あれこれ・まあ・のんとろっぽ

presented by づか since December 2004


オーディオ関連掲示板


人柱DACシリーズ2:球バッファを手配線で作る

 jinsonさんのTDA1543球バッファは大変な名作だと思いますが、部品調達困難なので再頒布の予定はないとのこと。 けれども、球バッファに関心をよせる方がまだけっこういらっしゃるらしい。 そこで人柱DAC第2弾として球バッファを手配線で作ってみる事にしました。 

はじめに---設計編

 
 まず、jinsonさんのTDA1543球バッファがどのような構成になっているのかチャートにしてみます。

球バッファの構成図 球バッファの構成図

 LCフィルターの後ろに球バッファが入るのとDAIとDACの間の3本の信号線にもリクロックをかけているのが違いますが、人柱DACとかなり似た構成です。実際にLCフィルタの定数も同じ? これって作ってみる勇気がわいてきます。 しかし、これだけの内容をあんな小さな基板に組み込むのですから、jinsonさんのアートワークは天才的・・・とても手配線でまねできる物ではありません。 少しでかくなってしまうのはやむをえないので、人柱DACのように、DAI部とDAC部の2枚に基板を分けることにします。 それ以外にもいくつかの変更点があります。 まず、入手性を考えてDAIチップをCS8412(またはCS8414)からCS8416に変更します。 また、リクロック回路が4つもあるので74VHC74を使って作ると配線が憂うつなことになります。 で、74VHC574を使って楽をすることにしました。 以上をもとにチャートを書き直してみます。

人柱版球バッファの構成図 人柱版球バッファの構成図

 これをもとに回路図を書いてみます。 まずはDAI基板の分です。

DAI部の回路図 DAI部の回路図

   電源部は本来LED電源なのですが、VA=3.3Vと、VL、VDD1、VDD2=5Vに合わせるためLEDを選別するのがめんどくさいので、DAI部の方は青木式シャント電源を使わせてもらいました。SD(26番ピン)をプルダウンしてハードウエアモードとします。 入力部はRS422レシーバをつなぎ、ここにまずリクロックをかけます。 入力のセレクタ機能は使わないのでRS422ドライバの正出力をRX0(4番ピン)、負出力をRXN(5番ピン)につなぎ、RX0に固定するため、10番ピンと11番ピンをアースに落とします。 ディエンファシス検出機能はオフの方が音が良いので96KHz(16番ピン)はプルダウン、入力フォーマットをI2s固定にするのでC(19番ピン)をプルアップしAUSIO(15番ピン)をプルダウン、シリアルポート設定をマスターにするのでRCBL(17番ピン)をプルアップ、マスタークロックは256fsとすることにしてU(18番ピン)をプルダウンとします。3つの出力信号にもリクロックをかけますが、74VHC574を使うと実にシンプルに出来ます。

 次にDAC部です。

DAC部の回路図 DAC部の回路図

 この図はjinsonさんが公開されている回路図を書き直しただけですが、真空管まわりが見慣れた形になってると思います。 TDA1543は8Vでフルスイングします。 その方が明らかに音が良いのと出力が大きくとれるからです。 真空管のピン番号は、396A/5670/6N3Pのものです。 6922/6DJ8を使う場合はR側とヒーターのピン番号が( )内のものに変わります。

 では、実際の配線図を書いてみましょう。 まずは、DAI基板の方。 実際に配線する時の便を考えて部品面からではなくハンダ付け面から見た所です。

DAI基板配線図 DAI基板の配線図

 この図では入力部のRS422ドライバ/レシーバにCMOS高速タイプを使うため0.1μFのコンデンサを省いてあります。また、出力部は端子台ではなく、10ピンのボックスタイプのピンヘッダとし基板間をフラットケーブルで繋ぐようにしました。
 次に、DAC基板です。 やはりハンダ付け面から見たところです。

