3つあげたい。
総合評価: ★★★クリアで音質良く、残響も適度。 ただし、ブーンというハムのようなノイズがピアニシモでは聞こえる程度の音量でずっと入っている。
演奏評:極めて個性的かつ魅力的な演奏だと思う。 演奏時間を見れば判るように、遅めの演奏だが、テンポを相当揺らし、通常あまりやらないだろうというような所でテンポを落として引っ張る。 それが、きっちりはまっていて何とも魅力的である。 両端の楽章の出来が良くても、真ん中の3つの楽章が急ぎ足で上滑りになる演奏が時々あるが、この演奏ではきちっと演奏されている。 第1楽章は2003年のアダージョ単独演奏と同様の解釈で、演奏の精度が上がり、不満はほぼなくなっている。 第2楽章以後の3つの楽章では弦が非常に頑張ってしっかり音を出しており、ノリが良い。 全体にオケの出来は良いが、この楽章だけ一瞬アンサンブルが乱れかかるところがあり残念。 後半テンポダウンしてからの音色はすばらしい。 第2楽章から第3楽章にかけては、どうやらアタッカで演奏されているようであり、ユニーク。 第3楽章はゆっくり目のテンポで、物憂い感じは出さない。 これは、好みが分かれるところだが、この演奏の流れから行くと、納得。 第4楽章が非常に出来が良い。 最終楽章へのつなぎみたいな演奏もしばしばな楽章だが、この演奏では独立の音楽として聴いても成立するくらい聴かせどころたっぷりに仕上がっている。 最後に鳴るバスドラムはメゾピアノくらいに抑制されている。 ここで、アタッカではなく、どうやら休憩を入れたらしい。 録音のつなぎ目がはっきり聴き取れる。 最終楽章冒頭のバスドラムはメゾフォルテくらい。 ダーンという音ではなく、ダンーという感じ。 最終楽章はしっとりとした独特の雰囲気で、特に終曲は実に聴きごたえがある。 ノイズと第2楽章のアンサンブルの乱れは減点に価するレベルである。 将来、これを越える演奏が出てくる可能性も高い指揮者だと思う。 でも、ギーレンと互角だとも思う。 減点出来ない。
総合評価: ★★★非常にクリアで残響も理想的、ノイズもなくマーラーの交響曲の録音としては最高峰のクラス。
演奏評:演奏時間からすると少し遅めという程度で極端なところはない。 しかしテンポの揺すり方が絶妙である。 そして、きわめて美しい。 全曲を通じて耽美的と言っていい仕上がりとなっている。 これを録音した頃、ギーレンがこのクック補筆版を絶賛していたらしいが、うなずける。 曲に心底惚れ込んでいなくてはこの演奏は出来ないだろう。 ギーレンのマーラー中最高のものではなかろうか。 細かいところを一々解説するのが蛇足のような気がしてくるが、特に両端の楽章は白眉。 最終楽章のバスドラムはまさに弔砲の如き音であり楽章の変わり目は1発。 今のところ私はこの演奏に惚れ込んでしまっている。 これへの星3つは譲れない。
総合評価: ★★★非常にクリアで残響も理想的、ノイズもなく、しかも音が瑞々しい。 素晴らしい録音である。
演奏評:基本的に上記のものの延長線上にある演奏である。 明らかに演奏時間が延びているが、これは一長一短で、はっきりいって好みの問題かと思う。 当初、上記に比べて遅すぎるような気がしたが、慣れてくるとこれはこれで悪くない。 演奏の技術水準は非常に高く、ライブなのにミスはないし、音色も言うことなし。 ということで、評価の方も当初は星2つ半を考えていたが、結局3つあげたくなった。
総合評価: ★★★クリアで残響適度。 非常に潤いのある音にとれている。ノイズもない。
演奏評:上記hanssler盤の前年の演奏でオケも同じだが微妙に演奏上の違いはある。例えばテンポはおおむね翌年の演奏と同じ設定だが、引っ張り方に独特のところがある。 全体にギーレンの演奏としては異例に熱い。この曲を振るときのギーレンは非常に人間的になる。魅力が非常に強く、翌年の演奏と甲乙つけがたい名演である。 ★は三つ。
総合評価: ★★★モノラルでややテープヒスが多い。残響はそこそこで、鑑賞には十分堪えるレベルだが、後半テープの劣化のためか、音質が悪くなる。
演奏評:クック版第1稿による最初にして最後の演奏。 BBCの放送用の音源で、当初アルマの怒りを買い、封印されてしまったもの。 第1、第3、第5楽章は完成しているが、第2楽章は4つのフラグメントに、第4楽章は3つのフラグメントに分断されている。 クック自身のナレーションが分断された切れ目ごとに入っており、鑑賞の妨げになるので、これをすべてカットした上で、聴いてみた。 あくまでも資料的価値くらいの試演だろうと覚悟していたが、驚くほど完成度の高い演奏である。 第1楽章は速めだが、緩急のメリハリはあり、例の不協和音のところのトランペットも立派。 第2楽章は分断されているにも関わらず非常にいい出来であることが判る。 第3楽章は、割と速めで淡々と進む感じだが、終結部にむかって思いっきり速度を落とすという珍しいことをやっていて、これが非常に魅力的。 第4楽章は残念ながら欠落部が多いようだが、それでも最終楽章につながる部分はほぼ完成しており、例のバスドラムのところが2発でつながる。 最終楽章では、バスドラムはちゃんと布を掛けて消音している様な音である。 この楽章も出来は良い。 アルマが後にこの録音テープを聴いて和解したというが、うなずける。 録音に難があるのと、欠落がある未完成な版であることから星半分減点するが、これは10番ファンなら入手すべきものと思う。 名演である。
総合評価: ★★放送用の録音なのか、モノラルである。 上記に比べると、やや歪みっぽいが、ノイズは同程度。 残響もほどほどである。
