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入門用・偽オリジナル・手配線:人柱DACの製作

 ある方から初心者にお勧めのDACを教えて欲しいと依頼されたのですが、あまり適当なものを思いつきませんでした。 以前は幾つかあったように思いますが、現在入手可能なキットとしては、藤原さんのサイトで頒布中のものくらいしか思いつかず、あれは中級者用とご本人がおっしゃるとおり、半田付けにそれなりの熟練を要します。 で、初心者でもいじれるくらい簡単なDAC作りをやってみて、その製作記のページを作ったら助かる人がいるのではないかなと思いました。 現行品のDACチップはTSSOPとか、かなり小さくて半田付けが難しいのが多いので、チップは入手可能な範囲で使いやすいものを選び、ユニバーサル基板を使用して手配線で作るというコンセプトでやってみようと思います。 ただし、私のようなド素人のやることですから、間違いも多いと思いますので、真似する方はあくまでも自己責任でお願いします。 また、とんでもない間違いがあって見ちゃおれんと言う場合、オーディオ関連掲示板の方でご指摘願えれば幸いです。

  追加:prostさんからご提案頂き、DAI出力のI2Sフォーマットのときの出力のタイムチャートを作ってみました。

  追加その2:jinsonさんから、LCフィルタの定数についてアドバイスを頂きここを変更しました。

  構想段階のとき、ブログの方で戯れに人柱DACと呼んでいたら、その呼び名の方が通りが良くなったようで、タイトルを訂正します。

はじめに

 
 DAコンバーターというものが、どういう事をやっているのかまるで判らないままに工作だけやるというのもなんですから、大雑把に今回作ろうとしているものの概略について説明してみたいと思います。 最近はSACDとかコンピューターオーディオとか、デジタルオーディオにもいろんな規格があって、それに片っ端から対応するDACもあるようですが、今回はシンプルにCD再生専用とします。 入力は、取りあえず同軸のみ対応。 つまり、光入力やXRLの平衡入力には対応しません。(もちろん、対応するよう改造は可能です。) ソースとして利用できるのは、専用のCDトランスポートがあれば言うことありませんが、CDプレーヤーやDVDプレーヤーのRCAジャックからのデジタル出力でCDを再生したときに出てくるシリアル信号です。

 DAコンバーターの大雑把な構成はこんな感じ。

概念図 DAコンバーターの概念図

 CDプレーヤーのデジタル信号には44.1KHzでサンプリングされた左右2チャンネル分のオーディオ信号の他に、クロックや左右の識別信号等が含まれています。 デジタルオーディオインターフェース(DAI)はこの信号から、左右のオーディオ信号(SDATA)、各種クロック(BCK、SCK)、制御信号(WSまたはLRCK)などを取り出します。 I2Sフォーマットのときの3つの信号のタイムチャートを書くとこんな感じになります。(正確なもんじゃないです。 おおざっぱにこんな感じ。) 

タイムチャート DAI出力信号のタイムチャート

 SDATAは高周波のデジタルノイズを含むので、デジタルフィルター(DF)で高周波成分をカットします。 SDATAには左右のオーディオ信号が交互に送られてきますから、制御信号(WS)によって信号を左右に振り分けたのちDAコンバーターでアナログ信号に変換します。 DACチップには、このWS信号による制御機能を内蔵し、1チップで左右両方の信号を処理するものと、左右の振り分けは外部回路に依存し、1チップで1チャンネル分の信号処理だけを行うものがあります。 前者の例では、バーブラウン製のPCM1710やPHILIPS製のTDA1541、TDA1543、TDA1545などがあり、後者の例ではバーブラウン製のPCM1702、PCM1704などがあります。 DACチップの多くが電流出力なので、I/V変換回路で電圧出力とした後、アナログのローパスフィルター(LPF)を通して出力とします。 つまり、ノイズ対策としてデジタルフィルタとアナログフィルタの2段構成となっているわけです。