DAC基板配線図 DAC基板の配線図

 これは、真空管として、396A、5670、6N3Pなどを使う時のものです。 6922/6DJ8を使う場合はこちら。 

DAC基板配線図 DAC基板の配線図2

 出力部のカップリングコンデンサは20μFになっていますが、4.7μF以上でよろしいかと思います。
 さて、実際にはこの基板に直流電源を供給する訳ですが、今回はACアダプタではなく、整流回路を組もうと思います。

整流回路 整流回路

 AC100Vから、いつもの安井式電源フィルタを通してトランス3つそれぞれの出力をブリッジ整流し、ケミコンで平滑するというシンプルなものです。 3つのトランスのうち12VのはDAC基板、8V0.5AはDAI基板、そして8V1Aは球のヒーター用です。

 

準備編 部品の調達など

 
 それでは、部品の調達に入ります。

 まず、なんとしても手に入れておかなければならないのがDACチップのTDA1543です。 製造中止になって久しい石ですから、普通の店では売ってません。 しかし、まだヤフーオークションあたりには出回るようなので入手してください。 これが入手できないうちは作ろうとしないこと。 ちなみに、TDA1543Aではないので注意して下さい。 Aが付くと入力フォーマットがI2SではなくJapanese fotmat (右詰め16bit) になります。 これでも使えますが、Aなしの方をお勧めします。


部品表DAI  部品表DAC

 最初にDAI基板とDAC基板の部品表です。 両基板とも同サイズ。 Sunhayato ICB-293G相当品です。

 左の表がDAI基板のもの。 表面実装部品のCS8416と74VHC574は変換基板を使ってDIP化しICソケットに差すことにします。 28ピン用のは色々なものが出回っていますが、秋月電子のがCP高くお気に入り。 丸ピンIC連結ソケットというのを使って足をつけます。 20ピン用の変換基板も存在しますが、5枚組だったりして高く付くので、私は28ピン用のを買って、不要部分を切り取って使います。 ICソケットは、RS422ドライバ/レシーバ用に8P、水晶発振器用に14P、74VHC574用に20P、CS8416用に28Pのものを用意します。 といっても、変換基板の関係で、20Pのは通常のものよりずっと幅広になるので、シングルラインのものを10Pずつ幅を合わせて使うのが現実的です。 信号入力と電源入力用に端子台を使っていますが、リード線直出しでいけないわけではありません。 10Pのピンヘッダは切り欠きの付いたBox型のがフラットケーブルを差す方向を間違えにくいのでお薦めです。 抵抗は全て1/4Wの金属皮膜です。 利久のROがお薦めですが、100本単位で買わなければならないのが欠点。 第2候補としてはタクマンのREYシリーズも良いと思います。 カーボン抵抗でも使えますが、経年劣化と音質の好みの関係で私はカーボンは使いません。 コンデンサのうち10μFのはOSコンやPTコンでもかまいません。 47μFはリセット回路の時定数を決めるので容量の誤差の程度と経年変化の少なさからOSコンが良いでしょう。 1000pFと0.022μFはPLLを構成するので高周波特性のよいものが必要。 ポリプロやPPSが良いでしょう。 FETはローノイズの定電流素子として使っているので2SK117や2SK30でもGRクラス以上ならOKです。 シャントレギュレーターは、聞き比べると差が出るのかも知れませんが、あまり気にせず秋月電子で安売りしているのを使っています。電源回路の出力用NPNトランジスタはIcが100mA以上もあれば何でも良いと思いますが、余裕を見て数百mA〜1A程度のものとしておきましょう。私は手持ちがたくさんあるのと出力段に使った時の音が好きだという理由で2SC1383を使いました。 RS422ドライバ/レシーバは人柱DACのページで述べたようにSN75179互換の高速CMOSチップで、TIの75LBC179A、STMicroelectronics社のST490、Linear Technology社のLTC490のいずれかをお勧めします。 リクロック用のバスバッファICはスピード的に74HCシリーズでは厳しいし74ACシリーズは電力消費が大きいので74VHCシリーズを使います。 ピンの並びが一番素直なので574を使う事にします。 TI社製の74AHCシリーズでも良いのですが、国内入手がむずかしいので74VHC574を標準とします。 ただし、 RS422ドライバ/レシーバやDAIチップをDigi-Keyに発注するのであれば74AHC574も一緒に注文する事をお勧めします。 74AHC574にはDIPタイプがあるのでちょっと楽です。CS8416を海外発注する時には間違って小さいTSSOPタイプを頼まないように。 SOICタイプの方がだいぶ大きくて扱いが楽です。 