演奏評:クック版第2稿の世界初演・・・ということは、世界初の補筆完成版の演奏である。 オケは違うが指揮者は同じだし、上記の延長線上の演奏かなと思ったら、だいぶ違いもある。 第1楽章冒頭の弦楽合奏を異様に長く引っ張る。 おそらく、この部分だけならいまだにこれより遅い演奏は無いんじゃないかと思う。 その後、わりと自在にテンポを動かしており、通しでみれば速めの演奏である。 第2楽章は見事。 第3楽章は淡々と進んだ末にコーダもさらりと終わって引っ張らない。 何か残念な感じがする。 第4楽章も良い演奏だとは思うが、一般に知られているクック版よりも打楽器が目立つ。 オーマンディーの演奏とこれは共通しており、第2稿の特徴なのかもしれない。 この楽章の最後のバスドラムの一打のあと、聴衆のざわめきが入り、あれ?アタッカで繋がないのかと思っていると、ざわついたままバスドラムの第二打が打たれて最終楽章に入る。 初演ならではの混乱らしい。 バスドラムは上記では「バスッ」とか「ドスッ」というような音だが、この演奏では消音はせず、「ダーン」とか「ドカーン」という感じの派手で開放的な音を採用している。また、最終楽章は後のバージョンに比べるとだいぶオーケストレーションに違いがあり、特にクライマックスの不協和音のあたりはかなり違った音がしている。 全体として、テンポは割と自在に動かし、時に叙情的で魅力的な演奏だと思う。 技術的な完成度はむしろ上記の方が上のところもあるが、世界初演でこのレベルにあるのは凄いと思う。 この指揮者は、今回初めて聴いたが、マーラーを振らせたらかなり巧い人だったのではないだろうか。 減点ポイントも本当はあるのだが、完成している分、上記より甘くして星2つ半差し上げたい。
総合評価: ★★☆クリアで低音がかぶりすぎない分、下記より解像度が高い。 CD−Rとしてはトップクラスの音。
演奏評:下記と同じオケ、同じホールだが3年前。 その分こなれてないかというと、そうでもない。細部でタイミングが幾分違うところはあるものの基本的に同解釈であるが、こっちの方がライブ故かノリが良い。 しかし、星の数が変わるほどの差ではない。
総合評価: ★★クリアではあるが、やや低音がかぶりぎみのホールトーン。 本当はもう少し残響が少ない方がマーラー向きだが、まずまず。 ノイズはなくいかにもDGGという音。
演奏評:音色は美しいが、上記ギーレンのものとは違って耽美的な所はなく、もっと素直。 全体にさっぱりしていて毒がない。 前半の3楽章は平凡とはいわないが、もう一つ物足りない。 第4楽章終盤の最終楽章へのつなぎのあたりはなかなか良い。 最終楽章はまずまず好演。 悪い演奏ではないのだが、ここが良いという決め手がない。
総合評価: ★★クリアで解像度は高く、残響も適度。 良い録音だが、かすかにシュルシュルいうノイズが入っている、ほとんど気にならない小さな音だが。
演奏評:上記の4年後、オケは違うが演奏時間はほとんど変わらない。 しかし、中身は驚くほど印象が違っている。 まず、全体に低弦が頑張っていて時にベルリンフィルを凌ぐかというほどであり、全体に音響が厚い。 速度は標準的になったり、遅くなったり、時に駆け足になったりと、自在に動かしながら、けして軽くならない。 かなりアゴギーグが強くなっている。第1楽章冒頭の弦楽合奏から上昇音形に向かうまでの間に、グッ、グッと速度を落とし、初手からやるなという感じを持たせる。 第2、第3楽章も鮮烈。 第4楽章もよくぞここまでという感じで揺さぶる。 極めて良い出来であり、同年のガッティ/フランス国立管の第4楽章と双璧。 最終楽章へのつなぎのリタルダンドが凄い。 つなぎのバスドラムは1発。 バスドラムはバーンという感じの響き。 最終楽章冒頭は、何か禍々しいほどに凄みがある。 極めて出来が良く最後までハイテンション。 突っ込みどころはある。 ホルンの音色がともするとけたたましくなりがちである。 しかし、この演奏も減点したくない。
総合評価: ★★★発売当時ワンポイント録音に近いと評判だったシリーズ。 確かに解像度は高いが、エンファシスのせいか、やや音が固い。 ノイズはなく、残響は適度。
演奏評:下記の約10年前の演奏。 解釈上、先駆けと言えるような部分が多々あるが、まだおとなしく、下記の演奏に比べると踏み込みが浅い感じ。 悪くはないが、下記を聴いてしまうと物足りない。
総合評価: ★★クリアでノイズもなく残響も適度。 会場騒音もかなり克明に拾っており、時にマエストロの歌う(うなる?)声がうるさい。 CD−Rとしてはトップクラスの好録音。
演奏評:第1楽章こそ、それほどでもないが、第2楽章以後は自在にテンポを動かしている。 かなり個性的だが説得力があり非常に魅力的。 特に第2楽章後半の揺さぶりは見事だし、第3楽章の遅さもアッパレ。 第4楽章のテンポの揺れ幅の大きさも凄い。 最終楽章とのつなぎ目のバスドラムは2発。 最終楽章もいい出来である。 全体に生き生きしていて熱い演奏。 ただし、ケルン放送響の限界か、たまにテンポの極端な揺れに追従しきれずにアンサンブルが乱れるところがある。 それでも星三つあげたくなるが、自重しておく。
総合評価: ★★☆非常にクリアで残響も理想的。 会場内の騒音を克明に拾っており、ステージ上でものを落としたらしい音がぎょっとするほど大音量で入っていたりする。 やはりマエストロのうなり声を拾っているが、上記のものよりまし。
演奏評:上記の8年後の演奏だが解釈は似ている。 やはり、自在にテンポを動かし、熱い演奏だが、マエストロのタクトが分かりにくいのか、第1楽章で弦が出るタイミングを掴めずにフライングするなど、アンサンブルの乱れが何カ所かある。 この分は減点せざるを得ないが、個々の楽器の音色も良く名演である。
総合評価: ★★☆極めてクリアであり、残響も程よい。 ただ、マエストロの唸り声を拾いすぎるのが欠点であり、結構気になる。
演奏評:冒頭から弦がいい音を出している。第1楽章は、速めではあるが、その中で実に細かくテンポを揺さぶる。 それが実に見事で魅力的。 第2楽章ではそれがさらに大胆になり、後半は特に素晴らしい。第3楽章は短い分、テンポは動かさないが、終わり方が絶妙。第4楽章は一番おとなしくしているようだが、それでも凡庸ではなく、ユニークで面白い試みはある。 最終楽章のバスドラムは「ダーン」と鳴っているが、衝撃音は殺してある。 この楽章もテンポ的な揺さぶりが魅力的。 総じて、弦の動きがしなやかで音色もよく、都響からこんな音が出せるんだと感心した。 ブラスがやや弱いと感じる部分はあるが、両端楽章のクライマックスのトランペットは完璧に吹ききっていて見事。 演奏内容からは星3つでいいと思うが、何しろマエストロの声がうるさいので、星半分減点しようかと、迷いながらコーダに突入。 これは・・・ 最後のためというか、引っ張り方が空前絶後である。 マイッタ! 星3つ!