 さて、実際の製作にあたって、まずDAIチップとDACチップを決めなければなりません。 バーブラウンの現行のDACチップは、SSOPとかSOICとかやたら小さいサイズでハンダ付けが大変だし、昔の銘石は高価で入手困難です。 そこで、あまり新鮮味はありませんが、philips製のTDA1543がまだネットオークション等に出回っていて入手可能なようなので、これを使うことにします。 1チップで左右2チャンネル分まかなえる上に扱いやすく、音も良い銘石です。 DAIチップはシーラスロジックのCS8416が本命かなとは思うのですが、CS8414が扱い慣れていて楽なのと、まだネットで入手できそうなのでこれを使います。 TSSOPタイプですが、私のような老眼の始まっているおじさんでも何とかなる範囲の小ささです。 デジタルフィルタは PHILIPSのSAA7220Pが手に入れば、なかなか魅力的な音が出るのですが、だんだん入手困難となっているので、これもありふれた手ですがデジタルフィルタなしとします。 また、経験上、ぜひ付けておきたいので、RS422レシーバを別に設けてこれで入力信号を受けるのと、リクロック回路を搭載します。 CS8414の入力部もRS422レシーバ相当の差動入力となってはいますが、専用のRS422レシーバチップで受けた方が、高性能のものとなり、音に差が出てきます。 リクロック回路というのはデジタル伝送の途中で生じるジッター対策となると言われているもので、いまだに何故効果があるのか私には原理がよく判っていないのですが、SPDIF信号や、BCK、WSなどの信号を、サンプリング周波数より遥かに高い周波数の高精度クロックでもってブツブツに刻むというものです。 オカルト的なものとして退ける方もあるようですが、実際に比較してみると、リクロックを行った方が明らかに空間分解能があがり、音場の奥行きや左右の広がりが良くなります。 I/V変換回路は、オペアンプ利用のものやディスクリートのものなどもありますが、簡単なのと音も気に入っているので、抵抗1本で済ませてしまいます。 デジタルフィルタを省略するので、LPFはそれなりに性能の良いものが欲しいところです。 しかし、ここでもオペアンプは使いたくないので、LCフィルタとします。
 以上をもとに、今回のDAコンバーターの構成図を書いてみます。

概念図2 実際の構成はこんな感じ

   基板をDAI側とDAC側の2つに分けます。 それぞれの基板上に電源回路のレギュレーターを搭載することにし、おおもとの電源は12VのDCアダプターを使えるようにしようと思います。リクロックはWSやBCKにもかけても良いのですが、配線がややこしくなるのを避けて、RS422レシーバとドライバの間で一カ所だけSPDIF信号にかけることにします。

 

回路図を書く

 
 自分で日頃工作をする時には、必ずしも回路図は書かずに、実体配線図もどきのものを書いてしまうことも多いのですが、今回はちゃんと書くことにします。 まずはDAI基板の方を書いてみましょう。

DAI回路図 DAI基板の回路図

   jinsonさんのDACで使われていたDAI部分のリクロック回路をSPDIF信号の部分だけにしたものです。 まさに偽オリジナル、果たしてうまく動くんだろうか? 電源部のレギュレーターは一緒に書くとごちゃごちゃになるので、後に別掲載します。
 まず入力部ですが、RS422レシーバ/ドライバチップのSN75179という石の相当品を使います。8ピンのパッケージにRS422レシーバとドライバが1個ずつ入っており、それぞれ別々に動作可能です。 SN75179そのものでも良いのですが、古い石でスピードがのろいのと消費電力が大きいのでCMOSの高速な相当品をお勧めします。 私が試した範囲では、本家TIの75LBC179A、STMicroelectronics社のST490、Linear Technology社のLTC490が優秀でした。 入力部の75Ωの抵抗はインピーダンスマッチング用のもので、ノイズを出しそうな安物でもない限り、普通の金属皮膜抵抗でいいと思います。KOAの1/4Wでも、philipsの1/4Wでも、DaleのRNシリーズでも構いません。 ここのところでRCAジャックの片側をアースに落としていますが、アースに落とさず、抵抗を110Ωにすれば平衡入力に対応できます。 SN75179の7番ピンと8番ピンに入っているコンデンサは入力のDCカット用です。 ただし、CMOS相当品はほとんどこのコンデンサが入っていると動作しません。 実は私は普段このコンデンサを省くのですが、盛大にDC出しまくるソースに繋がないとも限らないので、公式見解としては、端折らない方が安全です。 CMOS相当品を使いますので、今回はこのコンデンサを省きます。 SN75179を使い、コンデンサを入れるのであれば、マルコンのローノイズセラミックコンデンサがおすすめです。  RS422レシーバの出力をRS422ドライバに渡す前に、1回リクロック回路を通します。 74AC74というのは汎用の14ピンロジックICでDフリップフロップが2個入っており、それぞれ別々に動作可能なものです。 74HCタイプのものの方が出力波形がきれいだと好まれる向きもあるようですが、クロック周波数80MHz以上の高速動作だと、74AC、74VHC、74AHCあたりは使いたいところです。 ハンダ付けが楽なのでソケットを使いたいとなると、DIPパッケージのものとなるので、74AC74のDIPタイプのものを使います。 手に入るなら74AHCのDIPタイプにすると電力消費が小さく出来ます。 リクロック用にはIC内部のDフリップフロップのうち片側だけ使います。 Dフリップフロップを駆動する水晶発信器は14ピンDIPサイズのVCXOかTCXOを使います。 ここもソケット式にして、最初は安いものを使っていても、後で高精度のものに差し替えられるようにしておきます。 最初は秋葉原あたりで、100円〜400円くらいで売られている安いのでも良いと思います。 クロック周波数は50MHz〜100MHzくらいのものを用意します。 リクロック後の信号はRS422ドライバに送り差動出力としてCS8414に渡します。