 右の表はDAC基板のもの。 基板用の真空管ソケットが入手できない場合は一般のシャーシー用を無理矢理使う事も可能だと思いますがあまり勧められません。 ICソケット、端子台、Box型ピンヘッダなどはDAI基板のものと同じです。 放熱器は三端子レギュレーター用のもので、あった方がいいです。 抵抗はDAI基板と同じ1/4Wの金属皮膜。 480Ωが入手困難なので470Ωと10Ωを直列にして使います。 コンデンサのうちセラミックはもっと大きい容量、例えば10μFでも良いと思います。 OSコンの容量も、もっと大きくても良いです。 LPFを構成する100pFと2200pFのコンデンサは最も音に影響しますので重要です。 PPSとか質の良いフィルムコンデンサが良く、私は海神無線で扱っている黒いPPSを使いましたが、パナソニックのポリプロもお薦めです。 出力のDCカット用には4.7μF以上のものをお好みで・・・ 秋月で扱っている薄膜高分子積層コンデンサが最近の私のお気に入りです。 コイルは千石通商で扱っている太陽誘電製のを使ってみました。 アナログ電源はかなり音を左右しますから、オリジナルと同じprost式LED電源にチャレンジです。 まず、LEDを用意します。VF2Vくらいのものをある程度の数用意して、電圧を確認・・・といっても、実際に作ってみてDAC用の電源がチップに供給中に8Vを超えなければOKです。 ヒーター用電源は三端子レギュレーターで作ります。 固定電圧6Vでも良いのですが可変型を使って6.25Vを狙います。 LM317互換のものを用意します。 LED電源では定電流回路のPNPトランジスタがかなり音に効いてきます。 経験上、高周波特性の良いゲルマニウムトランジスタが非常にいい結果を出します。 シリコントランジスタではjinsonさんお薦めの2SA836を私もお薦めします。 出力段のNPNトランジスタはDAI基板のものと同じです。

部品表電源  部品表その他

続いて、電源関係。 3系統の直流電源を供給するためトランスも3つ用意します。 当初DAI基板用には7V0.3Aのものを用意したのですが、電流容量が不足したため8V0.5Aのものに変更しました。 トランスからの入力を受けて整流と平滑をする3系統を1枚の電源基板上に配置します。 DAI基板用とDAC基板用にそれぞれSBDまたはFRDを4個使ってブリッジを組みます。 ヒーター用は汎用の整流ブリッジを使います。 平滑用のコンデンサはほどほどの容量があれば大丈夫だと思います。 今回作った基板では、DAI用に16V4700μF x 4 + 16V1800μF x 2、DAC用に25V2200μF x 4、ヒーター用に16V4700μF x 2を用意しました。 ちょっと、DAI用の分は過剰です。 千石電商で扱っている東信の低ESRのものですが、耐圧が大丈夫なら銘柄はお好みで良いと思います。 私はパワーアンプ以外には基本的に安井式電源フィルターを使っているので、それも専用基板に組んでおきます。 ケースはアルミシャーシを底板なしで使う事にし、シャーシー内部にトランスと電源基板、電源フィルターを配置、DAI基板とDAC基板はシャーシー上に配置します。 今回はアクリル塗料で塗装してみましたが、これはお好みで。