総合評価: ★★★非常に音がきれいであり残響適度、解像度も良い。ステージ上の椅子のきしむ音らしいノイズがやや目立つのが難といえば難。
演奏評:第1楽章冒頭から引っぱり気味で、その後も結構テンポを大胆に動かす。弦の音がきれいだし、管もまずまず。全体に、音に厚みがあって豊か。第2楽章は冒頭キビキビしたテンポで始めながら再三大胆なテンポ変更を行い、これが決まる。それでいて音色は美しく優雅である。ラストの部分で思いっきり引っ張った後さっと駆け抜けて終わる。見事である。第3楽章は淡々としながらきれいで物憂さはない。薄口な演奏かと思っていると最後で盛り上げる。第4楽章冒頭は標準的なテンポで手堅い印象だが、途中からテンポを落とし自在に遅めの中で動かす。やはりすばらしく優雅である。そしてパッショネートである。最終楽章に向かってテンポは更に遅くなり、ちょっと記憶にないくらい遅めの演奏になるが、これがなかなか良い。最終楽章冒頭、バスドラムは連打に近い2発。 ダーンというピッチの高い音で、以後叩くたびに微妙に響きが変わる。テンポの管理が見事である。不協和音後のトランペットは極めてパワフル。 全体を通してユニークだが本質の分かった非常に良い演奏である。オケの水準も非常に高く、日本のオケでこんな10番が聴けるなんて感動である。 星は3つ差し上げたい。
総合評価: ★★★この時代の録音としてはまあまあか。 残響はほどほど。 ノイズはなく、まずまず。
演奏評:これはちょっと発売の経緯が変わっていて、まずアダージョのみが録音発売され、2年くらい後に第2楽章以後を追加録音して、全曲版として再度発売されたというもの。 第1楽章は、悪くはないが割と平凡である。 しかし、第2楽章以後は出来が良く、だいぶノリが違う感じ。 最終楽章に向かう部分のバスドラムは2発。 本当に大砲のような音である。 最終楽章が独特であり、とりわけ後半の不協和音強奏以後の終曲に向かう部分は極めて遅く、しかも美しい。 この部分は変な誇張感がなく自然であり、むしろこのスピードの演奏が他にないのが不思議な感じがする。 最終楽章だけなら星3つ級だが、全体としてみると2つ半か。
総合評価: ★★☆かすかにキーンというノイズがあるが、これは気にならないレベル。 残響が異様に少なく極めてデッド。 問題は録音の際リミッターをかけていたらしいことで、通常は問題ないが、フォルテシモでバスドラムを叩いた際にサチルべきところリミッターが働いて音量が落ちる。 これは、結構気になる。
演奏評:You Tubeで見つけた音源で、当然画像付き。 本来、ここで取り上げるべきか問題だが、私はこういうところは節操がない。 指揮者はフィンランドの若手。 マレーシア・フィルは1997年創立のオケだが、世界中から楽員を集めており、映像を説明なしに見たらヨーロッパのオケと勘違いしそう。 この指揮者は初めて聴いたが、解釈がなかなかユニークでセンスが良い。 オケもなかなかうまい。 ライブゆえの傷はあるが、マーラーを演奏する資格は十分ある水準。特に両端の楽章の出来というか、解釈が素晴らしい。 録音に問題はあるが減点しない。ライブゆえの演奏の傷にも目を瞑る。 星2つ半。
総合評価: ★★☆ステレオであり、ノイズが目立つ訳ではないが、今ひとつ抜けの悪い、歪みっぽさがある音。 残響はほどほどであり、聴きにくいというほど悪くはない。
演奏評:このレーベルは活動休止しており、極めて入手困難な音源となってしまった。 マルティノンはマーラー指揮者とは言えず、1番のDVD以外には10番しか録音が残っていないようである。 この演奏以外に66年にシカゴ響との演奏があるようだが入手できていない。 さて、このハーグ レジデンス管との演奏だが、全体に速めで、わりと直球勝負というか、変な誇張や引っぱりがない素直な演奏といえる。 このタイプの演奏としては、物足りなさはない方だし、そこそこの好演ではある。 録音がイマイチなのでその分を本来なら減点すべきだが、まあおまけして星2つ。
総合評価: ★★上記より9年前の演奏だが、こっちの方が録音が良い。 クリアでノイズは少なく音が瑞々しい。
演奏評:半ば入手をあきらめていたものが手に入った。 上記と比べても更に速い演奏。 しかし、オケの差もあるのだろうが、こっちはなかなかの名演である。 第1楽章こそ速いなあという以外、特徴がない感じだったが、第2楽章が凄い。 速めでこれだけ引きつけられるのは珍しい。 非常にエネルギーに満ちた演奏である。 以下、第3、第4と非常に個性的だが活力に満ちた演奏が続く。 そして、例のバスドラムだが、ダーンという音。 遠くの砲声ではなく、至近距離の発射音である。 この楽章も速いが、活力に満ち魅力的。 全体としてみて、マーラーの後期交響曲としては、異端の演奏だと思うが、何か引きつけられるものが強く、こう言うのもありかなと納得してしまった。 シカゴ響100周年記念CD集の1枚で、全12枚組なので、入手は高く付くが、手に入れて後悔しない水準にはある。
総合評価: ★★☆かすかだがハムが乗っている。 テープヒスもあるし、音がややキン付く。 しかし鑑賞には堪えるレヴェル。
演奏評:上記の翌年の演奏で同じメンバー。 解釈も良く似ているが、全体に少し遅くなっている。 特に、終わりの2楽章はこちらの方が陰影が深いか。 これも捨てがたい名演であり、録音の悪い分の減点はしない事にする。
総合評価: ★★☆かすかにハムのようなノイズがはいるものの、比較的クリアで見晴らしの良い音。 当時の録音としてはまずまずである。