 DAIチップのCS8414は電源として、VA: アナログ用(+5V: 22番ピン)、VD: デジタル用(+5V: 7番ピン)の2電源構成となっていますが、なまじ2つに分けると、2つの電圧に差が生じたときの対策をしなければならず面倒なので、VAとVDをまとめて1個レギュレーターを用意することにします。 アースは、アナログアース(21番ピン)とデジタルアース(8番ピン)の2つありますが、これもまとめて1つにしてしまいます。 各電源とアースの間にパスコンを入れます。 OSコンの10〜47uFで耐圧6.3V以上のものを使います。 20番ピンにPLL用の外付けのCRフィルターを繋ぎます。 ここのコンデンサと抵抗は音に影響すると言われています。 いろいろと試してみれば面白いと思いますが、高周波特性の良いものを選びたいので、ポリプロピレンフィルムのコンデンサと金属皮膜抵抗を使うことにしました。 コンデンサはASCのX363、470Ωの抵抗は手持ちがあったのでDaleのCMFを使いましたが、ソリストでも、DaleのRNシリーズでもKOAの1/2Wでも構いません。 RS-2Bなどの巻線抵抗でも使えないことはないと思います。 M0〜M3は出力フォーマットの設定を行うためのものです。 今回はTDA1543用に出力をI2Sモードに設定するので、M1を+5V、それ以外をアースに繋ぎます。 あと13番ピンはアース、16番ピンは+5Vに繋ぎます。 26番ピンはデータ出力(SDATA)、12番がビットクロック(BCK)、11番がLRセレクト(WS)です。

 さて、DAI基板の電源ですが、同じ基板上にレギュレーターまで組み込んでしまおうと思います。 必要な電源を3系統に分けました。 VDD1(VA + VD)として+5V、VDD2(74AC74 + RS422レシーバ/ドライバ用 )として+5V、VDD3(VCXO用)として+5Vを用意します。 手軽にやるなら電圧固定型の3端子レギュレーターを使う手もありますが、せっかくですから青木式のシャントレギュレーター電源を載せてしまいます。 電源回路のみ取り出すとこうなります。  

DAI基板の電源回路 DAI基板の電源回路

 VDD1は電流がそれほど大きくないので、JFETの2SK170BLをパラレルで使って定電流源とし、これよりTL431を駆動します。 基準電圧2.5Vの2倍で5Vとしました。 VDD2とVDD3については、当初の見込みより大飯食いなことが分かったのでTL431の出力を直接使うことはあきらめ、青木式を定電圧源としてトランジスタのリップルフィルタを駆動することにしました。 NPNトランジスタの電圧降下分を0.5V強とみて、定電圧回路で5.8Vくらいになるようにしました。 シャントレギュレーターは標準のTL431相当品、抵抗類は1/4Wの金属皮膜で十分です。 入力電源が+12Vとなっていますが、DAI基板用としては+9Vで十分です。 DAC基板と共用を考えて12Vとしてあります。