部品調達に使えそうな店でWEB通販してる所をリストアップしてみました。

   千石電商      

   秋月電子通商    

   鈴商        

   海神無線      

   桜屋電機店     

   マルツパーツ    

   aitendo    

   共立電子      

   RSコンボーネンツ 

   Digi-Key


工具としては、穴あけ用に、ドリル、リーマー、ヤスリ、ニーブラー。 フラットケーブル作成用にバイス。
あと、半田ごてと、ねじ回し関係があれば良いでしょう。

 

製作編



 では、いよいよ製作です。 まず、配線図をもとにDAI基板を作成。

DAI DAI基板

 水晶発振器のアースはフェライトビーズを介してありますが、気はこころみたいなもので、なくても良いと思います。 電源回路は、出力トランジスタのVBE分電圧が低下するので実際に作ってみて抵抗値を調節します。 5Vのところは4.9〜5.1V、3.3Vのところは3.2〜3.4Vくらいにします。 変換基板を使うICのパスコンは変換基板上に直づけします。 こんな感じ・・・

変換基板 変換基板



   次にDAC基板です。 LED電源の定電流石は、いつもの2SA235です。 DAC用の電圧が8Vよりだいぶ低くなってしまったので、1N1588相当のシリコンダイオードを1個はさんでちょうど8.0Vとしました。 ダイオード1個で0.5V分になるので電圧が低すぎる場合にはこの方法がお勧めです。 ちょっとレイアウトをしくじって、DACまわりが狭苦しくなってます。

DAC DAC基板

 作例ではI/V変換抵抗も利久ですが、ここはお好みの抵抗を試すべき場所です。 DaleやOhmiteの巻き線を使ったり、ビシェイのVSRやZ201使っても良いですが、結局私は利久に戻りそうです。



  電源基板 電源基板

 続いて電源基板。 整流と平滑までをここでやります。 写真向かって左からDAC用に15V、ヒーター用に11V、DAI用に11V。 ケース上に電源ケーブルを通す方向を考えて3組の回路の方向は互い違いになっています。
 トランスの前に入れる安井式の電源フィルターも作ってしまいましょう。 いつも適当に巻いていくので、いったい何センチのテフロンコート銀メッキ線が必要なのか分からないので、今回は使用する長さを測ってみる事にします。 で、とりあえず、これだけあれば足りるだろうと踏んで40cmの長さに切ったものを巻いてみました。

  コイル 電源フィルター用に巻いたコイル

 ご覧の通りぎりぎりです。 これだと巻きにくいので、45cmに切って巻いたあと、余剰分を切り取るという方法をお勧めします。

トランス 使用トランス

 トランスは秋葉で売ってる普通のものです。 もちろんRS等のトロイダルトランスを使ってもかまいません。(写真手前の10V0.3Aのトランスは8V0.5Aのものに変更)

 さて、これらを納めるケースですが、アルミの弁当箱シャーシーの適当なサイズのを使います。 今回は、アクリル塗料のスプレー式のを使って塗装してみました。 

ケース アルミシャーシに穴あけ加工後塗装

 あらかじめ、穴あけ加工をすませた上で薄く3度塗り重ねます。 メタリックグリーンで塗ったら結構良い感じ。
 ケース内部にトランスと電源回路を、上面にDAI基板とDAC基板を配置します。 ケース外面はこんな感じ

ケース2 ケース外面

 底板は付けません。 で、中はこんなふう。

ケース内部 ケース内部

 これに基板2つをマウントしてフラットケーブルで繋ぎますシャーシー内部からの電源を繋いで出来上がり。端子台にRCAケーブルを繋ぐためにアダプターを作りました。 ケース内部 


 左側にオリジナルの1543球バッファを並べてみました。 倍以上でかいですね。 

ケース内部  ケース内部 

 音はかなりの線までいけてると思います。 DAIチップにCS8416を使ってるので96KHzまで対応できるのが取り柄? DAI部とDAC部を分けてあるのでこの後、いくつか実験を計画中です。 

つづく・・・・・ 

 

 

DACにまつわるあれこれ      


オーディオ関連のページ INDEX   



オーディオ関連掲示板       


Home               



inserted by FC2 system