演奏評:全体に遅いが、速度的メリハリはかなり強く、だれる感じはない。 このクック補筆版の初演者だから、楽譜に忠実なのかと思ったらとんでもなく、自在にモリス流を通している感じである。 9番ではいささかやり過ぎの感じがあったが、この10番では非常に魅力的に仕上がっている。 第4楽章から最終楽章への移行部のバスドラムは2発ではなく1発であり、この頃の演奏としては極めて異例。 このバスドラムは、太鼓というより、分厚い木の板を思いっきり叩いているようなガンッという固い音で緊迫感があって良い。 終曲は思いっきりゆっくりだが静謐であり、不思議に9番のような味わいがある。 異端の演奏だとは思うが星2つ半。
総合評価: ★★☆クリアで残響は少なめ。 マーラー録音としては優秀
演奏評:上手いし、音は綺麗である。 あまり、テンポやダイナミクスを動かさないタイプ。実直な演奏で個性は少ない。 中で第4楽章は非常にいいと思う。 しかし全体としてみると、もう少し熱さが欲しい。 星は2つ。
総合評価: ★★クリアで解像度は良い。 残響も程よく優秀な録音。
演奏評:全体に音はきれいで見晴らしが良いが、何となく覇気がないというか、淡々としている。 細部にわたってきれいなのだが、熱いものがない。 優等生的とは言わないが、個性的なところがあまりなく、無難。 中で第4楽章だけは、パッションを感じさせるものがあり秀逸。 星は2つ。
総合評価: ★★もとがアナログなのでダイナミックレンジが狭く、ピアニシモがない。 当時としてはまあまあのレベルの録音と思うが、クリアさ、解像度といった点では今ひとつ。
演奏評:第1楽章は、特に個性的な所はない普通の演奏。 この時点では、とりあえず完成版を出してみたというレベルの演奏かなと思った。 しかし、第2楽章以後、極めてユニークな演奏に変貌する。 第2楽章は速めで妙に元気である。 速めだが音は厚めで、いわゆる「フィラデルフィアサウンド」。 随所で聞き慣れない音色がする。 第3楽章は、標準ないしやや遅めのテンポだが、あの独特の物憂い感じがあまりしない。 そして、第4楽章は、トンデモナイ演奏となっている。 打楽器が異常に強調されており極めて元気。 ショスタコーヴィチだってここまではやらないよという感じになっている。 小太鼓のトレモロのフォルテシモなんて滅多に聴けるもんじゃないと思う。 まるでハリウッドのミュージカル音楽みたいな響きが随所に聴かれる。 ここまで、マーラーの曲らしく演奏するということを気にかけないのも見事である。 バスドラムの音はまずまず。 最終楽章前半は結構グロテスク。 後半、不協和音の強奏のあとコーダまでの部分は非常に感情的で、まさにハリウッド映画の大団円のよう。 マーラーファンの立場からすれば、噴飯ものの怪演だが、私は結構楽しく聴いてしまった。 星はまあ、2つかなぁ。
総合評価: ★★解像度まずまずで、残響もまずまず。 音質もまずまずだが、ホワイトノイズがわりと目立つ。 減点対象とするほどではないが。
演奏評:ペトレンコはこのCDを聴くまで知らなかったが、凄い。 最近の若手って、さらっと、こういう凄いマーラーを聴かせるから驚く。 全体にテンポをこまめに動かしており、それが自然でしなやかである。 あの第3楽章でテンポをここまで大きく動かしているのは、おそらく史上初だと思うが、これが見事に決まっている。 オケは大健闘している。 トランペットもえらいがんばっている。 弦も良い音だし、木管もすばらしい。 ライブ故の小さな事故はあるが、敢えて減点したくない。 甘いのは承知の上で星3つ。
総合評価: ★★★ノイズはほとんどなく、歪み感もないが、やや残響が強く、風呂場になる寸前。 このため、ときに低音がかぶる。
演奏評:私が初めて10番の全曲版として手に入れ、この曲にはまる原因となったCDだが、久しぶりに聞き直してみると、やっぱり名演である。 このころのラトルは凄かった。 全体に熱く厚い。 ボーンマス響というのは、時々とんでもない名演奏を残しているが、これもその1つか。 弦が良い音だし管も破綻なく立派。 テンポは平均的なところで、頻繁に揺さぶる訳ではないが、ここ一番での振りが素晴らしい。 彼流というところが何とも魅力がある。 最終楽章への移行部はバスドラム1発であり、当時は2発が普通だったはずで、これは彼自身の考えによる変更だろう。 これは余裕で星2つ半。
総合評価: ★★☆ノイズはなく、クリア。 残響も理想的で定位も良くマーラー用として理想的な好録音。会場騒音を驚くほど生々しく拾っている。
演奏評:オケは違うが、上記より12年後の演奏だけあって、さらにテンポ的揺さぶりは激しく、ライブだけにさらに熱い演奏となっている。 客がこの曲に不慣れなのか第1楽章終了後と第2楽章終了後に拍手が入っている。 非常に良い演奏だが、残念ながらブラスのミスが何カ所かあって、上記より下の評価となるがそれでも甘めにして星2つ半。
総合評価: ★★☆ノイズなく解像度良好。 残響はほどほどであり、好録音。
演奏評:最初の録音から20年近くたっているが、演奏時間をみると、第1楽章がほんの少し長くなっただけで、ほとんど変わらない。 しかし、聴いてみると印象はだいぶ違う。 テンポの揺さぶりはより大きく変幻自在という感じだが、上記2つの演奏で感じるような熱さはない。 けれども、第4、第5楽章の出来はぐっと良くなっており、最終楽章だけなら文句なしの星3つ級。 総合でどうするか迷うところだが、あえて甘くしないことにする。