 さて、DAC基板の方に取りかかりましょう。 こっちはずっとシンプルなので、電源も含めて書いてしまいます。

DAC回路 DAC基板の回路

 TDA1543の回路はjinsonさんの4パラやMJに昔掲載された楠さんの回路を参考に値決めをしましたが、ベストかどうかは分かりません。 しかし、かなり調整幅はあって好みに応じて変更する余地はたくさんあります。 ともあれ、この回路を解説します。 DAIからの入力信号を抵抗を介してTDA1543の入力端子に繋ぎます。 ここの抵抗は1/4Wの金属皮膜、値は33Ωではなく、22〜56Ωくらいのどれでもいいと思います。 省略しても動くんじゃないかと思いますが、動作安定のためには入れておいた方が無難です。 左右の出力ピンにつながっているのはLCフィルタ、I/V変換抵抗、カップリングコンデンサ、終端抵抗の順になります。 ここの部品はVrefの抵抗も含めて、全て音質を左右します。 何が正解で何が間違いということはなく、好みの問題といってしまえばそれまでですが、私の好みとCPで選ぶとLCフィルター用のフィルムコンがPanasonicのポリプロかERO1813、I/V抵抗とVrefの抵抗がDaleの巻線抵抗: RS-2B、または、いずれか質の良い金属皮膜。 カップリングコンデンサは、ERO1813、Mundorf のポリプロかポリエステル、EROかWIMAのMKC(ポリカーボ)のどれか。 終端抵抗はソリストあたりでしょうか。 今回は抵抗はI/VとVrefがRS-2B、終端抵抗をソリストとしLCフィルター用のコンデンサは4700pFがPanasonic、001uFがERO1813、カップリングコンデンサはWIMAのポリカーボを使いました。
 電源ですが、TDA1543は+5Vの単電源が標準で最大8V動作までが許容されています。 電圧が高めの方が音が生き生きすると言われていますので、+7V強を供給するのを狙います。 シャントレギュレーター電源では電流容量が不足しますので、これを定電圧源としてバイポーラトランジスタのリップルフィルタを駆動することにします。 シャントレギュレーターの定数を変えて、計算値8Vを出力し、トランジスタでの電圧降下分をマージンと考えます。 ケミコンは一応OSコン、470uFの方はPTコンというのを使ってみました。 2.2uFのコンデンサはフィルムコンで値も大雑把にこのくらいということで、これにこだわることはありません。

 さて、これで回路が決まり、実際の製作の前に私は配線図を作るのですが、それには手元に部品がないとサイズが決められません。 そこで、部品調達のお話に入ります。


部品の調達

 
 私は東京在住なので、部品は主に秋葉原を歩いて調達しています。 関東近辺の方なら一度は秋葉原を経験すると楽しいです。 大阪近辺の方なら日本橋界隈を歩けば色々ありそうですが、地方在住の方はなかなかそうもいかず、通販やネット頼りとなるかも知れません。 そこで、店舗に出向かずに部品を調達することを考えてみます。
 まず、通信販売に対応している店のサイトで私が使えると思うものをあげてみます。

   千石電商      半導体、コイル、抵抗(KOAの1/4W、1/2W)、OSコン、スイッチ類、
             RCAジャック、ICソケット、ユニバーサル基板、ケース、端子台

   秋月電子通商    シャントレギュレーター、水晶発振器、RCAジャック、28ピンDIP変換基板、ICソケット、丸ピンICソケット両端オスピン、
             ユニバーサル基板、端子台、スイッチングACアダプタ

   共立電子      半導体、水晶発振器、フィルムコンデンサ(松下ECQP、ニッセイAPSなど)、ICソケット、ケース、
             端子台、ユニバーサル基板、28ピンDIP変換基板

   鈴商        半導体、フェライトビーズ

   海神無線      抵抗類(Dale: 金皮 CMF55 Dale: 巻線 NS-2B Philips: 金皮1/4W )、フィルムコンデンサ( ERO1813、ASC X363など )、
             ローノイズセラミックコンデンサ、OSコン

   桜屋電機店     抵抗類(Dale: 金皮 RN60、RN65 Dale: 巻線 RS-2B / Ohmite: 巻線5W )、フィルムコンデンサ( WIMA、EROなど )