総合評価: ★★☆クリアでノイズなし。 残響も程よく、マーラーの曲の録音としては理想的。
演奏評:上記より更に8年後。 流石にオケとの関係が長くなり阿吽の呼吸も伝わるようになったのか、テンポの揺さぶりは更に自在に大胆になり、オケもほぼ完璧にその要求に応えきれている。 非常に美しく、それでいて熱い。 ライブ故の小さな傷はあるが、あえて減点するほどのものではない。 全曲版としての水準の高さではギーレンと双璧。 やはり、この曲を愛している人の演奏だと思う。
総合評価: ★★★全体にホワイトノイズがそれなりに大きな音で入っている。 残機がやや多く、解像度は今一つだが、音色は非常に良い。美音である。
演奏評:全曲通してやや速め。 前半の3楽章は、あまり揺さぶりはなく、ストレートな演奏だが、第4楽章は独特で最終楽章も面白い。 第1楽章の最後の弦のピチカートが何故か省かれていたり、第3楽章の終わりのところのハープのグリッサンドが異様に遅かったりと前半部分にも個性的なところがないわけではないが、最終楽章が聞き所。 冒頭のbass drumがフォルテではない。 おまけに冒頭がエラく遅く、一々立ち止まりながら進む。 その後は一転して速めになる。 トランペットがちょっと力不足なところはあるが、総じて各楽器ともうまい。 名演の部類には入ると思う。 星は2つ半。
総合評価: ★★☆当時の水準としても、優秀というほどではない。 ややクリアさに欠けるし、ダイナミックレンジも広くはない。 残響はほどほどでノイズはないが、中低域がやや薄いか。
演奏評:クック補筆の全曲版としては、初期の方のもの。 全体にアゴギーグは強くなく、素直。 従って特徴がなくイマイチな感じ。 中で第4楽章だけ妙にのりが良く熱い。 第4楽章末のバスドラム1発と最終楽章冒頭の1発が録音の継ぎ目で妙に開いてしまうのが残念。 悪い演奏ではないが、やや凡庸。
総合評価: ★★このレーベルの録音としてはかなり良い方であり、明らかに上記を上回る。 まずまずというところ。
演奏評:上記の5年後というより、客演でオケが違うということのせいかもしれないが、かなり良い。 全体に、速度的にメリハリがついて生き生きしている。 しかし、ソロ楽器の音色がイマイチ物足りない。 特にホルンの音色がずっと「違うだろ」というほど間の抜けた音。 クック版と言っても上記のものとは版が違ってより新しいものを使っているらしい。このため、第4楽章末のバスドラム強打が省かれている。 つまり、第4楽章が終わるとバスドラムの強打1発で最終楽章が始まる。 従って、バスドラムは合計11発強打される。 昔、アナログディスク時代には、この曲は演奏時間の都合上、第4楽章と最終楽章が2枚組LPの2枚目でA面とB面に泣き別れとなっていた。 このため第4楽章末のバスドラム強打が終わるとすぐに飛んでいってレコードを裏返し、最終楽章冒頭のバスドラム強打から再開というのが、自然な流れとなっていたが、CDで聴く場合、あそこでバスドラム強打が2回つづくというのは何となく不自然な感じがしていた。 やはり1発の方がすっきりしていて良いと思う。 だからというわけではないが、この演奏それなりに良いので星2つ半あげたい感じではある。 しかし、いかにもホルンの音色が悪いため、この部分を減点する。
総合評価: ★★解像度良く、見晴らしの良い録音。 個々の楽器の分離良く、残響も適度。 優秀な録音と言える。
演奏評:割と標準的な演奏と思うが、音が瑞々しいのが特徴か。 第1楽章は特に出来が良い。 しかし、聴いていて何か違和感を感じる。 第2楽章以後の部分は、マーラーの後期交響曲とは何か異質なものを聴いている感じがするのである。 初期交響曲にむしろ近い、妙に清々しさのある音楽が聞こえてくる。 久しぶりに10番を聴いているためかもしれないが、クック版の弱点というか、オーケストレーションにおいて、所詮マーラー本人にかなわない部分が楽譜に誠実な演奏によって図らずも露呈してしまったのか。 以前、別の指揮者の演奏を聴いた時にはあまり感じなかったように思うのだが。 悪い演奏だとは思わないが、何かずれを感じる。 星は2つとしておく。
総合評価: ★★解像度良く、残響も適度。 音が非常に良く魅力的。
演奏評:上記の15年後の演奏。 演奏時間が両端の楽章を中心に少しずつ伸びているが、実際にテンポを揺さぶるようになり、かなりこくが出てきている。 オケの技術水準も高く、それでいて熱い。 各楽器の音色が実に良い。 適度に悪魔的な音も出ており、特に第4、第5楽章の出来は素晴らしい。 これは星2つ半差し上げようと思う。
総合評価: ★★☆ノイズはなく、解像度もそこそこ。 残響も適度でありまずまずの水準。
演奏評:オールソンはコロラドのマーラーフェスティバルで他の曲も一通り振っているようであり、マーラー指揮者と呼ばれる資格はある人らしいが、10番に関してはフィーラー版にこだわっているようである。 フィーラー版、カーペンター版とクック版は同時進行していて、着手が一番早かったのに完成が遅れたのがこの版らしいが、これが一番オーケストレーションが地味だと言われている。 しかし、クック版と聴き比べてみると、こっちの方が打楽器の使い方は、少々やかましく、ショスタコーヴィチっぽいところがある。 全体に、よけいな創作を加えない傾向はクック版に近く、好感が持てるが、それでも第1楽章など、幾分手が加わっているようである。 クック版と最も違いを感じるのは第4楽章から後で、ここが非常に興味深い。 これは、フィーラー版の特徴なのか、それともオールソンの考えなのか分からないが、楽章の継ぎ目のバスドラムが「ドーン」(休止)「ドーン」という形ではなく、「ダンッ、ダンッ」と連打に近い短い間隔で打ち鳴らされ、それに続く最終楽章冒頭の部分が非常に速いテンポなのである。 つまり、この部分が明らかに葬送の音楽ではないのである。 そこで、少し考え込んでしまったのだが、マーラー自身が「このバスドラムの意味は君だけが知っている」と楽譜に書き込んだことを受けて、アルマがあれは消防士の葬式で撃たれた弔砲の音だと語ったことに、そもそも、この部分が葬送の音楽と解される理由がある。 しかし、アルマが自分にとって都合の悪いことに関しては真実を語っていないらしいことからして、もし真実が別のところにあれば、などと考え始めると、このバスドラムは弔砲ではないことになり、するとこの部分は葬送の音楽ではなくなり、バスドラムの音も別の意味合いを持ってくる。 例えば銃声とか、例えばドアを叩く音とか。 マーラーの書いている言葉をそのまま普通に聴いたなら、こっちの方がリアルな感じがする。 なにも消防士の弔いの時の大砲を自分の最後の交響曲に持ち込む理由もないように思うし。 で、このバスドラムが銃声、あるいはドアを叩く音だとすると、その後に続くのは葬式ではなくて、もっと生々しい愛憎のドラマでありそうな気がする。 だとすれば、このフィーラー版の演奏のような形の方が正しいのではないか・・・ 真実は闇の中である。 しかし、この演奏は妙に説得力をもって私に迫ってきてしまった。 ただし、好き嫌いの問題となれば、クック版の方が好きだし、音楽としての完成度もマーラーの音楽らしさから言っても勝ち負けははっきりしている。 とは言え、評価は多いに悩む。 で、星は2つながら、こんな風にしてみた。
総合評価: ★★ノイズはないが、あまり透明度は高くなく、そのわりには会場騒音をよく拾っている。 聴き辛いということはない。
演奏評:これは、この版の世界初演盤らしい。 指揮者は同じだが、だいぶ上記とは印象が違う。 オーケストラのレベルが上記よりだいぶ落ちるし、音が全体に下品である。 ブラスが妙に吠えて軍楽隊のよう。 弦も時々アンサンブルに乱れがある。 解釈上も上記ほど練れていない。 例えば最終楽章に向かう部分のバスドラムの間隔は少し長く、冒頭部分のテンポも、もう少し遅い。 手に入れやすいCDでもないし、フィーラー版を聴くならナクソス盤の方だろう。
総合評価: ★★クリアで残響もほどほど。 なかなか良い録音である。
演奏評:マゼッティという人はフィーラー版の完成を手伝った後、独自に自分の版を起こしたらしいが、クック版のないところから出発したフィーラー版とは違い、クック版の影響はあると思う。 クック版がある以上それとの差別化を図らなければ存在意義がなくなるとばかり、オーケストレーションを厚くしようとする傾向がある。 それでも、カーペンター版ほどの逸脱はなく、第3楽章まではクック版のまずい演奏よりは上をいくと思う。 しかし、第4楽章以後は、マーラーの音色から離れてしまう部分が多くなる。 特に最終楽章冒頭は独特で、非常にグロテスクであり、葬送の音楽ではないようだ。 第4楽章と最終楽章のつなぎの部分のバスドラムは2発。 この版の演奏としては、良い演奏なのではないかと思うが、マーラーとは別の音楽のように思う。
総合評価: ★★上記より5年後の録音だが、こっちの方が音は悪い。 何か音ががさつく感じのする部分がある。
演奏評:マゼッティ版でもより新しいヴァージョンを使っているらしいが、上記よりもむしろおとなしく、よりクック版に近づいている感じがする。 しかし、これは演奏のせいかもしれない。 この演奏では最終楽章へのつなぎのバスドラムは1発である。 演奏内容として上記に勝る部分は少ないが、最終楽章の不協和音の再登場のシーンのプラスだけは、明らかにこちらの方がうまく、魅力的である。
総合評価: ★★今ひとつクリアさには欠ける。 ややデッドだが、残響過多よりはずっといい。
演奏評:このカーペンター版が補筆作業を一番早くに始めたということだが、それくらいしか取り柄がない。 マーラーらしさを出来るだけ出そうという努力をする気が全くなかったか、もしその気があったのなら、よほど才能がなかったということか。 ひとことで言って、ひどい! 音響構造がマーラーとはほど遠く、安物のハリウッド映画の伴奏音楽のよう。 比較的完成度が高かったはずの第1楽章や第3楽章もよけいな音符を山ほど書き加えて陳腐な仕上がりに変更している。 ファーベルマンの演奏は、わりと楽譜に忠実なのではあるまいか、マーラーらしくなさを強調するかのような演奏である。 ともかく、全曲を通じてうるさい。 唯一、聴く意味があるとすれば、クック版と比較することで、マーラーの残した原稿の基本構造がより理解しやすくなることくらいか。(例えば第4楽章と最終楽章のつなぎ目のバスドラムが2発であることなど。) しかし、マーラーファンなら手を出さないことをお勧めする。
総合評価: ★☆クリアで残響も程よくノイズもない。 まずまずの好録音。