   コイズミ無線    フィルムコンデンサ( ムンドルフ、SOLENなど)

   マルツパーツ    Panasonicのポリプロ、半導体、ICソケットなどなど


         ロジックICの74AC74のDIPタイプは、現在品薄なのか通販のカタログに載せている店が少ないのですが、半導体を扱っているところに聞けば入手困難なものではないと思います。 入手に関して一番問題なのが、TDA1543とCS8414、それにRS422レシーバ/ドライバの3つのICです。 この3つは秋葉原を歩いてもまず手に入りません。 特にTDA1543は廃品種となって久しいので通常のショップではまず手に入りません。 しかし、ネットオークション上にはしばしば出回るのでこれを入手するのが一番可能性があるでしょう。 これを入手してから製作を検討した方がいいです。 CS8414もわりとよくネット上で売られています。 通販で部品を集める上ではずせないサイトとして、あと2つ、RSコンボーネンツDigi-Keyがあります。 RSコンボーネンツは、もともと法人を相手にしていたみたいですが、個人にも販売してくれて反応が早いのが特徴。 安くはありませんし、抵抗やコンデンサ、ロジックICのような小物は5個以上とかまとめ売りでないと売ってくれないという欠点はありますが、ここならではという品物もあり利用してみる価値は大いにあります。 チェコ製の電源用トロイダルトランスはなかなかの優れものだし、フィルムコンデンサのERO1813の品揃えが豊富です。 ラジアル型のインダクタもここで手に入ります。  74AC74のより高速かつ省電力版の74AHC74のDIPタイプも扱っています。 またRSS422レシーバ/ドライバのLTC490も扱っています。 Digi-Keyはアメリカに本拠があり、海外通販の形になりますが、日本語のサイトがありここから注文できます。 半導体の現行品種はここから入手するのが値段も安く、たまにまとめ買いしてしまいます。 半導体では74AHC74も扱っており、RSS422レシーバ/ドライバのST490や75LBC179Aもここで購入できました。

 さて、とりあえず、必要なものをパーツリストにまとめてみましょう。

 partslist



配線図を作る

 
 では、実際に配線図を作ります。 今回の基板はSunhayatoのICB-293G相当のユニバーサル基板上に作ります。 私は秋月電子で売っている片面ガラスエポキシの安売品を使いました。 穴の数が37個 x 25個のものです。 この上に実際の部品を置いて、穴の数にあわせながら寸法を測り配置します。 CS8414はDP28PINへの変換基板を使い、28ピンDIPのソケットを使用。 74AC74と水晶発振器は14ピンDIPソケットを、RSS422レシーバ/ドライバは8ピンDIPソケットを使うことにします。 ソケットを多用することによって、ハンダ付けによる熱破壊のリスクを回避するのとあとで部品を交換しやすくなるのを狙います。 ICソケットも秋月電子のが安くて気に入っています。 ついでに入出力と電源端子も秋月の端子台を使うことにしてレイアウトを決めました。 端子台など使わず、基板に直接リード線をハンダ付けしても良いのですが、途中でいろいろいじることを考えると端子台を使った方が便利です。

DAI基板配線図 DAI基板配線図

 この図は、実際の配線の際に分かりやすいように基板の裏側から見たものです。 マニュアル等に載っているICの図などはほとんどがTOP View ですから、左右が逆になります。 配線の色は、電源系が赤、アースが灰色という以外は特にポリシーはなく適当です。 図の中の波線の部分はジャンパーで、基板の表側を通す部分です。 CS8414のVAとアナログアース、VDとデジタルアースの間に入れるパスコンは、変換基板上に直にハンダ付けします。 また、水晶発振器のアースとアースラインの間に気は心とばかりフェライトビーズを入れました。 手に入らなければ別になくても良いと思います。 入力部の波線で囲んだ部分は今回は省きます。 また、入力のマイナス側とアースラインも繋がずに置きますが、トラポがうまくロックしない場合には繋いで下さい。

 つづいて、DAC基板に取りかかります。 こっちも同じサイズの基板を使いますが、実装密度はぐっと余裕があります。 ただし、使う部品によりサイズにばらつきがかなり出てきます。  