演奏評:同じ版でありながら、ファーベルマンの演奏よりはだいぶ長くなっている。 これは、リットンがマーラーらしくしようと悪戦苦闘した結果ではないかと思うが、結果は悲惨である。 リットンは当初アダージョだけ取り上げようと考えていて、カーペンターの親族と出会った縁でこの版を取り上げることになったらしいが、不幸な出会いだと思う。 彼のマーラー全集が途中で頓挫した形になっているのは、こんなものを取り上げてしまった祟りではと思いたくなる。 ともあれ、けして聴きやすい代物ではないものの、ファーベルマンのに比べればだいぶましになっており、その努力に免じて大甘ながら星2つは差し上げておく。
総合評価: ★★これはDVDなので、私の再生環境では音質評価はしにくいが、まずまずといったところではないかと思う。
演奏評:この指揮者の演奏を聴くのは大地の詩の中国語版に続いて2回目だが、なんでいつも際物なのかねぇと当初思いながら聴き始めた。 ところが、この噴飯ものと私の忌み嫌うヴァージョンが見事にマーラーになっている。 この指揮者の力量はたいしたものである。 オケもなかなか水準が高い。 全体に、テンポを縦横に動かし、それが見事につぼにはまるのが特徴で、アダージョではその特質が見事に分かる。 この版で私が特にひどいと思っている第4楽章でも、聴いているのがつらくはならなかった。 そして、特筆すべきは最終楽章で、バスドラムが弱音で叩かれるのである。 従来の演奏とは音楽の構造を根底から変えた様な演奏となっており、それでいて見事にマーラー、しかも後期交響曲になっている。 んー、やりやがったな、こいつぅ という感じ。 おまけのトラックに入っているインタビューで指揮者が語っているが、「10番の完成版はどれも何かが欠けている。 カーペンター版がマーラーの意図に一番近いと思うが、ブラスはやり過ぎだし、後期交響曲ではこんなに打楽器は強調されないので、意図的に抑えた」という。 実に良く判っている。 この演奏家の7番や9番をぜひ聴いてみたい。 まさか、カーペンター版で感激するとは思わなかった。 これは★2つ半差し上げる。
総合評価: ★★☆現代の録音として標準という所か。 解像度そこそこで歪み感なく、ノイズもなし。 残響もまずまず。
演奏評:あえてカーペンター版かいという感じがする。 ファーベルマンやリットンよりはまともで、鑑賞に堪えるレベルにはまとめているが、マーラーとは異質な音楽である。 水藍とは違い、カーペンター版のらしくなさを殺そうとする意図が見えない。 端的に言って打楽器が下品でうるさい。 随所で美音を聞かせにかかるが、明らかに版の選択を誤っている。
総合評価: ★★クリアでノイズなく残響も適度。好録音。
演奏評:クック版以外のもののなかでは、この版が一番出来が良いように思う。 このCDのライナーノートには金子健志氏の詳細な解説がついておりこれを読むためだけにでも手に入れる価値はある。 この版はクック版を意識しているのは明らかだが、氏によると、マーラー流のオーケストレーションに近づけるべき工夫が、なるべく原稿をいじらない方針のクック版より進んでいるとのことである。 しかし、残念ながら理屈ではそうでも出てきた音色がマーラーっぽくないため努力が報われない点で、クック版を超えない。 オケの厚みを出すために打楽器を追加する点では、クック版以外の他の版で見られるのと同様の傾向があるが、やはり異質な感じがする。 ティンバニーのトレモロや小太鼓の使い方は、明らかにマーラーのやり方とは違うように思う。 それでも第3楽章までは、クック版と違いを見せながらも、それほど遜色のない出来である。 しかし、第4楽章はだいぶ派手になっている分、ずれも大きいように思われ、最終楽章では、時にショスタコーヴィチの様な音色が出てしまっている。 最終楽章とのつなぎ目のバスドラムは2発だが、この間隔は短く、フィーラー版に近い。 この演奏自体は、割といい出来なのではないかと思う。 しかし、星は2つまでとしたい。
総合評価: ★★おおいに問題のある録音である。 第1楽章とそれ以後の4つとが明らかに違う。 おそらく、第1楽章だけ何らかのトラブルで録音に失敗し、どこかから同じ演奏の別録音をもってきたのだと思うが、音はこもっていてモノラル。 おそらくラジオから流れている音をマイクで録音し直したのではないかというような音である。 第2楽章以後は一転してクリアかつデッドな私好みの好解像度録音。
演奏評:おそらく、この版の初演を録音したものであり、上記のものとは細かな点での違いがいろいろある。 しかし、録音の問題さえなければ、こっちの方が私は好きである。 また、演奏のノリが非常に良いのもこのCDの特徴。 第2楽章で感極まった観客が思わず拍手、おばさんの「ブラビー」という叫び声まで入っている。 第1楽章の録音状態がこんなでなかったらとは思うが、それでも星2つは差し上げる。
総合評価: ★★全体にホワイトノイズがかなり聞こえる。 解像度や残響など音は本質的には良いが、第3楽章で音が10数秒間途切れるという録音上の大事故が起こっている。
演奏評:EXTONの録音の2日前、同じメンバーによるコンサートライブだから、似た演奏かと思ったら、驚くほど印象が違う。 この演奏ではかなりクック版を離れ、カーペンター版に近い問題を抱え込んでいる。 音を厚くしようとしすぎる傾向に加え、音色がマーラーではなく後の作曲家、例えばアンナ・パブロワの曲のような響きになっている。20世紀後半以後の映画音楽でよく耳にするような響きである。やはり、第4、第5 楽章の違和感がひどい。星は2つがやっとのところだが、録音上の事故を重く見て減点する。 聴くならEXTONのを聴くべし。
総合評価: ★☆クリアでノイズもなく残響も適度。 良い録音である。