  DAI基板配線図 DAI基板配線図

 やはり、端子台とTDA1543用の8ピンソケットを配置してから、部品の大きさに合わせてレイアウトを決めます。 トランジスタは放熱器を背負わせた方が良いかもしれません。 一応、その分のスペースも確保しておきます。


実際の製作

 

 まず、TSSOPのCS8414を変換基板を使って28PIN DIPに仕立てます。 私が用意したのはこれ。

変換基板 変換基板と両端オスの丸ピン

 実はこれ、失敗でした。 5枚組で作りも良いし、なかなかじゃないと思ったのですが、幅が通常の28PIN DIPソケットより広いので使えません! 癪に障ったので、1列の丸ピンソケットを使って、無理矢理使用してしまいましたが、無駄な手間です。 Sunhayato の ICB-010 が安いしサイズもぴったりなのでお薦めです。

製作行程 変換基板の製作行程

 次に、DAI基板の方を作ります。 まず、ICソケットと端子台の位置を決めてハンダ付けし、続いて各部品や配線を行います。 ICソケットの向きを間違えないよう注意します。 また、シャントレギュレータやトランジスタの向きにも注意します。 トランジスタなどの足の配置を示しておきます。

半導体の足 使用する半導体の足の並び

 ついでにVCXOの足の配置も示しておきましょう。

VCXOの端子の配置 VCXOの端子の配置

 部品を取り付け終わったところはこんな感じ。

完成したDAI基板 完成したDAI基板

ハンダ付けが下手くそでお恥ずかしいのですが、裏側はこんな具合。

DAI基板の裏側 DAI基板の裏側

 で、ICとVCXOをソケットに差します。

ICを載せた ICを載せたDAI基板

 続いてDAC基板。 こっちはずっと楽・・・

完成したDAC 完成したDAC基板

 裏側はこんな具合。

DAI基板の裏側 DAI基板の裏側

 これをケースに取り付けます。 今回は手持ちの死蔵品となっていたプラスティックケースを使います。 別に金属ケースでも良いのですが、加工で楽をしようかなーと。 ケースには、RCAピンジャックを赤・白・黄の3つ取り付け、電源アダプタ用のジャックも取り付けます。 フロントパネルにはLEDランプを付けます。 今回は電源スイッチはわざと付けませんでした。

ケースの内側 ケースの内側

  電源アダプターとして秋月電子で売っている小型のものを使います。 底部がアルミ板になっておりここにDAI基板とDAC基板を取り付けます。 DAI and DAC 両基板を取り付けたところ

  この状態で試聴。 ヘッドホンアンプに繋いでみましたが。 まずまずです。 ついでにソケットに高級パーツを差してみます。

高級パーツ RS422レシーバ/ドライバをST490に、水晶発振器を三田電波製の高精度TCXOに差し替え

 当たり前だけど、こっちの方がさらにすっきりします。 まあ、大人しく元に戻してふたを閉めます。

外観 外観(後ろから)

 さて、メインシステムにないで試聴してみます。

外観 外観(前から・・あらっ端が切れた、まっ、いいか)

 まずまずの音がしています。 さすがに一連のjinsonさんのDACやAQUAには分解能の差が大きくてかないませんが、ヘッドホンアンプにつないで普通に楽しむ分には十分です。
 とりあえず、今回はここまで。


訂正

 

 その後、jinsonさんからDAC基板のLCフィルタの定数が4パラ用のままではまずいと、シングル用の適正値をアドバイスいただきました。 たいへんありがたいことです。 これをもとに回路図を書き直すとこんな感じ。

DAC改訂版 DAC基板の回路図改訂版

 赤字の部分が変更点です。 この定数は石に優しい5V電源ヴァージョンで、ゲインはやや小さめ。 ついでに、改訂版の配線図も書いてしまいましょう。

DAC改訂版配線図 DAC基板配線図改訂版

 これをもとに基板を修正しました。

DAC改訂版基板 修正したDAC基板

 手持ちのコンデンサを使ったので、必ずしも入手しやすいものではありませんが、3300pFがWIMAのポリカーボFKC-3、1000pFがWIMAのポリプロFKP。 電源電圧も5Vにするため、抵抗値を一部変更しました。 で、これをケースに納めてメインシステムで試聴。 いやー良い音です。 こんなものかなあと思ってたのが恥ずかしい。 音が断然生き生きしてしかもクリアになりました。 残念ながら、1チップの限界でクロストークが大きめになるので奥行きが出ませんが、音質は素晴らしい。 低音だって結構出ています。 やっぱりこの石はあなどれません。

 ところで、jinsonさんにもう一つ、電源電圧8V用の高出力ヴァージョンを紹介して頂きました。 こっちも試したくなったので手持ちの部品をかき集めて作ってみました。

DAC改訂版高出力 DAC基板高出力ヴァージョン

高出力ヴァージョンでは、コンデンサが2200pFと100pFとなるほか、I/V抵抗が2.7KΩ、Vrefの抵抗が1.2KΩになります。 RS-2BやNS-2Bの手持ちに丁度良いのがなかったので、秋葉に買い出しに行くまではお預けかなーと思っていましたが、ふと思いついて調べたら、 ohmiteの5Wのやつがありました。 I/V用には2.5KΩと250Ωを直列にして使っちゃいます。 Vref用には1.2KΩぴたりのがありました。 コンデンサは2200pFがWIMAのFKC、100pFがPanasonicのポリプロです。 電源用のトランジスタに2SC1014をおごってしまいました。 電圧設定を高くするため、抵抗値を470Ωと1.1KΩに変更。 2SC1014の電圧降下が大きいのか予定より低めの電圧となりましたが、それでも7.5Vを確保しました。
 これでもって、メインシステムで試聴。 いいなあ。 音量の余裕ばかりでなく、低音がしっかりするように思います。 より、澄み渡った感じがするのは、使った抵抗の差かもしれませんが、4ぱらえぴとか1541エピ聴いてなければ、これで良いじゃんと思うかも。 DAC持ってない人に最初に勧めるのに十分なクオリティーには達したように思います。



改訂

 

 かなり高水準の音が出るようになったのですが、こうなるとちょっと欲が出てきます。 クロストークをもうちょっと良くして空間分解能を上げられないかなと考えました。 要するに、1チップで左右の両方の情報を扱うから問題なのははっきりしています。 jinsonさんの一連のepiシリーズみたいにやれば理想ですが、あそこまでやるのは本来の趣旨である「入門用」からはひどく逸脱している気がします。 で、もっと手軽な方法として、TDA1543を2個使い、左用は左の信号だけ、右用は右の信号だけ扱うようにしてみようと思います。 つまりタイミングチャートを書くとこんな具合。

タイミングチャート LR分離のタイミングチャート

 DAI基板から出ているSDATA、BCK、WSの3つの信号のうちSDATAを74HC153というロジックICを使ってLDATAとRDATAに分けます。 LDATAを入力するDACは右チャンネルに関しては何もしない、 RDATAを入れる方に関しては、その逆とします。 やってることは単純なので回路図はすっとばして配線図を書いてみるとこんな具合。

 LR分離回路配線図 LR分離回路配線図

 DAI基板の上に2階建てにして使う前提で配置を決めました。 実際に作った基板がこれ。

 LR分離回路基板 LR分離回路基板

 下にくるDAI基板の端子台のネジをしめるための穴が開けてあります。 DAI基板の固定ネジの代わりにスペーサーを立てます。

 スペーサー DAI基板にスペーサーを立てたところ

 さて、肝心のDAC基板ですが、TDA1543を2個搭載し、左右別々のレギュレーターで電源を供給することにします。 配線図を書くとこんな具合。

 ツインDAC基板配線図 ツインDAC基板配線図

 で、実際に組み上げたのがこれ。 抵抗類はソリストの2W、LPFのコンデンサはPanasonicのポリプロと廉価なもので仕上げてみました。

 ツインDAC基板 ツインDAC基板

 これらの基板をケース内に配置するとこんな感じ。 あら、ちょっとピンぼけ、すんません。

  全基板 全部の基板を配置

  これでもって、ケースに納めて試聴。 やっぱり空間解像度が上がって奥行きがでます。 ただ、抵抗とコンデンサの差が出ますね・・・
  今後、電源をもっとちゃんとしたものにしたり、パーツを厳選したりしてみようと思いますが、それは2号機の方でとします。



  

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