演奏評:オケはかなり良いと思う。 各ソロ楽器も破綻なくうまい。 アシュケナージの解釈は手堅い線だと思うが、敢えてこの版を選ぶ理由が分からない。 版の特徴として打楽器の使い方がマーラーとは違い、うるさい。
総合評価: ★★ノイズもなく、まずまずの解像度。 残響も適度であり聴きやすい。
演奏評:フィーラー版やカーペンター版と違って、明らかにクック版を念頭に置いていると思われる。 例えば、最終楽章冒頭部分の低音旋律をチューバで演奏するのはクック版以外ではこの版くらいか。 クック版のオーケストレーションよりも厚くするのを意識しているようだが、マーラーに出来るだけ似せてという気持ちが感じられないのはカーペンター版と同じ。 違いはカーペンターよりバルシャイの方が音楽的センスが上ということか。 こっちの方が聴きやすいのは確かである。(でもうるさい。) 第3楽章までは、それほど無茶はやってない感じだが、マーラー自身のオーケストレーションが残っていない第4楽章以後はかなり、「バルシャイさん、好きなようにやったね?」という感じ。 第4と最終の間のバスドラムは2発。 ただ、この版の特徴として、あちこちで旋律の一部が変更されている。 この意図は全くもって理解しがたい。 全体を通して聴いた感想だが、第1楽章はなかなか良いが、その後はどうもなーと。 つまり、演奏家バルシャイは素晴らしいが、補筆者バルシャイは何かイマイチなのである。 バルシャイ指揮のクック版があったらかなり良さそうなのだが。
総合評価: ★★ノイズはない。残響適度で解像度もまずまず。
演奏評:2016年4月現在で入手した3つバルシャイ版の中では最良のものだろう。しかし、ボックスセットの1枚で入手性はかなり悪い。 アドバンテージはオケがうまいこと。 特に弦の音が素晴らしいし、ライブなのにミスがほとんどない。 ただ、やはり不必要に騒がしいところが耳につく。星はちょっと厳しめに2つ。
総合評価: ★★クリアでノイズもなく残響も適度。 良い録音である。
演奏評:ガムゾウという若手と思われる指揮者が自ら既存の版を全く参考にせずに作り上げた完成版らしい。 しかし、どうもクック版と違うことをやろうとしている感じが強い。 これは版の問題というより演奏の問題のように思うが、全曲を通して異様に激しくテンポを動かしており、これだけで史上最も変な演奏と言える。大型打楽器はフォルテシモという使い方しか知らないのかと言いたくなる。ゴングの余韻がここまではっきり唸っているマーラーは他に記憶がない。 ご本人はマーラーを再現しようとしているらしいが、余程勉強不足か才能がないとしか言いようがない。 間違いなくマーラーの旋律であるものをあえていじったり、およそマーラーとは異質な音響が響いたり、これに比べたらカーペンター版が極めて優秀に聞こえる。 まともなマーラーファンなら聞いたら怒るか笑うだろう。 ゲテモノ好き以外の人には勧められない。
総合評価: ★クリアでノイズなく残響も適度。音は素晴らしく良い。
演奏評:全曲版を室内管弦楽団でやるという意気込みだけは買えるが、それ以上のものがあまりない。そもそも編曲者のセンスがかなり悪いと思う。大管弦楽のために企画された曲を、あえて小編成でやることの意味を考えたら、ここまで打楽器が目立つのは如何なものか。また、弦が結構頑張って良い音を出せるのにわざわざピアノを多用してつまらなくすることはないと思う。かすかに光る部分がないではないが、全曲通じてうるさ過ぎるし、品のない部分が多い。また、旋律に改変のある部分も耳に付く。マーラーから離れたオリジナルを感じさせる部分がことごとく陳腐である。音は非常に良いので、星半分オマケして1つ半。
総合評価: ★☆クリアでノイズなく残響も適度。好録音である。
演奏評:録音は上記のものより前だが、発売はだいぶ遅くなっている。当然、同編曲なので、上記のものと同じ問題はある。楽器編成の異常性ゆえうるさい。しかし、上記の演奏よりは、テンポの振り方などに幾分見るべきところはある。これは、聞くに耐えないほどではない。星は2つ差し上げる。
総合評価: ★★マイクの位置がピアノに近すぎるため、部屋の残響ではなくピアノの鏡板の響きをそのまま拾うタイプの録音。 このやり方だと、ppからmpくらいの音は実にきれいにとれるがフォルテでは混濁して分解能が落ちるのが欠点。
演奏評:まず、スティーブンソンによる第1楽章のみのピアノ独奏用編曲版があって、それにホワイトがクック版をもとに残りの第2〜最終楽章のピアノ独奏用編曲版を補筆完成したという、ややこしい経緯で出来上がったもの。 まあ、ゲテモノ、キワモノの類いには違いない。 しかし、出来はなかなか良く、特にスティーブンソンによるアダージョは華麗なまでに装飾音を駆使し、見事にオーケストラの音色を模倣している。 ただ、これにはピアニストに相当の技量を要求し、正直なところ、ホワイトには少々荷が重いようである。 これに比べれば、ホワイト自身の手になる第2楽章以後は、自分が弾けないような無茶はしない訳で、危なっかしさは減る代わりに、音が薄くなる。 クック版の欠点をそのまま移したかのごとくである。 中で、最終楽章の出来は割と良く、バスドラムの表現はうまいと思う。 通しで聴いて感じるのは編曲者ホワイトに比べて演奏家ホワイトの方がだいぶ落ちるなあということ。 しかし、試みとしては結構良いセンを行ってると思う。 これを、バレンボイム、エッシェンバッハ、あるいはアシュケナージあたりが弾いたら結構面白いんじゃなかろうか。
総合評価: ★★